二日目の朝。 アンリがゴミ……つまりは、空になったペットボトルや利用が終わったビニールなど。 といった品々をもってあちらにと一度帰り。 そして戻ってきたころにはもう目的地にと到着間近な時間にと。 なぜかアイスクリームはかなり人気で。 グレタが他にも食べたい! というので、後からお金を渡すから。 と話をつけてアンリに追加でかってきてもらったり。 一番気に入ったのは果汁入りのアイスみたいだ。 ヴォルフラムまでもが一緒になって食べている光景は、見ていてちょっと、いやかなりほほえましかったり。 とりあえず、しばらくすると、やがて目的地にとつき。 ヒルヤードの港町で俺たちは下船して、それから目的地にと向かってゆくことに。
馬に揺られて半日あまり。 「……てゆうか…熱海?」 その光景を目にしたオレの第一声。 グレタは少しづつではあるが、気を許し始めてくれているらしい。 ジュースをさらにねだったりもしてきたりもするので。 あちらから、オレの家にある子供用の水筒をもってきてもらい、その中にジュースは入れてある。 それを肩にとぶら下げてやり、のみたくなったらこうしてのむんだよ? と一応指導。 初めてみるのか、それをみてかなり驚いていたけど。 そういや、こっちではまだ…金属製の水筒は一般的じゃないらしいしね…… しかも、これは魔法瓶だから、冷たいものは冷たいままに。 暖かいものは暖かいままにと保存が可能だし。 いまだにそれをあけるのに手間取っているグレタだけど。 だけども、のみたくなったらクイクイとオレの服やアンリの服をひっぱってくれるで、 ジュースを取り出してコップにとついでやる。 馬車は念のため……とかいって、オレたちだけの貸切だからできるわざ。 そんなオレのつぶやきに。 「熱海じゃなくて。ヒルヤードの歓楽郷ですってば。世界に名だたる興楽の町」 そう説明してくるコンラッドに。 「えっと…あらゆる娯楽って……観覧車は!?ジェットコースターは!?」 オレの中のイメージでは遊園地もあるイメージだったのに。 「ユーリ。この世界にそんなものはないってば。 電気自体すらもいまだに人間達は利用してないどころか作ってもいないしね。 魔族も魔力を使っての装置は一応作ってるけど一般的じゃないし。 あるとしたら、アニシナさんの発明品くらいだしね」 オレの疑問に突っ込みつつも、説明をいれてくるアンリ。 「え?ラスベガスってこんな感じじゃあないんですか?」 きょんとした表情で言ってくるコンラッド。 どうやらコンラッドは米国全土を旅したわけではないらしい。 まあ、広いから仕方ないにしても。 だがしかし。 なぜかこの場所から感じる雰囲気が熱海に似ているのはなぜだろう? 見た目はまったく異なっている…というのに。 観光客も多くにぎやかで、通りの両脇にはずっと続く商店が。 それらの商店では盛大に呼び込みもしていたりする。 建造物は精々が三階建て程度で、それ以上は高い建物はない。 ところどころに熱帯地方でよく見られるような木が突き出して。 冬だというのに緑の細い葉をゆらしている。 石畳で包装されている道端にはやたらと猫の姿が。 地面に触れると暖かいのでたぶん地熱が関係してるんだろう。 「とにかく……無事についてよかったよ。グレタもすっかり元気になったようだし」 無意識なのか、オレの服のすそをぎゅっと握っているグレタをみつついうと。 戸惑いながらも笑顔を返してくれる。 数日前とはえらい進歩だ。 「とにかく。宿にチェックインして。はやいところいきましょう」 いいつつ、コンラッドが迎えに来ていたらしい宿の従業員の人なのか。 ともかく係りらしき人に荷物を預けている。 さすがにサービスなどは行き届いているようだ。 見上げると正面にはトリイにした形の赤いゲートがあり。 天辺には丸い鏡が輝いている。 ? オレが不思議に思い見上げていると。 「あれが歓楽郷のシンボルの魔境ですよ」 コンラッドが説明してくれる。 「魔境…って、もしかしてまた魔族のお宝?」 