まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
さてさて。今回は塔矢行洋名人の登場です(笑
でも、原作&アニメとは違い、ヒカルは途中でにげだしませんよ~(まて
それはヒカルがもともとその筋の力をもっていたがゆえに、体に憑依される感覚というか乗っ取り。
そういった類かどうかを見極められるから、という設定となっておりますv
それでもよいひとのみどうぞなのですv
ま、みてるひとはいないでしょうけどv
この打ち込みは自己満足のためですので、あしからず~♪
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星の道しるべ ~目覚めの予感~
ふう。
成り行きとはいえ覚悟をきめるしかない。
『ヒカル、ヒカル。大会って何かあるんですか?ねえねえ!?』
何やらわくわくしている佐偽はどうやらさきほどのことはきれいさっぱりと忘れているらしい。
「何か中学生の大会があるんだって。…来週の火曜日かぁ。…それまでには基本をきちんと把握しとかないと。
あと…そういや、佐偽。やっぱ碁盤あったほうが教えたりするのに便利?」
『え!?ヒカル!もしかして碁盤を手にいれてくれるんですか!?ならいつでもうてるんですか?!』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
何か別の意味でこいつはよろこんでるようだけど。
「そのかわり!おまえは俺に碁をおしえる!いいなっ!いくら何でも中学生相手にお前がうつわけにはいかないだろ!?」
『え~!?ヒカル、わたしもうちたい~!!』
「だ~か~らっ!大人と子供じゃ、おもいっきりふりじゃんっ!…その前に家には碁盤も何もないし……」
爺ちゃんにいってみるかな?
いやでも、時間があまりないから毎日のように時間あるときに勉強しないと無理だろうし。
そんなことをおもいつつ、
「…そうだ!佐偽。ちょっとつきあえ」
『ヒカル?』
「今から昨日の碁会所にいってみる。もしかしたら碁の一式かりれるかもしれないし」
おそらく、ああいった場所には余っているものもあるかもしれない。
レンタル料がいるかもしれないが、そこはそれ。
お年玉がでてからとか、はたまた対戦してかったらレンタル料がどうにかならないか、と持ちかける手はいくらでもある。
おそらく佐偽はよろこんで打ちたがるはず。
一度家にもどったものの、そんなことをおもいつつ、再び外にとでているヒカル。
『ええ!?ほんとうですか!?ヒカル、ヒカル、ついでに一局!ね!一局!』
「だあっ!今日はとにかく別の用事でいくのっ!」
塔矢のやつ、いるかなぁ?
もしいたら、加賀とかいうやつのことをきいてみたいし。
そんなことをおもいつつ、駅前の囲碁サロンにと足をむけてゆく。
「…きみ!?」
囲碁サロンがある二階にとあがりかけたその刹那。
何やら背後からいきなり声をかけられる。
「…は?俺?」
誰?
この人?
どこかでみたことがあるような気がするけど。
「やっぱり君だ!こんなところであえるなんて!一緒にきてくれ!君にあいたいって人がいるんだっ!」
ぱっと見た目、ヤのつく職業の人にみえなくもない。
白いスーツにメガネをかけている男性。
どこかであったような気がするが、それがどこだったかどうしても思い出せない。
「?え?誰?塔矢?塔矢明?」
自分に会いたいといってくるなど彼以外にはあまり考えられない。
何しろここは塔矢明と出会った碁会所の真下。
「?アキラくんをしってるのか?…とにかく、きてくれっ!」
「まあ、どちらにしても俺もこの二階に用事ありますからいきますけど……」
何だか表情がかなり切羽つまっているように見えるのは気のせいか。
がしっと腕をつかまれていっきに階段をかけあがる。
「塔矢名人!今、今そこでちょうどあの男の子をつかまえましたっ!」
「って、つかまえた。って俺何もしてないよ!?」
おもわず相手のセリフに突っ込みをいれてしまうのは仕方がない。
「あれ?君?今日はアキラくん。いないよ?」
ふとはいってきたヒカルの姿をみとめ、彼のことをしっている客の一人が話しかけてくる。
「…あれ?あのおじさん…あ~!!おもいだした!あのとき注意してきた神の手に一番近いとかいう人だっ!」
ふと部屋の中に場違いな着物姿の人物をみつけ、ぽん、とおもわず手をうつヒカル。
『あのものは……』
あのときの。
自分と同じ空気を感じる人物。
自分とおなじ道を志すものだからこそわかる。
それゆえに佐偽もすっと目を細める。
「…なるほど。やはりそうか。君が、か。あのアキラに二度もかったというあの」
まあ、勝ったのは実際には際であって、俺じゃないし。
そもそも、大人と子供なんだから佐偽がかって当たり前だし。
「塔矢?…塔矢…名人?あ!あの詰め碁集の!?って、あれ?同じ声明、というだけじゃないの?
