まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
さてさて。
どこをどうさがしても、似通った設定の二次さんがみつからない今日この頃…
なので、あえて(こらこらこら)打ち込み開始なのです。
同じような理由で始めた二次さんが、ひ~とつ、ふ~たつ、み~つ……
ひか碁に関してはあの以後は完全オリジナルだからよしとして(よくない!
とりあえず、るろ剣やコードギアス類はとっととすますべきかな?
ロキのほうは完全無欠にオリジナル設定になってるし…二次?とはいえないしなぁ…あれ…
こちらは、基本的に原作、小説、ときたま面白い設定になってるときに限りアニメ。
それらを組み入れてやっていきたいとおもいます。
始めは原作、第一話から!(それでもオリジ設定はかなりあり)
後々の付随とかをちらほらとちらばめてますv
ま、プロローグでネタバレオンリーにしてるから問題なしのはず!(そういう問題ではない…
何はともあれ、いくのです。
#####################################○ MOON RIGHT REVERSE ○~始まりの朝~
「う~ん…う~ん……」
さわさわさわ。
風がここちよく吹き抜ける。
そんな中、桜の下でうずくまる子供が一人。
「若~?いったいどこに…って、若!?どうかなさったんですか!?」
探していた子供が庭にてうずくまっているのをみてとりあわててかけよる。
春先でここちよい風がふいている、というのにその首にはしっかりと温かそうなマフラーがまきついている一人の少女。
長い髪とそして着物が異様に似合っている。
と。
「んきゃぁぁっ!」
ひょいっ、と今までうずくまっていた子供がその場を離れると同時、
足元にあった縄がそのまま少女の足をひっかける。
そしてそれが合図となり先だって仕掛けてあった罠が発動する。
「やった!成功!雪女がつれた!」
「もう、若~!!」
いつものこと、といえばいつものこと。
しかし文句をいおうにも体に縄がからみついて自由がとれない。
「若!」
「ちょっと、青田坊!黒田坊!若をつかまえてぇ~!」
そもそも、総大将に呼んでくるように、といわれた手前どうにかしないといけない。
ゆえにいまだに縄と格闘しつつも、廊下を歩いている二人の男性にと叫ぶように問いかける。
「って、若!こんなところにいらっしゃったんですか?」
「…雪女、お前何やってるんだ?」
「みてわかるでしょ!」
何をやっている、といわれても見たとおり、としかいいようがない。
「若!って…うわっ!」
「うわっ!」
どがしゃっ!
駆け寄る二人の重みに耐えかね、彼らの足元が一気に崩れ落ちる。
「やった!またひっかかった!」
そんな光景をみて、一人はしゃいでいる小さな子供。
年のころならば五歳か六才程度。
「わ…若ぁっ!総大将ににていたずらがすぎますぞぉぉ~!!」
何やらそんな声が周囲に響き渡っていたりするのだが。
そんな彼らの声に耳を傾けることなく、
「まったく。なんで妖怪なのにこうもいつもいつも簡単にひっかかるのかなぁ?ねえ?」
彼らが本気になれば罠から逃れられるのは至極簡単。
それがわかっているからこそ彼らを助けることもなくそのまま家の中にはいってゆく若、と呼ばれた子供。
