まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

さてさて、さくさくいくのですよ~v
しばらくは、原作にそった展開が続くのは仕方ないとして~
いつになったら佐偽転生にまでいけるんだろ~?(笑
やはり私的には彼が生身でばたばたと百人切りするのもみてみたいv(笑
何はともあれ、ゆくのですv

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「……まけた?明が?」
「ええ。何でも同い年の子に負けたとかでずっと部屋で棋譜を並べているんです」
それもかえってからずっと。
ご飯もほとんどたべずに。
「…明ほどの実力をもった子供が他にいるとはおもえないが……」
だからこそ、息子を一度も普通の大会にはださなかった。
他の子どもの成長の芽をつんでしまう可能性があるがゆえに。
「まあ、好きにさせときなさい。あの子は強い。長考も時には必要だ」
おそらくこれは、息子にとって初めての試練。
この試練を乗り越えれば、明はさらに大きな成長をとげる。
そう確信するがゆえの言葉。
だが……
「…明日の大会に顔をだしてみるか……」
もしもそのような子供が本当にいるのならば大会に出ている可能性もある。
ちらりとその子の手をみれば相手の力量はおしてはかるべし。
そうつぶやきつつも、目の前にあるお茶をゆっくりとすする。

星の道しるべ   ~急所の一手~

ぴんぽ~ん。
「はぁい。…あら、あかりちゃん」
「こんにちわ。ヒカル、いますか?」
玄関のチャイムがなり外にでてみれば近所の藤崎あかりがそこにいる。
「それがね。あのこ、囲碁教室にかよいはじめたのよ」
「…は?」
「まったく、あの子どうしたのかしらねぇ。まあ教室の費用はお義父さんがだしてくれるらしいんだけど」
ヒカルの母親から言われたその言葉に目が点となってしまう。
「ヒカルが…囲碁?」
囲碁ってお爺ちゃんたちがのんびりとうつあれ…よね?
ヒカル、おこずかいとめられてお爺ちゃんの碁を相手するのにお金貰う気なのかな?
「まったく。お義父さんにもよくいっとかないと。
  きっとヒカルのことだから、碁をおぼえておこずかいせびるきよ?」
「…ぷっ」
まったく同じ考えをいだいていたらしく思わず吹き出してしまう。
「でも、光が囲碁…ねぇ」
はてしなく似合わないような気がする。
そもそも、囲碁のイメージは年寄りのイメージが強い。
それは彼女、あかりが囲碁の世界をよく知らないがゆえの偏見であることは知る由もない。
「何ならいってみたら?社会保険センターらしいから」
「ん~。考えてみます。失礼しま~す」
とりあえず、ヒカルの母である進藤美津子に挨拶し、ヒカルの家をあとにする。
「う~ん。とりあえずヒカルの様子でもみにいってみるかな?」
どんな顔をしてやっているのかかなり気になる。
というかおもいっきり笑えるような気がする。
そんなことをおもいつつ、足を社会保険センターへと向けてゆく。

