まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
さてさて。今回はこの話の中でやってみたかった、塔矢と光のだましあい?というか掛け合いシーンv
塔矢明はうたがってますよー?という布石をこめてたりv
ちなみに、実際に同じパソコンで二面打ちができるか、といえばおそらく無理、だとおもわれます。
あしからず……
あ、でもネットゲームとかだと別のパスワードではいったら、一人でPT組めたりするからできるのかな?
ううむむ……
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「やってみるもんだなぁ」
ダメだろう。
そうおもっていたが、案ずるより産むがやすし、とはこのことかもしれない。
別の窓でそれぞれの名前で入ることができた。
「とりあえず、こっちは…『観戦中』にして…っと」
ぽちっとな。
そうしておくことにより、対局の申込は入らないらしい。
laitoの名前とsaiの名前でのロングイン。
おそらく、第三者からみればよもや一人が別々の窓をつかい二つの名前で入っている。
などとは夢にも思わないであろう……
そもそも、普通はそのようなことをする必要性はまったくもってないのだから。
星の道しるべ ~伝説の棋聖~
「…ネットに潜む、本因坊秀作…か。ぜひとも対局してみたいものだな」
それが真実味を含んでいるかはともかくとして。
コツコツコツ。
「?あの?どうかしたんですか?遅くなってすいません。何だか会場の雰囲気が……」
用事をすませてはいってきてみれば、何だか会場の雰囲気が何だか騒がしい。
何とも言えない独特の雰囲気をもっている。
「おお。塔矢君」
「こいつが……」
週刊囲碁ネットで顔をみたことはあるが、実際に会うのは初めて。
まだ小学生だというのに期待がされる星として大々的に取り上げられていた。
「明くん。君もたしかインターネットで囲碁をやったことがあるよね?」
「え?ええ。ときどき。最近では関西のブロの人とやったことがありますけど。あの、何か?」
進藤の名前を探すけど、見つからないし。
それがかなり口惜しい。
彼もまたネットができる環境ならば夜でもいくらでもうてる、というのに。
「ネットに強いやつがいるらしい。どうもアマチュアらしいんだが。韓国のプロさえまけたらしい」
「ネットの強い人?…ああ。なるほど」
それでこの雰囲気になってるのか。
それゆえにどこか納得するアキラ。
「お前にはかんけえねえよ!」
「和谷、何おまえつんつんしてるんだ?」
「先生。俺、おもうんですけど、そいつ、子供じゃないのかな?」
「子供!?」
「子供?なぜそうおもうんだ?」
「だってあいつ、チャットで『強いだろ、オレ』とかいってきたんだぜ!?こどもっぽすぎますよっ!」
「…あ~……」
「明くん。心当たりは?」
目の前の子どものセリフに思わずこめかみに手をあてるアキラ。
心当たりはありすぎる。
はっきりいっておもいっきりに。
「名前はsai、というそうだけど?」
「それなら彼ではないですよ。緒方さん。彼のハンドルネームは僕はきいてますし」
そうはいうものの、名前を変えて打っている、ということもおもいっきりあり得るかもしれない。
あの彼ならばなおさらに。
「When!?(何だと!?)」
「Was
the chat exchanged with you and sai!?(君、saiとチャットをかわしたのか!?)」
「ああもう!英語で一気にはなしかけないでよっ!」
和谷の言葉に集まっていた人々が一気に彼をとり囲む。
「?彼は?」
「森下さんの弟子だそうだ」
「なるほど」
横にいる緒方にといかけ、その言葉に納得する。
「What
was released!?(何をはなしたんだ!?)」
「い、一度にきかないでよっ!というか何いってるのか全然わかんね~!!」
興奮した人々は早口になり、英語に慣れているものでなければおそらく聞き取れない。
中学生の和谷にとっては理解しろ、というほうが難しい。
ざわざわざわ。
和谷の子どもかもしれない。
というセリフに会場内部がさらにざわめきをます。
「でも、彼がいってる台詞からして…いやでも……」
何をしでかすかわからない。
それが彼、進藤光、という存在。
塔矢明がしばしそんな思いにふけっている中。
「みなさ~ん!これでネットができますよ?」
