イズラに促され、オレたちは路地の先にとある……何でかどうみても…… ラーメン屋台、もしくはおでん屋の屋台にしか見えないような店にと移動する。 「?ラーメン屋台?えっと…ヒ?…ヒゴ…モッス?」 何か屋台ののれんに文字が書いてあるので口にと出すと。 「違う。ヒノモコウ」 即座にグレタが訂正をいれてくる。 「ユーリィ。十歳の女の子に訂正されてどうすんだよ?早くこっちの文字は覚えなきゃね」 「わるかったなぁ!」 即座にグレタに訂正され、アンリがやれやれ、といった口調でいってくる。 「それに。さ、こっちの時間率ではそろそろ一年もたつんだよ?」 「こっちの文字難しいんだってばっ!」 そんなアンリとオレの会話に。 「?覚える…って、誰か教えてくれる人でもいるの? 私たちにはそんな人はいないけど。とにかく生きていくのにやっとだったもの」 小さくつぶやくように言っているイズラ。 「え?あ。うん。一応。それより、とりあえず食べようよ」 まさか教育係がいます。 とはいうわけにもいかないし。 そんなオレの言葉に。 「私はいいわ。ちょっと…お金が……ね」 そうかるく微笑んでいってくるイズラだけど。 「いいよ。助けてくれたお礼だし。すいませ〜ん。四つほどおねがいします」 いいつつも、そのまま『ヒノモコウ』と書かれているらしきのれんをくぐる。 剣と魔法。 魔族と魔王の世界にラーメン屋台…何かかなりミスマッチだ…… 屋台の主人はどこからどうみても白人男性。 オーラ判別方法でいけば人間だけど。 「……何で角刈りでねじり鉢まき?」 思わずつぶやくオレの言葉に。 「ま、気にしないの。へぇ。珍しいですね。もしかしてヒノモコウ。 ってあのゾラシアの宮廷料理の…でよすね?」 屋台の主人にアンリが問いかけているけど。 そんなアンリの言葉に。 「お。お兄さん、よく知ってるねぇ。そうさ。ゾラシア王国は民衆政府に制圧されちゃって。 もう宮廷料理なんてはどんどん忘れられていってるのに……」 アンリの言葉に、目を輝かせて屋台の主人がいってくる。 「?え?ということは、もうその国はないの?」 まさか…民衆に制圧…って…処刑とか? うわっ…… こっちの世界にもそういうことがあるんだ…… 何もそこまでしなくても…さ。 昔の地球というか、中世時代などにはよく見られた光景なんだろうけど…… どの世界でも似かよったことはおこるらしい……
「はいよ。おまたせ」 出されたそれは、一見したところ、どうみてもシーフードスバゲティ。 それをみて。 「最後の日にお母様が食べさせてくれた以来だ!」 などといって、グレタはどんぶりに手をかけているけど。 「…え?えっと…ってことはグレタは……」 つまり?…… 「ちょっと腕をみせてね」 首をかしげるオレの一つ両横隣でイズラがグレタの左肩をみているけど。 そこには何か、確か槍みたいな模様があったんじゃなかったっけ? イレズミみたいな。 右肩にはイズラって彫ってあったし。 それをみて。 「…やっぱりあなた……」 とかつぶやいているイズラ。 「え?イズラ?もしかしてこのグレタのこと知ってるの? だったら親というか両親どこにいるか教えてくれないかなぁ? 何か誰かに嘘でも吹き込まれたのか、オレの隠し子だっていってきたんだけどさ。 オレ今年で十六だし。グレタはどうみても十歳くらいだし。 そんなことあるはずないし。もし知ってたら教えてくれない? こんな小さい子供。きっと両親が心配していると思うんだ」 そんなオレの言葉に。 「…あの人たちは心配なんて…しない……」 「え?」 横でポツリ、とグレタが何かいっているけど。 そんなオレの言葉に。 「え?あなたの隠し子って……?」 「らしいよ?この子がいうには。 誰かからそう吹き込まれたのか言われたのかわからないけど。 何しろオレ今まで彼女なんていたことないし……」 オレの言葉に対して。 「ユーリは今まで女の子と間違われて告白されて。 男ってわかって逆切れされたのは十回以上はあるけどね♪」 「アンリッ!それをいうなってばっ!」 何かそんなことを言ってくるアンリに思わず突っ込む。 しかもそれが事実だったりするから何ともいえないけど…さぁ…… そんなオレたちをみつつ。 「?あなたたち?関係は何なの? 何かさっき、あなた、金髪の美少年が婚約者とかいってなかった?」 首をかしげて問いかけてくるイズラに対し。 「あ。オレとこいつとは幼馴染で親友なんだ。 で、あいつはヴォルフラムっていうんだけど……」 「こいつ。礼儀作法をしらなくても。相手に求婚行為をしちゃってね。 面白いったら♪断ってくれっていっても、相手のプライドの関係もあって、 向こうが却下してこないからそのまんま♪」 何か楽しそうに言っているアンリだし… 絶対にこいつは楽しんでいるよなぁ…この状況…… 「普通さ。誰が思うと思う!?平手打ちする行為が求婚行為なんてさっ!!ありえないってば! それじゃあオレみたいにカーとなってひっぱたいたりするヤツはどうなんのよっ!?」 そんなオレたちの会話に。 「え?お客さん?