まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
さて!ようやく本編ともいえる中学編だぁ!(こらまてや
というわけで、一気に月日の経過ですv
ではでは、いくのですv
ようやく問題の中学の大会にいけるぅ(しみじみ
#####################################
月日はめぐる。
それは今も昔もかわりはない。
年月は経過しても私は今もここにいる。
神は…わたしのわがままをいつまでおゆるしになるのでしょうか?
願わくば…ヒカルにはさみしい思いをさせたくない。
何よりも彼の行く末をみまもってみたい。
虎次郎のときのように悲しい別れは…したくないから……
星の道しるべ ~葉瀬中学囲碁部~
「囲碁部に入る?それで大会にでる、とはどういう意味だ?明?」
囲碁部に入ることに関しては、校長からもそのほうが部員の励みになるであろう。
そう連絡があったので口出しするつもりはないが、五月にある大会にでたい、とはどういうことか。
「お父さん。お父さんもしってるでしょうけど。進藤光がこの五月の大会に部員として参加するそうです。
彼の実力はおそらくもうプロでも通用するはずです。でも当人がその自覚がないのです。
僕はこのまま彼の才能を埋もれさせたくありません。
彼の性格からして、僕が先にすすめば必ず負けん気の強さから彼はおってきます。
ですから、大会にでるのは僕のけじめでもあり、決意の表れです。
今年のプロ試験、うけようとおもっています」
たしかに、ときどきアキラにつられては塔矢の家にきてプロ棋士だと知らないままにヒカルはときどき打っている。
その実力は普通の子どもと比べればおそらく歴然としているのは明白。
なかなか、子供でもブロになれるのだ、と言い出す機会がもてないのも事実。
どうもヒカルと碁をうっていて検討をはじめてしまえばいつものごとくに言い合いになってしまう。
それでも、はっとしたことをいってくる彼の才能は認めざるをえないこと。
そのことは、研究会を行う最中に彼が口出ししたいくつかのことで塔矢の父親、塔矢行洋もわかっているつもりではある。
「確かに。あの子が中学の大会に参加する、となれば太刀打ちできるはお前くらいしかいないだろうな」
時間が限られているのでまだまともに彼と対局したことはないが。
それでも門下生たちと打っている様子をみれば一目瞭然。
何しろ石をおかせでもしたらまずもうプロ棋士たる彼らに勝ち目はほとんどない。
それは息子である目の前のアキラにもいえること。
彼と出会ってからめきめきとアキラは力をつけていっている。
まるで、そう互いに磨かれて高みに導かれるように。
「…そうか。では私は何もいうまい」
「はい。すいません。お父さん。今の僕には周りを思いやる余裕はなくて……」
「いや。お前がでるのはおそらく正解、だろう。彼がでるならば他の子の芽をつむことにもなりかねん」
圧倒的な力の差、というものはどうにもならないものがある。
ましてそのことに当人が無自覚ならばなおさらに……
「進藤君。この局面、どうしたの?」
「え、え~と。友達に手伝ってもらった」
嘘ではない。
嘘では。
「デジカメの写真つかったポスターか~。でもこれきれいよね」
素人がみてもきれいな石の並びがそこにある。
四月。
葉瀬小学を卒業し、そのまま中学にと進学しているヒカルたち。
「というか!お前に無理やりつれられてきたけど、部員が三人って何だよ!?三人って!?」
「あら?三谷君。女の子もいるんだから、五人だよ?」
けっきょくのところ小学では中学にはいって囲碁部に誘えるような子供はみつからなかった。
見つかったのは興味をもった女子のみ。
「今は、バレー部の子にも声かけてはいるんだけどね。時間が空いているときなら参加してみたい。っていってる子がいるの」
囲碁部の勧誘ポスター。
それを作るために佐偽に手伝ってもらいこの棋譜を作り上げたのは昨日のこと。
「でも、これヒカルらしいよねぇ。君も碁盤の上で宇宙を創造してみよう!な~んてさ」
誘い文句におもわず苦笑してしまうアカリであるが。
「だって。事実そんなことできるし」
「というか、進藤君。この数か月で格段に腕…またあげてるよね……」
何だかとても自分がむなしくなってしまうほどに。
「そう?でも、まだ俺緒方さんとかになかなか勝てないし……」
「緒方?ああ、何かものすっごくヤさんみたいにみえるあの男の人?」
一度みたことがあるがゆえにアカリが首をかしげてといかける。
『ヤ?ヒカル?ヤとはなにですか?ヤ、とは?』
きょとんとした声で佐偽がそんなことをきいてくるが。
そんなのは知らなくていい!