「そうですねぇ。それに、あの穴…昨日、掘られたのは青田坊様では……」
ちょこちょこと、そんな子供の横に歩いているのはどうみても納豆?とおもえしきもの。
しかし、わらに入っているであろう納豆に手足がついて口や目がついているのはいかばかりか。
「うん。昨日、掘ってもらったのに。どうも予測が立てられないのが問題だよねぇ~……」
いくら妖怪とはいえ予測を立てて行動することは何よりも重要なはず。
そのあたりをどうにかしないといけないよなぁ~……
そんなことをふと思う。
「とりあえず、爺ちゃんが呼んでるみたいだから。いこっと。納豆はどうする?」
「私は皆の手助けにいってきます」
みればいつものこと、というか毎日のことなので他の存在達が縄を持ち寄り、
青田坊、黒田坊、と呼ばれた者たちを頑張ってひっぱりあげようとしているのが目にとまる。
「…というか。他人にたよらずに自力でどうにかさせたほうがいいよ。ほんと」
だから弱体化してるだの何だのっていわれるんだし。
とりあえずさくっと手痛い忠告をしつつも、そのまま家の奥にとむかってゆく。
ここ、浮世絵町。
その一角にある赴きのある古い屋敷。
周囲が普通の住宅なのに比べてこの屋敷のみは周囲から浮いている。
というか土地の広さだけでもかなりある。
庭に大きなしだれ桜に池、さらには離れなど。
噂では江戸時代からある屋敷だとかいろいろといわれている屋敷。
別の噂で妖怪屋敷だの何だの、といわれているのだが、いかんせんそれが事実だ。
と思っている者はまずいない。
そもそも、こんな科学の発達した現代にそんなものがいるはずもない。
とおもっているのが人間、という種族。
中にはそういった闇の生き物が存在する、というのを認識している者もいるにはいるが。
「爺ちゃん、呼んだ~?」
がらっ。
赴きのある障子をがらり、とあけるとそこは広い畳が広がっている。
いったい何畳あるの?といわんばかりの広さのその部屋。
その中央にぽつん、と座っている一人の老人。
特徴的なのはその頭の長さ…につきるであろう。
異様に長い頭ではあるがなぜかそれが気にならないのもまた不思議。
もっとも、それは不思議でも何でもなく、そういった『存在』なのだ、と若、と呼ばれていた少年は知っている。
「おお。きたか。リクオ。また派でにやったようじゃのぉ~」
何があったかは容易に想像はできる。
それゆえに苦笑してしまう。
「まったく。爺ちゃん。皆をあまやかしすぎてない?そもそもさ~」
「そういうな。リクオ。それより、あちら達の様子はどんななんじゃ?」
それか。
祖父から呼び出しをうける、などとあまりない。
ゆえに何か聞きたいことがあるのであろう、とは予測はしていたが。
「う~ん。水晶宮のほうはまだ時間かかりそうだね。というかあちらとこちらの時間率は異なってるし。
京のほうは…彼女がどうにかあらがってるみたいだけど…」
「まあ、それは何とかするしかないのぉ~。ところで、リクオ」
ずずっ。
お茶をすすりながら一息つき、ちょこん、と目の前にすわったリクオ、と呼ばれた少年にと問いかける。
「おまえ、まぁたいらんことをしたな?」
「いらんことって!爺ちゃん!あれだけ無銭飲食はだめ!といってるでしょ!?
