まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
さてさて。院生試験はさくっと合格v
原作ではまだ稚拙な打ちてだったヒカルですけど。
こちらでは知らないままに実力は培われていってますからね(こらこらこら
さってと。これがおわれば再び15話でもでてきた世界大会v
それがおわったらブロ試験にあたり、和谷がヒカルをひっかきまわし~にうつるのですよv
え?
それはヒカルがプロ試験うけてるときじゃなかったか?って?
だからそれは二次さん、ということでv
椿にびびるヒカルではなくなってたり~としたいのですよv
何はともあれゆくのですv
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「和谷君、大丈夫?」
「別に」
噂をきいた。
今年、塔矢名人の息子である塔矢明がプロ試験をうける、と。
だからこそどうしてもイライラしてしまう。
自分とて今年、プロ試験をうけるのだから……
進藤。
僕は先にいく。
それが君をこの道に…プロの道にこさせる最善の方法だとおもうから。
だから…はやくプロの世界にあがってこいっ!
来週から始まるプロ試験予選。
もう少し大会が早ければ彼をプロ試験にひっぱりこむことも可能だったかもしれないが。
だが、季節をどうこういってもしかたがない。
彼を…彼曰く、彼の幻影を追い越すために。
そしてまた、神の一手を究めるために。
星の道しるべ ~院生とプロ試験~
「つまり、簡単にいえば、碁の塾、なんでしょ?」
「うん」
「でもそこに入る試験をうけるだけで高い受験料がいるなんて…
かよってた囲碁教室じゃだめなの?あそこなら家から近いし」
「あそこはね。ちっともつよくならない人たちが楽しそうに打ってるところなの」
「まあ、あんたがこんなに一生懸命になるなんて、珍しいことだからいいけど。
英語の勉強もこれだけ熱心にやってくれたらねぇ」
さんさんと太陽が照りつける。
七月のはじめ。
母子で日本棋院にとむかっているヒカルと美津子。
そんな二人の後ろから佐偽もまたついてきているにはいるのだが。
「ああ。進藤君、だったね。今案内するよ」
「よろしくおねがいします」
日本棋院、といえどもかなり広い。
案内されたのは日本棋院の六階にあたる部分。
「ここで靴を脱いでください」
何やらきちんとげた箱までそなえつけてあり、土足厳禁らしい。
指示されるままに靴を脱いでゲタバコに靴を入れる。
と。
「…あ。子供がいる」
ふとゲタバコらしき場所にて一人の少年とすれ違う。
それゆえに思わずつぶやくヒカルに、
そちらもまたヒカルのほうをちらっとみてくるが。
『ヒカル、あそこで子供たちがうってますよ!?』
佐偽のほうはその子供にちらりと視線をむけるものの、奥のほうにいる子供たちのほうに興味深々。
どうやら碁をうっているらしい、というのは雰囲気でわかる。
「ああ。院生、かなぁ?」
『あそこから、ですね』
たしかに。
すべてはそこから。
そこから塔矢明にとつながっている。
だからこそ。
「ああ。あそこからはじまるんだ!みてろよっ!塔矢!次こと絶対にかってやるっ!
目指すは妥当、塔矢明だっ!」
ぐっと力をこめて言い放つ。
勝ち逃げなんか、絶対に許せない。
しかも自分の読み間違いで負けたなど、自分の中で納得がいかないのも事実。
だからこそ、今度こそ!
という思いがヒカルの中にはある。
ヒカルが妥当、塔矢明、とつぶやいたときに背後に先ほどの少年がたまたま通りかかる。
と。
「まあ、もう少し力をつけてからおいでね」
「ありがとうございました」
くすん、くすん。
ふとみれば、小さな女の子が母親らしき人物につれられて泣いているのが見て取れる。
どうやら不合格、だったらしい。
「先生。最後の人がみえてます」
「ああ。はいはい。どうぞ」
どうやら試験をするのは別の人物らしく、案内してきた人からその男性にと受け渡される。
にこやかな表情をうかべている男性が一人。
「どうぞ。そっちにすわって」
促されるままにその場にすわる。
そこには碁盤が一つと、座布団が一枚。
つまりは座布団に正座ですわってください、といっているようなもの。
おもわずひきつった笑いを浮かべてしまうヒカル。
「正座…まだ苦手なのに……」
あとから絶対に立てなくなる。