どうやら騒ぎがおちつきそうもないがゆえにと、事務所からノートパソコンをかりてくる実行委員の一人。
「明くん」
こく。
とりあえず、携帯電話にとつなぎネットをつなぐ。
「saiがいるかもしれない。君にみてほしいね」
いいつつも、囲碁ネットに回線をつなぐ。
「…いた。…あれ?」
この名前の順番は入った準にと示される。
前後するかのように聞き覚えのある名前が示されているのが見て取れる。
iaito。その直後にsaiが入っているのが見て取れる。
「saiは…対局中か」
みてみれば、saiはすでに対局中。
会場の人々がノートパソコンの前にと誰ともなくあつまりあっというまに人だかりができてゆく。
ぴっ。
「お。中押し。またかった!佐偽。お前全部かっちまうからほんときもちいいよな」
『今のものはたいしたことはありませんが。この箱にはときどき強いものもいますよ?』
「みたいだな~。俺でもわかるもん。…って、ああ!?また対局の申込がっ!」
「とりあえず、ことわって。と、ひとまず一服~…ってああ!また申込がぁ!もうっ!」
すでに飲み物はからになっている。
飲み物を取りに行きたいのに連続して対局の申込があるがゆえにとりにもいかれない。
とにかくかたっぱしから断ってゆく。
「…あれ?akira?」
『?塔矢ですか?』
ふとメンバー一覧に見覚えのある名前をみつけてふとつぶやくヒカル。
そんな絵をみつつも首をかしげてヒカルにとといかけている佐偽。
「んなわけないよ。あいつ今日は何とかという大会の手伝いにいってるはずだし」
『ん~。ためしてみますか?このものが塔矢かどうか?』
「?そんなのできるの?どうするんだ?」
『ええ。まずは対局を申し込んで黒をもってください』
「わかった。…って、ああ!また申込が!ええいっ!キャンセル連打!」
「あ。ようやく画面がもとにもどった。ええと…akiraに対局申込…っと」
ぽちっ。
絶対に違うとおもうけどなぁ。
そんなことをおもいつつも、だけども気にかかるのも事実。
それゆえに佐偽のいうとおり確かめるためにもハンドルネーム、【akira】にとヒカルは対局を申し込んでゆく。
ざわっ。
「…saiが…対局を申し込んできた」
まさか申込があるなどおもってもいなかった。
会場のほぼすべての人が見守る中でsaiからの対局申込。
おもわず画面に釘つけになってしまう。
「明くん」
いわれて、こくりとうなづき対局をokする。
インターネットは闇の中。
相手の顔も何もみえることはない。
だが、一手をうてば知っているものならばわかるはず。
君は…君は進藤なのか?
そんな疑問を抱きつつもアキラはノートパソコンにとむかってゆく。
『じゃあ、いきますよ?一手目。十七の四』
…?十七の四?
「あ。白、左上の星にうってきたぜ?」
『十六の十七』
「白は四の十七だ」
『こちらは十五の三』
パソコンの画面を通じて互いに対戦しているヒカルとアキラ。
「…あれ?白がこないぞ?考えてるのか?…あ、うってきた。右下にかかってきた。佐偽、次は?」
『ふむ。ここまでは同じにうってきましたね』
「?あのとき?…あ!?佐偽!これって!」
たしか、アカリに邪魔をされた一局の手筋。
『ええ。あのときはアカリちゃんの乱入で最後までいきませんでしたけど。さあ、次は十五の十六、コスミ』
「…うってこない」
『うってこないのは塔矢だからではないですか?あの一局を今まさに思い出して手がとまっているのでは?』
「…げ!?それって塔矢が俺に気づいた、ってことじゃんか!?まずいよっ!それっ!」
しばし、ガタン、と席をたちあがりおもわず叫ぶヒカルの姿。
そんなヒカルの姿を傍目にみつつ、
「?今の相手、そんなに強いのかしら?」
などといいつつも、仕事をこなしている三谷の姉。
まさか……
まさか、しかし、この手は……
あのとき、藤崎アカリに邪魔されて最後まで打てなかった一局。
「ふむ。俗にいう秀作のコスミをうってきましたな」
「明…くん?」
「どうしたんだ?なぜ彼はうたない?」
同一人物が同じ回線上に入ることは可能なのか。
それはおそらく可能なのかもしれないし、違うのかもしれない。
だが、気になるのは、前後していたあの名前。
もし、もしも…自分の考えが確かならば……
ぽちっ。
襲いかかる動揺をどうにかおしころし、とにかくひたすらに深呼吸。
『ほら。またあのときと同じようにうってきましたv』
