プロローグ:

――ダメよ。ヒューブ。
また、だ。
いったい何がいいたい、というのだ。
ジュリア。
自分を責めるわけではない。
ただ、死のう、とおもったときに必ず声がきこえてくる。
魔笛を見つけ、そして愛する人ができ。
しかしその愛する人ともひきさかれた。
かつて自分がしでかしたことはまだ許されていないんだ。
そう身にしみて感じてしまう。
彼女と出会い、自分の考えの愚かさに気付かされた。
愚かなのは自分であった、と。
看守達の話しで彼女が自分を助けるために別の人物と結婚することをしった。
何もできない自分の愚かさ。
愛するものとひきさかれるつらさ。
それらはかつて自分がかの国の人々に味あわせたつらさと重なる。
あの子をあの国に送ったことに迷いはない。
おそらくあの方ならばあの子を温かくむかえてくれるはずである。
傍にいるシュトッフェルが何かいうかもしれないが。
彼女は結婚式場から逃げ出した、という。
しかしその後の消息がまったくもってつかめない。
抜け出すのにそう手間はかからなかった。
なぜだかは知らないが。
自分で命をたとうとしても、また他人に命をくれてやろうとしても。
そのつど聞こえてくる自らの過ちにより死なせてしまった彼女の声。
――ダメよ。ヒューブ。死んでは、ダメ。
ジュリア。
君はいったい私に何がいいたいのだ?
…今日もまた、私は死に場所をもとめてさまよっている……


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