上流階級の人々にとっては。 相手の頬を打って求婚行為、というのは昔からきまってますよ? 古きよき伝統ですね。一般では昔も使われていましたし。 この町の東側の模様が示している創世神様の行動が来ている。とも言われていますよ?」 食事をだしつつ、いってくる屋台の主人の言葉に。 「でぇぇ!?嘘っ!?」 思わず叫んでしまう。 「……お客さん?どこの産まれですか?」 「…あ…あはは……」 これは乾いた笑いをあげるしかない。 そう聞かれても答えに困るし。 「村の教会でもその教えはあったけど……。本当にしらなかったの?あなた?」 イズラがそんなことをいってくる。 「こ…この世界って……」 思わず再びがっくりきてしまう。 本当に、何から何までオレの知っている常識とはかけ離れてる…… 「ま。礼儀作法なんかいろいろあるからねぇ。しかし、災難だったねぇ。お客さん? プライドの高い人に平手打ちをやったんならあきらめるしかないねぇ」 「男同士はいやだっての!!」 即座に叫ぶオレの言葉に。 「ユーリなら女の人でも通用するとおもう。絶対に。 グレタもヒューブがいってた通り、初めは女の人だっておもったもん。 胸がないから違うってわかったけど」 もくもく食べつつ横でグレタがいってくる。 「え?ヒュー??」 どっかで聞いたことがあるような? 「しかし、何だってそんな上流階級の人に平手打ちを?」 興味津々なのか聞いてくる店の主人。 「オレの親のことを悪くいったもので…… オレ養子なんですよ。今の両親とは血のつながりとかもまったくない。 なのに実の子として育ててくれているんです。 両親の実の二人の子供と同様に。本当の子供とかわらずに。 その親のことを悪くいわれて…つい、カーとなって。で、パチンっ!と……」 オレの言葉に。 「なるほど。ま、複雑な事情がありそうだね。ま、とりあえず。 せめてこの、家宝の器でヒノモコウでもすすって気分よくなってかえんなよ」 「家宝?」 みれば、オレのだけ何か皆の器と違うし。 中華模様を描かれている、かなり見慣れた一般的な中華どんぶり。 「澄み切ったつゆの上に、お客さんの未来が見えるかも。だ」 「未来?まっさかぁ。」 「って!?まさかそれ!?」 オレがいいつつ、器を手にとると、アンリがはっとしてイズラの横から声をかけてくる。 そして。 「ユーリっ!覗くなっ!」 「…は?…え?」 何の気なしに除いてみれば、なぜかスープの表面には。 …えっと…黒い髪の…お…女の人!? 思わずどんぶりをおいて眼をこすり、もう一度みてみるが。 何のことはない。 ただオレの顔が映っているのみ。 今のは? 何か母さんに似てたけど違ったし? ……ものすごく髪もながかったし、何よりも背後に見えてた銀色の光って?? …今の…何?? ふと見れば、アンリの顔色がなぜか悪い。 そして。 「…まさか…こんなところに……」 ?? 何かそんなことをつぶやいてるし。 「…?気のせい?…ま、いっか」 とりあえず、気にしないことにして、小腹がすいているので、オレもまたヒノモコウを食べることに。
スープの残りまですすり、食べ終わる。 「ご馳走様でした」 そういって、空になた器を手にとると。 何か器の中が光り始める。 ……? えっと?? 『……リ様』 オレが首をかしげ、確認しようとすると、風が一瞬吹き抜ける。 それと同時。 「どうやらあの男たちあきらめてなかったみたいだね。 ユーリ。君はグレタちゃんとそのイズラさんと宿にもどって! 鍵をかけてじっとしとくようにっ!僕はあいつらをまいていくから、いいね!?」 それだけいって、店の主人に挨拶と、ご馳走様を伝え。 お礼をいって走り出しているアンリ。 それと同時。 『シル様。ここはアーリー様に任せて。ひとまず安全な場所へ』 「うわっ!?」 「えっ!?」 ふと振り向けば、そこにはなぜかシーラが人型をとって姿をみせてるし。 「だからさぁ?シルってオレのこと?ってアーリー…ってアンリのことなの?でもアンリが!」 『あのかたなら大丈夫です。さ、お急ぎください』 そんなことをいってくるシーラだけど。 つんつん。 「あ…あの?これ?」 そんな会話をするオレを横からつついてくるイズラ。 「えっと。シラルークっていって何か風の大精霊だって」 「「「大精霊って……」」」 オレの説明に、グレタ・イズラ・そして店の主人の三人は戸惑い声を上げている。 ま、普通は驚くよな…… 慣れてきているオレもまた怖いかもしんない…… 『少し先までお運びいたしますね』 ごうっ!! 「うわっ!?」 「「きゃっ!?」」 屋台からとりあえず出たオレたち三人をいきなり風が包み込み…… 気づけば…いつのまにかまったく別の場所にと移動していたりする…… 『ここからは人目がありますので。…お気をつけてくださいませ』 それだけいって、シーラは再び風となって掻き消える。 いや、人目って…もう十分に人目にその姿…さらしてるんじゃ? …なぞだ……
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