そんな佐偽におもわず心の中で突っ込みをいれる。
「ときどき塔矢の家にいるんだけけどさ~。あ、でも芦原さんにはほとんど勝てるけど」
「え~と…進藤君、塔矢…って…もしかしてあの塔矢明?」
「うん」
「そ~いや、お前よくあの塔矢とつるんでるよなぁ。どちらかといえば」
「でもあいつといたら面白いよ?お母さんもとてもいい人だし」
え~と……
思わずこめかみを押さえてしまうのは仕方ないといえよう。
確かに彼の力量は以前みているので知っている。
それゆえにあの塔矢明が目をつけてくるのもわかるような気もしなくもないが……
問題はそこではない。
芦原、しかも緒方。
それぞれたしかプロ棋士の名前のはずである。
どうやら進藤君…そのことにまったく気づいてないみたいだけど……
「でも、筒井さん。とりあえず男子はこれで三人そろってるんだから、次の大会にはでれるよね?」
筒井がそんなことを思っているなどとは夢にも思わず、一人何やらはしゃぐヒカル。
「ってまてこら!進藤!オレも定員にはいるのか!?」
「いったじゃん」
「あのなぁ!というかいつまでも数か月前の約束もちだすなっ!」
たしかに、負けたら中学で大会にでてもいい、といったことはあった。
あったが…すでに時効だとおもっていたがゆえにおもわず叫び返す三谷。
「まあ、春季の大会は五月、だからね。とりあえずは部員集め、かなぁ?」
「そういえば。結局筒井さん、部員、あれからあつまらなかったの?」
「残念ながら」
どうやら九月以降も部員があつまることはなく、いまだに一人っきりの囲碁部のままであるらしい。
「でも。君たちが入学してきて部員も増えたし。理科室を放課後、つかってもいい。といわれたしね。
それに、先生が使っていない碁盤とか使っていいっていってもってきてくれたし」
理科の顧問教師の祖父が碁にはまっており、それゆえに手にはいったのであるが。
「ねえねえ!五月なら私たちもでれるかな?バレー部のこもはいれば私たちも三人だし。
確か団体戦って三人から、なんだよね?」
「あ。筒井さん。俺、次でるの三将がいい。前はきちんとした出場じゃなかったからさ。今度こそ」
前は小学生なのに偽って参加した、という負い目がある。
だからこそ次はきちんとした部員として、三将として新たに参加してみたい。
アカリに続いてふと思い出したようにいってくるヒカルであるが。
「ってちょっとまて。普通実力準じゃないのか?実力でいえばたぶんこの中ではお前一番上だろうがっ!」
認めたくないが、いつのまにかユウキ自身よりもヒカルは実力をつけているのも事実。
「え~?俺は強くないよ?だって今だにかてないやついるし」
未だに佐偽には負けっぱなしだしなぁ。
『でも確かに。ヒカルはずいぶんと実力をつけてきてますよ?』
「…慰めはいいよ……」
佐偽の言葉におもいっきり溜息をつきながらぼそりとつぶやく。
「まあ、でも進藤君の気持ちもわかるし。なら三谷君が大将で僕が副将で申し込むね」
「ってだから!オレはまだ参加する、とはいってねぇ~!!」
「って!!ああ!?」
ふと見れば、せっかく張ったばかりの一つのポスターがはがされているのに気づいておもわず声をあげるヒカル。
「何だ。お前らのだったのか?何か綺麗だったからきちんとはがしてやったぜ。ありがたくおもえ」