『ひ…ヒカルのばかぁぁ!ばかばか!先生を怒らせたら囲碁がうてないじゃないですかぁぁ!』
あ~、うるさい。
というか、あれは自分というか相手に責任があるとおもう。
「そうはいうけどさ。佐偽。あんなあからさまなカツラ…しかも茶髪だぜ!?吹き出さないほうがどうかしてるぜ」
囲碁教室にいったはいいものの、やってきた阿古多をみて思わず吹き出してしまったのは事実。
何しろ昨日とはまったくちがうカツラをつけてやってくれば思わず吹き出してしまうのは仕方ないのかもしれない。
ヒカルはまだ小学生。
心に留め置く云々、ということははっきりいって上手ではない。
『それに、それにっ!!あの神の箱の打ちての続きもみれないじゃないですかぁぁ!』
「だ~か~ら。テレビだって。…しゃ~ない。そ~いえば、昨日何かもらったっけ?」
そのままポケットにつっこんだままだったのを思い出す。
ぐしゃぐしゃにポケットにつっこまれたそれは、とあるビラ。
佐偽がなくと頭ががんがんしてくるのがたまに傷。
それだけ力のある霊なのだろうが当人に自覚がないのもこれまた何となくわかる。
「せっかくの日曜日だしなぁ。日本棋院会館…か。
  よっし!お母さんがめずらしくおこずかいくれたのもあるし、ここにつれてってやるよ!」
先日、倒れたのがあるせいか、貧血や熱中症かもしれない。
そう医者にいわれたこともあり、気分が悪くなりそうなら何か買いなさい、そういって渡されたお金。
用途がどこかかなり異なるような気もしなくもないが、背に腹はかえられない。
『ほんとうですか!?わ~~いっ!ヒカル、だいすき~!!』
「って、いきなりだきつくなぁぁ!」
どうやら佐偽とヒカルのみならば触れることは可能らしい。
それはヒカルに憑いたからなのか、はたまたヒカルに多少の霊能力があるからなのかそれは誰にもわからない。
ハタからみれば、ヒカルが一人で騒いでいるようにしかみえないのもまた事実。
道行く人が何事かとちらりとみては、かかわらないほうが賢明と悟り、そのままその場を素通りしてゆく。
現代における、見ないふり、他人のことは気にしない。
それをまさに象徴しているその行動。
最も、気にされてじろじろとみられてもかなり困るが。
「ここにいきかたもかいてあるしな~」
近くの交通手段もきちんとビラには明記されている。
ここからだと数駅電車でいけば時間的にはさほどかからない。
「よっし!今日は遠出に決定!」
『わ~い、わ~いv』
ヒカルの言葉にその横でものすごくうれしいらしくぴょんぴょんととび跳ねる佐偽の姿をみて苦笑してしまう。
というか、こいつ…本当に大人の幽霊?
小学六年生の子どもであるヒカルにそうおもわすほどに佐偽の喜びようはまさに純真そのもの。
「それじゃ、駅にむけてしゅっぱ~つ!」
子供だけで遠くにいくのはどうかともおもうが、一応人には姿はみえないが保護者?もいることだし。
そう自分の中で結論づけ、社会保険センターから駅にと足をむけてゆく。

「ヒカル?」
「あれ?アカリ。どうしたんだ?」
ふと駅に向かう途中でばったりとアカリに出会い、おもわず問いかける。
「それはこっちのセリフよ。ヒカルの家にいったら囲碁教室にいったってきいてもうびっくり。
  ってやっぱりあきたの?」
「いや、ちょっとトラブルが……そうだ!アカリもつきあえよ!」
「?」
一人でいってもつまらない。
まあ、まったく囲碁がわからないものがいっても楽しいかどうかは不明だが。
すくなくとも話し相手の確保くらいにはなる。
「これにいってみようとおもうんだ。アカリもいかねえか?」
いいつつも、ぐしゃぐしゃになったそれを無理やりに広げたしわだらけのビラをアカリの前にとつきだすヒカル。
そこには、大きく、【第〇回、全国子供囲碁大会】と書かれている。

「え~!?ってヒカル、これにいくつもりなの?」
「うん」
アカリの質問に即答するヒカルに思わず絶句。
「というか、ヒカル。何で囲碁にはまったわけ?」
そういわれても返答の仕様……は、あ、あった。
「アカリもしってるだろ?俺達の爺ちゃん、おれたちに囲碁の相手せがんでたの。
  おこずかいとめられてんだぜ?おれ?でも爺ちゃんと対局したら五百円もらえるんだぜ!?」
「・・・・・・・・あ~、なっとく」
それだけですべてが何となく納得し符号する。
相手をするにしても基礎をしらなければどうにもならないのも事実のはずである。
何ごとにも手順、というものは確かに必要なのだから。
「…それでいきなり始めたわけ。だ。ん~…いいよ。私も暇だし。ついてってあげる」
「やり~!!」
「あ、でもヒカル。お金あるの?これにかかれてるの電車でいかないといけないけど?」
「とりあえず、母さんが先日のこともあって気分わるくなったら何かかえ、といってくれたお金と。
  あとは爺ちゃんががんばってこい、っていってくれたジュース代があるから。
  いってかえるくらいはできるさ」
ヒカルの祖父である平八はヒカルが碁を覚えるのを期待して先行投資とばかりに千円ばかりくれている。
というか今までおこずかいを止められていたヒカルにとってはかなりの大金。
「じゃあ、ヒカルのおごりならついてってあげる」
「…わ~ったよ」
にこやかに、それでいてあるいみ取引に近いことを持ちかけてくるアカリのセリフに思わずがくりと肩を落とす。
このあたりは昔からアカリにかなわない。
そんなことを心の隅でおもいつつ、
「それじゃ、いこうぜっ!」
「あ、まってよ~!ヒカル!」
『わ~い、わ~い、こどもの囲碁大会~♪』
駈け出してゆくそんな二人の間にきゃいきゃいとはしゃぐ大人の姿があるなど…誰もおそらく信じたくはないであろう。
おそらく、そういった類のものが視えるものがみれば目を点にするような光景がしばしその場に繰り広げられてゆく。

