「死は逃げだよ。逃げちゃいけない…いけないんだ……」 いいつつも、ベットから降りるオレに。 「?どこにいくつもりだ?」 問いかけてくるヴォルフラム。 「ちょっと。ゲーゲンヒューバーの様子をみに」 「いけませんっ!」 バタンッ! いつの間に戻ってきたのかコンラッドが勢いよく扉を開け放ちいってくる。 「って、コンラッド?いつ戻ったの?それにいけない…って、何で?」 オレの問いかけに、そのまま真剣な表情のままで近づいてきて。 そしてオレの肩をしっかりとつかみ。 立ち上がりかけていたオレを再びベットにとこしかけさせてくる。 そして。 「ダメなものはダメです。あいつは陛下に刃をむけた。 再び企まないとは限らない。そういう存在に近づけるわけにはいきません。 ゲーゲンヒューバーのことは俺が一番わかっている」 真剣そのものの表情でいってくるコンラッド。 「だけどっ!様子をみにいくだけだよ?彼は助からなきゃいけないんだ。 ニコラや子供のためにも。そして彼自身のためにも。 彼がどんな罪を犯したのか。何千、何万人って人が死ぬハメになったかもとか。 そういうのはオレにはよくわかんないけど、彼は生きないといけないんだ。 生きることがたとえ酷であっても。過去の過ちを悔いている彼だからこそ。 二度と同じ過ちがどこかで起こらないように彼らならばそれを止めることができる。 というかオレはそれが彼に与えられた使命だとおもう。 罪を憎んで人を憎まず。ってことわざにもあるけどさ。 彼は十分に苦しんだ。だからって死んでもいい。とはオレはいわないよ。 いきる力がない。って医者はいったようだけど。 だったら生きる力を引き出せばいい。オレにだってできるはずだ。そうだろ?」 「それでも。ダメです。あなたを危険にさらすわけにはいきませんっ!」 「だけどっ!」 いいかけて、コンラッドの表情をみて思わず口をつぐむ。 今にも泣き出しそうで、それでいて命がけででも止めよう。 としている雰囲気と、そしてその身から発せられているオーラが物語っている。 「…オレが王なんかでなかったら止められることもなかったろうにな」 そんなオレのつぶやきに。 「とんでもない。魔王陛下でなかったら。まだるっこしい理由の説明なんかせずに。 それこそ力づくでお止めして閉じ込めてますよ。 それか猊下に頼んであなたのみを城、もしくはあちらにお戻しするか」 いってることが矛盾してるぞ。 コンラッド。 王じゃないんなら、戻るのは城じゃあないし。 こっちの世界にくることもないってば。 「――…ふぅ。おまえら、いつまでややこしいことをいっているつもりだ? ゲーゲンヒューバーに癒しの術を試みたいんだろう? 生きる力を引き出すために。僕がやってやる。とにかく!おまえはここで大人しくしていろっ!」 バタンッ! いうなり、突如としてヴォルフラムが部屋からでていき。 そして。
「おいこら!ゲーゲンヒューバー!」
何やら隣の部屋から怒鳴り声が…… 「えっとぉ……」 隣の部屋まで聞こえてくるって…どうよ? オレの戸惑いに、少し困った顔をして。 「陛下。ヴォルフのあれはちょっと特殊な例ですから…覚えてまねしたりしないでくださいね?」 罵詈雑言を壁伝いにききながら、オレにといってくるコンラッド。 「…覚えるも何もさ……あれで本当に気力が引き出せるのかなぁ〜……」 オレのそんな素直な感想に。 「ま。彼はこれから役に立ってもらわないといけない。というのは確かに事実だしね。」 カチャリ。 と扉が開いて、アンリが部屋にと入ってくる。 「アンリ?…ってそうだ!おまえ人を勝手に気絶させやがって!!話を勝手に決めるなよ!!」 「いいじゃん。別に」 「よくないっ!!」 「ま。大丈夫だって。絶対に負けないから」 オレの叫びは何のその。 アンリは何か企んでいるような顔つきでにっこりと微笑み。 そして。 「それにあのルイ・ビロンって人間、か〜なりあくどいことをしていたようだよ? ま、明日が楽しみだよね〜」 この顔は絶対に何かアンリは企んでいる。 伊達に長年こいつと付き合っているわけではない。 腐れ縁。 ともいうけども。 「……何か企んでいるだろ?」 「内緒♪」 こ〜いうときのアンリは、絶対に何かしでかしているか、またしでかそうとしている顔だ。 ……今度は何をする気なんだ? こいつは…… 「それより。さ。ご飯を食べてからとっとと寝ようよ。明日は面白くなるよ〜」 言われて、外をみればいつのまにか暗くなっている。 時計をみてみれば、どうやらオレは昼間ずっと一日中寝ていたらしい。 アンリの言葉に納得がいかないまでも、しぶしぶ食事をとり。 明日に備えて、ひとまず眠ることに――