「佐偽。まずいって!頼むよ。佐偽。ここから前と違う手をうっていってよ?」
アキラには自分のハンドルネームが二つあることは教えていない。
というか、ひとつは佐偽のものでありヒカルのものではないのだから嘘はいっていない。
『では四の十四。ミケン、たかがかり』
カチ。
とりあえず、次の一手を別の場所にと打つ。
「…ごまかせたかなぁ?」
『たぶん』
何だかものすごく不安であるが、だけども自分が打っている、ということを知られたら後々面倒なのも事実。
「塔矢なのかなぁ?本当に?」
『たぶんまちがいないとおもいますけど?』
「…あれ?うってこない?…って、投了!?」
示されたのは一手ではなく投了、の文字。
「明くん!?なぜ投了を!?」
ざわざわと会場がざわめきたつ。
「…まずい!たぶんあやしまれてる!佐偽!わるい!一度きるぞ!」
ぷちっ。
投了、の文字に対し、相手が疑っていることにピンとくる。
それゆえに一度佐偽での入室を退室する。
『ヒカル?』
「ぜったいにあやしまれた!フォーローしないとっ!」
それゆえに、もう一つ開いていた窓においてあわてて操作を始めるヒカルの姿。
「あ、リストから名前が消えた?」
塔矢が投了を示したそのすぐあとにリストから名前が消えた。
と。
ぴっ。
「?また対局申込?」
「これは……」
胸の中にわだかまる疑問。
その疑問の答えはおそらく目の前の対局申込相手がもっている。
「laito?みたことない名前ですな?」
「明くん?」
「すいません。ちょっと失礼します」
疑問をどうしても確かめたい。
それゆえに相手の申し出をうけるアキラ。
ぴっ。
画面上に対局画面が示されるとほぼ同時。
【アキラ、お前、何ネットなんかしてるわけ?】
いきなり示されるチャット画面。
【そういう君こそ。しかもこのタイミングで対局申込してくるなんて。…saiは君か?】
ぎくっ。
そんな塔矢明の質問にぎくりとしてしまう。
【いやだなぁ。俺のはずないじゃん。俺も佐偽にはまけっばなしだもん。
それより、何でさっきの一局、途中で投了したわけ?何かさ。めずらしいよなぁ。
あの一手ってあのときの一局にはじめのころはまったく同じ手だったし】
あるいみ事実。
ネットでは打ったことはないものの、佐偽に実際に勝ったことは一度もない。
【みてたわけ?】
【えっと。今日は俺、対戦せずに対局の観戦に没頭してたから。今ネットカフェなんだ。
お前は今日何とかっていう大会の手伝いじゃなかったっけ?お前の名前みつけてびっくりしてさ~】
画面上に示されるチャットの会話。
「?塔矢君?この相手、知り合いかい?」
「ええ。友達です」
【てっきり君がもう一つのネームをつかってはいってるとおもったんだけど?】
ぎくっ。
ぎくぎくっ。
『…ヒカル。塔矢、鋭いですねぇ』
「お前のせいだよ!おまえの!とにかくごまかさないと!」
それぞれ別々の場所において互いに繰り広げられている会話は当然、ヒカルもアキラも知る由もない。
【何でそんな面倒なことしなきゃなんないの?それより、お前、今日は何とかという大会の手伝いじゃなかったっけ?
何でネット碁の中にいるの?】
とりあえず話題を変えるためにと問いかける。
【大会でsai、と名乗ってる人物の話題が出てね。確かめるためにはいっただけだよ】
「へ~。佐偽、どうやらお前とうったやつも大会に参加してたみたいだなぁ」
『そうなんですかね?』
「でないと、saiの話題なんてでてこないってば」
塔矢がいってきたチャットの文字をみて思わず横にいる佐偽にと話しかけているヒカル。
【佐偽。かぁ。うん。たしかにあいつは強いよな。俺まだ一度もかてないし!】
【君もうったことあるの?】
【全戦全敗中】
事実、そのとおりである。
「・・・・・・・・・・・・・・明君。この相手、って例の子か?」
「ええ。そうですけど。どうやら彼もまたsaiと碁をうったことがあるようですね」
いまだに彼がsaiかもしれない、という疑念は晴れたわけではないが。
「例の子?とは?」
「以前、子供囲碁大会で難しい一手を即答した子がいるんですよ」
「ほぉ。あとでその一手をおしえてもらえますかな?」
「かまいませんよ?」
何やらそんな会話でもりあがっている森下と緒方であるが。
そんな会話が繰り広げられているとは知るよしもなく、
「・・・まずいなぁ。塔矢のやつ、まだ疑ってるような気がする。…できるかな?無理かな?