それゆえにぽそっとおもわずつぶやくヒカル。
最近は碁盤でうつときには必ず正座をしているので以前よりも根性はついているかもしれないが。
「志願書と棋譜をみせてください」
いわれるままに封筒ごと試験官にとそれを受け渡す。
受け渡された中身を開き、確認しつつも棋譜に目をやり、
「棋譜は…と。あれ?六枚あるね?なぜだね?」
たしかに、三枚でいいはずなのに六枚ほどはいっている。
それゆえに疑問におもいながらも問いかける。
「あ。よくわかんなくて。実際に対面して対局したのがいいのか。それとも自分がうまくうてたとおもうやつのがいいか。と」
「ふむ……うん?この棋譜の三枚、日付がまったく同じだね」
ふとみれば、六枚のうち、三枚はまったく日付が同じとなっている。
「あ。一緒にうったんです。院生試験に棋譜が必要、ってきいて。もう、多面打ちなんて俺初めてで」
「…た!?」
多面打ちでここまで打てる子供がいるものか。
たしかに相手はそれほど強くないのかもしれないが。
だがしかし、棋譜を見る限り、三人の中の一人、加賀、という人物はかなりの実力をもっているのが見て取れる。
しかし多面打ち、といえども雑ではあるがよみはしっかりしており、三面とも勝っている。
しかも、これだけうって多面打ちは初めてだ、という。
その才能に驚かずにはいられない。
教官がその事実に驚いていると、
「あの?試験ってどれくらい時間がかかるんでしょうか?」
なぜ相手が驚いているのかわからずにとまどいつつも教官にとといかけているヒカルの母、美津子の姿。
「小一時間はかかりますから。外でおまちになっていてかまいませんよ」
しかし、この母親もかわってるな。
普通、院生試験は親のほうが積極的なのに。
まったく興味がないのがみてとれる。
そんなことをおもいつつも、美津子にいっている院生師範をつとめる篠田であるが、
「ヒカル。お母さん、一階でお茶をのんでるから。おわったら呼んで」
「あ。うん」
このままここにいても意味がない。
そんなことをおもいつつも、その場をあとにする母親にとりあえずうなづくヒカル。
母親が退室してゆくのをみつつ、そのまま再び棋譜にと視線を落とすし、
「…こっちの三枚は…こっちも君が全部白?うん?これは全部君のほうがまけてるね?」
みれば、こちらのほうの白はすべて負けている。
『ヒカル?あれは?』
お前とうったやつ。
自分でもけっこううまくうてたかな~とおもうやつをいれてみたんだ。
『なるほど。しかしあれもヒカル、私に負けてますよね?』
「いいの。それで」
ぽそっと思わず声にだすヒカルであるが、試験の教師とすればそんなことは耳にははいっていない。
棋譜をみればわかる。
相手の黒がどれほど強い実力をもっているのか。
よくよくみなければわからないが、こちらの三枚はすべて、相手は指導碁をうっている。
「この相手の人は?」
「あ、えっと…ネット碁で鍛えてもらってる人です」
まさか幽霊です。
というわけにもいかずに嘘を交えて説明する。
「…なるほど」
あの緒方さんが推薦してきただけのことはある。
それゆえにおもわず唸ってしまう。
三面うちでここまで打てる逸材などみたことがない。
しかも、年齢はまだ中学一年生。
あの塔矢名人の息子と同い年の子ども。
「ふむ。とりあえずうとうか」
「おき石いるんですか?」
「三つおいて」
「あ。はい」
互戦じゃないんだ。
いつも佐偽とうつときやネットでは互戦ばかりだったので置き石、というのは何だかとても新鮮。
「…はぁ。かわいそうだけどあの子、おちるわね。あの子正座苦手だもの」
ヒカルがそんな会話をしているとは知る由もなく、溜息をつきつつもエレベーターへと向かう美津子。
そんな彼女の姿を見送りつつ、
「あれ?今日、院生試験やってんだ」
この日本棋院のこの六階に棋士でもない大人がはいってくるなどまずあまりない。
それゆえに美津子の姿をめにして自動販売機でジュースをかっている少年に問いかけるもう一人の少年。
歳のころはおそらく十代後半。
もう一人は十代半ば、という程度であろう。
「うん。さっき女の子が落ちた」
「ふ~ん。今は誰がうけてるんだ?」
「男。歳。ちょい俺より下、かな?そいつは…たぶん、受かるとおもうぜ?」
にっと確信をこめた笑みを浮かべる。
何となくだがわかる。
あの子は絶対に受かる…と。
この子、本当に囲碁を始めてまがないの!?
