まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
基本的にはヒカルを主体とした一人称にかぎりなく近い客観的視点です。
佐偽の心境とかも入れたいですしね(笑
さてさて、今回はようやくヒカ碁ではかかせない、塔矢との出会いですv
では、いくのですv
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「アキラくん。いい加減に試験うければいいのに」
「でも、僕は……」
何かがたりない。
そう。
何かが。
今、そのままプロになっていいものかどうかがわからない。
だからこそ一歩が踏み出せない。
「あ、お父さん。今日は囲碁サロンにいってきます」
とある駅前にとある囲碁サロンは彼の父親が経営しているもの。
「あまりおそくならないようにな」
「はい。わかってます」
「そうですよ。あなたも明も、碁のこととなると時間をわすれてのめりこむんですから」
くすくすくす。
これはいつもの会話。
だけども…そう、何かがたりないんだ。
そう。
何かが。
ただお父さんの背中をおいかけるだけではなく、何かが……
星の道しるべ ~出会い~
ガラガラ…ゴロン。
『ヒカルヒカル!?今のこれ、何です!?何ですか、それ!?』
少しばかりのどがかわいたのでジュースを自動販売機で購入。
本来ならばお金はなかったのだが、駅前の碁会所にいくといったら同じ教室にかよっていた近所の人がくれたもの。
「ジュースだよ」
『ジュース?』
・・・・・・・・・・・・・・・・平安時代の、しかも江戸時代までしかしらない人物にいっても通用しないか。
何やら自動販売機の周囲をうろうろと、
前も後ろもさらには上から下までなめまわすようにして見ている佐偽をみて思わず苦笑がもれる。
このあたりはさすがに幽霊であることを実感するが、ふつう幽霊がここまで感情をあらわに驚いたりするものだろうか?
そんな疑問も頭をかすめるのは仕方がない。
というかまるでそう、手のかかる弟ができたようなそんな感覚。
「お金をいれたら選んだ飲み物が出てくるんだよ」
『へ~。ほ~。つまりこの中にひとがいるんですか!?』
ぷっ。
本気でそういっているのがわかるがゆえにおもわず噴き出してしまう。
そもそも、昨日の朝からかなり賑やかであったのも事実。
テレビをみて騒ぐ佐偽にやはり両親はまったくもって気づくことはなかった。
何だかみていておもしろい。
見るものすべてが新鮮らしくちょっとしたどうでもいいようなものにまで驚きの声をあげる佐偽。
おもわずついいたずらをしたくなってしまうほどに佐偽の百面相はそれほど面白い。
「ちがうよ。機械でうごいてるんだよ」
『ヒカル、エレキテルでそんなことができるはずないでしょう?』
・・・・・・・・ぷっ。
どうも時代錯誤すぎる。
「まあまあ。とりあえずとっとと碁がうてるという場所にいこうぜ。おまえもうちたいんだろ?」
『ええ!?うたせてくれるのですか!?』
ヒカルの言葉にまたまた顔がばっと輝く。
本当にみていてあきない。
「そのかわり!今日も社会の宿題、てつだえよなっ!」
『はいっ!!わ~い、わ~い』
……こいつ、ほんと~~~に大人か?
見た目はおそらく二十代くらいだろうに。
性格がどうみても子供のそれとしかおもえない。
こんな無害そうな幽霊をその筋の人にたのんで浄化や徐霊してもらうのはかなり気がひける。
つまりはおそらく、佐偽は満足すれば素直に成仏する分野の幽霊なのだろうから――
「碁会所…碁…っと、あ、あれだな」
駅前の商店街。
その中にある建物の二階に【囲碁サロン】という看板が出されている。
『ヒカル、ヒカル。あそこで碁がうてるのですか!?』
そわそわ、うろうろ、ふわふわ。
……だああっ!
「だぁ!おまえはも~ちょいおちつけっ!」
そもそも、はしゃぎすぎて抱きつかれて視界をふさがれてはたまったものではない。
「そのかわり!俺にもわかるようにいえよ!?専門用語とかじゃおれまだわかんないからなっ!」
『はい、はいっ!』
本当にこいつ、わかってるのか?
