「?ユーリ?何だ?それは?それにそのがさがさいっているそれは何だ?」
それをみて何やら聞いてくるヴォルフラムだけど。
「ビニール袋。あと、これは熱さまシート。子供用」
オレの即答に。
「ユーリ。それじゃあ説明になってないってば。とりあえず……はい」
いいつつも、オレにポカリを差し出しているアンリ。
それをうけとり、ひとまずコップを手にとり、ポカリを注ぐ。
コポコポコポ。
コップに注いだポカリスエットをグレタにと差し出す。
だがしかし、そんなオレとコップを交互にみて戸惑い顔のグレタの姿。
「え?あ。えっと。これは飲み物だよ。グレタ。水分補給にはいいんだよ?」
いって、一口のんでみせる。
誰だって見たことない何かを差し出されたら戸惑うし。
コップの中のポカリを一口のんでからオレが差し出すと、おずおずとうけとり。
そして、体を半分起き上がらせてこくこくと飲み始めるグレタ。
始めはゆっくりと、次には勢いよく飲んでいる。
かなり喉がかわいていたんだろう。
そして、自分の額にあてられている熱さまシートに触りつつ戸惑いがお。
「あ、その布みたいなのにはゼリーが塗ってあってね。熱を冷ますのに効果があるんだよ?」
オレのそんな説明に。
「へぇ。ユーリの育ったところにはこんなものがあるのか」
いって、先ほどあけた袋の中にもう一つ入っていたシートを取り出して、
しげしげと何やら見ているヴォルフラム。
「とりあえず。ポカリは1.5L買って来たから。ここにおいとくね。ついでに冷やしとくね」
ご丁寧にどうやら洗面器まで持ってきた…というか、買ってきていたらしいアンリは、
その中にとポカリをいれて、何やらつぶやきながら、ガラガラと氷を作り出してボトルを冷やしている。
「グレタちゃんにアイスはどっちがいいかなぁ?」
そういうアンリに。
「ソフトクリームのほうがよくない?やわらかいし」
「そだね」
そんな会話をしつつも。
ひとまず、ソフトクリームのプラスチックの容器をはずしてグレタに渡すアンリの姿。
「食べてごらん?冷たくて体が落ち着くから」
とりあえず、戸惑うグレタをみて、先っぽを手ですくって自分が食べる見本をみせてみる。
それをみて、害がない、と判断したグレタが恐る恐るソフトクリームに口をつけているけど。
だけど、すぐに目をぱっと輝かせて、一生懸命にソフトクリームを食べ始めている。
たぶん、おなかもすいていたのかもしれない。
そんなことをしていると。
コンコン。
扉がノックされ、あけてみればそこには薬と氷をもったコンラッドの姿が。
「お薬をもらってきましたよ?…って?猊下?あちらに戻ってポカリスエットを購入してきたんですか?」
部屋にと入ってきて、ふと、机の上におかれているソレをみて、
瞬時に判断したらしいコンラッドが何やら言ってくる。
思わず苦笑しているようだ。
「ついでに。熱さまシートとアイスもね。あ、ジュースもあるよ?」
アンリが勝ってきたのは。
紙カップ式の果物ジュース100%やミックスジュース100%といった品々
風邪のときにはビタミンが第一だ。
そんなオレの言葉に。
「確かに妙案ですけど……。この世界にプラスチック製品やビニールなどはありませんよ?
  確か燃やしたら有害物質がでるんじゃあ?」
よく知ってるじゃん。
コンラッド。
確か、大変有害な化学物質である青酸HCNが発生するんだったと思う。
うろ覚えだけど。
そんなコンラッドの言葉に。
「のみ終わったらあっちにもって帰るってば。それよりグレタちゃんに薬を」
にこやかに言っているアンリだけど。
「はい。…って?この女の子の名前をきき出せたんですか?」
さらり、というアンリに驚いているコンラッド。
あ、そういえば、さっきもアンリ…グレタの名前呼んでたような??