…ええい!ダメモト!はいれたからできるかもしれないし!佐偽!成功したら、お前、これで俺とうて」
『?ヒカル?何をするきななのですか?』
「二面打ち」
『たのしそうです!誰と誰の二面ですか!?ヒカルともう一人はだれですか!?』
ヒカルの言葉に別の意味にととらえて何やらはしゃぐ佐偽ではあるが。
「そうでなくて。この画面を二つ開いて、お前側と、俺側でうつの。
さすがにそれぞれが対局してたら別人、とおもうかもしれないじゃん?」
よもや、一人が交互に打っている、などとは普通は思わないはずである。
『?そんなことができるのですか?』
「やってみないとわかんないし。とりあえず、佐偽でまたはいって…っと」
塔矢と会話をしながらも別の窓を開いて改めてロングインする。
ピッ、と名前が表示されると同時に一気におしよせる対局の申込の嵐。
「ええと…っと。よし」
とにかく窓を交互、つまりは左右にと小さくして重ね、見やすくし。
【まあ、お前も仕事中みたいだし。きになったから話しかけたんだし。
あ、また佐偽がはいってきたみたい。今度こそかってやる!ということでまたな!】
【え?あ、おいっ!】
ぷっ。
こちらのチャットの言葉を最後まで聞くことなく、いきなり投了してくる。
「?気になってたんだけど…今、おまえが会話してたやつ、何でsaiのことを佐偽、とうちこみしてるんだ?」
塔矢明と話していた相手がだれかも気にかかるが。
どうやら知り合いらしい、というのはわかる。
だが、それよりも、sai、としか打ち込みがされていないハンドルネームなのに、
laito、となのっている人物は漢字で【佐偽】と表現していたのが気にかかる。
「そういえば」
そんな和谷の素朴な疑問に、ふと声をもらす森下。
「彼、英語苦手というかわからない、とかいってたから普通に打ち込みして変換したんじゃないのかな?」
もし、誰かがそのような名前をネットカフェのパソコンに登録していればそれもありえる。
それゆえに、そんな彼らの疑問に一応半信半疑ながらも答えるアキラ。
「しかし。本当にまた彼がはいってきたのか?明くん。確認してみてくれないか?」
まあ、相手は小学生。
たしかにそういうこともありえるかもしれない。
そんなことをおもいつつも、再び問題の人物がはいってきたのか確認するのが先決。
それゆえにアキラに促す緒方の姿。
「え。あ。はい」
とりあえず、いわれて画面を閉じて元の一覧の画面にと戻す。
と。
「あ…またはいってきてる。えっと…対局中、ですね。相手は……」
saiの対戦相手はlaito。
さきほど、塔矢明がチャットで会話をしていた相手でもある。
「だあっ。面倒だけど……佐偽。お前も気をつけて注意してくれよ?」
二面においてそれぞれ打ち込みする、というのはかなり面倒。
しかも、同じ回線をつかっているせいか、相手…というかもう一つの窓で打ち込みした石がなかなか表示されない。
まあ、どこにうったかわかるので、表示されないままに打ちこみし、更新をおしてようやく表示される。
という形になっているのだが。
『しかし、この箱、おもしろいですねぇ。ヒカル?どうして同じ画面が二つもでるんですか?』
「それより!普通に打て!というか時間とかあいたら余計にあやしまれるっ!」
『はいはい。指導碁にします?それとも普通に対戦します?』
「…二面でうつのめんど~だから本気でやってくれ……」
『はいvじゃ、さくっと一刀両断でv』
さくっ。
「……だあっ!というか本気でさくっとくることないだろう!?」
中押しにいく手前での投了をせざるを得ない局面。
『でもヒカルがそうしろ。といったじゃないですか?』
「…も、いい」
おろおろしつつもいってくる佐偽のセリフにため息をつきつつも、
「とりあえず、俺のほうは落ちるとしよっと」
そのまま、laitoではいっていたほうを一応ログアウトする。
残りはaaiではいっている盤面のみ。
「……これが、sai、か。なるほど。たしかに……」
「進藤があっさり?…たしかに。このsai、という人物はかなり強いみたいだな」
シンドウ?
聞きなれない名前をきき、思わす首をかしげる和谷。
だがしかし、あまりにもあっさりしすぎていて、自作自演ではないのか?