志願書には囲碁を始めてまだ一年たっていないらしい。
約一年。
正確にいえば去年の九月ごろから興味をもって始めたらしい。
しかも、中学では囲碁部にはいっているのものの、誰かに師事しているわけでもない。
しいていえばネット碁をしている程度でここまで実力が養われるなど到底思えない。
そういえば、緒方さんがいってたな。
おもしろいから手加減なく打ち込みしてみろ。
と。
子供相手にそこまでする気にはならなかったが、だがしかし。
打ちこんでくる手に隙がない。
子供にありがちな雑さが手筋からはあまり見受けられない。
しかも志願理由の一つに、対面しての対局をしたことが数えるほどしかないし、
周囲に囲碁を打ちあう相手もほとんどいない、という理由がかかれていた。
その数えるほど、という人数のほとんどは実は塔矢明と、佐偽の対局である。
その事実を彼は知らない。
「ふ~む……君、本当に囲碁を始めて一年もたってないの?」
「え?あ、はい。囲碁界のこともほとんど知らなくて。
前、ネットで碁をうったとき、相手がインセイとかいってきて。
それでインセイって何?きいたら相手におこられました……」
「…それは……」
確かにそれは相手はかなりびっくりしたであろう。
相手の院生の子がだれかはしらないが、そのときの心境はおしてしるべし。
しかし、成長ぶりは倉田五段を思わせる成長ぶり。
独学でここまで力をつけたのならばすごい素質の持ち主かもしれない。
「君、本当に師匠はいないの?」
「え?あ。はい。しいていえばそのネットの人…かなぁ?」
正確にはここにいる佐偽だけど。
「ふむ…佐偽、か。彼は誰なんだね?」
「さあ?日本人、ということしかしりません」
まさか平安時代の幽霊です、というわけにはいかない。
ネット碁の指導だけでここまで実力をつけられる、とはおもえない。
『ヒカル?いいのですか?私のことをいっても?』
大丈夫だよ。
ネットのsaiは頻繁にはいってるから俺がうってても誰も不思議にはおもわないって。
事実、saiは最近では指導碁のようなことをネット碁でうっている。
だからこそ勘繰られてもおそらくヒカルとつながりを見出すことはできないであろう。
本来ならばこのままプロにはいっても通じる力をもっている。
そもそも、いまの一局にしろあのまま打ち続けていれば中押しで負けていた。
だがしかし、囲碁界のことをあまり知らない、というのと対面して碁をうったことが数えるほどしかない。
そのことが気にかかる。
やはり対面してこそみえてくるものがある。
それゆえに、
「ふむ。いいでしょう。来月からきなさい。お母さんをよんでおいで?」
「やったぁぁ!」
『やったぁ!ヒカル!』
わいわいわい。
「ここが大部屋です。もう対局はほとんどおわったようですね」
「…はぁ」
ヒカルに呼ばれ、試験にうかったことをきいた。
そしてそののち、棋院の中を説明する、というのでつれてこられたのがこの部屋。
「こっからふりかわりってのは?」
「俺のもつけて」
何やらわいわいと子供たちの声が部屋の中に響き渡っている。
何だ。
ヒカルより小さな子もいるじゃない。
これならヒカルだって合格してもおかしくないわよね。
見渡す中に小さな子どもの姿を認めてほっとした表情をうかべる美津子。
彼女はいまだに碁のことは何もしらない。
だからこそ、小さな子どもがいるのだからヒカルもうかっておかしくない。
そう判断をしている現状。
事実は、実力があるからこそここにいるのだが。
そんなことを彼女はしらない。
「あちらに対戦表がありまして」
「え?あ、はいはい」
『ヒカル。あそこをのぞいてみましょう。何か検討してますよ?』
「あ。ほんとだ」
たしかに広い部屋の一角で碁盤を囲んで数名の子どもたちが何やらいっている。
試験員や母親とは別にそちらのほうにと歩いてゆく。
「…ん?うかった?」
「え?あ、うん」
この人、誰?
「院生試験、うけてた子?和谷、知り合い?」
「いや。こいつ、廊下でさ。妥当塔矢明っていってたんだぜ?」
「あはは。はいったばかりのころは俺もそんなこといってた」
「塔矢明、か。今年のプロ試験うけてくるんだよなぁ。あ~あ……対戦するのが気がおもいぜ。
何かあいつ気に食わないしさ~」
「塔矢…本当に試験うけるんだ。でもさ、塔矢は確かに碁のことに対しては妥協しないけど。だけどいいやつだよ?」
「?お前、塔矢明をしってるのか?あいつと対局したことがあるのか?」
「え。うん。この五月の中学の囲碁部の団体戦。あいつ海王中の囲碁部でさ~」
「囲碁部?塔矢明が?うそ!?」
「あ、私。前桑原先生が笑いながら西尾先生と話していたのをきいたよ?
名人の息子が中学の囲碁部で大会にでる、って」
「げぇっ。本当なんだ」
「何何?何の話?」
「囲碁部の大会にしてはすげえ大将戦、だなぁ。院生になるやつと塔矢明、なんて」
「ううん。三将戦。以前は小学生で俺、参加して失格になっちゃってさぁ。そのときが三将としてでたから俺も三将戦で」
「でも塔矢明、だろ?塔矢明なら大将、だろ?」
「ううん。あいつも三将ででてきたよ?ああもうっ!今おもいだしてもはらがたつっ!
あのときのあの場所を読み間違いしてなけりゃっ!!半目勝ちしてたのにっ!」
『たしかに。あの手が原因で半目ひっくりかえりましたしねぇ』
「しかも!勝ち逃げしたあげくにブロになるとかいってくるしっ!!」
おもわず声を荒げたくなってしまう気持ちはわかる。
わかるが……
いやまて。
かなりまて。
あの塔矢明にかってた?
