言いたいことは理解できる。
だけど余りお金を使うのは……
何しろ国民の皆さんの税金だし。
一国の魔王の娘としてグレタのお披露目パーティーが開かれることにと決まり、
ギュンターやグウェンダルはその準備にと追われている。
「クスクライフさん家にとりあえず竜胆つくって売り渡すことで、
  少なくても税金の負担は最小限にしたけど?」
ずらり、と並べられている服、服、服……
何でかみなれた服まであるし。
いやえっと……
「…いや。それは助かったけど……でもアンリ……これ……」
部屋にともどり思わず硬直。
なぜかアンリが見覚えのある箱を数十個もって、部屋にとやってきていたりする。

竜胆。
それは竜の生命力の強さにちなんでつけられた特殊な方法で精製した丸薬のこと。
万病に格といわれ、とても貴重品だとか。
作り手もあまりいなく、かなり高価なもの。
とされているらしい。
何でも自然界にとある全ての回復エネルギーを物質上とし、
それを小さく丸薬にしたのがその薬らしい。
よく中国などの古事記にも、その薬のことは書かれている。
…らしいけど。
オレは中国とかのことはよく知らないし。
オレが税金を使うのに抵抗がある。
とよく理解してくれているアンリがそんな方法をとってくれたおかげで、
資金やまた物資などの面ではひとまず心配はないが。
ヒスクライフさんも全面的に郷里九してくれ、カヴァルケード王家も協力してくれている。
スヴェレラの国王夫妻にはひとまず手紙を届けておいた。
水の大精霊ニルファに届けてもらったんだけど。
普通に送っても拒否され、破棄される可能性があるから。

「パーティがあって、ユーリがスピカちゃんと同い年の子を養女にすることになった。
  っていったらジェニファーさんが持たせてくれたんだよ♪」
……って、ちょいまていっ!
「って!?まさかあっちに戻っておふくろに話したのか!?」
「うん」
即答すなっ!
というかっ!
「…い…いつのまに……」
アンリの即答に思わずがっくりとなる。
そんな会話をしていると。
ガチャ。
「ユーリ。はいるぞ」
「ユーリ!!って何これ!?すっご~い!かわい~!!この服どうしたの!?アンリお兄ちゃん!?」
ノックもせずにはいってくるし……
「グレタ。部屋に入るときはノックわすれずにね」
一言注意を促しておく。
というかヴォルフ…お前が手本を見せなくてどうすんだよ……
「この大量の服はどうしたんだ?」
扉を開けて入ってきたグレタとヴォルフが部屋にと広げられている服をみてそんなことをいってくる。
どうやら二人とも部屋に広げられている服をみて驚いているらしい。
そんな二人に対し、にこやかに。
「あっちからもってきたんだよ。ジェニファーさんに頼まれてね。
  八ミリビデオとってくるのを条件にサイズが合えばプレゼントするってさ。
  あ、パーティーもビデオにとってきて。って八ミリビデオ渡されたよ~♪」
がくっ。
何かあっちに帰るのが怖いんですけど……
「グレタちゃんにサイズあうかな~。あ、あいそう。どれか着てみて。
  これユーリの妹の服なんだけどさ。あ、安心してユーリ。ユーリ用の女の子の服ももってきたよ♡」
「……って安心できるかぁぁ~!!」
オレの叫びは何のその。
グレタは目をきらきらと輝かせ、
ごそごそと服を脱ぎ下着のシミーズ一枚になって気に入った服を選んでいる。
人前で服を脱ぐのはやめようよ。
これはよぉおく教育しておかないと。
そういった趣味の人でもいたら大事だ。
父親としてオレがグレタをいろんな意味から守らないと。
「ユーリのすんでいるところにはかなりかわいい服があるんだな。」
「というかうちのおふくろの趣味。…おふくろ、子供で着せ替えして写真とるの…趣味なんだよね……」
ヴォルフの問いかけに反論する気力もなく、思わずつぶやく。
ほとんどふりふりのレースなどがついているファンタチックな服ばかり。
オンの子はスピカ一人だけ。
というのもあって、おくふろ自分でつくったりして着こなせないほどに服…作ってるからなぁ~……
着れなくなった服などはフリマで売ってるらしいし。
「うわ~!これかる~い!」
グレタが選んだ服をきて、スカートを広げてそんなことをいっている。
そえいえば、あまりこっちではフリフリレースとかの服とかは見ないような気がするが。
…ま、実用的じゃないしね。
と。
バタバタバタ……
何やら外があわただしい。
コンコン。
ガチャ!
「失礼しますっ!陛下っ!」
ノックと同時に扉が開かれ、息せききってコンラッドが部屋の中にと入ってきて、そして一瞬固まる。
どうやら部屋の中に広げられた服をみて固まったようだけど。
コンラッドが返事を待たずに入ってくるなんて珍しいな。
そんなことを思っていると、
「これは……?あ、猊下があちらからもってきたのですね。それより陛下…実は……」

