まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
ひたすらにサイトめぐりしてたら佐偽満載のお部屋を発見v
かなりつぼですv
というか女の子サイドのほ~のお話にある意味ちかし(笑
転生している佐偽がかわいすぎるっ!!(いそいそとお気に入りに追加です♪
そちらもスミレちゃんかかわってきますけどね~
一種の霊能力もちのヒカルちゃんv(こらまてや
まあ、あちらはネタバレするとか~~なり年の離れた妹として佐偽降臨v(だからまて
いや、だって佐偽はあの容姿だし。ぜったいに女性でも通用するっ!(こらこら
まあ、ともあれひとまずは原作にかぎりなくちかいかもしれない男性バージョンをいくのですv
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星の道しるべ ~始まり~
「けほっ」
おもわずほこりっぽさにむせこんでしまう。
「大丈夫か?アカリ?」
むせこむ後ろにいる幼馴染にと話しかける。
「うん。平気。だけどもあいかわらず埃っぽいよね~」
そもそも倉がある家というのも今では珍しい。
「とりあえず二階はまだ完全に手つかずなんだ。爺ちゃんも二階にはあまりあがらないっていうし」
トントントン。
いいながらも階段を駆け上がる。
二階にある唯一の天窓部分からほのかに明かりがさしこむのみで中は薄暗い。
「さて。まずはこの山となってる場所からだな」
目の前にはさまざまな品が積まれてあるいみ埋もれている束のような山が出来上がっている。
何があるのかすら持ち主である家主の祖父母ですら理解していないらしい。
それらをきちんと整理して、きれいにする。
それがヒカルに課せられている掃除の内容。
意を決してガタガタと品物をとにかくひとつづつに振り分けてゆく。
いったいここまでよくもまあためこんだもの、とあるいみ感心せざるを得ない。
幼馴染のアカリに手伝ってもらいながらの作業。
ようやく背後のほうにとあるタナが見えてきたときにはすでに時間はだいぶ経過している。
「…あら?ねえ。ヒカル。これって何?」
「あ、碁盤だ」
「あ、私しってる。五目並べするやつね!」
「ば~か。囲碁だよ。うちの爺ちゃんとおまえの爺ちゃんがよくやってるやつ」
「あ~、あれか」
アカリとヒカルの祖父は囲碁仲間らしくよく仲良く碁をうっている。
それゆえに一応、囲碁、という言葉は知っている二人。
だが、その内容はきれいさっぱりわからない。
「これ、かなり古そうだな~。…というか、この汚れ、なかなかおちないな~」
涙のような染みと、そして血のような染み。
とにかく汚れている品はごしごしとダスキンで拭いてきれいにする。
下手に品物を水でぬらした雑巾で拭いたりしたら何といわれるものやら。
その点、ダスキンはかなり重宝する。
何しろ洗う必要はないし、さらには汚れもよくおちる。
ついでにいえば一週間もすれば新しいものと取り換えてもらえる。
ごしごしと必至で碁盤の盤面をふくもののまったくそれはとれそうにない。
「?何いってるの?ヒカル?そんなものどこにもないじゃない」
そんなヒカルのようすに怪訝ながらも答えているアカリ。
「何いってんだよ。ここに血のような点々としたシミと、あと水のような流れのシミと……」
『……みえるのですか?』
……え?
「だからさっきからいってるじゃんか!ここにあるって」
『…私の声がきこえるのですね!?』
え~と?
どうも第三者の声が聞こえるような気がするのは気のせいだろうか?
「?誰かいるのか?」
「ヒカル?…やだ、気味のわるいことをいわないでよ」
周囲には自分たち以外、誰もいるはずがない。
それでなくても古い蔵の中。
季節が季節だけにさすがに夏場の怪談、とはいかないかもしれないが、やはり怖いものは怖い。
「ほら、あかりにもきこえるだろ?この声!」
『いた。いた。…あまねく神よ。感謝します』
「もう!ヒカルったら!こわがらせようとしてるんでしょう!もう、しらないっ!」
いいつつも、立ち上がり二階から一階へとおりてゆくアカリ。
ヒカルもそれに続きたいが、そうはいかない。
なぜならば…誰もいなかったはずなのに、しっかりとそこに一人の人物の姿が目にはいる。
鳥帽子に白い服。
まるでどこぞの時代劇をほうふつさせるような、そんな姿。
よくある映画などの陰陽師に近いものがあるようなその姿。
一瞬、その人物の姿を目にして、きれい、とおもってしまうのはしかたないであろう。
『私は、私は今一度、現世に還る』
え?