まさか。
そんな思いがその場にいる院生達にとつたわってゆく。
「ヒカル。そろそろかえるわよ?来月からこの子、きますから、みなさん、よろしくおねがいしますね」
塔矢が自分をおいかけて囲碁部に入った、といいかける前に美津子がヒカルにと声をかけてくる。
「あ。お母さん。は~い。あ、ちなみに。そこ。ここはマガリにしたほうがいいとおもうよ?」
トッン。
検討しつつ、何やら手をいいあっていた彼らの局面に一手を指し示し、
そのまま母親とともに大部屋をあとにしてゆくヒカルであるが。
「…マガリ?…あ…」
「…何だよ?あいつ?」
この局面をしかもちらっとみただけで、どうしてこの手をおもいつけるのか。
おもわずぞくっと背筋がしてしまう。
「彼は進藤光君。来月から君たちの仲間になる子だよ。
彼の腕ならば本来ならばブロ試験そのままいってもいいとはおもうんだけどねぇ。
彼、独学で碁を勉強しているらしくて師匠もいず、しかも対面しての対局数も少ないらしくてね。
対面して得られるもの、というのもはたしかにあるからねぇ」
ヒカルに一手を即答されてしばし呆然としていた彼らの元に、さきほどヒカルの試験を受け持っていた人物が声をかけてくる。
「いやまってください。篠田先生。…プロ試験にそのままむかってもおかしくない?それって?」
「何なら、進藤君からもらった棋譜をみてみるかい?あの子はおもしろい子だよ」
本来ならば他人にみせるものでもないような気もするが。
彼らには知っておいてもらったほうがいいような気がする。
なめてかかればまちがいなくつぶされる。
いや、それとも互いに高めあってゆくかのどちらか。
おそらく後者になりえるだろう。
そのための布石、としてさきほどの三めん打ちの棋譜を彼らにみせる篠田。
「「さ…三めん打ちぃぃ!?しかも初めてで!?」」
しばし、篠田から説明をうけ、驚愕の声をもらす院生仲間の姿がその場において見受けられてゆく……
ジィ~ジィ~ジィ~……
蝉の声が耳につく。
「食事の時間ですのでうちかけにしてください」
ふぅ。
最近、気になることがある。
saiが頻繁に昼間にも出没している。
ああもう!
俺はプロ試験の予選の最中、だというのに何かんがえてるんだよっ!
だがしかし、ネット上の盤面を録画しておく、というわけにはいかない。
ネット上には棋譜も残らない。
saiがネットに出没してからもうすぐ一年となる。
だが、saiはさらに高みにのぼっているのがみてとれる。
対戦者の数が膨大になりすぎており、いつも観戦するしかできないが。
みているだけで何だか自分もまた強くなってくるような気がするから不思議である。
しかし、sai……
いったい何やってるやつなんだ?
以前は夜のみ。
しかも今では昼間っから。
平日にすらネットに入っている。
「七月…八月…まさか…」
夏休み。
という言葉が頭に浮かぶ。
だがしかし、社会人でそんなに長く休みがとれるだろうか?
気になるのは最近のsaiの打ち方。
すべての対局がすべて指導碁となっている。
それゆえにさらにsaiに指導してもらいたい人々が対局を申し込みしており、すでに混雑状態になりはてている。
それでも平日の昼間にもいる、というのでその時間帯はだいぶネット上もすいている。
「どうしたの?和谷くん?何かんがえてんの?前半にポカでもやっちゃったの?」
「やってねえよ」
二度めのプロ試験である。
それゆえに多少は肝もすわったとおもう。
見渡せば、やはり去年と同様、それぞれの試験をうける人たちは落ち付きなくそわそわしている。
そんな中、場違いにも一人おちついて本をみている子供が一人。
「…って、塔矢明!?」
「…え?あ、はい?」
ざわっ。
その人物には見覚えがあり、おもわず大声をあげてしまう。
「あいつは……」
「塔矢名人の息子が今年うけるのはしってたけど……」
「あんまり顔をしられてないんだよな」
「そういえば、あいつだよ」
ざわざわと試験会場にいる人々からそんなつぶやきが聞こえてくる。
「知らなかったの?僕、しってたよ?」
「何で?」
「だって僕の今日の相手だもん。もう全然かなわないよ」
「あのなぁ!プロになろうってやつがそんな泣きごとをいってどうする!?フク!」
泣きごとをいっている少年の首をはがいじめしてそんなことをいっているもう一人の少年。
「お二人は院生ですか?」
そんな二人にと問いかけているアキラ。
「うん。そうだよ。僕は今年初めての受験なんだ。和谷君はね。今年二回目の受験なんだ、ね?」
「ね。じゃねえ!」
「あ~あ。僕は今日はまける。初戦、黒星かぁ」
「だから!まだ対局おわってないだろ!?逆転勝ちしろよっ!こんなやつなんかっ!」
和谷からすればフクの…福井雄太の泣きごとはわかっていても認めたくない。
それゆえに口調もつよく言い放つ。
「和谷君、かりかりしすぎ。何かあったの?」
「…何でもない。ネット碁がみれないからちょっといらいらしてるだけ」
「ネット?そういえば和谷君、最近はまってるよね。ネット碁」
「ネット?…ああ。そういえば、君は去年のあのときの」
ネット、といわれてようやくどこかでみたことがあるのに思い当たり、ふと声をだすアキラであるが。
「ちっ。お前には関係ねえよ」
「…そういえば、彼も最近ネットでみないな……」
「「?」」
彼のことが気にかからないわけではない。
だから一応、彼がいるかどうかくらいは確認している。
いなければすぐにネットを落ちているのだが。
彼がおいかけてくるかどうかはカケ。
だがしかし、確信がもてる。
彼はきっと勝ち逃げした自分をおいかけてくるであろう、ということを。
だから…あれから彼の家にいって碁をうつようなことはしていない。
彼から自分でプロの世界にはいってくるように仕向けるために。
「院生…か。彼はおいかけてくるだろうか……進藤……」
ぴくっ。
今、こいつ、シンドウ?
