「…って、夜だし」
気づけばすでに夜。
えっとぉ?
「あ、気が付いた?ユーリ。ちょ〜とまだ負担おおきかったみたいだね」

横でアンリが椅子に座って足を組んだ状態で何やらそんなことをいってくるけど。
「?オレ…一体?」
何か頭がぼ〜としてる。
「いつものごとくに。定番で気絶。
  ま、まだちょっとシ…いや、ソフィアさん側の能力は負担大きいみたいだね。
  無意識でユーリは大概両方の力使うときがあるし。
  できればしばらく魔術だけで回復とか再生とかできたら一番いいんだけど。
  そっち側の力だけでも十分に可能だしね」
「つ〜かそんなこといわれても……」
そもそも、オレ自身、力なんてものは意識して使ってるわけじゃあ…
大概いつも記憶にないし。
今回はなぜかすこしばかり記憶があるけど。
不思議なことに。
「とりあえず。夕飯を食べてから風呂にいこ。ここの大浴場も結構いいし」
「ま、そ〜だけどさ」
昨日入浴してるから知ってるし。
アンリのやつ、何か今さらっと話題をかえなかったか?
各部屋にもそれぞれ、きちんと小さな風呂はついているけども。
何でもこの地は絶えずお湯が湧き出しているのでパイプを張り巡らせて、
垂れ流し状態で各部屋に風呂を完備しているらしい。
いわゆる賭け流し温泉状態だ。
ゲーゲンヒューバーは未だに意識は回復していないらしく、ずっとこん睡状態が続いているらしい。
怪我はもう完全に回復している。
というのに……
とりあえず、アンリにいわれ。
食事をとるためにと食堂にと出向いてゆくことに。
何か頭が未だにぼ〜としてるのは。
力というか魔力とかいうのを使った…という影響なんだろうか??


「そういえば。こんなものをもらいましたよ?」
食事の席でコンラッドがいいつつ何やらテーブルにとおいてくる。
「?あれ?これ……」
見れば何か見慣れたラーメンどんぶりの器が。
「昨日の屋台の叔父さんがくれたんだ。というか頼んだんだけどね」

「頼んだ?何で?」
アンリの言葉に首をかしげつつ問いかけるオレの質問に。
「これが『水面の魔境』だよ」
「……は!?」
思わずアンリの言葉に目が点。
「まさかこんなところにあるとは思わなかったけどさ。
  現在・過去・未来を視ることができる魔族の秘法。判った限りは回収しとかないとねぇ」
アンリの言葉に続き。
「猊下にお聞きしておどろきましたよ。どうみてもこれ。絶対にラーメンどんぶりですからねぇ」
「まったくだ」
いやあの…えっと?
「……まじ?」
オレの問いかけに。
「おおまじ」
「・・・・・・・・・・・・・・」
即答してくるアンリに思わずあんぐり。
というか、まさかこんなところでまたまた魔族の秘法が見つかろうとは……
「気になって話しを聞きにいこうとおもったら。あの屋台の主人。
  火事のあと…というか、混乱している最中に屋台を出してきてね。
  とにかく食べるものを食べて落ち着いてもらおう。っていうことだったらしいけどね。
  とりあえず、これからのこの地の今後についての話で。
  彼のつくるゾラシアの宮廷料理も後世に伝える必要があるし。
  そういったことをアニシナさんやヒスクライフさんにいったら快く引き受けてくれてね。
  新生されるこの町の一角に店を構えてもらう。というので話はついたんだよ。
  どうもあの人、この地でしばらく商売をしていたらしいからね。
  それゆえに、これがどうもこの地の『力』に反応して。
  過去とか未来とかを覗いた人にたまに視せてたらしいんだよね。
  だから普通の器じゃない。というのはわかってたらしくてさ」
アンリが何やら丁寧にと説明してくれるけど。
「…過去と未来……って……」
それじゃ、あのとき器の中に映ったのは?
ソフィア母さん?
それとも??
「まあ。偶然だろうがな。しかし秘法がこんなどんぶり茶碗だとは……」
何やらそんなことをいいつつ、腕を組んでいるヴォルフラム。
それはオレも同感。
「つ〜か魔族の秘法って……」
メルギブ…でなかったモルギフはあんなだったし。
魔笛はどうみてもソプラノリコーダーだったし。
…それでもって鏡が…これ?
そんなことを思いつつもテーブルの上にとおかれている器を覗き込む。
どうみてもただのどんぶり茶碗だ。
しかも何ともポビュラーな紋様のラーメンどんぶり茶碗……
そんなオレの心を知ってか知らずか。
「とりあえず。まあ無事に船の手配はすませてあります。
  明日出発する予定です。国にも連絡をいれてありますから」
コンラッドが苦笑しつつオレにといってくる。
「そなの?……げっ!?連絡入れたって……」
そ〜いえば…ギュンター…怒っているかな?
そんなことを思っていると。
「ねえ?早く食べないとさめちゃうよ?」
はた。
とグレタの声に見てみれば、グレタはいつのまにかテーブルに置かれているスープを食べ終わり。
次なる別なものにととりかかり始めている。
「ま。それもそ〜だね。とっととたべよ」
「……アンリ…おまえかるいぞ……」
グレタの言葉にアンリもまた食事を再開してるけど。
そんなアンリの言葉と動作に思わずじと目でアンリをみてつぶやくオレに。
「ユーリ。食べないの?」
きょとんとしてグレタがいってくる。
「食べるよ」
注文したものを残すなんてそんなことは常識的にもよくないし。
とりあえず。
そんな会話をしつつもオレたちは夕食をとり終わり。
そしてお風呂にと入って明日に備えて眠ることに―――


例のごとくに船酔いするヴォルフラムはともかくとして。
来るときはあまり船の中をあまり自由に動き回れなかったので、グレタと一緒に船内を見回る。
アンリはゲーゲンヒューバーについていてくれている。
コンラッドがオレが彼に近づくのを断固として反対したためだけど。
まあ、心配してくれているのはわかるから。
別にコンタクトわいれずとも、又髪を隠さなくても、オレやアンリが双黒。
というのはどうやらもうバレバレらしいので、何の変装もせずに堂々と歩き回る。
中には、なぜか握手を求めてくるあの地にいたらしい魔族の人とかもいたりする。
この船には目を覚まさない…つまりはこん睡状態のゲーゲンヒューバーもいる。
ということなので、眞魔国に直行してくれるらしい。
いったいどうやって話しをつけたのかオレには判らないけど。
聞けば何でも、ヒルヤードの上層部からのお達しがあったらしく。
他国の偽造紙幣を作り、
挙句は人身販売などまで非合法な悪事をやっていたルイ・ビロンの悪事をとめたのがオレ。
しかも、それが魔族の王と双黒の大賢者だ。
というので恐縮して何とど穏便に、という措置らしい。
…別に穏便も何も…オレは何もやってないってば。
アンリは何かやったのかもしれないけど。
ルイ・ビロンの連行された後の行方はわからないけど、きっと厳罰に裁かれるだろう。
眞魔国に直行する。
というので乗客は魔族が結構多く、又スヴェレラの人たちも多くのっている。
なぜか温泉にて刀傷があった、隣り合わせていた男の人たちも乗り合わせ、
オレにとお礼をいってきたりとか。
…だから何でお礼??

何はともあれ。
そんなこんなで何ごともなく。
数日の航海を終えて、オレ達は眞魔国にとたどり着く。



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