それとどうじに襲いくる何ともいえない感覚。
バタッ。
「ヒカル?…きゃぁ!ヒカル!お爺さん、大変、ヒカルが倒れてる!!」
何かが倒れるような音がして恐る恐る二階を除けば碁盤の前で倒れているヒカルの姿。
驚き、あわてて叫んでいるアカリの姿が確認できるが体が動かない。
誰だ?お前?何ものだ?
悪意はまったく感じない。
そもそも、ヒカルは確かに昔から視えないものをみることもある能力を多少はもっている。
それゆえに悪意のあるものとそうでないものの見分けはつく。
もっとも、俗にいう霊能者のようなまでの力はないが。
そもそも誰にいっても信じないであろう。
そんな力がある、などということは。
『はい。私は藤原佐偽。私は今あなたの意識の中にいます』
頭の中に響いてくる声はまだ若い青年のような、それでいてどこかここちよい声。
というか、何だって人にとりつくんだ?
おまえ、そんな悪意のあるようにはみえね~んだけど?
ヒカルからすればそれが本音。
わかるがゆえに悪意があるような輩がいそうな場所には絶対に近づかない。
『悪意?』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
問われた相手もよく意味がわかっていないらしい。
とりあえず、はじめからきくけど、お前、なにもの?
まず、相手をしらなければどうにもしようがない。
『先ほどもいいましたが、私は藤原佐偽。平安の世で大君に囲碁を教えておりました』
そりゃまあ、碁盤にとりついていたような霊(?)らしきものなんだから関係あるのかもしれないけど。
だけどもよりにもよって平安の時代とは。
今からざっと千年以上も昔である。
普通、それほど長く現世にとどまっている霊ならばすくなからずかなりの力を生身の人間にすら与えるほどになっているはずなのに。
だけども、今はなしているこの彼にはそれがまったく感じられない。
むしろどちらかといえば感覚的にはふつ~のどこにでもいるふらふらしている幽体離脱をして迷っている魂。
そんな感覚をうけてしまう。
囲碁?平安時代?そんなやつが何でこんなところにいたんだ?
『私は…』
意識の中で対峙する目の前の青年はとても穏やかな表情をたもっている。
まるで絵のよう。
とはまさにこのことをいうのかもしれない。
鳥帽子に長い漆黒の黒髪。
手にした扇がとても何やらにあっている。
どこをどうみても悪霊云々には絶対にみえない。
というか傍目には女性のようにもみうけられるほどの容姿の持ち主。
社会の歴史などは疎いがゆえによくわからないけども、だけども平安時代がいつだったか。
というくらいいくらヒカルでもわかる。
話をきけば、何でも濡れ衣をきせられて都を追い出され、さらには汚名までかぶせられ。
失意のあまりに自殺してしまったものの、碁に対する情熱は失うことなくずっと碁盤に宿ったらしい。
『成仏できない私の魂は、私の涙のあとをみることができた子どもにやどりました。
子供の名前は虎次郎…いい子でした。彼は私にいろいろな碁をうたせてくれました。
ですが、その虎次郎も若くしてはやり病でなくなってしまい……』
虎次郎?
『はい。江戸時代、彼は成長し師匠の名前を受け継ぎ本因坊秀作となのっていましたが。
彼をつうじて私はさまざまな人と対戦しました。ですが…私はまだ神の一手をきわめていない』
神の一手?