あとで払いにいってる僕の身になってよねっ!」
もっともそれが祖父の能力であることはしってはいる。
いるがこのご時世はかつてのようなご時世ではない。
いまだに警察沙汰に誰もしていない、というのもまた彼の能力ゆえ、というのも理解している。
してはいるがそれはそれ、これはこれ。
「というか!そういうお前がはらってるお金も元は他人のもんじゃろうがっ!」
「僕のはいいの!どうせ表にだせないお金をもらってるんだからっ!」
祖父とは異なり、自分の場合はあくまでも相手から『もらって』いるのだから問題はない。
もっとも、それが相手の本意ではないにしろ。
第三者がきけばどっちもどっち。
しかしそんなことは彼らにとってはどうでもいいこと。
「それに。どうせ腹黒い人間達に蓄えられてるよりよっぽど世の中のためになってるよ」
「…妖怪が世の中のためになることをやってどうするんじゃ」
祖父のいいたいことはわかる。
わかるが。
「何いってるんだよ。爺ちゃん。妖怪もいまの世の中、人のため、世の中のためになることをしなきゃ。
それに、うまくすればしのぎが増えるし。それより!下のやつらのしつけ!どうなってるのさ!」
「さらっとかわすな!まったく……。まあ、確かに。最近は好き勝手をしはじめてる輩が多いのは事実じゃがなぁ~……」
そういいかけ、ふたたびずずっとお茶をすすりつつ、
「そもそも。ほっといて膿を出し切って改革しよう、といいだしたのはおまえじゃろうがっ!」
そのまま間髪いれずに言い放つ。
「それとこれとは別っ!」
父が襲撃をうける前から内部に入り込んでいる輩の存在には気づいてはいた。
まだ完全に幹部になり変って侵入している輩はいないものの油断は禁物。
「まったく。儂の血を半分ひいてるくせに……」
若いころはいろいろと無茶をした。
そのあたりの性格はこの孫は自分によく似ている。
似てはいるが……
「僕は四分の一しか継いでないっ!」
そんな祖父の言葉にすかさず突っ込みをいれる。
事実、彼は祖父の血を四分の一しか継いではいない。
「…『力』をもってるやつが何をいう……」
そんな孫の台詞に思わず突っ込む。
「爺ちゃん、それ人がきいたら…まずいよ?」
「なぁに。わしらの空間にはいってこれるやつがいたらそれはそれですごいことじゃぞ?」
「それはわかってるけど……」
他人に認識されない。
それが彼らのもっている能力の一つ。
ゆえに声も何も第三者にはまったく聞こえないし、また姿も見えない。
常に相手に見えるようにしている、というのを理解しているものがいったい全体、いくらいることか。
「そういえば、リクオ。学校のほうはどうじゃ?」
この春からこの孫は人間でいうところの学校にと通い始めた。
何でも彼曰く、人でもあるのだから学校にはいくべきだ。
と意見し周囲の反対をも押し切りかよっているのだが……
「うん。面白いよ。…というか人としての加減具合を今は摸索中…かなぁ?」
いくら普通の人間のふりをしようとも『血』における肉体の力はどうにもならない。
なるべく『力』を抑えてはいるものの。
「…完全な『人』としてだとあっちの姿になるしなぁ~……」
あちらの姿であれば『妖』としての力は抑えられる。
られるがまた別の力が表にでるのも事実。
「おまえ、年とともにだんだんと死んだ婆さんににてくるしなぁ~……」
この姿でも面影はある。
あるが『あちらの姿』となれば完全に瓜二つ。
「それを知られるのはあまり面白くないし」
「…というか、妖怪のくせに陰陽道まで使える、となるとあいつらの反応が面白そうじゃがのぉ~」
「何いってんのさ。爺ちゃん。父さんもつかってたんだしおあいこだよ」
「…違う、とおもうんじゃがのぉ~……」
そんな祖父の疑問は何のその。
「そういえば爺ちゃん。どうやらひとつほどまた膿がでてきそうなんだけど。
対処はいつものようにこっちでやってもいい?」
「好きにせい。しかし無理はするでないぞ?」
「うん。わかってる」
そんな会話をしている最中。
がらっ。
「あら?リクオ~?お義父様~?そろそろ朝ごはんのお時間ですよ~?」
のんびりとした声が障子をあける音とともに部屋の中にと響き渡る。
「お。朝ごはんか」
「爺ちゃん!今日はきちんと家でたべてよねっ!またご近所にいかないでよっ!」
そもそも、ほぼ毎日のようによそ様の家に勝手にお邪魔してはご飯を食べているこの祖父。
たべているときには誰も不思議はおもわない。
が、その後に、あれは誰だったっけ?