何やら高飛車にそんなことをいってくる別の生徒。
「って何だよ?!それ!ひとの部のポスターをっ!」
そんな生徒達に対してくってかかるヒカルであるが、
「囲碁部なんてどうせ一人もきやしないんだ。掲示板の場所をとるなよ」
いいつつも、はがした囲碁部のポスターの場所にとバスケ部の勧誘ポスターを張ってくる。
「バスケか。うちのバスケは強いからなぁ。ま、力があるやつが権利をもぎとる。当然のことだな。
その点、将棋はいいぜ~?おい。進藤、それに確か三谷とかいったっけな?おまえら。
囲碁がいやになったらいつでも将棋にこいよ。いつでもいれてやるぜ。じゃあなっ!」
ひょっこりとそんな背後からいきなり声をかけてくる加賀の姿。
「くっ…加賀!おまえっ!」
そんな加賀に対して思わず言い返そうとするヒカルであるが、
「ま、そういうことだ。囲碁部も地道にがんばってくれたまえ。じゃぁな」
いいつつも、バスケの勧誘ポスターを張った生徒もまたすたすたと歩いてゆく。
「まあまあ。進藤君。でもさ。人数が集まったから、って理科のタマコ先生が使ってない碁盤と碁石をくれたんだよ。
それにさ。放課後、あいていれば理科室をつかってもいいっていってくれたし」
「ほんと!?やりぃ!じゃぁ、ちゃんとしたもう囲碁部じゃん!」
「どこがだ!というかそんな部にお前はさそったのか!?」
「負けたのは三谷!」
「ぐっ」
そういわれれば立つ瀬がない。
人数がいない…とは何となくだが聞いてはいたが、まさか部員が自分たち以外にはたった一人しかいなかったとは。
それならば部というよりは同好会のようなものではないか。
「でも、何か面白そうだよな。ゼロからのスタートなんてさ!」
「確かに。私もだから参加しようとおもったんだし!」
「…も、勝手にしろっ!」
何だか会話についていけない。
それゆえにそんなヒカルやアカリ、筒井の姿をみて溜息をつかずにはいられない三谷。
こいつら…現実わかってるのか?
唯一、この中で現状を見据えているのはおそらく彼のみ…であろう……
がちゃ。
「ありがとう。市川さん」
「どういたしまして。明君のお願いならいつでもいいわよ。どうせ通り道だったし」
葉瀬中の門の前にて車を降りる。
周囲には桜の花びらが風に吹かれてまっている。
「でも、葉瀬中に何のよう?あ、わかった。進藤君ね?」
くす。
「市川さんは何でもお見通しですね。帰りは自分でかえりますから、今日はありがとうございました」
「わかったわ。まったね~」
プロロロ……
門の前までたまたま出会った市川にと送ってもらった。
とりあえずごたごたしていた手続きはひとまず完了した。
だからこそ立ち寄った。
「さて…と」
とにかく進藤がいるであろう囲碁部の部室を探さないと……
そんなことをおもいつつ、きょろきょろと周囲を見渡す。
葉瀬中の敷地だというのに海王中の制服をきている彼、アキラの姿はかなり目立つ。
「おい。あれ。海王の制服じゃん!?」
「海王よ。あれ」
「え~?何でウチなんかに?」
はっきりいって場違いも甚だしい。
しかもみ目麗しい男の子ならばなおさらに。
「あ。あの、すいません」
とりあえず何やら立ち止まっている女子生徒にと声をかける。
「え?わ、わっ!」
声かけられちゃった!