という疑念がどうしても頭から離れないのも事実。
「あ。また対局がはじまってる」
ふとみれば、saiは次なる対局を始めていたりするのがみてとれる。
というのも、一局がおわれば次から次へと対局の申込があり断るのが面倒、というのも事実。
それゆえに、対外、ヒカルはかたっぱしから佐偽の許可をえつつも対戦している、というのもあるのだが。
「…進藤は…もうおちたみたい、だな」
たしか時間限定でしかネットはできないみたいなことをいってたし。
何でも知り合いの家族がネットカフェで働いているので時間限定で無料でネットをさせてもらえる。
そう塔矢はきいている。
「しかし。saiがネットの中にいる。ということはやはりこの場にはきていない。ということですかな」
「ですね。残念です」
パソコンの画面をのぞきこむようにして集まっていた人々からはそんな会話が聞き取れるが。
「とりあえず、このまま対局の様子をみるにしても、大会に支障がでますし。とりあえずおちます」
「そうだな。まだ大会の途中でもあるしな」
しかもこのノートパソコンは事務所からの借り物である。
「そうですね。みなさん。大会はまだ始まったばかりです。
次なる対局は昼からです。皆さん、くつろいでくださいね」
すでに一局目のどうやらすべて完了したらしい。
気付けばいつのまにかパソコンの周りには大会に参加していた人々のほとんどがあつまってきていたりする。
たしかにこのままパソコンで見続けていれば混乱は必然。
「Can
you do the net somewhere?(どこかでネットがうてませんか?)」
何やら係りのものにそんなことを聞いている大会参加メンバーの姿も垣間見える。
「Traigo
PC a una nota, pero hay él en el hotel.Me defraudo(ノートパソコンもってきてはいるが、ホテルにある。残念)」
何やらそんなことをいっている参加者の姿も垣間見える。
それぞれがそれぞれの国の言語で話しているので和谷達にはよく意味がわからない。
中には日本語で何やら同じような意味のことをいっている人々の姿も垣間見える。
「あ。控え室にパソコンおいてたんだ。…今なら噂のsaiとうてるかも」
中には、空き時間にパソコンで作業しようとおもってもってきていた参加者もいたらしく、
今ならば何やら騒ぎになった最強の打ちてかもしれない、とかいわれている人物とうてるかもしれない。
そんなことをおもいつつも、あわてて控え室にとむかってゆく参加者の姿。
人それぞれではあるが、やはり皆の関心はネットに潜んでいる最強の打ちての存在。
碁を究めよう、としているものならば、強いものと対局してみたい。
とおもうのは、ひとの心理なのだから……
「あ。塔矢のやつ、おちたみたい。…ごまかせたかなぁ?」
『それはわかりませんねぇ。さすがの私も』
ふとメンバー一覧の表をみれば、すでにakiraの名前は消えている。
それはつまり、彼がログアウトした、ということを指し示している。
「とりあえず…退席中。にして…と」
そうでもしていないと、無数に対局申込が殺到してしまう。
『ヒカル。わたしも何かのみもののみたいです……』
「ここで習ったやりかたやったらおもいっきりあやしい人じゃん?」
そもそも、ヒカルには自力でおこなうだけの力はない。
佐偽のいいたいことはわかる。
先日、塔矢明子、つまりは塔矢明の母親から聞いた方法をつかえば佐偽もものを食べられ、そして飲める。
というのが判明した。
とある処置をほどこせば、普通の品物でも神棚に祭ることなくそのようなものにできるらしい、ということも。
だが、それをやるとヒカルはものすごく疲れてしまうのも事実。
「まあ、今日は昼までお前にずっと付き合うつもりだし。それがおわったらご飯食べてぶらぶらしてみようぜ?」
『くすん…まあ、仕方ありませんね。ヒカル。私に何かをたべさせようとしたらそのままねむっちゃいますし』
かなりの霊力をつかうせいか、肉体的にも疲労してしまい眠くなるのがその方法の欠点。
「まずは、何だか緊張してのどかわいたし。飲み物改めてとりにいこ~ぜ」
『あ、ヒカル。そこまでなら離れても平気なので、私、誰かの対局みてみたいです。
これって観戦もできるんですよね?』
「…まあ、できるけど。どいつの対局みるんだ?」
『えっと…じゃぁ、この人たちのを』
「わかった」
とりあえず、かちゃかちゃと画面を第三者の対局観戦画面に切り替える。
何やらわくわくしながら画面をのぞきこんでいる佐偽をそのままに、ヒカルはひとまずドリンクバーがある場所にと移動してゆく。
気付けば時刻はすでに十一時に近い。
たしか今日は十二時まで三谷のお姉さん、お仕事、っていってたよな。
そんなことをおもいつつも、選んだジュースを再びコップにつぐヒカルの姿が、しばしその場において見受けられてゆく。
「う~ん。今日はやばかったなぁ」
『でも大満足ですv』
なぜか塔矢との一局以降、佐偽いわく、多少実力のあるものからの対局申込が増えたらしい。
たしかに、画面をみていても、相手がそこそこの実力をもっている、というのは見て取れたが。
『しかし、ヒカル。なかなか目算がスムーズになりませんねぇ』
「わるかったな!というかまだこれからだ!みてろよ!いつかお前をギャフンといわせてやるからなっ!」
さきほどのようにさくっと負けていては何とも悔しすぎる。
何しろ佐偽が指示をしている、とはいえ打っているのはヒカルなのである。
一泡ふかせてみたい、とおもってしまうのは仕方ないことであろう。
「さて。と。とりあえずお腹すいたなぁ」
自転車をこぐこともなく、とりあえず自転車をおしながらのんびりと歩道を歩く。
と。
「じゃぁ、おやじさん!裏の碁会所に出前にいってきます!」
「おうっ!」
がらっ。
何やら前にとあるお店からそんな声が聞こえてきて、一人の人物がおかもち片手に店の中から出てくるのが目に留まる。
碁会所?
