エピローグ:
かつて忘れかけていた物語。 人々は夢物語、そうおもっていた。 それでも心のどこかで期待していた。 その夢物語が実現することを。 しかしそれは十八年前に断ち切られた。 …はずだった。 だがしかし…… 「生きているうちに伝説が現実になるかもしれないねぇ」 「ほんと。だけど天空人ソフィア様の御子ってどんな御方なのかしら?」 人の噂、というものは伝わるのがはやい。 ましてや奇跡を目の当たりにした国ならば特に。 豊かな台地に豊かな自然。 約一年前までには考えられなかったこの状況。 「我が国も眞魔国との交流を決定されたようだしね」 「よくもまあ。頭の固いお上連中が決定したよね」 それでなくてもこの国は魔族と恋に落ちただけで女性だけが罪人扱い。 となっていたお国柄。 それを考えればかなりの進歩。 法石はとれなくなったものの、それでもあまりある自然がそこにある。 家畜などもカヴァルケードの支援で希望者にはいく頭か配られている。 これから世の中はきっとよくなっていくのであろう。 伝説につたわっていたとおり。 まだ魔族に対する恐怖も残っているものがいるのも事実。 だがしかし、魔王に即位した、という人物に対してだけは評価は別らしい。 それでもそれらを外でいうことはなぜか禁止されているのも事実だが。 「このまま。魔族も人間も平等に暮らせる世界がくればいいねぇ」 「ほんと」 誰もが口にしなかった。 しかし、魔族の実状をしっているものたちは願っていた。 魔族、そして人間、それらの区別なく生きていける世界を。 いまだに人間の世界では魔族は諸悪の根源、となされている教育や流言がまかりとおっている。 それは自分達がもたない力に恐怖したがゆえの結果。 しかし人は失念しがち。 力をもたない、と思い込んでいても魔力をもたない人間にも努力次第で身に着く力がある。 ということを。 そしてまた、魔族側からしても努力次第で身に着く力がある、ということを失念していた傾向がある。 これから世の中はどうかわってゆくのか。 奇跡を目の当たりにした国の女性達だからこそ願ってしまう。 願わくば、自分達の子供が大きくなったときには誰もが平和に暮らせる世界でありますように…と。
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