それが何なのかはわからない。
わからないが、彼をずっとこの世にとどめている原因というのは何となくだがわかる。
はうっ。
悪意のあるような霊ならば知り合いの霊能者にたのむところではあるが、目の前の人物には悪意のかけらも見当たらない。
そもそも、幽霊だ、という感覚すらをも抱かない。
よくいえばどちらかといえば、精霊とかといった感覚によく似ているのかもしれない。
でも、何で俺?
俺、碁なんてまったくしらねえよ?
『そんな…』
…だぁぁ!
目の前でいきなりさめざめと泣きだされてしまった日には精神的にもたまったものではない。
いくら意識の中の対談とはいえこんなきれいな人物に泣かれるのはかなり心苦しい。
さめざめと意識の中で対峙する、佐偽、となのった幽霊とおもえし人物は声を殺してないている。
はっきりいってとりつかれたのは自分なのにこちらのほうが悪いような気持ちになってしまう。
はぁ。
……わあったよ。たまにならうたせてやれるかもしんねえけど。
だけど、おれの心は俺のものだからなっ!
『?何あたりまえのこといってるんですか?でも、本当にうたせてもらえるのですね!ありがとうございますっ!!』
こ、こいつ…百面相だな。
今ないたカラスがどこにやら、ということわざがあったような気がする。
まさにそれはそのとおりなのかもしれない。
喜びのあまりにびょんぴょんと跳ねている姿をみると思わず苦笑してしまう。
…幽霊ってこんなにあかるかったっけ?
おもわずヒカルがそのような感想を抱いたのは…いうまでもない……
普通、理数系が得意のものは超常現象を信じようとしない輩が多々といる。
彼…ヒカルが理数系にのめりこんだのも、幼いころからときどきみる非現実な何かから逃げ出したいがため。
もっとも、さすがに六年生ともなれば慣れたが。
ようは強気が何よりも勝る。
「あ~…!全然わかんね~!!」
昼間の学校。
教室内にて真白の紙を眺めて思わず叫ぶ。
「進藤くん。うるさいですよ。というか進藤君、他の科目はいいんだから、がんばらないと」
そもそも、ヒカルくらいである。
かたや百点があたりまえの科目とゼロに近い科目があるというのは。
ほとんどの生徒はみなそこそこ平均してテストなどでは点をとっているというのに。
「あ、あの。先生。ヒカルは昨日、いきなり倒れたんです。それで救急車ではこばれて……」
何ごともなかったものの、数時間は気をうしなったままであった。
医者は密閉された倉の中で倒れた、ということから熱中症やいろいろと予測をたてたが、ひとまず大事にはいたらず。
それゆえに病院から家にともどったのは昨日の夜のこと。
「なにぃ!?ヒカル、救急車にのったのか!?」
「すげえっ!」
ざわざわざわ。
アカリのセリフに教室内が一気に騒がしくなる。
パンパンパン。
「はいはい!しずかに!そのことはご両親からもご連絡をうけています。
ですがテストはテスト。進藤君。気分がわるくなったらすぐにいいなさい。保健室につれていきますから」
つまりは、そうでないかぎりはテストをうけろ、ということである。
「は~い」
『?歴史の問題…ですか?』
ふときづけばいつのまにか横にちょこん、と座ってじ~と机の上を眺めている佐偽の姿が目にとまる。
とはいえ教室の誰もさわがない、ということは彼の姿が視えているのはやはり自分一人なのだと確信する。
まあ、一種の背後霊…だよなぁ。
こいつ。
悪意も何も感じなければどちらかといえばかなり人間くさい。
しかもかなりの美青年であることから気をぬけばおもわず見惚れてしまう。
ちらりとそちらに目をやり、はっとあることにおもいつく。
『佐偽!おまえ、天保の改革ってしってるか!?』
たしか、佐偽は江戸時代にも虎次郎とかいう子供といっしょにいたという。
ならばもしかしたらしっているかもしれない。
自分で考えてもわからないのならば聞くしかない。
あるいみカンニングに近いのかもしれないが、おこずかいをとめられている状況ではそんなことはいってはいられない。
そもそも、教科書を確認しているわけでも、カンニングペーパーをみるわけでもないのである。
倉で倒れたことからしばらくは倉に近づくことすら禁止されてしまった。
つまり、決定的なことは少しでもテストの点をあげなければ収入源がすべて断たれてしまう、ということ。
心の中で問いかける。
『?天保の改革?ああ、水野忠邦老中の?あのときはいろいろありましたねぇ。
人返しの法をだしたり物価の引き下げをしたり……一度城中で彼と……』
ふと懐かしく思い出す。
碁盤に宿っている間も碁盤の中から世の中の移り変わりをみていた。
まどろむその中で光をさしてくれた虎次郎。
その彼がしに、二度と現世に蘇ることはできないのかとおもったが、昨日、その奇跡がおきた。
あれから百四十年あまりが経過している。
しみじみと灌漑にふけるそんな佐偽の姿を横目にみつつ、
「…水野忠邦…っと
いまだに真白であったテスト用紙にこたえを書き込んでゆくヒカルの姿。
「じゃあ、ペリーって知ってるか?」
『ペリー?』
「ペリーだよ。黒船ひきいてやってきた」
『ああ。ペルリ提督ですね。あのときは大変でした』
どうやらダメ元できいてみたが大当たりだったらしい。
らっき~!!