舞い上がるそんな女の子たちの思いを知る由もなく、
「すいません。一年の進藤光、という子をさがしているんですけど。囲碁部に入った、とききました。
囲碁部の部室がどこか御存じありませんか?」
にこやかに丁寧に立ち止まっている女子生徒たちにとといかけるアキラであるが。
「ご存じないですか?だって。きゃ~」
何やらミーハーモードに入り、一人がきゃいきゃいとはしゃいでいるのがきになるが。
「囲碁部?うちにそんな部あったっけ?」
はっきりいって聞いたことがない。
アキラの問いかけにきょとん、と首をかしげるもう一人の女子生徒。
「囲碁部なんて聞いたことないよね?」
何やらきゃいきゃいとはしゃいでいるもう一人の少女にと声をかけるものの、
「あ。そういえば、私、掲示板でみたような…気がする」
どうやら彼女たちはまったく知らないらしい。
「…どうも。他の人にきいてみます。忙しい中ありがとうございました」
それゆえに別の人に聞こうとぺこりと頭を下げてその場をあとにする。
アキラが立ち去った後では、
「ねえねえ!今の子!ものすっごくかわいい子よねっ!」
「でもさ~。囲碁、なんて。子供がやるの?」
「さあ?」
囲碁の知名度、というものははっきりいってその程度。
おそらくこのセリフを明が聞けば烈火のごとくに怒るだろう、とは彼女たちは夢にも思っていない……
「…いったいこれは…どういうこと?」
いろいろな人にきけども誰も知らない。
囲碁部はしらないが将棋部ならある、という返答。
それゆえに戸惑いを隠しきれない。
「あ。すいません」
「はい?…あら、海王中の生徒さんね。うちに何かようかしら?」
ふと車を止めて出てきた教師らしき人物の姿を見つけて声をかける。
そんなアキラの制服に目をとめて優しくといかける車からでてきた一人の女性。
「こちらの囲碁部を探しているのですけど。なかなかみつからなくて。本当にあるのでしょうか?」
彼ほどの人物が所属する、という部なのだから海王のようにきちんとしている、そうアキラ的にはおもっていた。
だがしかし、現実は誰にきいても知らない、という。
だからこそ多少不安になってしまう。
「囲碁部?ああ、あいつらのことね。今、理科室でうってるとおもうよ?
うちの父が使っていた足のとれた碁盤と少し欠けた碁石をつかってね」
たしか去年、小学生の子を巻き込んで噂の海王の囲碁部に勝った、というのは噂で聞いている。
おそらくその関係できたのかな?
そんなことをおもいつつもアキラにとウィンクひとつして説明しているその女性。
「は?り…理科室?」
一瞬、何をいわれたのかわからずにおもわず目が点となる。
部室じゃなくて、理科室?
考えれば考えるほどわけがわからない。
「ここをぐるっと回ったら理科室の窓がみえるから。外からでものぞけるわよ?
あ、もし入るのならば右に入口があるからそこからはいれるわ」
「ど、どうもありがとうございました」
唖然とするものの、とにかくお礼をいい、言われた方向に歩きだす。
いったい…どういうことなんだろう?
そんな疑問を抱きつつ。
「進藤君。どうも寄せが苦手みたいだよねぇ」
「むうっ。筒井さんが寄せと目算がすごすぎるんだよっ!」
そもそも、佐偽とうつときにははっきりいって目算までは届くことはない。
ネットにしても然り。
ネット碁を自身がうつときには寄せまではたしかにいくことはいくが……
『だから。ヒカル。置き石にしよう、といつもいってるじゃないですか』
「…置き石は何か腹たつんだよなぁ~……」
佐偽の言葉におもわずぽそっと本音がもれる。
「進藤君?」
「あ。ううん。こっちの話」
「でもすごいよ。進藤君。去年からいままで半年しかないのに、普通にうったら中押しでまけちゃうもん」
ことことと石を打ちながらも素直な感想を述べる筒井。
「へ~。ヒカルってそんなにつよいんだ?」
「まあ、進藤君はピンチのときにはものすごく強くなることがあるみたいだけどね」
『あ。それは私が打ってますから♪』
確かに。
俺はまだお前の足元にも遠くおよばねえよっ!
