「…って!?アニシナさん!?それにイズラにニナも!?」 なぜかアンリの後ろにはアニシナさんとイズラとニナの姿がみてとれる。 いったいどうして?? というか、何でアニシナさんがこんなところに?? 「お目覚めのようですわね。陛下。ご気分はいかがですか?」 いってにこりとオレをみて微笑んでくるアニシナさんだけど。 「というか…?何でアニシナさんがここに?あ、イズラもニナも無事だったんだ。よかったぁ〜」 ニルファに頼んだから大丈夫だ。 とはおもってたけど。 やっぱり無事かどうか心配だったし。 そんなオレの言葉に。 「ユーリ…いえ、ユリティウス陛下こそ大丈夫なんですか? あんな強大な力を使われた、というのに。 おかげで誰一人死人もけが人もなく。ルイ・ビロンも連行され。 ここもきっとこれからよくなっていくことでしょう」 いいつつもオレに対して何やらぺこり、と頭を下げてくるイズラだけど。 「ユーリでいいよ。陛下なんて呼ばなくてさ。というかオレ自身でも王様らしくない。っておもってるし。 未だになれないしね。陛下とかって呼ばれたりするの」 そういえば何でアニシナさんがここにいるんだろう? しかもイズラやニナと一緒に。 「……だからいい加減になれろって……」 オレの素直な言葉になぜかアンリとヴォルフラムがため息をつきつついってるが。 「あ…あの。その…さっきはごめんなさい!」 なぜか、ニナがぺこり、と頭を下げてオレに謝ってくる。 「?え?別にニナは謝るようなことしてないじゃん?それより体大丈夫?」 いいつつ立ち上がる。 水を飲んだためか少しは頭がすっきりして、さきほどより頭痛はしなくなっている。 「ニナさんはもう大丈夫みたいだよ?」 オレの言葉に答えるかのようにアンリがそういってくるけど。 「よかったぁ〜。心配だったんだ。怪我ひどかったし。 オレが本当に治せたのか自信まったくなかったしね……」 そんなオレの言葉をききつつも、ふっと微笑み。 「話は猊下やこの二人からお聞きしましたわ。陛下。ご安心くださいませ。 この地はヒスクライフ殿より任をうけてわたくしが管理することにいしました。 編み物と発明品の一大ショッピングパークを展開してみせますわっ! 何しろここには男と違って繊細な指をもった娘たちが百人以上いますしね。 夜間は読み書きや仕事を教え、昼間は店で働いてもらう。 そうすれば女性の知的教養も上がりますし、給料も払えますしね。 資金は山ほどありますもの。わたくしやりますわ! まずはここから女性の地位向上を目指して! いずれは男どもを女たちの下にひれふさすためにっ!」 「……が、がんばってください…というかお願いします……」 な…何か逆らえる気配じゃないぞ? 「で?何でアニシナさんがここに?」 イズラたちはともかくとして、アニシナさんがここにいる、というのが不思議だし。 そんなオレの再度の問いかけに。 「ふと思い立って旅にでて、カーベルニコフ発祥の地。ムンシュテットナーに向けて航海中。 ふと思い立って私の傑作魔道四級船舶をヒルヤードにと向けたのですわ。 温泉にでもひとまず入ろうかとおもいましてね。 で、来てみれば何やら騒ぎが。陛下や猊下がいらしていたのには驚きでしたけど。 しかし、さすがは陛下ですわ。瞬時に全てのけが人達などの治療までなさるとは」 ?? 「えっとぉ?…オレ、本当にそんなことやったの?」 というか、まったく実感ないし? 「ま、とりあえず。とにかく後はもう国との話し合いだからね。 眞魔国のほうからも人材とか派遣する相談とかしないと。 それにグリーセラ卿もさっきの『力』で治癒したけど、まだ目覚めないしね。 一度国に戻るっていうので話しがまとまってるんだけど。ユーリは何か意見ある?」 「…ないです」 何か気づかないうちに、とっとと話はまとまっているようだしさ。 アンリの言葉に素直にうなづくオレに、にっこりとアンリが微笑んでくる。 「ま、確かに一度戻ったほうがいいかもな。温泉治療はまたにしてさ」 目覚めない、というゲーゲンヒューバーをとにかく国に連れ帰らないと。 ニコラだって心配しているだろうし。 「とりあえず、船の手配はやっとくよ。ユーリはそれまでにしっかりと体を休めること。 イズラさんたちも協力してくれるっていうしね」 「?協力?」 アンリのその言葉に首をかしげる。 「ユーリ陛…いえ、ユーリにはお世話になったからね。グレタ。 あなたのお母様はあなたにすばらしい父親が出来たことを誇りにおもっておられるわ」 何やらそんなことをいいつつも、グレタの目線にとかがんでグレタに話しかけているイズラ。 そんなイズラの言葉に。 「うんっ!」 ぱっと目を輝かせているグレタの姿が。 