これでどうにかおこずかいが元にもどるかのうせいがでてきた!
他人だよりとはいえ、他人にはわからないのだからヒカルが一人で頑張ったととらえられるであろう。
「そ、それで。そのペリーはどこにやってきたんだっけ?」
小さい声で思わず気付かないうちにぶつぶつとつぶやきながらもテストを書き込む。
『浦賀ですよ。軍艦四隻をひきつれてですねぇ』
「浦賀…っと。佐偽。おまえ使えるな」
「進藤くん?何ぶつぶつひとりごとをいってるの?」
そんなヒカルの横を生徒を見回りながらも気にかけていってくる担任の教師の姿。
机の横にすわっていたはずの佐偽の姿をおもいっきり素通りしてゆき、その存在に気づいた気配はかけらもない。
「もう時間がないわよ。がんばってね」
『人の体を通り抜けておいてなんたる無礼な!ヒカル。この時代の女性はみんなああなのですか!?』
自身の体を素通りされて、おもわずそんなことをいっている佐偽のセリフに思わず苦笑してしまう。
あやまるも何も姿がみえていなければ謝り用がない。
「わかったから。そう頭の中でさわぐなって。…そうだ。佐偽。とりひきしないか?」
『取引…ですか?』
「そ。お前は俺に歴史のことを教える。んで俺はお前の望む碁をうつ。どだ?」
『ヒカル、うってくれるのですか!?』
昨夜は碁を何もしらない自分にどうしてとりついたのか、といわれて互いにため息ものだったのだが。
それはヒカルにおいても佐偽においても思いは同じ。
だけども、碁はともかくとして彼の歴史の知識はやくにたつ。
何よりもおこずかいをとめられているこの現状が打破できるかもしれないのにとびつく手はない。
「ん~。だけど俺、基本も何もしらね~からな~。…帰りに爺ちゃんの家にでもいってみてきいてみるよ」
以前から祖父は孫に相手をしてもらいたい、とぼやいていたので教えてくれるくらいはしてくれるかもしれない。
『ヒカル、ヒカル。約束ですよ!?それで、それで次は何をききたいんですか!?』
くすっ。
碁がまたうてるかもしれない。
その言葉だけでかなりはしゃいできゃぴきゃぴとヒカルに問いかけてくる佐偽の姿に苦笑がもれる。
…こいつ、絶対に幽霊にはみえね~
それがヒカルが抱いた感想だとは、嬉しさにはしゃぐ佐偽にはわかるはずもない。
「そうか!やっとその気になってくれたかっ!」
案の定というべきか。
碁の基礎を少しばかり覚えたい。
そう相談にいった祖父の家でがしっと肩をつかまれて感極まる声をだしてくる進藤の祖父にあたる進藤平八。
「くうっ!これで四丁目の高井のやつに孫に相手してもらっておる!と自慢話を延々とされていたが反撃してやれるっ!」
…どうやら町内囲碁大会か何かのネタに孫が使われているらしい。
祖父である平八が囲碁大会で幾度か優勝した、というのは耳にタコができるほどにきかされている。
「で、でもさ。爺ちゃん。俺、基本何もしらねえし。それで基本おしえてもらえないかな?」
孫の申し出はかなり貴重。
というかあきっぽいこの孫の気がいつかわるともしれない。
「それならいい場所があるぞ。町内の人たちもけっこういってる場所なんじゃが……」
何でも話をきけば初心者や趣味で碁をたしなむ人たちのためにそういう教室があるらしい。
「資金はわしがだしてやるっ!ヒカル!気のかわらないうちにいってこいっ!