という疑念がわくのもまた事実。
それが近所で評判になっているのだから隠すのは困難。
もっとも、その反応が面白くて『消して』いないことをこの孫であるリクオは誰よりもよく判っている。
「さ。はやくいこ」
「やれやれ。年よりをせかすでないわい」
よっこらしょ。
そんな会話とともに腰を上げる。
それと同時に今まで誰もいなかったはずの部屋に突如として二人の姿が浮かび上がる。
実際には今までその場にいたのであるが、他人の目には見えないようになっていただけ。
そんな光景はいつものこと。
「ほらほら。ふたりとも。さめないうちにはやくね~」
動じることなく二人の姿をみとめてにこやかにいいはなつ、物腰やわらかな女性がひとり。
「若菜さん。今日の朝ご飯は何かのぉ?」
「今日は義父様のおすきな煮つけに炊き込みご飯ですわ」
「おお。それは何よりじゃ」
先ほどまでの言い合いはどこへやら。
そんな会話をしつつもそのまま部屋をあとにする。
そんな祖父の姿を見送りつつも、
「まったく…爺ちゃんは。僕も早く食べてから準備しよ」
一日一善。
昨夜はあの施設に寄付金置いてきたし。
そんなことをおもいつつも部屋を後にするリクオ、と呼ばれた少年。
代紋のみを記した封筒にいつも入れて寄付等はしている。
あまり金額が大きくなれば下手をすればマスコミとかも嗅ぎつける。
ゆえにいつも細かくわけて様々な施設などに配っているこの現状。
金額が少なければいつも慈善寄付、ととらえられあまり騒がれることはない。
そのことがわかっているがゆえの行動。
しかしそれにより、感謝の気持ち、というものが代紋へとむけられる。
それはそのまま、自分達の『組』の『力』となる。
人々に忘れられ、また畏怖されなくなった『妖怪』に存在意義などないのだから……
バタバタバタ……
「まにあったぁ!」
ここ、浮世絵町にある学校は一つしかない。
かといって町の人口が少ないわけではない。
そこそこに人口は存在している。
主だった大会社などないわりにこの町の行政による補助はしっかりしている。
それも一重に毎年のように莫大、ともいえる税金を納めている場所があるからこそ。
とりあえず表向きは『よろず屋』として行政には登録している。
まあ、属にいう『極道』のようなものであろう、と人々は認識してはいる。
いるが別に問題が起こされるわけでもなく。
問題、といえばそこの家の祖父がかってに人の家でご飯を食べる程度である。
ゆえにさほど目くじらをたてるものでもない。
さらにいえばその家から治められる税金により行政による補助制度が充実している、となればなおさらに。
なぜかこの町では度を越した騒ぎを起こしたものは二度と悪さをしなくなる。
彼らがいうには『妖怪』に懲らしめられたとか何とかいっているらしいが。
それを信じるものはあまりいない。
もっとも、この町は他とくらべて摩訶不思議な現象が多々と起こる地域ではあるが。
それは今にはじまったことではない。
そもそも、先の戦争においても、この町だけは空襲を免れていた、という事実がある。
戦争中、常に深い霧が立ち込め、上空からは認識されなかったらしい。
地上においても霧がたちこめ、中にはその霧によってか迷うものすらでていた始末。
中には、この町にいる、という『妖怪の主』が守ってくれているのだ、だのいうものもいたりする。
事実、『妖怪の主』をまつった神社があるのがそれらの信仰を物語っているのだが……
神と妖は紙一重、という典型的な例であろう。
「リクオ君。遅かったわね。今日は間に合わないかとおもっちゃった」
家の前…といっても敷地はかなり広い。
入口にあたる門も一つではなく二つの門によって家の構成は成り立っている。
ゆえに、正面門の前の少し先にとある道沿いにととまっているバスにと乗り込むリクオに対し、