まさかあれをはずせ…とはいわないだろうな…… そんなことを思いつつ、問いかけるオレの言葉に。 「いや。あれは我々のものではなく…見てください」 西から斜めにさした光が、夕日色のオレンジが鏡に向かって伸びてくる。 反射するのかとおもいきや、光はガラスを通り抜け、石畳の真ん中の。 計算された円内に夕日を薄めたオレンジ色にて複雑な模様が浮かび上がる。 それをみて通りにいた客たち全員が歓声をあげている。 幻想的でとても綺麗だ。 ? 何かどこかで見たことあるような模様のような気がするけど。 「あれがここの魔境の正体です。一件した限りではごく普通の鏡なのに。 ある角度から光を当てたときだけは反射せずに素通りにして複雑な模様を映し出す。 確か以前、父やソフィア様にお聞きしたとろこによると、夕方…つまり、今映し出されているのが。 双翼の金アリ……」 「ウェラー卿!」 コンラッドが言いかけるとなぜかアンリから咎めるような声が。 その声に、なぜかはっとして口を押さえているコンラッド。 ……? ゴル?? ……何か聞いたことがあるよ〜な…… 「あれはたくみの技によるものだ。朝は反対側に別の模様が浮き出るようになっている。 超常な力をもつ魔族の魔境とは性質が異なる」 代わってヴォルフラムが説明してくれる。 「やっぱり魔境ってあるの?魔族の秘法にも?」 剣や笛があったのだから、セオリーというかお約束として鏡があっても不思議じゃない。 そんなオレの素朴な疑問に。 「我々眞魔国の秘法。水面の魔境は覗いたものの真実の姿が映るという。 美しくも恐ろしい力をもったものだ。現在は国内にはないそうだが」 などとヴォルフラムがいってくるけど。 というか…何で魔族の宝ってほとんど国内にないんだろうか? オレとしてはそっちのほうが不思議だし。 ドラクエや他のRPGの定番のように、もしかしてそれら全てをオレが見つけ出せってか? ねぇ?…… 「それもあるけど。あれは他にも過去や未来。そして現在。それらに精神を移動させる力があるしね」 アンリが横から追加説明をしてくれる。 ……いや、精神を飛ばす…って…… な…何かあまり深く聞かないほうがよさそ〜だ…… 「ま。今回はその宝物を探しにきたんじゃないんだし。ゆっくり温泉にはいって。 ユーリは足を治すことに専念して」 「…今もし、あの姿をみたりしたらユーリパニックになりかねないし……」 ?? などと小さく付け加えつつ、アンリがそんなことをいってくる。 いやあの…パニックって? そもそも、それ以前に真実の姿…って何なんだろう? 何か胡散臭いなぁ…その魔境って…… 鏡に映るのは自分の姿。 それ以外にいったい何がある。 というのだろう? それか、RPGのドラクエの中のラーの鏡みたいなものかもしんない。 あれも真実を映し出し、まやかしを取り除く力をもったアイテムだ。 「そうです。陛下の足のリハビリに来たんですから。余計な心配をなさらなくてもいいんですよ」 にっこりと微笑んでコンラッドがいってくる。 ま、そうなんだけど…さ。 でも、さっきのゴル…って何!? ねえ!? 「ここは、しいていうならば別府に近いからね。ほら、硫黄の匂いがしてるし。」 何かアンリがさらり、と話題を変えてくる。 「あ、ほんとだ。湯の花もあるのかな?」 見れば、所々地面から湯気が上がっている。 兄貴が大学に入るまではよく家族で温泉旅行にいっていたものだ。 …とくに春休みに。 硫黄の匂いと食べ物のにおいが混じり、 結構ムッ!?とするにおいになっているところも。 とりあえず、そのまま進んでいくことしばらく。 お買い物ゾーンらしき場所を抜けると、今度はお遊びゾーンらしく。 それこそ射的…ただし、弓矢やわっか投げ等を筆頭に、 建物の中では賭博も飲食も行われているようだ。 木造の建物や石造りのレンガの建物が並んでおり。 それらが途切れた広場にはいくつかの白っぽいテントが張られている。 何かサーカスのテントを連想させる大きさだ。
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