おじさん、塔矢明のことをしってるの?」
「「おじ……」」
きょとん、として問いかけるヒカルのセリフに思わずその場にいる全員の唖然とした声が重なる。
「アキラは私の息子だ」
「え~!?そうなの!?あれ?あ、なるほど。だから塔矢も碁をうつんだ~」
「…塔矢名人をおじさんよばわりとは、君、肝がすわってるわねぇ」
おもわずそんなヒカルのセリフにあきれたように苦笑しつつもいってくる受付がかりの女性。
「?この人そんなにすごいの?」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」
さらっとそれでいて本気でいっているようなそのセリフに思わずその場がしんと静まり返る。
が、しかし。
「あのアキラに勝った君ならばあの一手を即答したのもうなづける。…君の実力が知りたい。すわりたまえ」
「…え?あ、遠慮します。お金ないし」
どてっ。
数名の人物がヒカルのセリフをきいておもわずイスからひっくりかえる。
事実、光は今は一銭ももっていない。
お金というものはもっていればどうしてもつかってしまう。
そもそも、ここには碁をうつためによったのではなく交渉にきただけなのだから。
「ここの経営者は私だ。その心配は無用。とにかく座りたまえ」
「え?それってお金はいらないってこと?お姉さん?」
きょんとして受付がかりの女性に確認すると、相手は苦笑まじりにうなづくのみ。
というか、あの塔矢名人の誘いをお金がないから、といって断る子なんてはじめてだわ。
そんなことを内心おもっていたりするのだが、ヒカルは知る由もない。
「だけど……」
『ヒカル!彼と打たせてください!!』
碁をうちにきたわけじゃないんだけどなぁ。
そうとまどっているヒカルにと、背後から何やら強い口調でいってくる佐偽。
「?佐偽?」
『このものの気迫は本因坊秀作であった私に挑んできたあまたの好敵手とおなじ!ヒカル!』
え~と。
よくわかんないけど、あ、だけど佐偽の力を知るにはいいのかも。
「えっと。それじゃあ、失礼して……えっと、どこに座ればいいの?」
ヒカルが問いかけるまでもなく、すでに塔矢明の父親だ、となのった人物は席の一つにこしかけている。
何だか周囲の人々の様子が尋常でないような気がしなくもないが、ヒカルにはそれがなぜなのかわからない。
ヒカルがもし、囲碁界のことを多少くわしければ彼から対局を申し込むなど奇跡にひとしい。
ということがわかるであろう。
だが、あいにくとヒカルはまったくそういったことは知らない。
それゆえにこの場にいる大人たちの動揺が何を指しているのかわからない。
「石を三つ、おきなさい。アキラとはいつもそれでうっていた。名人の私とそれでうっていた。
それが明の実力だ。その意味がわかるかね?」
わかりません。
正直いって。
そういいたいがそう口にだせる雰囲気ではない。
対峙するようにと座り、相手の気迫が痛いほどにつたわってくる。
無知だというのは自覚しているものの、あいての気迫の強さくらいはわかる。
何よりもその瞳は真剣そのもの。
そう、あのときの塔矢とおなじ眼をこの人、してる。
…佐偽も同じような眼をしてこの人をみているし。
ちらりと背後をみれば佐偽もまた真剣な面持ちで相手をじっと見つめている。
何だか一人、おいてけぼりをくらったような、そんな感覚。
「いくぞ」
びしっ。
どきっ。
塔矢の父親が碁盤に石を打ち落とす。
おもわずそのしぐさにどきりとしてしまう。
『ヒカル?いきますよ!五の三、カカリ!』
ふぅ。
佐偽をみれば何やら真剣なまなざしで相手をみつめているまま。
これまでにうった、塔矢のときとも、加賀とのときともまったくことなる怖いほどの表情がみてとれる。