にこやかに話しかけている一人の少女。
「もう。みんながなかなかちゃんとしてくれなくてさ~」
おもわず愚痴ってしまうのは仕方ない。
絶対に。
そもそも、自分一人でできる、というのに手を出そうとしてさらに時間をくうハメになっている。
彼らの好意はわかる。
わかるが…やはり、自分のことは自分でやりたい、とおもうのは仕方ない。
「すげえ!あれが奴良の家か!?」
「でけぇっ!」
「そんなことないよ」
「…おまえ、実はかなりのかねもち?」
「もう。ちがうってば。ただ家が古いだけだって」
すでにバスに乗り込んでいる他の子供たちが口ぐちにリクオに対して話しかけてくる。
このあたりの土地代はさほど高くなはい。
そのわりにきちんと区画整備されており、自然もいまだにかなり豊かに残っている。
ゆえに一部の場所は保護されている区間もあったりするのだが。
この土地にしか残っていない植物や生物、といったものも多々とある。
ゆえに人々はいうのである。
浮世絵のような町…すなわち、浮世絵町、と。
実際にそのとおりに名前がつけられたのは戦後のこと。
「奴良…そういや、きいたことがある名前だなぁ。とはおもったんだよな」
奴良家、というのはときどき話題に上がる家ではある。
いろいろな意味で。
祖父が他人の家で飲み食いしている、というのから寄付金に至るまで。
常に話題のつきない家ではある。
もっとも、その祖父の年齢もまた不思議なのであるが。
町の年よりいわく、すでに昔からあの姿だったような、そうでないような?
と皆の記憶が定かではない。
かといって行政で確認しようにも彼の祖父に関する記録は奇麗さっぱりと残ってはいない。
まあどうみても戦前生まれ。
いくら空襲がなかった、とはいえ戦争のごたごたで紛失してしまっている感は否めない。
ゆえに、町一番の長寿者、としても一応登録されているリクオの祖父。
…事実はすでにもう四百年以上存在しているのであるが…
よもやそんな事実を人間が知るよしもない。
「おまえんち、妖怪屋敷っていうの本当?」
「もう、何いってるんだよ。皆。あ、それより今日の体育って何があるんだっけ?」
同じ学校の生徒の声をさらっと受け流しさらり、と話題を変える。
小学校に入学してそろそろ一週間。
だいぶ人間の生活にもなれてきた…とリクオとしては思えなくもない。
ないがやはりどこかずれている。
が、そのことには当人はまったくもって気づいてなどいない……
「そういえば、リクオ君。宿題、やってきた?」
「うん。やってきてるよ」
「やりぃ!ぬら!あとでうつさせてくれな!」
「うん。いいよ」
「あ、俺も、オレも!」
たわいのない子供たちのやり取り。
それがこの町が平和であることの象徴でもある。
このバスはスクールバスであると同時に一般のバスでもある。
それゆえにこのバスにのっているのは子供たちだけではない。
普通の一般のお客も乗っているのではあるがそのあたりは皆、寛容。
何しろどうみても新一年生。
ここ、浮世絵町の小学は基本、制服ではなく私服。
カバンもランドセルでなくて自由、という形をとっている。
しかしその胸に必ずとあるワッペンをつけるようになっている。
色ごとに何年かがわかるようになっている仕組み。
一年の色は黄色一色。
学年に応じて、いくつかのいろ、もしくは一色で示されている。
「僕たち、他のお客もいるからしずかにね~」
『は~い』
運転手が苦笑しつつもそんな騒いでいる子供たちにと注意を促す。
ぶろろ・・・・・・
そんな彼らを乗せ発進するバスが一台。
「…まったく。若も奴良組のあととりなんですから。学校なんかいかなくてもいいのに」
「でも、まったく学がない、というのも困るのかもしれませんよ?