こくこくと満面の笑みを浮かべてうなづく佐偽をみてただただ溜息をつくしかできないが。
ともあれここまできたからにはいってみるっきゃない。
トントントン。
囲碁サロンがあるという二階へと階段をのぼってゆく。
ガラッ。
「あら。こんにちわ。いらっしゃい」
うわっ。
年寄りばっかり。
部屋の中をざっとみたかぎりほとんど大人、もしくは年寄りばかり。
まあ、小学六年のヒカルにとってはたしかにそのようにみえても仕方がない。
「見かけない顔ね。ここははじめて?」
にっこりとどうやら受付らしい女性が語りかけてくる。
「初めても何も人と対局するのも碁をまともにうつのも初めて。えっと…ここに名前をかけばいいの?」
くすっ。
「人と対局したこともないのにいきなりこんなところに?そんなに棋力があるの?」
目の前の子どもはおそらく小学生だろう。
「棋力?何それ?よくわかんないや。たぶんそこそこつよいかもしんないけど」
『ヒカル!かもとはなんですか!?カモとは!?』
おもわずそんなヒカルに突っ込みをいれてきている佐偽ではあるが、碁を知らないヒカルにとっては適格な表現ともいえる。
「何それ?対局したことないのに強いかもしれない?面白いことをいう子ね~」
名前を書き終えた子供の名前をみる。
進藤ヒカル。
年齢は十一歳。
ということは小学六年生か五年生であろう。
きょろきょろ。
大人相手じゃ何だかなぁ~…子供いないかな、子供。
そんなことをおもいながらも周囲を見渡す。
ふと、視界のはしに場違いな小さな姿を発見する。
「あ!子供発見!ねえねえ!あのことうてる?」
奥のほうに一人ぽつんと座っている子供の姿。
その子どものほうを指さして受付の女性にと問いかける。
「え?でもあの子は……」
そんなやり取りにきづいたのか席をたちこちらにむかってくる子供が一人。
「対局相手をさがしているの?いいよ。僕うつよ」
「ほんと!?やり~!」
出てきた子供はおかっぱ頭の澄んだ瞳をしている少年。
「君、何年生?僕は塔矢明。小学六年生だよ」
「俺。進藤ヒカル。俺も小学六年だよ。同い年か~、俺とおまえ。よかった。同じ子どもがいて。
やっぱり年寄り相手じゃもりあがらないからな~」
にっこりと笑ってくるその子供にほほ笑みかえしながらも答えるヒカル。
このように何の意図も含まない言葉を投げかけられたのはいつのことだろうか。
「じゃあ、奥にいこうか」
それゆえにどこか心地よい感覚をうけながらも奥にと促す塔矢であるが、
「あ、ちょっと。お金がまだよ?」
奥にいこうとするヒカルを受付係の女性が呼び止める。
・・・・・・・・・・・
「え、えええ!?お金いるの!?今、親におこづかいとめられてるから大金ないよ~!!」
くすっ。
「ここは初めてなんでしょう?市川さん、サービスしてあげてよ」
そんなヒカルの姿をみて思わず笑みがこぼれる。
ここにくるのにお金が必要、というのを知らなかったのには驚いたけども。
まあふつう、誰かにつれられてきたとしても子どもがお金を払うこともないだろうからそれも仕方ないのかもしれない。
そう思い助け舟をだす塔矢の姿。
「や~ん。明くんがそういうなら」
「あ、ありがとうございます!」
「さ、奥にいこ」
「あ、うん!」
『一時はどうなることかとおもいましたよ。…ヒカル。碁をうつのにはお金が必要なのですか?』
「みたいだな~」
おもわず佐偽の問いかけにぽそっとつぶやく。
「?何かいった?」
「あ、ううん。何でもない。あ、席ここでいいの?」
「うん。あ。そうだ。君、棋力はどれくらい?」
さっきもきかれたが、棋力というのがさっぱりわからない。
対峙するように碁会所の奥にある席にと座る。
「よくわからないけどたぶんちょっとは強いぜ」
「よくわからないのに強いの?はは。じゃあ君の置き石は四つか五つにしようか?」
置き石?
「何それ?ハンデのこと?いらねえよ。そんなの。だって俺とおまえ同い年だろ?」
きょとん、とそれでいて当然のようにいわれておもわず面喰ってしまう。
自分を子供として対等にみてくれたのは今の今までおそらく彼がはじめてのような気がする。
中には自分をライバルとみてかかってくる子もいたにはいたが、それでもやはりどこか警戒をはらんでいた。
だが、目の前の同い年の子にはそれがない。
「塔矢アキラに置き石なし?はは。とんでもない坊主だな」
何やら後ろのほうで他の客がそんなことをいってはいるが、ヒカルはきょとんとするのみ。
「えっと、じゃあ、互戦でいいの?じゃあ君が先番で」
『ヒカル。黒を手にしてください』
「え?あ。うん」
佐偽にいわれるまま黒を手にする。
「あ。俺ちょっと打つのが遅いけど簡便な」
『十七の四。右上隅の小目』
ふとみれば、感極まりながらも対局がはじまればしっかりと泣きやんでいるのに思わず感心してしまう。
こいつ、ほんと~~に碁が好きなんだなあ。
と感じ入るものの、とりあえず佐偽の指示するままにと黒石を碁盤の上にとうちこんでゆく。
一応、碁盤の読み方などは佐偽から聞いて頭にはいれた。
何だか数式のようでいてすんなりと頭にはいった、というのもあるにはあるが。
パチパチ……
一言も話さないままにもくもくとただ碁石が撃ち込まれる音が周囲に響き渡ってゆく――
この子……自分で強い、というだけのことはある。
だけども…碁の打ち込み方が…定石の型が古い。
それに、ときどき手がへんなところでとまるのは…?