ビシッ。
一寸の好きもなく、それでいて打ち方によどみがない。
ヒカルが石をおく手とは雲泥の差。
この人、打ち方…すげえかっこいい。
塔矢の打ち方もかっこいいとおもったけど、この人はまた格別……
思わず相手の石のうちこみに見惚れてしまう。
それほどまでに何やら洗練されているような石の置き方。
「…アキラには二歳のころから碁を教えている。私とは毎晩一局うっている。すでに腕はプロ並みだ。
アマの大会にはださん。あいつが子供の大会になどでればまだ伸びる子供の芽をつむことになる。
アキラは別かくなのだ」
何やら相手がいっているが、相手の打ち込みしてくる石の置き方におもわず見惚れているヒカル。
それゆえに相手の言葉はまったくもって頭になどはいっていない。
まるで指先がひかっているかのごとくの石のおきかた。
「だからこそ、そのアキラに勝った子供がいるなど、私にはしんじられん」
相手が話している最中も佐偽からの指示はとび、そのとおりに打ちこみしているヒカルであるが。
ごくっ。
輝く指先。
輝く手。
俺も…俺もこんなふうに…あんなふうに打てたら……
その思いがどんどん胸の中に膨らんでくる。
『十の十六。星…ヒカル?』
どこかヒカルの様子がおかしい。
指示をしても石をおく気配がない。
ヒカルの視線は相手の手元に注がれており、そのまま無意識なのであろう、すっと横に手をのばして石をつかむ。
そう。
あんなふうに打てたら……
びしっ!!
「『!?』」
佐偽が指定した場所とは違う場所への打ち込み。
だが、問題はそこではない。
今までは、ことこととただ石をおくだけの手筋だったのに、今、ヒカルが撃ち込みした一手はあきらかに異なるもの。
『ヒカル!?あなたいつ石がもてるようになったんですか!?』
そもそも、ヒカルは石をもってまだ数日。
それがいきなり石がもてるようになるなどとはおもってもいない。
というか石をもったことすら数えるほどしかないのだから。
それゆえに対局もきになるものの驚きを隠しきれずにヒカルにと問いかける佐偽。
「…え?…あ?…今、俺?」
一瞬、自分が何をやったのか理解不能。
佐偽の言葉からどうやら自分がやったらしい。
らしいが…
「ええ!?あ、すいませんっ!あ、あの!も~いっかいためしてみてもいいですか!?今、おれ、まともにうてましたよね!?ね!?」
背後を振り向いても、驚きの表情をしている佐偽の姿が目にはいる。
それに何よりも今の感覚は、佐偽が…幽霊が体をのっとったような感覚ではない。
それだけはわかる。
ならばつまりは、今のは無意識ながらも自分がやったということに他ならない。
「君、碁に二度打ちは……」
そんなヒカルに一瞬驚いたものの、背後にいたヒカルの腕を始めにつかんだ男性がいってくる。
が。
「いい。やってみたまえ」
今の一手はたしかに異彩を放っていた。
悪手にみえなくもないが、だがそれ以上に興味深い。
それに何よりも当の本人が何やらかなり驚いている様子。
「えっと、たしか……えいっ」
すかっ。
相手の許可を得て、今一度石をつかんで同じように挑戦するもののもののみごとに石は手をすっぱぬける。
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
石を指で挟んでもつことすらもできない状況におもわず周囲は静まり返ってしまう。
『ヒカル。そうでなくて。指をこう、です』
何だかとてもわくわくする。
ヒカルはまだ石をもって間もないというのに。
もし、今のようにすぐに打てるようになるのだとすれば、これほど教えがいのある弟子はいないというもの。
「えっと…やった!もてた…えいっ!」
すこ~んっ!