シンドウとかいわなかったか?
ぽそっとつぶやいたアキラのセリフはどうやら周りには聞こえていないらしい。
シンドウ…進藤、といえば先日、院生試験を受かった人物。
来月から院生になる進藤光がふとおもいうかぶ和谷義高。
プロになるのに確実なのは院生になること。
ならば彼のように何もわからないままでも試験をうけることは可能。
「今、お前…」
「はい。時間です。そろそろ休憩をおわってください」
塔矢明にその真意を問いただすよりも先に休憩時間が終わってしまう。
塔矢明がいっていたのはあの子供のことなのだろうか。
そんな疑問が頭をよぎる。
ええいっ!
とにかく今はプロ試験のことだけかんがえてればいいんだっ!!
そんな疑念を払いつつも、ただひたすらに対局に打ち込む和谷の姿がしばし見受けられてゆく。
「なるほど。こうきたら…こう、か」
『ヒカル。だいぶなれました?やり方をではおさらいしてみましょうか?』
おそらく今のヒカルの実力は他の子どもと比べて力の差がありすぎるであろう。
だがしかし、ヒカルはおそらくそのことに気づいていない。
だからこその佐偽の提案。
「しかし。わざと指導碁にして勝つ…かぁ。たしかに、読みとか目算とかを考えないと無理だけど」
佐偽のやつ、けっこう難しいこといってくるんだよなぁ。
日々、佐偽は最近ネットでは常に指導碁ばかりをうっている。
それはヒカルにこのようにする、とお手本をみせているがゆえ。
それでも確実に全戦全勝。
ヒカルもまたlaitoの名前で入り、佐偽に出されたあるいみ課題ともいえる指導碁を練習している最中。
来月からは院生生活が開始される。
一応、院生になっても囲碁部にはそのまま在籍しているものの、大会などには二度とでられない。
すでに季節は夏休み。
「しかし。夏休みがおわったら佐偽と出会って一年たつんだよなぁ~。
何だかずっとお前といたような気がするよ。そうだ。佐偽。今度の土曜日。花火大会あるからいこうぜ!」
『ええ!?ほんとうですか!?いきたいですっ!』
すでに宿題はすべて完了させた。
英語の宿題に関してはかなり手こずったが……
とりあえず、ネックとなるであろう読書感想文や自由研究。
それらは大いに佐偽の存在を活用させてもらったのも事実。
まあ、中学生なのに平安時代と江戸時代、現代における時代の移り変わり云々。
というようなテーマで自由研究をまとめる子供も珍しいが。
佐偽によりそのときどきの様子が手にとるようにわかるがゆえに出来る技。
塔矢とは連絡を最近あまりとってはないが、母親の明子とは話が別。
聞けば、佐偽が強く心に思い浮かべることにより、おそらくヒカルにもその光景は伝わるはず。
そういった知識もまた彼女から教わった。
実際にためしてみればこれがまた正確に心の中にその風景が浮かんでくる。
佐偽もそんなことができるなど知らなかったらしく驚いていたのは記憶に新しい。
「その前に。佐偽、ここをこうきたら、こう、でいいのかな?」
『ええ。ですがここをこうきられたら、ヒカル、あなたはどうきますか?』
指導碁を完全なものにするのには時間がかかるかもしれない。
普通ならば。
だが、ヒカルは佐偽が教えたことを乾いた木々が水を吸い込むごとくに成長していっている。
来月から始まる院生の生活。
それがどういったものかはわからない。
だがしかし、すくなくとも今いる子供たちの未来の芽をつむことだけは絶対にしたくない。
だからこその佐偽の提案。
だが…ヒカルはよもやそんなことを知る由もない……
「あれ?確か君は進藤君、だったよね?」
「え?あ。はい」
彼がくるのは確か来月からのはず。
それなのにどうして彼がここにいるのだろうか?