ごくっ。
おもわず二人してのどをならしてしまう。
「…ヒカル。何かすごい雰囲気…ちいさいこもいる……」
みれば、小さな子供も参加しているのが目にとまる。
みんな真剣に碁盤に向かっているのが見て取れる。
日本棋院会館。
本日ここで行われている子供囲碁大会は、年齢別に分けられており、子供の部にも小学の部、中学の部、とわかれている。
「うん。…何かすごいな……」
何ともいえない緊張感がただみているだけの自分たちにも伝わってくる。
『すごいすごい。子供がいっぱい!いいものですねぇ。時代がかわれどこうしてうけつがれてゆくのですね。
  彼らが私におしえてくれます。千年前も今も昔もおなじだ、ということを』
一人、その緊張感に飲み込まれずに約一名、きゃいきゃいとはしゃいでいる存在がいるにはいるが。
「そういや、あいつ、いるかな~」
「「し~っ!!」」
そんな会話をしていたヒカル達に近くにいた保護者らしき人物がいってくる。
あわてて口を押さえて互いに顔を見渡し、
「あ、す、すいません。アカリ、いこうぜ」
「あ、うん」
いいつつも、それぞれの子どもたちの対局の様子を近くでみるために会場となっている部屋の中を歩きだす。
『…そこの盤面の左上隅の戦い、黒が打ち損じると死にますね』
ふと歩いているととある盤面をみて佐偽がつぶやいているのをききおもわずその盤面をのぞきこむ。
小学生くらいの、おそらく自分たちより年下。
子供が二人、碁をうちあっている。
たしかに、何か面白い形を左上隅のほうでは白石と黒石がひしめきあって形づくっているにはいるが、
しぬとかいわれてもヒカルにはピン、とこない。
「これ?」
『一の二が急所、です』
ふぅん。
そんなものか。
佐偽にいわれ、ふと足をとめるとほぼ同時。
パチッ。
黒をもっている子供が盤面に碁石を打ちこんでくる。
……あ゛。
「おしいっ!その上!そこじゃだめなんだよな」
佐偽が指摘したその真下に打ち込みしてきたがゆえにおもわずぽろっといってしまう。
「え?」
「…え?」
ヒカルにいわれて互いに手をとめる対局していた子どもたち。
「き、きみっ!!何を考えてるんだ!対局中に口出するなんて!あそびじゃないんだぞ!?」
がしっと近くにいた実行委員の一人がそんな光の肩をおもいっきりつかむ。
「も、もう、ヒカルってば馬鹿っ!」
そんなヒカルの後ろではあきれた声でいっているアカリの姿がみえなくもないが。
「ご、ごめんなさい!ついっ!あまりにビンゴのところにうちこみしてたから…」
というかたったの一つ違いなのだから、ついつい『おしい』という言葉がでたのは仕方がないであろう。
「森さん、さわがないで。…とにかく、状況をおしえてくれるかい?」
同じく実行委員の一人らしき別の男性が近付いてきてそんなことを光の肩をつかんだ人物にいってくる。
「もう!ヒカルったら!何もわからないのに口出しして!」
「だってな~。あまりにビンゴなんだぜ?もったいないじゃないかっ!」
「ヒカルにどうしてそんなことがわかるのよっ!」
「わかるからわかるんだよっ!」
「ああもう!君たち!さわがないで!とにかく、君はこっちへ。緒方先生、この子は奥につれていきます。
  君は状況をその人におしえてもらえるね?」
言い合いをするアカリとヒカルを制し、ヒカルのみそのまま奥にと連れてゆく、森、と呼ばれた男性。
「あ、ヒカル!」
「それで?いったい…」
「すいません!ヒカルってば何もわからないくせに口出しして対局台無しにして!本当にすいませんっ!」
一人取り残されたアカリはただただ、ひたすらに謝るのみ。
「とにかく、どういった内容だったのかおしえてくれる?」
緒方、と呼ばれた人物が対局していた子どもたちにと問いかける。
少女がいっている何もわからないのに、というのも気にはかかるが。
「ええと。僕がここに打ちこみしたら、あの子が、いきなりおしい、その上、といったんです」
「これは……」
盤面をみればブロでも迷うような急所の一手。
「あの、本当にすいませんっ!よくあいつにはいってきかせときますからっ!
  ちらっとみてヒカルにこたえられるはずなんてないのに、ほんとうにすいませんっ!」
だがそのようなことはアカリにわかるはずもない。
それゆえにひたすらに頭をさげてとにかく謝る。
「…君、今、何ていった?」
一瞬、目の前の女の子が何をいったのか理解できずに思わず逆にと問いかける。
いま、ちらっとみて云々とかいわなかったか?
この子は?
「え?」
そう彼が思っていると、それをまるで肯定するかのごとく、
「その子のいうとおりです。その子たち、いきなり会場にはいってきて対戦をみていたんです。
  それで、あの男の子がうちの子たちの対戦の前にいった直後、ちらっとみていきなり口出ししてきたんですっ!」
アカリの言葉に続くかのように対戦していた子どもの親が口出ししてくる。
「…君たちは参加者…ではないのかね?」
「私は、ただヒカルについてきただけですし。囲碁も何もしりません。ヒカルは…まあ囲碁をはじめかけですけど」
いやまて。
かなりまて。
今、この子、はじめかけ云々、とかいわなかったか?
「あ、あの、本当にすいませんでした!し、失礼しますっ!」
「あ、き、きみっ!」
そのままそこにいればまちがいなく怒られる。
そう判断し、謝り倒したゆえにだっとその場から駈け出し外にと向かうアカリの姿。
もう…ヒカルの馬鹿っ!
アカリが心の中で叫んだのは…いうまでもない。
だがしかし、残されたものはといえば、ただただ愕然とするばかり。
何しろ、問題の盤面はそれほどまでに細かなものなのだから――