へぇ。
ネットカフェの近くにもあったんだ。
けっこう俺が知らないだけで碁をうつところってあるのかな?
そんなことをヒカルは思うが、
『ヒカル!ヒカル!いってみたいですっ!』
「ん~…ま、少しくらいならいいか」
『はいっ!わ~い!』
どうやら店の裏のほうにと出前の人は向かっているらしい。
見失わないように、自転車をおしながらそんな彼の後ろからついてゆくヒカルと佐偽。
出前の人がはいっていったのは一つのビルの地下にとあるお店。
歩道のほうから地下につづく階段があり、誰でもすぐにはいれるようになっているらしい。
「へぇ。こんな地下のお店でやってるんだ」
たしかに、地下だと外の騒がしさが遮断でき、ましてや地面の下なので夏場でも涼しいのかもしれない。
『へぇ。地下室。ですか。おもしろいですねぇ』
さすがに地面の下にむけて階段があり、その先に部屋があれば佐偽でも地下室だ、ということくらいはわかるらしい。
そのまま、二人して近くに自転車をひとまずおいて鍵をかけ、地下のその碁会所にむけて足をむけてゆくことに。
ガチャ。
「いらっしゃい。うつなら子供は五百円、だよ?」
地下室の扉をあけてはいると、どうやら簡単な碁会所であるらしい。
カウンターのようなテーブルがあり、そこでいろいろと品物が頼める形式になっているようであるが。
「子供がこんなところにくるなんて珍しいね。お爺さんかだれかがうつのかい?」
「え。あ。はい。爺ちゃんが」
というかヒカルも今は打ち始めてはいるが。
狭い小さな部屋にひしめき合うように長机がおいてあり、そこに碁盤が並べられている。
「まあ、みるだけならすわってみてていいよ?」
「あ。はい」
部屋の中を見渡せば、碁をうっているのはたったの二組のみ。
「坊主。碁をうつのかい?番碁か目碁でもうつかい?」
「バンゴ?メゴ?何それ?」
「おいおい。今日はじめてきた子供に何をいうんだか。子供にかけ碁をやらすものじゃないよ」
声をかけてきた男性にカウンターの中に座っていた男性が声をかけているのが見て取れる。
かけ碁?
「佐偽。かけ碁って何?」
『江戸時代にもありましたけど、おそらくは碁をカケゴトの対象にした一種のバクチです』
まあ、佐偽や虎次郎はそんなものはまったくもってやらなかったが。
周囲のものは対局をみてはかけていたのも事実。
「バクチ?よくわかんないや。…とりあえず、どんな碁をうってるんだろ?」
大人同士の対局はあまりみたことがない。
それゆえに多少興味本位でひと組ほど未だにうっている人物のほうにとあるいてゆくヒカル。
「それで?どうしたんだい?」
「それがさ。アケミちゃんがこ~んな顔つけてとったんだよ。プリクラ、プ・リ・ク・ラ。
あとでお前さんにもみせてやるよ」
何やら会話をしながらも打ちあっている二人の男性。
「しかし、このままだとあんた、おもいっきりまけてるよ?」
「そうかい?だが、勝負はこれからだぜ?」
にやっ。
?