連絡はわしのほうからしておくからなっ!」
……何だかヒカルの思いとはうらはらに、祖父のほうが強くのめりこんでいるのは気のせいだろうか?
そんなことをおもうものの、たしかに資金をだしてもらえる、というのはありがたい。
小学生のヒカルにそのような教室にかようようなお金があるはずもないのだから。
社会保険センター。
翌日の土曜日。
さっそく祖父に言われた教室が行われているという場所にきているヒカル。
その一室で碁に関する説明会が行われている。
「これは、黒のサガリが好手で、白がおさえてから……」
何をいっているのかちんぷんかんぷん。
『かわった碁盤、ですねぇ。立てかけのなんて』
何やらその様子をめずらしそうに眺めている佐偽の姿がかなり滑稽といえば滑稽。
しかも、折りたたみ式の碁盤らしきものが机の上にはならべられている。
『ヒカル。あの教えている人はどのくらいの強さなのですか?あの人とうてるのですか?』
「ああ。何でもプロの人だって」
『プロ?』
「碁でお金をもらって生活している人のことだよ。しかし…ああもう!全然わかんね~!
というかアガリとかアタリとか、サガリって……」
形で覚えるほうがかなり楽のような気がする。
「佐偽。とりあえず、これの読み方とか何かあるわけ?」
説明をきいてもまったくもってわからない。
ならばひとまず碁盤の読み方を知っておくほうがいいのかもしれない。
『え?ええ。まずは盤面に九つの点がみえますよね?それが星、といいます』
説明しながらも気はそぞろ。
もしかしたら腕のいいものとうてるのかもしれない、という期待が佐偽の中をかけめぐる。
「へぇ。何か算数というか数学みたいだな」
理論系に碁はにているのかもしれない。
なら、おれでもできるかな?
まあ、まずは基本をおぼえないと何ごとも先に進めない。
そもそも、佐偽がうちたくとも佐偽自身が碁石をもてない以上、ヒカルが何もしらなければどうにもならない。
そんな会話をしている最中、
やがていつのまにか講義もおわり、ヒカルのほうにちかづいている先ほど講義をしていた男性の姿。
「ええと。君が進藤君。だね。碁ははじめて?」
「え。はい。まったく何もしりません」
「進藤平八さんからの紹介、かぁ。なら碁に興味をもったのはお爺ちゃんのためかな?」
「いあ、ちょっとテストの点を……」
どちらかといえば社会のテストの点数がかなりネックとなっている。
「テスト?」
「あ。いえ。何でもないです。ただちょっと基本くらいはしっといてもいいかな~、とおもって」
基本さえしっておけばあとは佐偽の望みどおりに打たせることも可能になるであろう。
千年以上も碁のために現世にとどまっている彼に対して何かしてあげたい、とおもうのはヒカルの優しさ。
くすっ。
そんな小さな子供のセリフにおもわず笑みがもれる。
若い世代が碁に興味をもつことはとても望ましい。
「じゃあ、今日は簡単な石とりゲームからしようか?」
「石とりゲーム?」
相手のいっている意味すらもわからない。
くすくすくす。
そんなヒカルの様子にくすくすと背後というか真横でわらっている佐偽の姿が気にはかかるが。
「君のいうちょこっとした基本をおぼえていくために、ね」
どうやらほんとうに何もしらない初心者らしい。
だけども若い世代に碁がうけつがれるのはとてもよいこと。
何しろ碁の歴史はかなり古い。
わかっているだけでも平安の都からつづいている競技の一つなのだから。
へぇ。
けっこう面白いかも。
碁、って。
あるいみ数式に近い。
だけども数式ともオセロゲームとも違う。
そもそもオセロもまた碁を基本にしてできたゲームともいわれている。
何もわからないままで専門用語を聞いても意味不明だが、こうして石をならべながらも説明されれば納得がゆく。