やはり若には聡明に育ってほしいですし。私たちの主になるんですから」
そんなバスを門のところから見おくりつつも、今朝がた、リクオの仕掛けた罠にかかった男女が話しだす。
そう。
この組を継ぐのは彼に他ならない。
彼らに学が必要かどうかは判らないが、ないよりはあったほうがいい。
特に今は人間が妖を信じない時代でもある。
人々の心から忘れられてゆく妖も数知れず。
それでも、まだ人々の心に妖という存在が残っているのは本質的に人間が闇を畏れるがゆえ。
「まったく。護衛をつけようとしても若には断られるし……」
そもそも、つけていた護衛が毎度のことまかれてしまう。
変なところで総大将にほんとうによく似ておられるから……
何やらふよふよとうかびつつもぶつぶつつぶやいているちょっとした大きさのカラスが一羽。
というか狭い学校の中でいったいどうやったら護衛の目をくらますことができるのやら。
…もっとも、総大将の血を引いている以上、それをやられてもさほど不思議にはおもわないが。
「ほっほっほっ。まあ、護身刀だけは持たせてるから問題ないじゃろう?」
「「「って、総大将!?」」」
さきほどまでまったくもって気配すらも感じなかった。
それはまあいつものこと。
いつものことではあるが……
「総大将!また護衛もつけられずにどこにいかれる・・って、ああ!また逃げられたぁっ!」
姿を確認した、とおもえばすでにその場にその姿はなく。
いつものごとくに騒ぐ、カラスの姿が、しばしその場において見受けられてゆく……
それは、いつもの光景。
いつもの出来事。
この光景は、この【奴良組】にとっては日常茶飯事の出来事なのだから……
「…あちゃ~……」
どうもいまだに加減、というのがよくわからない。
「奴良、おまえすごすぎ!」
「ぐ、偶然だよ。うん。偶然」
体育の時間に行われた百メートル走。
なるべく急がないように、それでいて不自然ではないように走った。
…つもりだったんだけどなぁ~……
「奴良君。何か昔からやってる?」
タイムを図った教師も驚いてそんなことをいっていたりするのだが。
「え、えっと。ときどき走ってはいます」
嘘ではない、嘘では。
…それが空中である、というのはおいとくとして。
「それにしても、今から本格的にやったら国の代表も夢ではないわよっ!」
一人、何か別の意味で目をきらきらさせている教師がいたりするのだが。
基本、低学年が体育などといった行事を行うときには必ず教師は二人体勢で見守ること。
それが義務つけられている。
そのせいで担任、副担任などに負担がかなりかかるのだが。
ここ、浮世絵町ではその負担を軽くすべく、それぞれの科目に一人づつ。
専門の教員を置くようにして少しでもクラス担任となった教師の負担を軽くすべく定めている。
「ぬら君!本格的に、やってみない!?陸上!」
「先生、まだ奴良君は小学生ですよ~。先を先にきめてはかわいそうですよ」
子供の未来は様々な方向に開けている。
まだ小さいうちから一つの方向に定める、というのはそれは大人のエゴ、というもの。
「でも、ほんと。奴良君。はやかったね~」
「きっと家で毎日のようにみんなとおいかけごっこしてるから…かな?」
それがいたずらをして皆から逃げている云々はさておいて。
「あ~。ぬら君の家って広いものね~」
幼稚園のときに一緒になってから幾度か訪れたことはある。
あるが…毎度のことながら迷ってしまうほどに確かに彼の家は広い。
き~ん、こ~ん、か~ん、こ~ん……
「はい。体育の時間はこれまで。みんな、早めに着替えてね~」
『は~い!』
まだ低学年。
ゆえに男女別れて着替える、などといったことはない。
そのまま各自教室にもどりそれぞれ着替える子供たち。
「そういえば、みた?昨日のテレビ?」
「みたみた!でも本当にいるのかなぁ?妖怪って」
着替えつつもそんな話題がふとのぼる。
ぎくっ。
思わずリクオがギクリ、としたのには当然誰も気づかない。
そういえば、昨日、花開院家の特集やってたっけ……
そんなことをふと思うが自分から話題にはいっていく内容ではない。
というか下手をしたらボロがでる可能性がある。