筒井の言葉ににこにこと返答している佐偽の姿を視て内心突っ込みをいれるヒカル。
佐偽の姿はやはり誰にも視えることはないので、ヒカル一人が騒いだら奇異にうつるがゆえに気をつけてはいる。
「でもヒカルがここまで碁をつつげるのなんて以外~。おこずかいももう復活してるのに」
「そういや、お前、おこずかいが止められたから、って碁をはじめたんだっけ?」
筒井とヒカルが打つ様子を傍目でみながらもアカリのセリフにふと口を挟んでくるユウキ。
「え?あ。うん」
本当はテストの点が主な理由もあったけど。
そのことは口にはださないでおく。
碁石をもったのはこの九月がはじめて、というのだからこの成長ぶりには驚愕せざるを得ない。
三谷ですら亡き祖父から小さいころから碁を教わっていた、というのに…である。
と。
「進藤!」
「え?」
何か聞きなれた声がしたような気がした。
それゆえに窓からのぞけば、探していた人物の姿が目にとまる。
それゆえに窓にかけより思わず声をかけるアキラ。
何やらありえるはずのない声をきいて、おもわずふと窓のほうにと視線をむける。
「って、あれ?塔矢?お前、何でこんなところに?」
「あ。塔矢君。元気?」
すでに顔見知りになっているがゆえに、アカリもアキラの姿をみて何とも思わない。
が、だがしかし。
「…なあ。筒井さん?進藤って自覚ある、とおもうか?」
「ないね。絶対に」
きっぱり。
おそらく、彼がどれほどの有名人なのかも理解していないだろうとおもう。
あの塔矢明がわざわざ彼を訪ねて…進藤光を訪ねてきたのは間違いようはない。
だからこそ溜息をつかずにはいられない。
窓にかけよるヒカルとアカリとは対照的にぽそぽそとそんな会話をしている三谷と筒井の二人の姿。
「…ここって部室ないの?」
「うん。今のところ」
即答。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
そんな二人とは対照的に、
きょろきょろと理科室の中を見渡しておもわず素朴な疑問を投げかけるアキラに即答しているヒカル。
「それより、どうしたんだよ?塔矢?」
「君が囲碁部に入った。ときいたからね。それにいいたいこともあったし」
「?いいたいこと?」
「進藤。君…入学祝いというか合格祝いくれたのは嬉しいけどさ。あれは何!?あれは!?」
たしかに塔矢が海王に合格したときに、ヒカルは塔矢にお祝いの品を送ったことは送った。
正確にいえば本屋から直送してもらったのだが。
「え~?でもあれ、便利だよ?哲学書?」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
さらっというヒカルのセリフに思わず聞き耳立てていた三谷や筒井、そしてアカリが一瞬無言となりはてる。
「…ヒカルの感覚はずれてるからねぇ~……」
ぽそっとつぶやくアカリの台詞にその場にいる誰もが一瞬うなづかずにはいられない。
「お前、碁をやってるし。秀作の棋譜集とかもいいかな?とおもったけどおまえんち、いろいろあるじゃん?」
かといって、佐偽がいままでうっている棋譜を渡せば佐偽とは誰か、とつっこまれることは必然。
「…大学レベルのものを送ってよこさないでよ……」
アキラからすれば溜息もの、としかいいようがない。
まあ、友達からのプレゼント、というものはアキラからすれば初めてなのでうれしいことは嬉しいが。
「でもさ。お前、マンガとか知らない、とかいってたからさ。一緒に漫画もおくったじゃん?」
え~と。
進藤君の基準っていったい?
進藤の基準って……
何やらそんな会話をしているヒカルとアキラの会話をきいて、頭をかかえる筒井と三谷。
「あのデスノートとかいうのはみたよ。…まあ、それはそれとして。葉瀬中の囲碁部って有名じゃないの?
ここにくるまでいろいろな生徒にきいたけど誰もしらなかったけど?」
「…ヒカル。塔矢君に何の漫画おくってるわけ?」
おもわずそんなアキラのセリフにぽそっと横からつっこみをいれてくるアカリ。
かなり好き嫌いな分野にわかれるような気がしなくもない。
あの漫画は。
人殺しはともかくとして、
まあ世界から戦争や争いがなくなった…という点ではたしかに漫画の中の世界においては評価できるが。
だからこそ額に手をあてて溜息つかざるをえないアカリ。
「まだ囲碁部はこれからなんだ。お前もここにきてたら誘ったのになぁ~。
そういや、お前も囲碁部に入るとかいってなかったっけ?」
「…君が囲碁部に入って大会にでるとかいわなきゃ、僕もはいらないよ」
あ゛~……
「…海王の人たち、きっと大パニックだよね……」
「進藤にしろ、塔矢にしろ、回りを巻き込む天才、だな」
二人の会話をききつつぽそぽそとそんな会話をかわす筒井達。
「そうなんだ。俺、今度の大会では三将ででるんだ~。あ、でもお前はどうなの?
