そんな会話をしていると。 ふと。 コンラッドの視線が部屋の隅で固定される。 ヴォルフラムもそちらに気づいたのか。 何やら。 「おいっ!」 何か叫んでいる。 そして、なぜか剣に手をかけ…… 「よせっ!ヴォルフっ!!」 コンラッドが止める間もなく、ヴォルフラムは例の仮面の男に向かって剣を抜き放っているけど。 ……えっと? それをうけてか、仮面の男性も動く。 ……が。 次の瞬間、彼はいきなりその起動をかえる。 ……へ? 気づけば、相手の目標は……えっ!?オレっ!? 「ダメッ!ヒューブっ!!」 何かグレタが叫ぶのと同時。 「ユーリッ!!」 キィン…… 刃と刃がぶつかり合う音がするのと同時。 その直後に後ろにひっぱられ、オレは思いっきり尻もちをついてしまっているけども。 ……え、えっと?? 「斬られたか?」 「……え?」 「大丈夫。とっさに後ろに突き飛ばしたし」 ヴォルフとアンリの会話の意味がわからない。 ヒスクライフさんが硬直しているグレタを抱きしめている。 一方で。 「その小僧…よっぽど大事とみた。本気でこい。でないと…そいつを殺すっ!」 とかいっている仮面の男性。 彼の発しているオーラが自分を殺してくれ。 といっている。
「きさまっ!」 掛け声と共に二人が間合いをとり。 「本気をだせっ!うぉ〜!!」 とかいいつつ、そのまま、コンラッドとやりあいながらもオレのほうにと向かってくるし。 「やめろぉ〜〜!!」 コンラッドが叫び剣を大きく構えているけど。 って! 「って!二人ともやめろっ!!危ないだろうがっ!! シーラっ!ニルファ!二人をとめろっ!武器を奪って!!」 とっさに口にだしたオレの言葉と同時。 ビュルッ! 音とともに、瞬時に二人の手にした武器が、水と風にと絡めとられ、 それは二人の手から武器をもぎ取るかのようにして、空中にと二人の剣がうかびあがる。 そして、その空中にと浮かんだ武器はそのまま、オレとアンリのほうにと舞い降りてくる。 それと同時。 「念のため。彼に束縛を」 アンリの言葉と同時。 「なっ!?」 仮面の男性の体の自由が奪われ… …何やら目に見えない能力で固められ、床に転がるしかない姿がそこにあったりするけども。 「ユーリ」 虚をつかけた瞳でオレをみてくるコンラッド。 「子供の前だぞっ!というかっ!コンラッドが本気をだしたらその彼を殺しかねないだろ!?」 オレの叫びに。 「しかし…そうしなければ…あなたが……」 「オーラからしてもそいつは自分が死ぬためにオレに剣を向けたみたいだよ? 本気じゃないよ。オレを狙ったのは。きっと自分を殺してほしかったからだ」 コンラッドの言葉に答えると同時。 「ヒューブっ!」 ヒスクライフさんの手からはなれて、男にと駆け寄っているグレタの姿が。 倒れた拍子にか、男のは面が外れて、その顔が照明にとさらされている。 左目がただれた皮膚でふさがりかけ、頬や鼻にも治療を怠った火傷のあとが。 何が起こったのかオレもわからないけど。 彼もおそらくわかっていないのだろう。 なぜか驚愕し目を見開いている。 「ヒューブ!ねえ!ヒューブ!何でユーリを狙ったの?あのね。これ返すの。 返すからもう無茶しないで。あのね。王様は女の人じゃなかったんだよ? でも、ユーリ、とってもいい人でグレタを娘だっていってくれたの。 王様の家族のしるしがなくても、グレタのこと隠し子だっていってくれたんだよ?だから。ね?」 グレタの言葉に。 「…な…で……お……ここ……に……」 何か言葉も途切れがちな男の声が聞こえてくる。 「ヒューブ!?んじゃあやっぱりその人!?ニコラの恋人!?でも何でこんなところに!? というかっ!!生きてるんだったらニコラをほっといて、こんなところに何でいるの!? 過去に何をやったのか知らないけどさっ! 恋人とお腹の子供を守るのはあんたの義務じゃんっ!?」 オレの至極当然な叫びに、何か余計に目を丸くしているヒューブことゲーゲンヒューバー。 「念のため、強く束縛してもらっているからね。シーラに。 法術や魔術をつかってまたユーリに害をなそうとするかわからないから」 そういうアンリの言葉に、とにかく座ったままでは何なので立ち上がる。 どうやら、またまたオレはアンリに突き飛ばされてしりもちをついていたらしい。