「どうかしたのかい?」
ふとそこにいる彼の姿に気づいて声をかけてくる試験のときに手合せした人物。
「え~と。最近の棋譜とかってここでみれるんですか?」
ネットで検索してみたところ、日本棋院でそんなものがみれるとか何とかかかれていた。
それゆえにまだ院生生活ははじまっていないがきてみたのだが。
「なるほど。棋譜、ねぇ。うん。みれるよ。そうだ。君はどこかの大会とかにもでたことないんだったっけね?」
「え?あ。はい。出たのは中学の大会、のみです」
小学生のときと中学にはいってからの計に二回ほど。
ふと何か思いついたようにいってくるそんな篠田のセリフにきょとん、と首をかしげつつも返答するヒカル。
佐偽が最近の棋譜をみることによってヒカルも勉強になるからとかうるさくいってきたからきてみたけどなぁ。
そんなことをヒカルはおもっているのだが、当然それは篠田が知る由もない。
「そういえば、君には私の名前はいってなかったね。私は院生の師範をしている篠田、というんだ。
一応七段、だよ。みんなは篠田先生、とよぶけどね」
「じゃあ、俺もそうよびます。あの、棋譜とかって誰でもみれるんですか?」
「誰でも、というわけではないけど。院生ならばみれるよ?
まあ、君は来月から院生がきまってるし。きなさい。口利きしてあげるよ」
「やりいっ!ありがとうございます!」
棋譜をみるためだけに塔矢の家にいくのも気がひける。
だからこそここ、日本棋院にきてみたのだから。
「そういえば、進藤君。来週、何か予定はあるのかい?」
「予定?いえ、まったく」
ふるふるふる。
相手の質問におもいっきり首を横にとふる。
「いい機会だから、君もみにきたらいいよ。来週、ここで全世界アマチュア囲碁カップが開催されるんだよ。
当然、見学も自由。きてみないかい?」
「囲碁カップ?あ、そういや前に塔矢から誘われたけど。それとおなじやつかな?」
「・・・・・・・・・・・・・・それはわからないけどね」
とりあえず、彼が試験をうけたのは緒方の推薦。
それゆえに彼にはヒカルが合格したことを伝えたことには伝えた。
そのときに、聞かされたのは、何でも目の前の子どもはあの塔矢明がライバル、と唯一認めている子供らしい。
ということ。
信じられないが、だがしかし、どこか納得できてしまうのも事実である。
だからこそ、かかわらずにはいられない。
彼の本当の実力をみてみたい、という思いもあるがそれ以上に若い世代が伸びてゆくのをみるのはとても楽しい。
『ヒカル!今度こそいきたいです、いきたい、いきたい、いきたぁぁぁいっ!!』
だああっ!
わかった!
わかったから耳元でさわぐなっ!わめくなっ!
「あ、何か面白そうなのでいってみたいです。でもいいんですか?」
「かまわないよ。ああ、時間と日付はね……」
相手は世界の強豪たち。
もしも彼と打つ機会をもてれば、彼の実力のほどがわかる、というもの。
さらにいえば彼に対局をこなす原動力ともなりあるいみ一石二鳥。
何しろ目の前の子どもは碁会所で大人にもまれたことも一度もない、というのだから……
「た~まや~!!!」
ドッン!
お腹に響く音が何だか心地よい。
『ヒカル、ひかる!あれは何というんですか?!ねえ!?』
横では眼をきらきらさせながらも、空を見上げて聞いてきている佐偽の姿。
隅田川の花火大会。
毎年、七月の最終土曜日に開始される。
かなり大規模でそれなりに観客の数も膨大。
佐偽からすれば色とりどりの花火はとても新鮮であり珍しい。
江戸時代にはよくて二色の花火くらいしか目にしたことがない。
それでも当時は画期的、といわれたほどに。
だが、今の時代は色とりどり。
しかも形も自由自在。
それゆえに目を奪われずにはいられない。
『大空に咲く、火の花、ですか。花火、とはよくつけたものですよね~』
呆けたように空を食い入るようにみている佐偽の姿におもわず苦笑してしまう。
友達と花火を見に行く、と両親にはいってある。
とりあえず待ち合わせは現地で。
嘘ではないが事実でもない。
それゆえに両親とともにきたにはきたが、別行動をしているヒカル。
これだけ人が多ければ、いくらふつうに話そうが気にとめるものは一人もいない。
大きな声をだしてもざわめきと、花火の音でかき消される。
「そういや、お前。昔も虎次郎とこの花火大会にきたことがあるんだって?」
『ええ。でもそのときにはここまで大規模ではなかったですよ?』
口をあんぐりあけながらもつぶやくようにいっている佐偽。
しかし、こいつほど自然が似合うやつもいないよなぁ。
つくづくそんな佐偽の姿をみておもわずおもってしまうヒカル。
花火にいくにあたり、屋台の品物などを佐偽に食べさせる方法はないか。
そう明子の携帯に電話してみて問い合わせてみた。
多少の能力をつかってもよければそれは可能、とのこと。
何でも食べ物に霊力をたたきこみ、その物質が本来もつ霊体もどきを分離させることが可能らしい。