「バカバカ!ヒカルのバカ!」
「だぁ!わかってるってばっ!俺もまあわるかったとはおもうよ」
『ええ。あの子たちには悪いことをしました』
棋院の一階にとある休憩の間。
というか棋院にはいりすぐにあるくつろぎの間ともいえなくもないが。
とにかくそこにて説教を終えた光と合流し、ことごとく罵声をあびせているアカリ。
佐偽もまた、自分の助言がせっかく対戦していた子どもたちの邪魔したのをうけて多少しゅんとなっている。
まあ、口にしてしまったのはヒカルなのだが……
「そもそも、第一!ヒカルは囲碁はじめたばかりなのに何でいらないことをいうのよっ!」
「しかたないだろ!ほんとうにもったいなかったんだからっ!あれっ!」
絶対にアカリもわかってたら口出しするぞ。
あれは。
そう心で確信をもちつつも思わず叫ぶ。
「何でヒカルにそんなことがわかるのよっ!」
「わかるったらわかるのっ!」
何とも終わりのない水かけ論。
ガァッ……
ぴたっ。
そんな言い合いをしている最中、棋院の自動扉が開く音がしておもわず二人して一瞬黙り込む。
何となく振り向いたその先にたたずむ着物を着ている男性が一人。
だが、どことなく…そう、何か緊張してしまうような雰囲気の持ち主。
「…あれ?…あ!今朝テレビにでてた、神の手に一番ちかいおっさん!?」
佐偽がたしか、テレビをみてそんなことをいっていた。
それゆえにおもわず叫ぶ光。
「ヒカル。かみのて、ってなに?髪の毛のこと?」
「あのな~」
といわれても、ヒカルにもよくわからない。
説明のしようがない、といったほうが正しいが。
「君たち、あまり騒がないようにな」
「「は、はいっ!」」
そんな会話をしていると、ぴしゃりとその人物にいわれ、思わず姿勢をただしてしまう。
そのまま、その人物はちらりと二人を一瞥し、そのまま奥のほうにと歩いてゆく。
「な、何か緊張した~」
「ヒカル。お昼くらいおごりなさいよっ!」
「わあった、わあったってばっ!」
奥にひっこんでゆく男性の姿をながめつつも、未だに終わりのない言い合いをしながら二人、棋院から外にと出る。
「あ~あ。何だかなぁ。よっしゃ!あかり、ら~めん食べに行こうぜ!」
「え~!?」
「じゃ、出発~」
『ヒカル?らーめん?とは何ですか?ねえねえ?ヒカル、ヒカル~??』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
歩きだしたヒカルにものすごく首をかしげながら問いかけてくる佐偽に思わず唖然としてしまう。
…そういや、こいつ平安時代の幽霊とかいってたからそんなのしるはずないか。
「ら~めんはたべもんっ!」
『ほ~。そんななまえのたべものがあるんですか~』
思わず感心してつぶやく佐偽とは対照的に、
「…ヒカル?もしかして何か、またいるの?」
…げ、しまった。
こいつ極端にこわがりだったんだっけ?
そう思い直し、
「いや、ただの一人ごと。さ、いこうぜっ!」
そばに幽霊がいる、なんてしったらこいつ絶対に泣くしな。
というか、騒がしいのは佐偽だけで十分だっ!
『ヒカル!騒がしいとは何です!?さわがしいって!!』
心の中でつぶやいた台詞にすかさず突っ込みをいれてくる佐偽。
だが、それこそがヒカルの偽らない素直な気持ち。
「とにかく!いざしゅっぱ~つ!」
過ぎてしまったことは仕方がない。
人間前向きが肝心である。
進藤ヒカル。
小学六年生。
このあたりの割り切りの良さは…あるいみ天然ものなのかもしれない……