「とりあえず、今日のところはこの本をあげるからこのとおりにならべてごらん?感じがつかめるから」
…そこには秀作特選集、とかかれているのだが。
それと佐偽をヒカルはむすびつけることもない。
そもそも、ヒカルは碁の世界のことを何もしらないのだから仕方ないといえば仕方ないのだが。
『おや?この棋譜は……』
書物に示されている棋譜はとてもなつかしいもの。
昔の棋譜もこの時代にまだのこってるんですねぇ。
おもわず感慨深くなってしまう。
『ヒカル、ヒカル!それなら私が相手しますよっ!』
一人で本をみつつ打つよりも相手がいたほうがはるかに楽しい。
というか佐偽は自身でうちたくてたまらない。
そんな会話が繰り広げられているなどとはつゆしらず、教室に集まっている人たちに指導していっている教師の姿。
周囲を何となくみわたしてみてもどこにも案の定というか子供の姿はない。
それに大人相手に打つのも何だか気がひける。
「そうだな~……」
どうしようかな?
ヒカルがそうおもったその矢先。
「…阿古多さん、また弱いものいじめしているわ」
「いやねぇ」
ひそひそとした会話が耳にとはいってくる。
?
「弱いもの…いじめ?」
いじめとかそういうものは基本的にヒカルは好まない、というか許せない。
それゆえに噂がむけられている方向に何となく視線をむける。
そこには何か大人の男性同士が向かい合い、碁を打ちあっている姿が目にとまる。
『あの人ですよ!確かにひどい碁をうっています。確かに今うったほうが格段に力は上です。
ですが彼のうつ手に正確なものは一つもありません。相手が弱いとみてむちゃな手をうっています!ゆるせませんっ!
ヒカル!もう我慢できません!あの人とかわってください!あの碁を汚す無礼な輩に思い知らせてやるのですっ!』
あ~……
伊達に千年以上も碁を愛すがゆえに現世にとどまっているわけではないようである。
たしかに素人目にみてもかなりひどくみえるのは事実。
といっても近くて百四十年前に碁をうっていたという佐偽の実力はヒカルにはよくわからない。
「まあ、みてなって。懲らしめる方法は他にもあるさ。しかもとっても笑えるやつが」
こそっとそんな怒りに燃える佐偽にと耳打ちする。
そのままつかつかと台の上にとおいてあった碁石のはいったつぼをもち、そちらのほうにとあるいてゆく。
ちらっとみたかぎり、頭の髪の毛がかなりずれた。
それはつまり、あの髪の毛はカツラだということ。
『ヒカル?何を……』
佐偽が疑問に思うよりも早く、次の瞬間。
バラバラバラっ。
「おおっと。すいませ~ん。手がすべりました~」
対戦中のその問題の人物の頭上におもいっきり白石をぶちまけるヒカルの姿。
そして、それとともにおもいっきり碁石のはいったつぼとともに男性のカツラを一緒にもぎとってしまう。
かつらであることを気づかれ、そのまま部屋から駈け出してゆく阿古多、とよばれた男性。
そんな彼の姿をみて、次の瞬間。
「「「あはははははは!!」」」
会場内に何ともいえない笑い声が響き渡ってゆく――
「いやぁ。あんなにわらったのは久し振り」
「でも阿古多さんにはいい薬よ」
「と、とにかく!進藤くん。次にきたときに必ず阿古多さんにあやまりなさい。いいですね?」
「は、はい。俺も少しやりすぎたかな~。と。俺つい弱い者いじめとかしてるやつみたらついかっとなっちゃって…」
気持ちはわかる。
わかるが……
そんなヒカルのセリフに思わずため息をついてしまう。
そんな指導の先生の言葉に、
「許してあげなよ。白川先生。先生だってあのあとわらっていたじゃない」
くすくすくす。
別の生徒がそんな指導の先生にむかって笑いながらも話しかける。