そうはおもうものの、かろやかに黒にかわされ目の前の子ども…進藤ヒカルとなのった少年にリードを許している。
ここまでの打ち手は…彼は一人しか知らない。
そう、ずっと目標にしてきた父しか。
『8-5』
言われるままに打ちこみしているが、石の流れが何かとても面白い。
内容はよくわからないが、だけども流れと形が頭の中にと流れ込んでくる。
?
まったく打ち込みがされていないほぼ中央に石をおいたとたんに目の前の子どもはいきなり手がとまった。
?
何かとても考え込んでいるような様子。
何でそこまで考え込むのかすらがわからない。
『さて、どうきますかね~』
背後から聞こえる口調の佐偽はとても何やらわくわくしながら支持しているように見受けられる。
オセロとおなじなら石の数で勝ち負けがわかるだろうが碁はそれとはことなる。
それくらいは以前、無理やりに教えられた知識で一応ヒカルはしっている。
佐偽の表情をみるかぎりは、真剣、というよりは完全に楽しみながら打っている様子がみてとれる。
ま、いっか。
そんなことをおもいながらも、
ただひたすらに塔矢明となのった自分と同い年の少年の次の手をひたすらにヒカルはまちつづけてゆく――
「あら?おわったの?」
かえろうとして声をかけられた。
もうかなりつかれている。
「うん。やっぱり対局はまだ早いわ。俺。うつのすごくもう時間かかってもうへとへと」
やはり実際に聞くのと自分が行動するのとではだいぶちがう。
石をいわれるままにおくだけでつかれるとはおもわなかった。
「あらあら。…そうだ。今度、子供の囲碁大会があるんだけど、はい。みにいってみたら?」
くすくす。
素直にいうヒカルのセリフに、ふとおもいだしたかのようにカウンターの下から一枚のポスターを取り出す。
そしてそのポスターをヒカルに手渡してみる。
対局もしたことがないといっていた彼にはいい刺激になるかもしれない。
というか碁に興味があるのならばその道をがんばる子供たちをみるのは悪くない。
それゆえの行動。
「ん~。かんがえとく。あ、今日はお姉さん、ありがとうございました。俺今こづかいとめられてるからさ~」
くすっ。
「何かわるいことでもしたの?」
「いや、社会の成績がわるいからとめられた……」
がくりと肩を落とすその姿におもわず笑みがもれてしまう。
「あらあら。まあ、気が向いたらまたおいで」
「は~い。またね~」
がらっ。
そんなたわいのないやり取りをして部屋からでてゆくヒカルの姿を見送りつつ、
「明くんとやるのは五十年はやかったかな?」
アキラくんのことだから指導碁にしたかもしれないけど。
そんなことをおもいつつくすりと笑みがもれてしまう。
と。
ざわざわざわ。
何やら奥のほうが騒がしい。
何かあったのかしら?
そう思うと同時、
「…え!?まけた!?明くんがまけたのか!?」
「まさか!?明くんはプロに近い実力なんだぜ!?」
「じゃあ、相手の子もブロなのか!?」
「置き碁だったんだろ?!」
「一応相手の子どもが先番で黒だったらしい」
「そんなバカな!」
信じられない言葉が聞こえてくる。
おもわずガタンとカウンターを離れておくにと出向く。
みれば、そこには碁盤を前に呆然としている明の姿と周りにたむろしている大人たちの姿が見て取れる。
「だけども二目差ならコミをいれればアキラくんの勝ちだ。じゃあつまり実力はアキラくんとかわらないってことか!?」
「でも、私ちらっとみましたけど相手の子どもはおもいっきり素人の手つきでしたよ?」
「馬鹿な!素人がアキラくんにかてるはずがないだろう!?」
ざわざわざわ。
未だにざわめいている人々をかきわけ明のもとにと出向く。
局面をぱっとみたかぎりではよくわからない。
だけども、
「ちょ、ちょっとまってよ!明くん!まけたって本当なの!?だってあのこ、一度も対局したことがないっていってたのよ?!」
それなのに、ブロにすぐにでもはいれるという彼をまかせるものなど……
しかも、小学生で。
そんな人物がいるとは…到底思えない。
ざわっ。
一度も…対局したことがない?