何やら必至に石をもつために格闘しているヒカルの様子に思わず全員が唖然としてしまう。
「…ふっ。君は石をまともにもったことがないのか?」
そんな様子をしばしながめつつもふっと笑みを浮かべてヒカルにと問いかける塔矢の父親。
「まともも何も。あ~!今のもしかしてまぐれ!?塔矢のおやじさんみたいにきれいに打てたとおもったのにぃっ!」
思わず叫んでしまうのは仕方ないであろう。
無意識ながらにも確かに綺麗に打てた、と自覚があるからなおさらに。
「…いや。ちょっとまってください。名人。まともに石をもったことがない?あの一手を即答しておいて?」
しかも、数手だけとはいえ塔矢名人の打ち込みにもよどみなく打ち込みかえしてきたこの子が?
…石をまともにもったことがない?
信じられない。
というかありえない。
「石をまともにもったのはこの金曜日がはじめてだし。あ~!やっぱりできないっ!!
…さっきのまぐれかぁ。…無意識とはいえまぐれでもきれいにできたのは奇跡?」
『ヒカル。ヒカル。あきらめないで。ですから、手をこうして…』
どうせ自分の姿は誰にもみえていないはず。
それゆえになぜかヒカルにのみは触れることも可能であるがゆえに手取り足取り指導する佐偽。
はたからみれば、ゆっくりとおぼつかない手つきで子供が無理をして石をもとうとしているようにもみえなくもない。
「…何か手がつってきそうだから、も、い~や…」
これ以上やったら何だか手がおもいっきりつってしまいそうな気がする。
それゆえに今のところはとりあえずあきらめる。
しゅんとなりつつも、うなだれるそんなヒカルの姿をかいまみて、
「…君は誰かに師事しているのか?」
ふと感じた疑問を投げかける。
さきほど何か叫んでいる最中に金曜日がはじめて云々といっていたような気もしなくもない。
「?師事って?とりあえず爺ちゃんに頼んで、
この前の土曜日から社会保険センターでやってる囲碁教室にはかよいはじめてますけど」
「ふむ。白川くんの。か」
だがしかし、あの教室はあくまでも素人というか初心者向けのもの。
それだけであの息子に勝てるほどの力をつけるとはおもえない。
「?」
名前をいわれてもピンとこない。
というかヒカルは囲碁教室の先生の名前をまだ覚えていない。
「まあいい。とりあえず続きをやろうか?」
「続き…って、そ~いえば、俺が幾度も石おいちゃって、ぐちゃぐちゃにいつのまにかなっちゃってる……」
たしかに、石をまともに打とうとして石を幾度ももったがゆえに盤面上には白石がかなりごったがえしている。
「あ、すぐにきれいにしますね。えっと…っと」
とん。
とん。
とん。
ざらっと一気に盤面上の石をおしのけ、一手目から順番に改めて石を置きなおす。
普通、今打ったばかりの一局を始めから並べなおすことなど…素人には絶対にできない。
なるほど。
アキラに勝った、というのはあながちウソではないのだろうな。
そんなことをおもいつつも、何もいわずにヒカルの棋譜ならべをしばし眺める塔矢行洋。
「っと、ここまで。でしたよね?たしか?」
相手と、そして佐偽にと確認のためにと問いかける。
『ええ。間違いありませんよ。ヒカル』
何だかとてもわくわくする。
このものとの対局もわくわくするが、何よりもヒカルの成長ぶりが目覚ましい。
何しろ彼は数日前に初めて石をもったばかりなのだから。
勝ち負けには関係なく、ヒカルの才能をさらに引き出してみたい。
虎次郎にも才能はあった。
あったがここまでめまぐるしいまでの成長ぶりはあまりみられなかったのもまた事実。
……楽しい。
未発掘の、しかも未熟なしかも埋もれた原石を磨きあげるのは何よりも喜びとなる。
このものとの対局はいずれ、時がくればなせられるでしょうし。
今はとにかくヒカルの覚醒をうながしてみましょう。
佐偽がそんなことを思っているなどヒカルはまったく気づく様子もなく、
「ああ。間違いない」
「それじゃあ、中断してすいませんでした。えっと改めておねがいします」
いいつつもぺこりと相手に頭を下げて対局の続きを佐偽に示されるままにと打ちこみするヒカルの姿がしばし見受けられてゆく。
これは……
思わずその場にいた全員がうなってしまうのは仕方がない。
ヒカルが石を置いていたのは確かであるが。
だがしかし、局面上はどうみても互角以外の何ものでもない。
だがしかし、対局している相手にはわかる。
相手が何を目指しているか、ということくらいは。
「…なるほど。今日はここまでにしておこう」
「え?」
相手が何を言いたいのかわからずにきょとん、とした声をだす。