「…グリーセラ卿…だと!?馬鹿なっ!?」 何かその姿をみてヴォルフラムが叫び。 「いや。剣をあわせればすぐにかる。彼はゲーゲンヒューバーだ。 …ユーリ。近づかないでください。力をふりしぼってあなたを狙わない。とも限らない」 近づこうとするオレを止めて、アンリから剣をうけとり、腰にとしまっているコンラッド。 「まったく。役にたたない用心棒だ。おい。このゴミを窓からほうりだしとけ」 「ちょっとまてっ!何だよっ!それ!?あんたは人を何だとおもってるんだ!?さっきからっ!! うごけない状態の人を窓から放り出せ…だとぉ!?従業員の待遇といいっ! それに、ゴミって何だよっ!ゴミって!あんた人としてどうよっ!?」 バッン! 机に手を叩きつけて叫ぶオレをなぜかまじまじと見つめ。 「これは珍しい。双黒とは」 などといってくる。 ん? どうやらサングラスが落ちてフードが取れていたようだ。 「そんなことどうでもいいだろ!?大体あんた!従業員たちに対する扱いわるすぎるぞっ! 労働基準法におもいっきり無視してるじゃんっ!ビロンだかメロンだか知らないけどさっ! けが人を剥製部屋に閉じこめてろくに手当てもしてなかったしっ! そもそも、未成年を働かすこと事態間違ってるだろう!? 人権保護団体が黙ってないぞ!というか人としてどうだよっ! 今すぐにその考えを改めてみんなを解放しろっ! ど〜しても働かせたいっていうんならっ!しっかりと教育とかそのほかを整えて。 子供がのびのびと成長し、安心できるシステムにしてからにしろっ! 働きながら学ぶっていっても限度があるぞっ!!あれはっ!!」 そんなオレの肩に手をおいて。 「いいから。おちつけってユーリ」 何か横でアンリがいってくる。 ビロンはにやにやしながらアゴをあげ、膝の上の伊勢えびをなでながら。 「何度もいうようだが。ここの興行権はこちらがもっている。 私が私の金で商売をしているんだ。子供を働かせて何がわるい? あいつらの親は前金をうけとって、もうすでに手をつけているのだよ? だが、いいでしょう。そちらの条件をすっぱりぽん、とのみましょう」 『……え?』 何かいきなり態度がかわったぞ? オレたち全員の戸惑いの声とともに。 「戦利品としてあなたをいただきましょう。 賭けであなたがかったら、大人しくいうことをきく。まければあなたをいただく。 あなたと交換なら全財産かけてもおしくはない。 黒眼黒髪は同じ世に二人と現れない。 しかもその身を煎じてのめば不老長寿にも万病にもきくという」 ……何かアンリが以前、それに近いことをいってたよ〜な…… 「って漢方薬あつかい!?」 「……驚く場所が違います」 オレの叫びにすかさずコンラッドが突っ込みをいれてくる。 「世界中に双黒をほしがるもののいかに多いことか! 中には島ひとつや二つ、喜んで差し出す皇族もいる。 その珍獣を前にしてだまっていられるわけがないっ!決めましたぞ。ヒスクライフさん。 この生きる秘法を賭けるのであれば、こちらも権利書を持ち出そうではないかっ!」 「根拠のない俗説に踊らされ、立派な御仁を賭け事の対象とみようとは。 ルイ・ビロンも里がしれたものよっ!」 そんなルイ・ビロンにいっているヒスクライフさんだけど…… 「つうかさ…ひ…秘法って……日本では黒眼・黒髪は当たり前なのにさ……」 オレの至極当然なつぶやきに。 「そうだよね。というか。そもそも二人も現れない。という言い方は間違ってるよね。現に……」 いってアンリが目をつむって頭のターバンを取り始めている。 「猊下?何を……」 それに気づいてヴォルフラムが声をかけているけど。 ?アンリ?
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