ゆえに会話には加わらずにもくもくとひたすらに着替えて片づけをするリクオ。
「はん。みんなわかってないなぁ。そもそも、妖怪や幽霊、というものは。
昔から人の勘違いや空想のたまもの、ときまってるんだよ。
このご時世、そんなものがいたら是非ともお目にかかりたいものだよ」
和気あいあいと何やら妖怪談義を始めるクラスメートの中で一人、場違いな発言をしている一人の男児。
「そうかなぁ?でも、清継君。噂ではこの町に妖怪の主がいるともいうよ?」
ギク。
ギクギク。
…それって、爺ちゃんのことじゃあ……
そんな会話を耳にしながらもひたすら冷静を装うリクオであるが。
「まあ、たしかに。妖怪、ぬらりひょんをまつっている神社があるのは知っているけどね。
そもそも、君たち、妖怪の主、ぬらりひょん、というのはどんなものかしってるのかい?」
…たのむから、それ以上突っ込まないで~……
容姿をだされてもし万が一、祖父と結び付けられてはたまったものではない。
…実際に祖父がその『ぬらりひょん』なのだから間違ってはいない。
いないが……
「?どうかしたの?ぬら君?何か顔色わるいよ?」
「え、あ、何でもないよ。うん」
「もう。清継君。そんなことなんてどうでもいいじゃない。
そんなことより、はやく教壇からのかないとおこられるよ?」
何やらエキサイトしたのか教壇にのり力説しているクラスメートの清継、という男児。
まあ、所詮は小学一年。
ゆえに身長などあるはずもなく。
いきおいあまってそのまま机の上にたち何やら力説しているようなのだが。
「ちっちっちっ。わかってない。わかってないなぁ。家長君。そもそも、この科学の時代に……」
「こら!清継君!机の上にのったらだめだろっ!」
「ほ~ら、おこられた~」
いつのまにやら部屋にと入ってきていたクラス担任がそんな彼に対して注意する。
まあ子供が悪さをするのは慣れている。
が、しかし悪いことは悪い、と叱るのもまた教師の役目。
「ほらほら。みんなも。次の授業がはじまるぞ~」
「「「は~い」」」
切り替えの早さは子供ゆえ。
先ほどまで何やら妖怪や幽霊といった類の話題で持ちきりだった教室であるが、
教師の言葉をうけてそれぞれがそれぞれの席にとついてゆく。
そんな中。
「……変な噂たっちゃってるよなぁ…家のものによくいっとかなきゃ……」
一人、つぶやくリクオの姿。
それでなくとも今の時期が時期である。
そろそろ反旗を翻すものが動き出しそうな気配であることをリクオは知っている。
下手にクラスメート達がその部類に興味をもって危ない目にあわない、とも限らない。
子供、というものは自分からあえて危険につっこんでゆく、という性質をもっている。
護衛をまきつつも、なるべく一人で行動している意味がそれだとなくなってしまう。
…このまま、皆の興味がそがれればいいんだけどな……
そうリクオが思っていることなど…当然、誰も知るよしもない……
~第2話へ~
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あとがきもどき:
薫:さて。と。原作と異なり、リクオ、祖父と示し合わせて組の膿を出し切ろうとしております(まてこら
が、しかし周囲には普通の子供のふりを徹底しているので誰にも気づかれていませんv
敵をだますにはまず味方から~の概念で~
それに関しては祖父である『ぬらりひょん』もまた同じなのであえて共犯に(面白いことが好きなので
とりあえず、リクオが祖父がぬらりひょんだ、とか云々いっていたシーンはこちらの二次でははぶきます。
本質を知っているがゆえにこちらのリクオはそういったことはいいふらしませんv
が、はむかうものには容赦ないですよ~。一度は許せど二度はなしvですvはい。
次回でハコゼの回に触れる予定ですv
カナちゃんとのやり取り…回想シーンをいれるか否か…ま、打ち込みしながら決めましょう(まて
何はともあれそれではまた次回にてv
2011年1月13日(木)某日
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