正式にグレタを養女にしてからというもの、何やら仕事の量が増えたような気も……
もっぱらギュンターやグウェンダルが手伝ってくれるのでそれほどでもないにしろ。
「……は?今何ていった?」
何か信じ固い言葉をギュンターから聞かされたのはパーティーが終わった三日後のこと。
アンリは一度あっちにもどって再びこっちにと戻ってきている。
ちなみにあちらの自国はアンリが戻ったときは四時ごろだったとか。
六時前までには戻るよ。
というアンリの言葉をうけて、ひとまずはその時間帯でいくとこちらでは春先より少し前になるらしく、
それまでにはエドさんも戻ってくる…ということらしい。
何だかなぁ。
とにかく聞き返すオレに、
「ですから。先日陛下がスヴェレラ王家に手紙を託した一件で、
  信じられないことかの国より『友好条約を結びたい』という話が飛び込んできました」
そういうギュンターの顔も困惑顔。
「……えっとぉ…だから何で?」
今まで魔族の施しはうけないっ!
と突っぱねていた国がいったいぜんたいどういう風の吹き回しなのか。
思わず目を点にして問いかけるオレの質問の返事の代わりに、
コンコン。
執務室の扉がノックされ、
「フォンクライスト卿いる~?」
ガチャリと扉を開けてアンリが入ってくる。
グレタの部屋はオレの部屋に近いほうがいいだろう。
というので、ならアンリが眞王廟に滞在するので自分の部屋をグレタに提供する。
と話がまとまったのはお披露目パーティーの少し前のこと。
なので最近はアンリは血盟城ではなく眞王廟にと滞在拠点を変えている。
酔うがあるときにはこうしてこっちにちょくちょく来てるけど。
よくまあ女の園に一人で入る勇気があるものだ。
オレなどは絶対にそんな勇気も度胸もない。
まあアンリの場合は、一つ前の前世が女性であったというのもあるので抵抗は余りないようだが。
というか、そのときの記憶があるアンリだからこそ抵抗がないのかもしれない……
「あれ?アンリ?どうしたの?やっぱり女の人たちの中に男一人は疲れた?」
そんなオレの問いかけに、
「ここぞとばかりに使われてるよ。いろんな雑用にね。今日はとりあえず結果報告にきたんだよ」
「?」
そんなアンリの言葉に首をかしげるオレとは対照的に、
「ではスヴェレラの?」
ギュンターが問いかける。
「うん。とりあえず…ま、ユーリもちょうどいいから聞いとく?」
「…何。そのついでのようなどうでもいいような言い方……」
思わずアンリの言葉に突っ込み。
「あんまり一概には喜べないからねぇ。
  とりあえず友好条約は表向きと国外へむけた対面みたいだよ。やっぱり。
  ユーリがグレタちゃんを養女にしたことで、スヴェレラ王家はイズラ姫の娘を追放した。
  というか見放した、と捉えられるのを恐れたみたい。
  あと魔族の国と表面上だけでも友好条約を結ぶことによって、他国の侵入を防ぐ。
  そんな目的などもあるみたいだよ?」
というか…グレタを見放していた…というのは事実じゃんか……
「あと。ユーリが『大精霊に手紙を託した。』というのもあって、
  重臣の人たちも周囲の目を気にしての行動のようだよ。
  別に条約を結んだからって積極的に外交するときでなく、
  強いていえば魔族と駆け落ちした人をおっちにおしつけ…もとい引き渡す。
  といったくらいの差らしいけど。彼らの国の意向としたら」
そんなアンリの説明に、
「なるほど。対面上のことで…ですか。いかにも人間達のやりそうなことです」
などといっているギュンターだけど。
それって人間だからとか関係ないとおもうな~。
「?というか、何で?確かに大精霊というかニルファに手紙を託したのは事実だけど。
  それが何か関係あるの?」
しかし。
いくら表向き。
とあくまでいうものの、向こうから友好条約云々を持ちかけてくるとは驚きだ。
これをきっかけに本当の意味での友好関係を結ぶきっかけになるかもしれないし。
「で?どうする?ユーリ?」
オレの質問には答えずにアンリがオレにと聞いてくるけど。
無論…どうするかなんて決まってる。
向こうの偉い人…つまり国王夫婦とかいう人たちにも言いたいことはたくさんあるし。
友好条約の一件はうれしいけども、男性至上主義。
あれは絶対にどうにかすべきだとおもう。
絶対に。
でないと国民が気の毒だ。
「どう。って…対談を受けるにきまってるじゃんっ!」
オレの即答に、やっぱり。という顔をするアンリに深くため息をついているギュンター。
向こうの意図はどうあれ――
少なくても少しはあの国の女の人たちの待遇をどうにかできるかもしれないし。
「ではそのように調整いたしまして手配いたします」
ギュンターが止めても無駄。
と悟ったのか大きくため息をつきながらいってくる。
大きな海もまずは一滴の水滴から…ってね。
何ごとも一歩前に踏み出すことが肝心だし。
何はともあれ、最近友好条約を結んでもいい。
という小国がここしばらくの間に少なくとも五カ国以上はあったりするけど。
いったい全体どういう風が吹いたのか。
詳しくは判らないけど、何かカヴァルケード王家の人たちから聞いたとか何とかいってたけど……
聞いたって何を?
ねぇ?

…とりあえず、少しは世界人類皆平等計画は…光を見ているのかもしんない。
まずは、カヴァルケード国との対談だっ!
がんばるぞ!
ついでにグレタの文句もいってやるっ!!
小さな子供を愛さないなんて、それこそどうかしている。と。
子供の気持ちがわからないで国など治められるはずがない。
国というものはそもそも国を治めるものの立場からすればわが子のようなものなのだから……


                         ― Misson End Go To Next……



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