『おや?さすがに気づかれてしまいましたかねぇ?ジゴにしたのをヒカルにみせたかったのに……』
置き石ならば互戦のようなコミの半目、という中途半端な数字はない。
相手の力量が同じであるがゆえに、だからこそわかるものがある。
盤面はまだ中盤にさしかかったばかり。
そこでいきなり手をとめる塔矢の父親におもわず首をかしげるしかないヒカルであるが。
「?あの?」
「君がアキラにかった。というのは事実、なのだろうな。君はプロになるつもりがあるのか?」
「プロ?俺が?まっさか~。俺なんて子供だしなれるはずないし」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
このセリフからもどうやら囲碁の世界のことをまったく知らないのが見て取れる。
「そういえば、君。今日はどうしたの?アキラくんがいるかともってきてみたの?」
何だか部屋の空気がとても重い。
それゆえに話題を変えようとヒカルにと話しかける受付係の女性。
「え?あ。そうだった!えっと。今日はお姉さんにちょっと相談があってさ。
無理なお願いかもしれないけど、一週間ばかり、碁のセットひとつ、貸してくれない…いや、くれませんか?
俺、碁打ちセットもってなくて。でもちょっとした理由で必要になっちゃって。
一週間でいいんですっ!絶対にきちんとかえしますからっ!」
そんなヒカルの言葉に思わず顔を見合わせる大人たち。
「?もってない…って。君、どうやって今まで碁をうってたの?」
「うったのはこの前塔矢とうったのが初めてだし。おこずかいとめられてるからかおうにもかえないし」
いやまて。
かなりまて。
初めて塔矢くんとうって、それで塔矢君にかった!?
そんな彼のセリフに思わず目を大きく見開く白いスーツ姿の男性。
「家族で碁をたしなむものはいないのか?君のところは?」
「唯一やるのは爺ちゃんくらいかな?だけど家はちょっぴり離れてるし。
家族でやってる人はだれもいないよ?だから必要ならお年玉でかおうとはおもってるけど。
とりあえず!この二十三日までにどうしても必要になっちゃったから、
だからここならあまってるのがあるかとおもってききにきたんだけどさ」
家族に興味があるものが一人もいない。
というのにも驚かされる。
ふつう、子供が碁を打つ場合は親が何らかしらの興味をもってというのが通常。
「?何かあるの?」
「それがさ~。今日、ポカをやっちゃってあるカケしてて半目まけしちゃって。
負けたバツで大会にでろ!とかいわれて。だけど俺、よくまだ基本とかわかってないから。
とにかくそれまでに多少のことはおぼえよ~かと。それには石もったほうがわかりやすいとおもうし」
「「…基本がわかっていない?」」
あれだけうてるのにそれはいったいどういうことか。
目の前のこの子供は何だかとても不思議すぎる。
だがしかし、それ以上に興味をそそられる。
「市川さん。確かだしていなかった新品のセットがあったはずだったね。
この子にわたしてあげてくれないか?」
「え?あ、使ってない古いのでいいですっ!無理いってるのわかってますしっ!
それにレンタル料金もかかるでしょうしっ!」
塔矢名人のセリフにあわててぱたぱたと手を振りながらも答えるヒカル。
そこまでしてもらってはかなり悪い。
さらにいえば新しいものはそれだけ絶対に借りる金額も高くなる。
「いや、新品のほうがいいだろう。それよりその一局というのをみせてくれないか?」
「?つまり石をならべてみてくれ、ということ?」
「それはかまいませんけど…あ、レンタル料金はまってくださいね。
…おこずかいまだとめられてるままなので……そういえば、いくらかかります?」
先にそれをきかなければどうにもならない。
千円単位以上だとすれば小学生に払える金額ではない。
それこそ祖父に何とかお願いして出してもらう以外に方法はない。
「そのことは気にしなくていい。とにかくみせてくれないか?」
「あ、じゃあ、私、品物とってきますね」
まだつかっていないセットは確かに奥にとおいてある。
塔矢名人が何をいいたいのが何となく察しがつく。
つまりは『もったいない』というのが先決であろう。
才能がおそらくある目の前の子ども。
だがしかし、家に碁のセットも何もなく、さらにいえば家族の誰も興味をもっていないらしい。
しいていえば唯一、祖父らしき人物が碁をたしなんでいるようだが口ぶりてきにはその程度。
つまりは、彼には指導するべき人物がだれもいない、ということに他ならない。
『ヒカル?あの一局の手をおぼえているんですか?』
?