いや、だから、このイズラってグレタの母親知ってるのかな? というかオレの母親も?? …何で?? 「ま、血のつながりは関係ない。といえばそれまでだからねぇ。家族は家族だし。 それでいいじゃん。でもこれで少しはユーリのシスコンも治るかな?」 「あのねっ!オレは断じてシスコンじゃありませんっ!」 アンリの言葉に思わずつっこむ。 「十分にシスコンだってば。ユーリもショーリさんもさ。 グレタちゃん。ユーリにはね。君と同い年の妹がいるんだよ。血のつながりはないけどね」 そういうアンリの言葉に。 「え?でも城の中ではそんな子みなかったよ?」 アンリの言葉にきょとん、と首をかしげているグレタ。 「こっちの世界じゃないよ。僕達が住んでいる地球…すなわち、異世界にね。 僕らは…というか特に今回僕は地球産まれだし。 ユーリはこっちの産まれだけど地球には命を守るために移動させられてきてたんだし。 君の母上様といっしょ。君の母上も君の命を助けるためにスヴェレラに君を送った。 それと同じく、ユーリも赤ん坊のころに異世界に連れて行かれてたんだよ」 そんなグレタにと何やら説明しているアンリ。 「…お母様と?」 「そう。子供を守るためにね」 いいつつもグレタの肩にかるく手を置いているアンリの姿。 そんなアンリの言葉をきいてか。 「なるほど。ユーリ殿のご息女となられることになったこのお子はゾラシア王国の生き残りですか。 それで肩にゾラシア王国の家紋と名前らしきものがイレズミとして彫られていたのですな。 あ、お気にさわられたなら申し訳ないのだが。 公衆浴場の管理者にはイレズミものはとりあえず報告する義務がございまして。 部下よりその旨はお聞き及んでおりましてな」 見ればヒスクライフさんまでやってきていたらしく、そんなことをいってくる。 「そなの?それじゃ、とにかくそのグレタの両親に連絡いれないと……」 オレの養女にします。 という報告はきちんと入れておかないと先方にも失礼だ イレズミの人は報告する義務がある。 というのはどうやらこちらの世界も日本ででも変わらないらしい。 日本でもよく、公衆浴場などはイレズミの人お断り。 の張り紙してあるし。 そんなオレの言葉に首を左右にふり。 「ゾラシアに第三婦人として輿入れしたスヴェレラの末の姫君。 イズラ姫はもはやこの世にはおりませぬ。 イズラ姫の娘のグレタは人質としてスヴェレラに送られています。 内戦とそれに乗じた攻撃でゾラシア皇国が滅亡の危機に瀕した際に、 せめてスヴェレラからの攻撃はさけたい…と王室に人質を差し出したのですよ。 おそらくイズラ姫は未来を予測しておられたのでしょうな。 せめてかわいい娘だけでも自分の母国で生き延びてほしい。と送り出したのでしょう。 その半年後。かの国は民衆政府に制圧され、皇家のものはすべて処刑された。 と聞き及んでおります」 「……そんな……」 ヒスクライフさんの言葉に思わず絶句。 グレタはいっていた。 最後の日…と。 皇室のものは皆殺し…って。 オレは歴史には詳しくないけれど、 地球でも確かたった一人だけ生き残って滅亡した王国があったはず。 「いずれはあの娘も皇室に産まれた血と定めに従うことになるでしょう」 などといってくるけど。 「つまり…それって皇室のものとしての教えとかも必要となってくる。ってことですか? でもオレはグレタにはのびのびと育ってほしいとおもいます。 自分の運命は自分で決める。…そうでしょう? オレは訳のわからないままこっちにきちゃって。今日から貴方は魔王です。 なんていわれちゃったけど。まあ自分からなる。っていったのは事実なんだし。 だったら自分なりにがんばるしかない。そうおもってはいますけどね。 グレタには血とか運命とかそういうのを考えず。自分自身で自分の運命を見つけてもらえばそれで」 そんなオレの言葉に。 「ユーリ殿らしいですな。それでこそユーリ殿なのでしょうが」 笑っていってくるヒスクライフさん。 「とにかく。ユーリ殿もみなさんもお疲れでしょう。 あとは私が責任をもってここは対処にあたりますからユーリ殿たちはお休みください」 「そんな!?ヒスクライフさんだけにはっ!」 ぐらっ。 ……あれ? 「ユーリ殿!?」 「「陛下!?」」 「「ユーリっ!!」」 何か回りの叫び声をききつつも。 なぜか突如としてオレの意識は閉じられてゆく。
「とりあえず。ご苦労様。ユーリ」 何かアンリの声が聞こえたような気がしたけど。
そのままオレの意識は深い眠りの中に……
―――お帰りなさいませ。
…? お帰りって…何? どこかで誰かがオレにとささやいている…誰???
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