『ヒカル!ヒカル!巨大な鳥が空をとんでいますよっ!』
・・・・・・・だあっ!
あれは飛行機っ!
アカリがいるので声にはだせないので心の中でひとまず答える。
『ひこ~?何ですか?それ?』
・・・とりあえず、こいつに先に今の現状をつたえるのが先決かもなぁ。
といっても理解してもらえるかははなはだ疑問だが。
「しかし、やっぱりら~めんはいいよな~」
「そろそろ寒くなってきてるしね」
季節は九月。
まだまだ暑い日があったかとおもえばいきなり肌寒くなる日もあるのも事実。
「あ。そうだ。ヒカル。明日、お姉ちゃんの中学で創立祭があるんだって。いっしょにいかない?」
「明日?十五日の?」
「うん。そう!」
食事もおわり、とりあえず帰路につくために日本棋院の近くのラーメン屋から駅にと向かっているヒカルとアカリ。
「やだよ」
「そういわないで。お姉ちゃんがたこやき券せっかくくれたんだから!
  明日、葉瀬中の門の前に二時ね」
「おま、いつも強引だぞ!?」
「絶対だからねっ!」
いいだしたらてこでもきかないのは昔から。
『ヒカル、ヒカル、たこやきってなにです?そうりつさい?おまつりですか?いきたい、いきたいですっ!ヒカルっ!』
「……だあっ!どいつもこいつも!俺の意見は無視かよぉぉ!」
横で何やら目をきらきらさせてはしゃぐ佐偽の姿を目の当たりにし、思わず頭を抱え込む。
「…ヒカル?とにかく、明日の二時、だからねっ!」
『おまつり、おまつり~♡』
「だれもいくとはいってねぇぇ~~!!」
ヒカルの思いは何のその。
どうやら却下できる雰囲気ではなさそうである……