佐偽。お前何あたりまえのこといってるの?
お前が支持したにしろ、うったのはおれだぜ?
そんな佐偽の疑問にさらっとこたえるヒカル。
さらりといわれてぞくぞくする。
このヒカルはどこまでの才能を秘めているのであろう。
今、その場でうった棋譜ならばたしかに簡単かもしれないが時間がたったものも並べられるとなれば……
「えっと。俺が黒で相手が白で……」
とんとんとん。
今日打ったぱかりの加賀との一局をその盤面にとならべてゆく。
途中で自分がポカをやったところでは、周囲からため息がもれるがそれは仕方のないこと。
「…で、こうきてこう。ここで終盤。…半目ほどたりなくてまけちゃって……
ああ!おもいだしても腹がたつ!あかりのやつに気をとられてうちまちがえさえしなきゃっ!」
そもそも面倒なことにはならなくて、相手に土下座させて謝らせることができたのに。
だがしかし、誰もヒカルの叫びに反応はしていない。
そもそも、中盤のポカからの怒涛の追い上げが目に見えてわかる棋譜である。
言葉を失っても仕方がない。
この子は……なるほど。
あのアキラが畏れを抱くわけだ。
しかも碁の知識などに関してはほぼ素人に近い。
だが、その打ち込みの達筋はブロをすら凌駕している。
こんな子供がいるものか?
だが、事実目の前にいるのだから信じざるを得ないのも現実。
「…大会。といったね。何の大会だね?」
「え~と…内緒にしといてくださいね?俺まだ小学生だし。
冬のブールのかわりに中学の大会にでろって。加賀って人が」
首をすくめていってくるヒカルのセリフに思わず内心納得する。
こんな子供が世の中に埋もれていたことすら驚きだが、だがちょうどいい機会でもある。
「緒方くん」
「はい?先生?」
何やらぽそぽそと白いスーツの男性を呼び留め会話をしている塔矢の父親の姿が目にとまるが。
何をいっているのかはヒカルにはきこえない。
「誰か。紙と書くものをもっているか?」
「え?あ、はい!すぐにっ!」
さらさらさら。
??
何やら話し終えて、紙に何か一筆かいている塔矢の父親の姿が目にはいる。
そしてそのままそれを封筒にいれ、
「もしよければこれをもってこの日曜日にここに訪れてみたらいい。
イベントが催されているからそこで碁盤の販売もあるはずだ」
こういう子を伸ばすのを楽しみにするのは何も佐偽だけではない。
実力のあるものならば誰でも才能ある子供を伸ばしてみたい。
とおもうのは当然。
何やら住所らしきものが書かれている紙と、そして一枚の封筒がヒカルにと手渡される。
「え?あの?」
戸惑いを隠しきれないヒカルであるが。
「名人。そろそろお時間が……」
「わかっている。…君がわれわれのところにくるのをたのしみにしているよ」
??
その言葉の意味はヒカルにはまったくもってわからない。
そのまま、スタスタと何もいわずに碁会所をあとにしてゆく塔矢の父親。
「えっと…何?これ?」
しばし、一人取り残され、
手渡された住所がかいてある紙と封筒を手に目をぱちくりさせるヒカルの姿が見受けられてゆく……
-第7話へー
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あとがきもどき:
薫:次回でわくわく?どきどきの佐偽&ヒカルのやり取り開始ですv
大会の前に例の倉田さんとの出会いをばv
そのほ~が、何かとおもしろいかなぁ?とおもって大会の前にそちらを先にv
大会にもきちんと塔矢明が見学としてでてきますよ~v
その理由は…この回を見た人にはわかるでしょうけどv
ええ、あるいみ落ち込みぎみな父親的な配慮です(まて
何はともあれではまた次回にて~♪
2008年7月23日(水)某日
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