それをひきはがすことにより、霊体である佐偽もたべることが可能となるらしい。
もっとも、あまり頻繁にやるとかなり疲労が体にたまり脱力してしまい動けなくなってしまう可能性もあるらしいが。
「あ。次は仕掛け花火がはじまるぜ!」
『わ~い。次はどんな花火がみられるのでしょう!?』
大空を彩る大輪の花。
江戸時代においても、今の時代においても人々はそれにひきつけられる。
職人たちの技術の結晶。
だが、かつてはこんなに連続して打ちあげる…などといった技術は存在していなかった。
平安時代などはそんなものはまったくもって存在しなかった。
まあ、似たようなものならばあるにはあったが……
くすっ。
まるで小さな子どものようにはしゃぐ佐偽を横にみつつ、やっぱり連れてきてよかったな。
つくづくそう思う。
この花火大会が江戸時代のころから続いていることはヒカルでもしっている。
だから、佐偽の気分転換をかねてつれてきた。
今の時代、佐偽を知る者は誰もいない。
当然といえば当然なのだが。
平安の時代から一人でずっといた佐偽の気持ちはヒカルには詳しくはわからない。
だけども、一人ぽっちのさみしさはヒカルもよく知っている。
幼きころ、自分が視えるものがあたりまえ、とおもって人にいい、とおまきにされていた事実があればなおさらに。
【次は~、コカコーラによる提供の仕掛け花火と打ち上げを行います】
会場に流れる案内。
それと同時に、バチバチと用意されていた仕掛け花火にと点火され、
仕掛け花火のナイアガラが何重にもなり火の粉がまるで滝のように流れ落ちる。
花火大会の仕掛け花火の定番、ともいえる仕掛け花火。
だが、それすらも佐偽からしてみればはじめてみるもので、感嘆せざるをえない。
ヒカル。
連れてきてくれてありがとうございます。
心の中で感謝するものの、どうしても視線は空に咲く大輪の花のほうに目がいってしまう。
「これがおわったら、屋台ですこしあそぼうぜ?」
『はいっ!』
出ている屋台もみたことないものばかり。
はるか昔にしんだ身とはいえ、このような感動を得られることに神に感謝の念をいだきつつ、
ヒカルの言葉におもいっきりうなづく佐偽の姿があったりするのだが。
だがしかし、周囲の誰もやはり佐偽の存在に気づくものは誰ひとりとしていないのもまた事実……
-第26話へー
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あとがきもどき:
薫:とりあえず、最後にちらっと花火大会だしましたv
隅田川の花火大会は、たしかに現実に七月の最終土曜日が開催日です。
サイト検索したのでまちがいはありませんよv(こらこら
さて。次回でアマチュア囲碁カップ~♪それから院生生活開始vですv
ではでは~♪
ちなみに、例のごとく、以前の小話をばv
「お久しぶりです。いえ、始めまして。というべきでしょうね。倉田どの?でしたよね?」
以前、彼とあったときはヒカルの側にて彼からは認識されていなかった。
「あら?佐偽さん?お知り合いなの?」
「え?いえ、あの、その。ヒカルからきいていたのですよ。かわったひとがいる~と。
あと字がものすごく汚い大人がいる、と」
聞いていた、というかあのときもあの場に佐偽はいた。
肉体をもたぬ身で。
「あ…あの?進藤さんのお母さん?こちらの人は?」
進藤家にヒカルを訪ねてきたのはさきほど。
しかし、何でもヒカルはただいまお風呂中らしく、かわりにでてきたのは目の前の美人さん。
おもわずぼ~と一瞬見惚れてしまうほどの容姿の持ち主。
歳のころは二十歳前後かその程度、くらいであろう。
「え?ああ。娘がいってないのかしら?」
「そういえば。ヒカルはいってないかもしれませんね。改めまして。私は藤原佐偽、と申します」
「え?あ、こちらこそ」
丁寧にまるでそう、古代の都での儀礼のような挨拶をされて思わず倉田もまた丁寧なお辞儀をしてしまう。
フジワラノサイ?
そんな名前はきいたことがない。
ないが、だがしかし。
……サイ…sai?
以前、塔矢行洋とネットで碁をうち、ネットの上で話題になった人物とおなじ名前。
この偶然はどういうことなのか。
「佐偽さんはずっと病院生活がながかったらしいのですよ。うちの娘に碁をおしえてくださったのも佐偽さんらしくて。
ようやく手術が成功して退院したはいいものの、幼いころから病院生活しかしらない彼なので、
うちの娘の懇願もありしばらくうちにいてもらってるんですよ」
そんな会話をしていると。
パタパタパタ。
何やら走ってくる足音が。
それと同時。
「って、倉田さん!?どうしたんですか!?って佐偽まで何ででてきてるの!?」
「なぜ。ってヒカルがお風呂中だからかわりに挨拶を、とおもいまして。当然でしょ?」
「む~……」
「ヒカル。そうむくれないで。きっとこの倉田どのはヒカルを心配してきてくれたんですよ?