「おはようございます。アキラ先生、もうきてる?」
日曜日は大概よくこの場所に顔をだしているがゆえにここに通うのが楽しみになっている。
名実ともに世間に認められている塔矢行洋の一人息子である塔矢明。
その実力はトップ棋士におとらない、とまでいわれ、期待の星でもある。
もっとも、ここに通う大人たちはそんな彼がブロになり、成長してゆく様をたのしみにしているものが大多数なのだが。
「あ。いらっしゃい。う~ん。いるにはいるんだけど……
  朝早くにきてからずっと昨日の一局を並べているわ。誰ともうたずに」
碁会所が開いた直後にきて隅にとすわり、ひたすら延々と石を並べているのが現状。
「昨日の?ああ、たしか同い年の子どもに二目差でまけた、とかいう?」
彼がやってきたのは、対戦がおわったのち。
なので話しか知らないが、昨日、いったいどんなことがあったかなどとは。
だが、一応、結果だけは碁会所の人々の話で情報は得ている。
「まあ、きくだけきいてみるわ。ちょっとまってね」
「あ、無理にとは……」
いいつつもカウンターを立ちあがる。
パチ。
パチ。
やはりそうとしかおもえない、というか間違いない。
昨日からずっと石を並べてわかったことがある。
昨日のあの子の一局は…どうみても指導碁のそれでしかない。
だが、そんなはずはない。
あのどうみても素人としかみえない手つき。
どうでもいい一手をうちこみするのにすらも時間がかかっていた。
それなのに……
わからない。
いったい何ものなのかが。
……進藤光!
一手、一手を何度も並び替えて検証した。
きになるのは定石の型がかなり古いということ。
そう、まるで本因坊秀作の時代のそれとかさなる。
「アキラくん。広瀬さんが指導碁をお願いしにきてるんだけど……」
考え込むアキラの後ろからこの碁会所をまかされている受付嬢が話しかける。
「……すいませんが……」
今の自分にはそんな余裕はない。
彼のことで頭はいっぱいいっぱい。
相手を思いやる余裕すらない。
こんなことははじめて。
何か見えない壁にぶちあたったのごとくに感じる苛立ちと恐れと…そして知りたい、という欲求。
「…昨日のあの子をまってるの?たしかに。名前しかわからないからここでまつしかないんだろうけど……
  あ。そういえば、昨日、私、帰り際に全国子供囲碁大会のチラシをあげたんだったわ。
  もしかしたらさして興味もなかったようだけど、いってるかもしれないわよ?」
がたっ。
「市川さん。それって今日、棋院でやってる?あれ?!」
その言葉におもわずがたん、と席を立ち上がりおもわずくってかかる。
「え。ええ」
ガタンッ!
「アキラくん?!」
その言葉を聞くと同時にそのまま鞄も持たずに走り出す。
「市川さん!おねがい!僕がいない間にもしあのこがきたらひきとめといてっ!」
知りたい。
恐れや不安はあるにしろ、あの彼の…進藤光、となのった自分と同い年の子の力が…知りたい。
その思いにつきうごかされ、そのまま他には目もくれずにかけだしてゆく明の姿。
「…な、何かアキラくん。かわったわね」
彼を昔からしっているがあんな彼などみたことは一度たりとてない。
「そりゃまあ、かわりもしますよ。今までライバル、というライバルがいなかったんですから。
  何しろ明くんに対等に渡り合えるのはブロの大人たちしかいなかったんですからねぇ」
そこに同い年の、しかも実力があるのかもしれない子供が現れれば、かわるというもの。
そんな会話が繰り広げられているとはつゆしらず、日本棋院にむかうためにと塔矢明は駅にと向かってゆく。


「何かトラブルがあったそう、だな」
バタン。
「これはめずらしい。塔矢先生。ちょうどいいです。とにかくこれをみてください」
こんな会場に彼があしを運んでくるなどめったとないこと。
いわれてそこにおいてある盤面をみてみれば、何だかおもしろい形となっている局面が一つ。
「われわれプロでも考えてしまうこの局面を即答したそうです。そらもちらっと見の即答です」
たしかに、ぱっとみただけではわからないであろう。
「……なるほど。この黒のいきしにの急所を一目で…な。そんなことができる子供が息子のアキラ以外にもおったのか……
  その子は参加者なのか?」
「いえ。ただの見学者のようです。友達とみにきていたみたいですけど……
  しかし、名前もきかずに返すとは……」
おもわずあきれて対応した委員のメンバーをみやる。
「す。すいません……」
まさかここまで細かな局面を助言したなど、いったい誰が想像できようか。
「一緒にきていた女の子は、少年のことをヒカル、とよんではいましたけど、それ以上はわかりません」
……ヒカル?
たしか、夕べ妻からきいた、明がまけた、という少年の名前とまったく同じ。
偶然なのか、はたまた……
「…まあいい。彼がそれほどの打ちてならば、いずれ、われわれ棋士プロの前に現れることになる」
しかし、試験を受けようかと決意しかけていたこの矢先の少年の出現。
何かの意図を感じなくもない。
そう、何かの……
そんなことをおもいつつも、その一角に石を打ちこむアキラの父親の姿が、
日本棋院の控え室の一角にてしばし見受けられてゆく――


                               -第2話へー

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あとがきもどき:
薫:さらっとながしましたv(こらこら
  まあ、原作やアニメ知らないひとには意味不明でしょうけど、まあ自己満足だからいいのさv(こらこら
  とりあえず、次回で塔矢明との二局目ですv
  原作&アニメと異なる点は、アカリが一緒にいる、ということくらい…かなぁ?
  あとは次期?
  ヒカル、一気に運命の波にのみこまれていってたり(苦笑
  ちなみに、ヒカルが佐偽と出会ったのは九月の十二日の金曜日、という設定ですv
  つまり打ち込みしているこの年月日というか西暦とおなじ暦でいっておりますv
  21に大会があり、んでもって23日の秋分の日には祖父とともにお出かけですv
  その後、三谷と出会うのも原作の設定とはかなり早くなっておりますvあしからずv
  何はともあれ次回、塔矢との一戦ですvではでは~♪

2008年7月21日(月)某日

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