そんな彼女のセリフにさらに人々がざわめき立つ。
ガタンっ!
そんな彼女のセリフに思わず席を立ちあがる。
「まさか!そんなばかな!」
「市川さん!何てこなんだ!?どこの子だ!?」
「今日はじめてふら~と来たこでどこの子かは……」
進藤ヒカル。
いったい…彼はいったい何者なんだ!?
今まで感じたことのないこの戦慄にもにた感覚。
一度も対局したことがない…?
ありえないっ!
だけども、たしかに彼の碁石の持ち方からすれば……
考えれば考えるほどわからなくなる。
進藤ヒカル。
自分と同い年でありながらもかろやかなその手並み。
しばし、市川の言葉に呆然と席を立ちあがり立ちすくむ塔矢明の姿がしばしみうけられてゆく。
「しかしさぁ。佐偽。おまえの情熱には関心するけど、お前ってよわかったんだな~」
『ヒカル?それはどういう意味ですか?』
夕食がおわり、社会の宿題をしている最中、ふと隣にいる佐偽にと話しかける。
「だってさ。おまえ小学生相手に二目差でかってたじゃないか。情熱は認めるけどさ~」
まあ、下手だからこそ、というのもあるのかもしれない。
そこまで碁に執着するのは。
『違いますよ。ヒカル。私、今日の対局は本気ではありませんよ。あれは指導碁です』
くすっ。
ヒカルのいわんことを察してにこやかに返事を返す。
「?指導…碁?」
『指導碁というのは相手を正しい方向に導いてゆくやりかたです。
それゆえに勝ち負けにこだわる必要はありません。ゆえにむちゃな打ち方はしません』
つまり、先生みたいなものか。
そんな佐偽の言葉に納得するものの、
「ま、どちらにしても相手も俺と同い年。ただの小学生だしな。佐偽のほうが強くて当然か」
しかも横にいる佐偽は千年以上の齢を重ねているのである。
『…今、何といいました?ヒカル?彼はただの小学生ではありませんよ?』
「え?」
佐偽がいいたいことがよくわからない。
『未熟ながらも輝く一手を放ってきました。彼の一手一手に私自身も覚醒してゆくのがわかりました。
彼は成長すれば獅子にばけるか、竜にばけるか、そのどちらかです。
おそらく並みの打ちてではあの子にかなうものはいないでしょう』
そういわれてもまったくもってピンとこない。
「ふ~ん。よくわかんないけど、だけどあいつの打ち方、何かかっこよかったな~」
『ヒカルも打ち方がもうすこしましだといいのですけど…』
「わるかったなぁ!俺はそもそも碁なんて何も知らないんだから仕方ねえだろっ!
おまえもさ。こんな俺なんかにとりつかなくてもあいつのようなやつにとりつけばよかったのに」
『そ、そういわれましても…』
「まあ、どちにらしても。お前をむりに消すのはかわいそうだしな。まあ何とかするさ。
さ、それより佐偽、これなんだけどさ~」
どうやら今日の宿題はまたもや江戸時代を主とした宿題らしい。
『ああ、それはですね~』
これはいい家庭教師だよな。
少なくとも、これである程度、社会の点はかせげるはずである。
ヒカルは勉強をおしえてもらい、サイはそのかわりに碁をうたせてもらう。
あるいみギブアンドテイク、という言葉はこういう意味なのかもしれないな。
ふとおもい、苦笑してしまう。
『?ヒカル?ぎぶ・・・ていくとは何ですか?』
どうやらぽろっと口にでていたらしく、佐偽がおもいっきり首をかしげてといかけてくる。
「ああもうっ!いいから!とにかく、とっとと宿題をすまそうぜっ!
それからお前がきになってたテレビみせてやるよ」
『ええ!?あの箱の中で何やら絵がうごくあれですか!?みたいみたい~~!!』
どうやら話題というか気はそれたようである。
見ているだけでもあきないあるいみおもちゃにちかいのかもしれない。
佐偽の百面相は。
これから面白くなるかもしれないな。
そんなことをおもいつつも、机にむかってゆくヒカルの姿が、しばしヒカルの自室にて見受けられてゆく。
-第2話へー
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あとがきもどき:
薫:並行してヒカルが女の子バージョンのも打ちこみ中v(まてこら
そちらのほうは初期から今後の展開を暴露してますけどね。
まあ、そ~いう展開でもいい、という人のみにみてもらおう、という気持ちで(こらこら
さてさて、ようやく出てきた塔矢明。
次回、例の子ども大会ですv
何はともあれ、ではまた次回にてv
2008年7月20日(土)某日
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