何だろう。
この人。
なにかものすごく嫌な感じがする。
対局をその横でみていたヒカルがそう思うとほぼ同時。
にやりと笑いながらも、笑みを浮かべているプリクラがどうの、といっていた男性の姿。
そして。
「勝負、ってもんは、最後までわかんないもんだぜ?じゃぁ、そろそろ本気をだすとするか」
いいつつも、石を左手にと持ちかえる。
「こんなへぼ打ちしたあとじゃあ、何やったっておいつくはずがない。とおもってるだろ?あんた?
だが、ところがどっこいっ!さあ、いくぜっ!」
何やら見始めたときとはうってかわった早打ち。
「…あ゛」
『なっ!?このもの、石をずらした!?』
早打ちのさなか、相手に気づかれない、とおもっているのか石をさっとずらしているのが見て取れる。
「くっ……」
いきなりの豹変。
それゆえに歯をくいしばりつつも打ちこみしてゆく。
「あんたはたしかに、このあたりじゃ強いのかもしれないけどな。まだまだこのオレの敵、じゃねえよ」
いいつつも、すでに局面はあっというまに形成が逆転されていっている。
しかも幾度もこの男は石をずらしていっているのである。
佐偽。
これっておもいっきり違法行為、だよね!?
『ええ。ゆるすまじ行為ですっ!』
どうやら佐偽もまたその行為に憤っているらしい。
「へへ。整地で石をいじらないとかてないぜ?あんさん?」
「く…ま、まいりました」
「へへ。さあ十二目半。一万二千円、だしな。あんさん」
気づいたときには石をずらされていた。
すぐに気づかなかったので強くもいえない。
「し…しかたない……」
むっ。
ごそごそと財布からお金を取り出そうとする相手の男性の姿をみて、
「おじさん!そんなのする必要ないよ!ずるしてたのはこっちのひとなんだしっ!」
「え?き、きみ?」
みていてどうしても口をはさまずにはいられない。
「ほう。いうじゃねえか。坊主。どこに証拠があるんだ?」
「見てたら一目瞭然だろ!?それにはじめは下手にうってそれで相手の隙を誘うなんて詐欺じゃないかっ!
あんたなんか自分の実力に自信がないからそんな卑怯な手をつかうんだろ!?」
ざわざわ。
ヒカルの叫びに何事か、とその場にいた別の客たちがよってくるが。
「いうじゃねえか。坊主。このオレが自分の実力に自信がない?いいだろう。
相手してしらしめてやるよ。そのかわり、お前がまけたらこいつの負け分もお前待ちだからな」
「何だと!?ほえずらかくなよっ!あんたのような汚い大人なんかにまけるかっ!佐偽!」
『ええ。ヒカル。心胆、寒からしてやりましょう。このものはやりすぎです。碁を汚す輩は許しておけません』
がたっ。
「ほう。いい度胸だ。このダケに喧嘩をふっかけてくるとはな」
ざわっ。
ダケ、という名前に一瞬周囲から同様が走る。
この業界ではけっこう名が知られている裏のゴト師。
「き、きみ。やめといたほうが……」
「おじさんはだまってて!俺、こんな大人ゆるしておけないしっ!」
ヒカルの正義感がどうしても許してはおけない。
子供ながらも気持ちはわかるが、だがしかし、裏稼業で有名なカレに子供が勝てる、とはおもえない。
佐偽。
石をずらされてもお前にもみえてるよね?
『ええ。私にはまるみえです。あなたもきづいていたようですけど。
その場でバレバレです。もっとうまくやれよ。とでもいっておやりなさい』
整地でずるしたら?
『整地まではいきませんよ。中押し手前で勝ちますから』
佐偽の表情をみても相手に対して怒っているのが見て取れる。
「き、きみ!やめなさい!」
騒ぎをききつけて、カウンターの中からこの店の主人らしき人物が表にでてくるが。
そんなことはヒカルにとってはしったことではない。
「いっとくが、手加減はしねえぜ?こんなカモはめったにいないからな。置き石もなしだぜ?」
「そんなのいらないよっ!」
どうやら売り言葉に買い言葉で子供は相手のペースに完全にはまっている。
だからといって、子供が被害にあうのがわかっていて止めない、というわけにもいかない。
「ちょ、ちょっと…君…」
制止の声をかけるものの、すでに席にとすわり、相手をにらみつけているヒカルの姿。
「けっ。坊主。オレの強さは今みてしってるだろう?おき石がいらない、なんて。えらい自信家だな。
坊主、どれくらいつよいんだ?」
「どれくらい?え~と、秀作、くらいかな?」
というかそもそも打つ佐偽の碁そのものが秀作の碁である。
「ははは!秀作、ときたか。本因坊秀作か。坊主。おまえのようなやつはきらいじゃねえぜ?