海王の囲碁部ってたくさん人いるからお前でれないのかな?まだ一年だし。
こっちは男子が三人だけだから俺でられるけどさ」
いや、ちょっとまって。
たったの三人?
そのセリフにさらに頭を抱えざるをえないアキラであるが。
「何で君ほどの人が三将?」
「ほら。塔矢も知ってるだろ?去年のあの大会。あれで俺三将ででたし。
こんどはきちんとした部員として仕切り直ししたいんだ。それに審判長さんとも約束したしね」
確かにそんな会話をしていたのは知っている。
いるが、彼は自分ほどの腕をもつものが大会にでる、ということを理解しているのだろうか?
いや、絶対にしていない。
それだけは確信がもてる。
だがしかし、やはり溜息をつかずにはいられない。
「それより。塔矢。せっかくきたんだからあがってく?あ、でもまだ碁盤一個しかないから打てないけど」
「…ひとつ、しかないの?」
「うん。理科のタマコ先生がこれゆずってくれたらしいんだけど。あ、おまえんち、のこってない?つかってないやつとか?」
こらこらこら。
何やらずうずうしいことをいきなり話題に上らせ始めたヒカルの言葉におもいっきり焦り、
「し、進藤君!他の学校の生徒にたよっちゃだめだよっ!
あ。えっと。塔矢明君…だったよね。改めまして。僕は筒井。筒井公宏。二年生だよ。よろしく」
「あ。こちらこそ。塔矢明、です」
あわてて窓際にかけより、ヒカルをたしなめ、外にいるアキラにと手を伸ばす。
「まあ、せっかくきたんだから、あがってく?」
ヒカルに誘われ、一瞬考え込む。
「…そう、だね。でも、いいのかな?部外者の僕がはいっても?」
「別に平気、だよね?ね、筒井さん」
「え?あ。うん」
一応、この囲碁部の部長、となっているがゆえにヒカルの問いかけにおもわずうなづく。
「じゃぁ、お言葉にあまえて」
いいつつも、回り道をしてはいろうとするアキラに対し、
「ここからはいればいいのに」
「…それはたぶん、君くらいのものだとおもうよ?」
苦笑しつつもずばっといいきるアキラ。
伊達に半年も付き合っているわけではない。
彼の性格は大体は把握した。
「ヒカル。いつもいうけど塔矢君をガサツの道にひっぱっちゃだめっ!」
「っててててっ!耳ひっぱるなよっ!アカリっ!てめぇっ!」
窓から入ればいい、と提案したヒカルに対してあきれつつもおもいっきり耳をひっぱるアカリの姿。
くすくすくす。
「君たち、ほんと仲、いいよね。じゃ、少しまっててね」
くすくすと笑いながらもひとまず先ほど教えられた方向にむかって歩きだす。
そんな彼の背後からは、
「アカリ!てめえ!何すんだよっ!」
「何よ!今のはヒカルがわるいでしょ!?」
「何だとぉ?!」
「お前ら、夫婦喧嘩はよそでしろよ……」
言い合いを始める二人に、あきれつつもぽそっとつぶやく三谷。
『ヒカルも塔矢のようにやはり礼儀はふまえたほうがいいんですけどねぇ。
あなた、いつも私が教えようとしてもすぐに碁以外ではねちゃいますし』
事実、佐偽が昔の礼儀作法を教えようとしても退屈ですぐにヒカルは眠気に負けてしまっている。
まあ、ヒカルとアカリの夫婦漫才にもちかい言い合いはいつものことなので佐偽はもう慣れっこではあるが。
「「誰が夫婦喧嘩た(だ)(よ)!!」」
ものの見事にぴったりと息があっているヒカルとアカリ。
どこをどうみても、じゃれあいの喧嘩、もしくは夫婦漫才に近いものがある。
そのことに気づいていないのはおそらく、当人たちだけ、であろう……
「塔矢!おまえなぁ!何でそこをこうくるんだよ!?普通はこうじゃないのか!?」
「そういう君こそ!ここは絶対に抑え、だろ!?」
『どっちも違いますけど……』