聞けば、ヒカル?最近研究会とかにもでずにすぐに家にもどってるそうじゃないですか?」
「だって!」
ヒカルからすれば自分がいない間に佐偽がまた消えているのではないか?
という不安がどうしてもぬぐえない。
「まあまあ。佐偽さん。娘も心配なんですよ。いくら手術が成功したとはいえ。いつ何どきまた発作を起こして、
今度こそ命にかかわるようなことになるかもしれないのでしょう?」
何でも塔矢行洋とのネット碁ののちに発作を起こしてしまい、その後彼は死んだ、と聞かされたらしい娘。
そのときの思いを考えれば母親としてもとても胸がいたい。
「しかし。やはり役目は役目として、やらなければならないこともありますし……」
佐偽のいいたいことはもっとも。
ヒカルは今年もまた北斗杯の代表メンバーにと選ばれている。
「あら。でしたら佐偽さんもご一緒したらいかがですか?少しは外で体を動かしたほうが健康にもいいですし」
「うん。佐偽がいくなら私もきちんといくけど。でも、佐偽、動いて大丈夫?またきえたりしない?」
え~と。
「あの~?」
何やら自分はおいてけぼりになっていないだろうか?
「あ、あら。すいませんね。倉田さん、でしたわよね。すいませんねぇ。娘はかなり今心配症になってまして」
ほほほほ。
そんな彼にむかって申し訳なさそうに笑うものの、その目はどこか笑っている。
「進藤?…この人に碁をおしえてもらった…って、おまえ、師匠、いなかったんじゃないのか?」
「私はプロでも何でもないですからね。それにヒカルに私が頼んだのですよ。私のことは内緒にしてほしい。
と。私はいついなくなってしまうかもわからないような状況でしたから」
にこやかにいってくるその人物の笑みにおもわずやはり見惚れてしまう。
「佐偽…って、もしかしてあの塔矢行洋とネット碁をうったとかいう、あのsai、なんですか?」
脳裏に浮かぶ疑問の解消がともかく先。
「倉田さん!いくら倉田さんでもまた佐偽に塔矢名人と打たせてみたいとかいわないでよっ!
佐偽がまたきえたらどうするのっ!」
「ヒカル。ですから~。前もいいましたけど、もう大丈夫ですって。前のようなことには……」
「あのときだって、佐偽、大丈夫とかいっててけっきょくいなくなったじゃないっ!」
何やら痴話げんか?ともとれる言い合い。
「私としては、こうしてわが身がきちんと動けることもありますし。あのものとはきちんと対面して対局してみたいのですけどね~」
「私が許可するまでぜったぃぃぃぃぃぃぃぃぃにだめっ!」
「佐偽さん。娘の気持ちは尊重してやってくださいね?それほどあなたがいなくなった、
ときかされたときの娘の落ち込みようはなかったんですから」
「うっ。それはわかってますよ。母君」
何となくだが話がつかめてきた。
目の前の人物はずっと入院していて、おそらくあの対局の中だちをしたのが目の前にいる進藤光。
そして、その対局をきっかけにして彼の持病が悪化してしまいどうやら想像するに昏睡状態にまでなってしまったらしい。
なるほど。
あの一時、進藤がずっと手合いにでてこなかったのはそういう意味か。
どこか、すとん、となっとくするものがある。
あるが…目の前の人物があの噂のsaiなのか、という疑問はやはり残る。
「まあ、せっかくきてくれたのですし。おあがりになりますか?娘に話しがあるのでしょう?」
「え。ええ。今年の北斗杯のことで」
「ヒカル。お仕事はお仕事ですよ?」
「う~…せっかく佐偽との貴重な碁の時間が~……」
「ヒカル!」
「…はい」
何やら小さな子供をたしなめるような、それでいてそれに素直に従う進藤をみて逆に驚いてしまう。
彼女はいつも、自分の意見をまげることなくつきすすんでいる。
そんな彼女が素直に従う人間がいるなど夢にもおもったことはなかった。
「倉田さん。とりあえずどうぞ。でもあまり長いしないでくださいね?
それでなくても母さんから佐偽と碁をうつ時間は限定されてるんだしっ!」
「それは、あなたたちは、ほっといたら真夜中すぎて朝方までやってるからよ。
あなたにしろ、佐偽さんにしろ、碁のことになったら周りがまったくみえなくなるようだからねぇ」
それゆえに、美津子が時間限定にしているこの現状。
「…え~と……」
最近、異様に進藤の伸びが著しく感じたのってもしかしたこのせい?
そんなことをおもいつつ、しばしそんなやり取りをみつつも玄関先で呆然とつったっている倉田厚の姿が、
しばらくの間、みうけられてゆくのであった……
↑
ちなみに、設定的には、光の家を訪れた倉田厚が佐偽と出会って内情を聞かされる。
という設定ですv
ヒカル、いまだにかなり心配症のままですvあしからず(笑
ではでは、またいつかv
2008年8月10日(日)某日
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