「うん。いい朝!」 アンリがいって、何やら窓際で背筋を伸ばしている。 「おまえなぁ〜……。オレのかわりに自分が賭けの対象になってて…緊張しないのか?」 思わずあきれたオレの口調に。 「別に?いざとなったら関係者の記憶とかでも操作すればいいしさ」 「――……」 いともあっさりとそんなこと…できるのか? いや…アンリなら何か出来ても納得できるような気も…… オレのそんな心を知ってかしらずか。 「昔はさぁ。大変だったんだよ?ユーリは覚えてないだろうけどさ。 そりゃもう、テレビ局のテープをすべておしゃかにして。 あの場にいた野次馬とかの記憶を操作したりさ〜。 何しろあのとき、それができるの、僕とエドだけだったし。 当時、僕もまだ肉体的には小学一年生だったからねぇ。 肉体的における力の加減というか上場は限度があるし。 しかたないから、肉体から精神を離脱させて処理にあたってさぁ〜。 まったく、君ときたら大衆の目前であんな力を披露してくれちゃって。 それをおもうと、記憶操作することくらいたやすいって」 「…………は?何のことをいってるんだよ?アンリ?」 いや……テレビ局のテープを全部おしゃかに…って…… 「だからぁ。昔気味が農場でやっちゃったときのこと。 どうにかしてつじつまあわせするのにどれだけ大変だったか…… 何しろ、豪雨といえども高性能カメラとかもきてたからねぇ。 その周波数から見た人全員に記憶を操作したりとかして…… 結構疲れたんだよ?それを思えばこっちの場合。その場にいる人だけでいいもん」 ……………… 「ってちょっとまてぃ!何だよ!?その農場で…って、オレが何やったって!?」 オレの叫びに。 「……猊下?陛下にはお教えしなくてもいいかと……」 コンラッドが申し訳なさそうに何やらいっている。 「ちょっとまてアンリ!ひょっとして例の小学校のときの事件のとこをいってるのか!? でもアレは犯人に雷が落ちたって!」 オレの叫びに。 「だ・か・らぁ。ボブと一緒に全員…というか、僕や君の家族。そしてウェラー卿以外たちに。 記憶操作をしたんだってば。あのとき、君が魔王の力を全開…とまではいかないにしろ。 かなり力をつかっちゃって。豪雨を降らすのは当たり前。 雷や炎といった竜を作り出してもう大変だったよ。いや、本当…… ソフィアさんの封印だけじゃ、これだけだと甘いっ!! てんでもう一度僕やボブがもう一度上から術をかけたりしてさ〜。 あのときは、エドにも協力してもらってね」 「……えっとぉ……」 ……… 「…………もしかして……まじ?!」 三日もあのとき、オレは寝ていた…という事実は覆そうもないし。 いやでも……まさか…… 「嘘をいってどうすんのさ?さ。用意がおわったら、会場にいくよ。はい。ユーリ」 呆然とするオレになぜか、黒の学ランタイプの服が手渡されてくる。 アンリはアンリで紺の上下の学ランタイプの服にと着替え始めている。 えっと…… 今…アンリがいったこと…って…マジなんだろ〜か…… 混乱しつつ、コンラッドに視線をむけると。 「ま。まあ、幼子のときしでかしたことですから。ほら。ヴォルフ。おきろよ」 あ、視線そらした…… ……ひょっとして…事実なのかも…… って嘘!? んな馬鹿な!? 呆然としている間に、いつの間にやら全員そろっており。 そのまま待ち合わせの場所にと移動する。 呆然として固まったままのオレにコンラッドとアンリが服を着せてきていたけども。 それすらもオレには記憶にない。 ……いや、ちょっとまて。 たしかあのとき…… ……………… ……ダメだ。 思い出せない…… 一体、オレはその小学一年生のとき、何をやったんだ?! コンラッドが視線をそらして話題を変えた……ということは…… ……少なくともそ〜いう事実があったことを物語っている。 ……嘘だろ!? ねえ?!
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