だが、喧嘩をうる相手をまちがったな」
「どっちが!俺にまけたらあんたも今後二度と卑怯な碁はうつなよっ!」
「けっ。いうねぇ。ガキが」
ふぅ。
どうやらいっても無理らしい。
秀作。
ねぇ。
本因坊秀作なんかにでてこられたら、歯がたつのはおそらく塔矢名人くらいだよ。
そんなことをおもいつつ、溜息をつかずにはいられないマスターの姿。
おそらくみるに堪えない碁になるであろう。
子供がコテンパにやられるのを好き好んでみたい大人はまずいない。
「けっ。じゃぁ、秀作どのに敬意を表してはなから左手でうつとするか。…俺が黒だな」
佐偽!
『ええ、いきますよ!ヒカル!右下隅、小目!』
ぱしっ。
相手が先手をうちこんできたのをうけて、ヒカルもまた佐偽の指示をうけて碁をうちこんでゆく。
「ば…馬鹿な……」
盤面をみても声にならない。
「わかったろ!?二度と悪いことするんじゃないぞ!」
何やらそんな声がきこえてくる。
?
その声につられて、みるに堪えなかった大人たちがヒカルの周囲にと集まってくる。
盤面上には力量の差が歴然としているいくつかの石の並びが見て取れる。
しかし、白が断然に有利の局面。
どうあがいても黒には勝ち目がないのは明らか。
「やれやれ。ダケさん、とかいったね。子供相手にあんた、何を…って、これって……」
何やら局面をみて立ち尽くす二人の大人に続いてマスターもまた近づいてくるが。
机の上にある盤面上をみておもわず絶句してしまう。
「ほ…本因坊…秀作……」
ずるっ。
勝てない。
絶対に。
相手は子供。
そう…こどもなのに。
力量の差は歴然としている。
「き…きみ?」
「あのゴト師のダケに子供がかった!?」
「というか、この局面…この子っていったい?!」
「おまえ…何ものだ!?」
「だからいったじゃん。秀作だ。って。あんたがどんな有名なのかはしらないけど!二度とわるいことするなよっ!
最も、こんな子供の俺に負けた、というのはあっというまに噂はひろまるから、あんたはもう何もできないだろうけど」
そもそも、この場には第三者が数名ほどいる。
噂はあっという間にひろまるもの。
『確かに。ひとの噂に角はたてられませんからね……』
かつて、佐偽もいわれなき中傷をうけて人々の非難を浴びて死を選んでしまったという現実がある。
「おじさんも。こういうやつが石をうごかしたりするのにすぐに捕まえて注意しないと。
だからつけあがるんだよ。こういう人種は」
いや、普通その筋のプロともいえる人物が詐欺を働こうとして行動すればまず素人が見破るのは難しい。
子供のいいたいこともわかる。
わかるが、それ以上に……
「って、ああ!?もうこんな時間!?おなかすいた~。あ、おじさん。どうもありがと。お邪魔しました~!」
はいって時間はあまりたってはいないが、ふと気付けばすでに時間は一時に近い。
あまり遅くなればお昼をたべない、と判断されて家にもどっても何もない可能性が高くなる。
いまだに唖然とする大人たちを尻目に、かるく挨拶をして入ってきたときと同様に外にとでてゆくヒカルの姿。
しばし、残された大人たちは、残された局面上をみてただただ絶句するのみ。
-第17話へー
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あとがきもどき:
薫:翻訳は、エキサイト翻訳でしておりますので、あしからずv私は英語は苦手でできません!(きっぱりと
さてさて、次回で例の本来ならば三谷をわなにはめるダケさん、の登場ですv
彼を呼ぶ前にヒカルが更生させちゃったので、三谷は洗礼をうけてませんけどね(苦笑
何はともあれ、ではまた次回にてvv
しかし…ふと誤字間違いをみてて気付いたのが、今までの回…指示、がほとんど支持、になってた(汗
訂正、訂正…(滝汗……
ちなみに、ゴト師ともいえるダケという男性はちょこっと登場するのみv(笑
ネットで、そしてまた現実でじわじわ~とヒカルの噂がひろまってゆく布石(まて
2008年8月2日(土)某日
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