コンラッドが何やら外を気にしつつあせっている。
何があったんだろ?
こんなにあせっているコンラッドというのも珍しい。
と。
「陛下ぁ~!!きゃぁ~~~!!!」
「…ってツェリ様ぁぁ!?」
「は…母上!?」
そんなコンラッドを押しのけるようにして入ってきたのはヴォルフラムそっくりの美人さん。
オレの先代にあたる魔王であり、コンラッド達、見た目にてない三兄弟の実の母親。
オレに飛びつかれる!?
と思わず反射的に身構えるが。
「きゃぁ~!!あなたがグレタ!?かわいいぃっ!」
だきっ!
何か部屋に飛び込むなりグレタに抱きついてるし……
いやえっとぉ……
「母上!?いつおもどりに!?」
驚きつつも問いかける、そんなヴォルフの問いかけに、
「ついさっきよ。何か面白そうなことがあるような気がして。ファンファンに送ってもらったの」
「……?ファン…?」
ファンファン?
何だそのファンシーな響きの名前の人は。
「あ…あの?」
豊満な胸に抱きしめられて戸惑っているグレタの姿が目にはいる。
まあ、たしかにあれは毒だ。
グレタにとっては違うかもしれないけど。
でもツェリ様の胸に沈められたら窒息してもおかしくない。
「あら。ごんめなさい。わたくしフォンシュピッツヴェーグ・ツェツィーリエよ。よろしく。
  そこのコンラートとヴォルフラム。そしてグウェンダルの母親よ。ツェリって呼んで♡
  きゃ~!!わたくしにもついに!娘ができるのねっ!
  あら♡ちょうどいい具合にかわいい服がたくさん♡」
グレタを抱きしめたままで、周囲の服に気づいてそんなことをいっているツェリ様。
「あのぉ?ツェリ様?グレタはオレの娘なわけで、ツェリ様の娘じゃあ……」
「あら?陛下とわたくしのヴォルフが晴れて結婚すれば、わたくしの娘よ?
  わたくしねこんなかわいい娘がほしかったのっ!」
「…その場合、娘というか孫なのでは……母上……」
ぼぐっ!
うわっ!
いたそ~……
コンラッドのつぶやきに思いっきり肘鉄を食らわせているツェリ様の姿が。
「……つ~か何でツェリ様が……」
オレの至極最もな問いかけに、
「母上はどうも天性の勘で何かある!とひらめいてもどってこられたらしいんです。
  しかもその…母上の新しい恋人をつれて……」
「……は?」
「な…何だとぉ!?」
コンラッドの言葉に思わず目を点にするオレと、叫んでいるヴォルフラム。
いやあの…ツェリ様らしいというか何というか……
「とぉぉっても優しいのよ。今度の人は商人なの♡
  港でヒスクライフ氏とお会いしてね。だったら彼も一緒に。ってことになってつれてきたの。
  手広く商売をしているとっても紳士的な商売人なのよ?シマロンの殿方なんだけど」
グレタを抱きしめ、ほおずりしたままツェリ様がいってくる。
グレタは戸惑ったような顔を未だにしてるけど。
もしかしなくても本当のお母さんのことを思い出しているのかもしれない。
「シマロン…って。もしかして、船をくれた。とかいう人ですか?」
あの船の名前はちょぉぉとどうにかならないか。ともおもうけど。
ツェリ様の船のことを思い出し、問いかけるオレに、
「あら。さすがですわ。陛下。あ、ヴォルフは新しいお父さんみたくないかしら?」
「母上っ!!」
……気持ちはわかるぞ…ヴォルフ……
恋多き母親もつと子供は大変だ。
オレの育ての夫婦ははっきりいって晩年新婚夫婦。
といっても過言でないけど。
「それでですね。その…母上推薦…ということもあって、
  ……とりあえず陛下にお目どおりを…となりまして……はぁ~……」
コンラッドが額に手を当ててため息とともに申し訳なさそうにいってくる。
…そりゃ、ツェリ様の後ろ盾があればグウェンダルですら断れないだろうけどさ……
「オレは別にかまわないよ?それにさ。シマロンの人…というか商人さんだっけ?」
「そうよ。陛下。とっても優しい人なのよ。彼はわたくしが魔族って判っても純粋に愛してくださるし。
  まるでコンラートの父親のよう。
  あの人は…ダンヒーリーはなかなか愛を表に表現してくださらなかったけど」
言ってようやくぐれたからその体を離し、
「グレタ。っていったわね。これからはわたくしを母親とおもってくださってもいいのよ。
  わたくし、あなたのようなかわいらしい娘がほしかったのですもの」
とかグレタにいってるし。
えっとぉ……どう対応したらいいものか。
「……シマロンの?…ユーリ。ひとまずいってみようよ。ツェリさん。グレタちゃんお願いできる?」
アンリがしばし考え込み、そしてオレとツェリ様にと何やらいっくてる。
「もちろんっ!さ。グレタ。いろいろお話しましょうね」
ツェリ様ににっこり微笑まれ、つられてグレタも一緒に笑っている。
どうやらグレタはツェリ様になついてしまったらしい。
おそらく、ツェリ様に母親の面影か何かを見出しているのだろう。
「申し訳ありません。陛下、猊下。…あ、そうそう。言い忘れていましたけどヒスクライフ氏もきてますよ」
「え?ヒスクライフさんが?」
そういえば、港でどうの。
とか今ツェリ様がいってたっけ?
とりあえず、グレタをツェリ様にと預けて、
ヒクライフさんやそのツェリ様が連れてきたファンファンとかいう人が待つ部屋にと移動することに。



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