まあ、たしかに笑っていたのは事実。
しかもあの阿古多という人物は注意をしても素直にきく相手でもなかったのもこれまた事実。
「と、とにかく!進藤くん。次に阿古多さんにあったらあやまるんだよ?」
この教室は、土日、祝日、月曜、水曜日に行われているらしい。
指導役の先生の都合により休みのことも多々とあるらしいが。
「は~い。…あ。そうだ。先生。先生、藤原佐偽、ってしってる?」
「ふじわらの…さい?ごめん。知らないなぁ。その人、囲碁に関係ある人?」
名前も聞いたこともない。
そもそも、ふじわらの…という響きからして昔の人物であるのは容易に想像はつくが。
だけども囲碁の歴史上、そういう名前は存在していない。
「ん。いいや。なんでもないです。それじゃ、失礼しま~す!」
やっぱり佐偽って名前しられてないんだ。
まあ、好きだからこそ情熱がありあまって…ってところかな?
そんなことをおもいつつも、教室をあとにする。
「あ、ヒカルくん。一緒にかえらない?おばさんも碁は先月からはじめたのよ?
でも以外ねぇ。平八さんにいくらいわれてもヒカルくん。興味もたなかったのに」
近所にすむ一人の老女がそんなヒカルにと話しかけてくる。
ヒカルのことは近所のよしみでよくしっている。
「ん~。あたらしくできた友達がさ。碁がとっても好きなやつでさ。だけども俺、囲碁のこと何もしらないし。
だから碁の基本でもおぼえとかないとそいつの相手をするのもこまるし」
「まあ。そうなの。かなり雅な趣味のお友達ができたのね」
「雅…かなぁ?」
たしかに姿からすれば雅、という言葉がこれまたしっくりくる相手もなかなかいないであろう。
「あ。そうだ。おばさん。どこか近くで碁がうてる場所とかしらない?このままかえるのも何だしさ~」
「ええ。あるわよ。駅前に碁会所があるわ」
「そこの場所、おしえて!」
「あら?ヒカルくんにはまだはやいんじゃ?基礎もまだわからないんでしょ?」
「いいの!何とかなるしっ!」
『何とかなるものでも碁はないのですが……』
ぽそっといわれた台詞におもわずひきつってしまうのはしかたないであろう。
「ま、教えるだけはおしえてあげるけど、えっとね……」
いいつつもその場所をヒカルにと教えてゆく。
「所で先生。囲碁の歴史上、一番強い人は誰ですか?」
そんなヒカル達とは対照てきに、一人の老人が教師である白川にと問いかける。
「いい質問ですね。昔、将棋の歴史上、一番強い人はだれですか?という質問をぶつけた記者がいました。
囲碁に関してもしかり。ですが、面白いことに、将棋の棋士はそれぞれに名前をあげましたが、
囲碁の棋士はすべてがすべて、こう答えました。『江戸時代の本因坊秀作』…と」
よもやその本因坊秀作のその身をかりて碁をうっていた人物が現代によみがえっているなど、誰が想像するだろう。
本因坊秀作。
歴史の教科書にもでてくるかなり有名な人物であり碁を少しでもたしなむものは知らないものはいないほどの人物。
幼名を虎次郎。
だが、公式的に碁をうっていたのは……『藤原佐偽』――
-第2話へー
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あとがきもどき:
薫:ん~。マンガの1話が1話に相当していけばいいなぁ…とおもったり。
とりあえず次回で塔矢明の登場ですv
あ、対局の様子はアニメ&漫画とおなじなのではぶきますよーv(こらまてや
ではでは、はっきりいって趣味全快ですが、次回につづきますv
ではでは~♪
2008年7月20日(日)某日
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