はぁ。
毎度のこととはいえども、どうしてこうこの二人は言い合いをはじめるのだろうか。
まあ、仲がいいのはいいことですけど。
そんなことを思いつつも、二人に対してぽそっとつぶやく佐偽。
「…三谷君。この局面でどこが悪いとか、わかった?」
「いや。全然。というかこれ、こまかすぎだってば……」
せっかくだから、というので三谷、そして筒井と一局打ったのち。
塔矢と一局うっているヒカル。
そしていつものこととはいいながら、何やら検討のさなかに言い合いが始まっていたりする。
半目でヒカルの勝ち。
というかあの塔矢明に勝てる、というのが不思議でたまらない筒井であるが。
それはこの数か月、佐偽による特訓が生きている証しでもある。
『ヒカル。塔矢の場合は、ここ。そしてヒカルの場合はここにしないといい手になはりません』
とん、とんっ。
さらっと手にもつ扇で局面の一つひとつを指し示す佐偽。
「…うっ……。ここと…ここ……」
「…あ。それには気づかなかったな。よく進藤、きづいたよね」
「いや、気づいたのは……」
ヒカルがぽそっといって、佐偽が指し示した場所に石を置くと同時、はっとした表情になりつぶやくアキラ。
気付いたのは俺じゃなくて佐偽だけど。
その言葉をどうにか飲み込みながら、
「あ。そうだ。塔矢君。時間は大丈夫なの?」
ふときづけば、たしかにもう時刻は夕刻。
「は~い。お子様たち。お子様たちはそろそろ帰るじかんよ~?」
ふと筒井が気づいて問いかけるとほぼ同時。
がらり、と理科室の扉が開いて一人の白衣の女性が入ってくる。
「あら。君は、さっきの」
「あ。先ほどはありがとうございます」
入ってきた女性はアキラに理科室で囲碁部が活動している、と教えた人物。
それゆえに、ぺこりと頭をさげるアキラ。
「?何?塔矢。理科のタマ子先生と知り合いなのか?」
「あら。君の友達だったの?その海王の子。さっき囲碁部はどこか、ってきかれたのよ。
それより、君たち?もう遅くなるから今日はもうかえりなさい?
あ、碁の一式は棚の下にいれていつでも取り出せるようにしていいからね」
たしかに、実験室の棚の下には扉があり、そこにいろいろと品物が片づけられるようになっている。
「どうもすいません。タマ子先生」
「ふふ。いいのよ。先生、好きなのよね。ゼロから初めて形をつくってくのって。
科学の実験も似たようなものだしね」
だからこそ応援したくなってしまう。
「あ。それわかります!数式とか化学式とかおもしろいですよねっ!」
「あら?君、何か話しがあうわねぇ。化学式では何かすきなのあるのかしら?」
「俺が好きなのは……」
何やらものすごく高度ともいえるような専門用語が飛び交い始めているヒカルとタマ子。
「…あ~あ。ヒカルがこうなったら話とまんないし。筒井先輩。とりあえず私たちで片づけはじめましょ?」
「…進藤って、ほんっとつかめないよね……」
「たしかに。こいつは落差が激しいからなぁ。英語とかはからっきしなのに」
事実、小学の英語の成績はほぼ悲惨であったことをユウキやアカリは知っている。
喜々として話題が弾んでいるヒカルをみて思わず目を点にしてつぶやくアキラとは対照的に、
ぽそっとつぶやいているアカリとユウキ。
「そういえば、碁盤はこの一個だけなの?」
「今のところはね。でも碁盤ひとつでもあれば部活動はできるし」
「そんなもの…でしょうか?でも……」
何ともお粗末すぎるというか、進藤が所属した部なんだからもうちょっと何とかしてほしい。
そんな思いも多少ある。
お父さんにいってみて碁会所でもうつかわなくなった古い碁盤とかかなりあるはずだし。
それ…聞いてみようかな?
「面が一つだと多面打ちとかもできませんよね?」
「普通はそんなのはしないとおもうよ?」
「早打ちや感覚を磨くのには多面打ちは効果覿面ですし。あったにこしたことはないですよ?」
確かに、塔矢明のいいたいことはわかる。
わかるが…普通、中学の部活でそこまでのレベルは望まないのも事実。
「ま、とにかく、片づけて、暗くならないうちにかえらなきゃ。塔矢君だって、家、だいぶとおいんでしょ?」
たしか十キロ以上先にあるはずである。
それゆえのアカリの台詞。
「え?あ。今日は僕は遅くなる、といってきてるから大丈夫だよ」
「でも塔矢くん、きれいだし、かわいいし。最近物騒だから早くもどったほうがいいよ?」
確かに、最近ニュースでもかなり物騒な話題が続いている。
それゆえにアカリが心配していってくるのも無理はない。
「今日は、とりあえず進藤の家にいくつもりだったし。母から預かってきているものもあるしね」
ヒカルだけではなく、一応、ヒカルと友達付き合いしてくれているから、というので、
ヒカルの母からも入学祝いが届いたらしい。
それの御礼をしてくるように、そうことづけられているのも事実。
あと、何やらヒカルあての手紙も預っているが、それはまだヒカルに手渡していない。
「ふ~ん。よくわからないけど。あ、そろそろとめなきゃ。
こら!ヒカル!いい加減にしときなさいっ!」
ゴッン!
・・・・・・・・・・・・・・
「ってぇ!アカリ!いきなり何すんだ!?」
「何すんだ、じゃないわよっ!ヒカルはほっといたらその手の話はつきないでしょ!?」
「だからって教科書の角でたたくなっ!角で!」
何やらいまだに理科の教師と熱中して話しているヒカルの頭をおもいっきり分厚い本の角で叩いているアカリ。
一瞬、その光景をみてその場にいる全員が黙り込んでしまうがアカリからすればこの行動はいつものこと。
「あらあら。ごめんなさい。つい話がはずんだものだから。
あ、片づけおわったのね。遅くなっちゃったわね。先生、おくっていきましょうか?」
「先生の車は確か、軽自動車、でしたよね?定員オーバーでは?」
そんなタマ子の言葉にすかさず突っ込みをいれている筒井。
「あ。じゃあ、筒井さんと三谷がおくってもらえば?俺とアカリの家は近いし。
塔矢はどうするんだ?」
「僕は君のお母さんに母から頼まれた用事があるから君の家に一度はいくつもりだよ?」
「じゃ、三人で帰るか」
たわいのない会話ではあるが、たしかに的を得ている、ともいえる。
結局のところ、ヒカルの提案通り、筒井と三谷が教師に送ってもらうことにして、
ヒカルたちはそのまま歩いて帰路にとついてゆく――
-第21話へー
Home Top Back Next
#####################################
あとがきもどき:
薫:さてさて。次回で海王の囲碁部さんの葛藤をばv
さってと。五月の大会の日付…いつにするかなぁ?
問題は、どこをどう探しても、正確なプロ試験本線の時期がない(汗
予選は夏…でいいのはわかったけどさぁ…あうあうあう…
検索しまくったけど不明のまま…まあ、そのあたりも二次さんでもあるしねつ造してやるかなぁ??
ううむむ……
確か、ヒカルの碁の原作は季節にあわせてストーリー展開、とやってたらしいけど。
…単行本では次期はわかりませんしね(汗
何はともあれ、ようやく囲碁の大会の序曲にいけそーですv
それがおわればヒカルの院生生活だしv
何はともあれではまた次回にてv
2008年8月5日(火)某日
Home Top Back Next