「え?ユーリ?聞き出したんでしょう?さっき名前呼んでたし?」
「あ。うん…っていってたっけ?……って、アンリ…やっぱり知ってたな…名前……」
きっと何らかの方法でアンリは知っていたんだろう。
本人から聞いた、とかでなく。
何かで。
まあ、アンリ…人の記憶…読み取ろうと思えばできるしなぁ……
ものすごいことに……
「本人から聞き出さないと。こういうのは意味がないからね。」
いいつつも、他のコップ…ご丁寧に紙コップまで買ってきているそれにと。
ジュースを注ぎつつもそういってくるアンリの姿。
「あっちの薬だとこっちの人間には強すぎるからね。化学物質そのものに慣れてないから。
  薬をもらってきてくれたんでしょう?ウェラー卿?」
アンリの言葉に。
「一応。えっと…のめるかな?」
コンラッドの言葉に、何か必死でいつのまにかアイスを食べ終わり、
さらには下のスコーンまでをも綺麗に食べ終わったグレタがこちらをみてくる。
見れば、口の周りにアイスをつけつつも、その言葉に戸惑いながらもこくり、とうなづいている。
「あ。口元にアイスがついてるよ?」
ハンカチで口をぬぐい、コンラッドからもらった薬と水をとりあえずグレタにと手渡すと、
おずおずとそれを受け取りのんでいるグレタの姿。
「あとは暖かくして。横になっていたら、二日もしたらよくなるよ。
  そういたら温泉にはいってゆっくりしような?温泉に入ったらもう風邪なんてひかないって」
そんなオレの子度は二。
「おい!ユーリ!これは何だ!?」
あれ?
何だかヴォルフラムが果物ミックスジュース100%を飲んで目を丸くして聞いてくる。
「何って?…果物ミックスジュース……だけど?」
「果物!?これがか!?何かそれにしては甘いぞ!?おい!おかわりあるか!?」
「……えっとぉ?何かもしかして気に入ったみたい??」
オレのつぶやきに。
「こっちではまだ数種を新鮮のままブレンド…なんて出来ませんからねぇ。技術的に。
  どうしても味が落ちてしまいますから」
答えつつもコンラッドもまた、ポカリをコップについで飲んでいる。
「そうなの?」
「ええ。しかし……考えましたね。たしかに。猊下ならばあちらとの行き来がいつでも可能ですしね」
そんなオレとコンラッドの会話に。
「それもあるけど。ジェニファーさんが皆の写真をよろしく♪っていって、お金をくれたんだよね。
  ついでに、使い捨てカメラまでもらってきたよぉ♪」
「……げっ!?」
にこやかに言ってくるアンリの言葉に思わず固まってしまう。
「……ア、アンリ?さすがにそれはやばくないか?」
フラッシュなんてものがつく小さな箱。
絶対に目立つってば……
そんなオレの当然な問いかけに。
「夜は宿だけでとればいいし。…でしょ?」
さらり、といってくるアンリだし。
いや、そういう問題じゃあないと思うぞ?
絶対に……
「ああ。例の実物そっくりに映し出す絵をつくるやつか」
幾度かみているので、慣れたらしいヴォルフラムがそんなことをいってくる。
「だから写真だってば……ま、いっか」
いってもムダ。
というのはよくわかってるし。
それがさらに、おふくろ絡みならなおさらに。
どうもオレ自信もだんだんと感覚が麻痺してきてるのかもしれない……
以前、アンリのやつは。
とった写真の注文を請け負って、商売してたことまであったしなぁ……
ちなみに。
オレやアンリ。
そしてギュンター・コンラッド・グウェンダルやツェリ様…といった面々を写した写真は。
かなりの注文数にと上ったらしい……
そんな大量の写真の焼き増しの資金の源は…何でもボブ叔父さんが出してくれたとか……
ふとそんなことを思い出してしまう。
ボブ叔父さんといえば……
そういえば……オレの誕生日プレゼントは張り切る!
とかいってたなぁ……
何をどうする。
とは教えてもらってないけども。
仕事の都合上、少しオレの誕生日からは少し遅れてプレゼントを贈る。とかいってたけど……
……今年は変なのでありませんように……
と切実に願っているこの最近……


とりあえず。
次の日の朝になると、グレタの熱はすっかりと下がっており。
念のためにともう少し安静にとしもらっておく。
何か船の噂の仲ではオレがグレタの母親で、コンラッドが父親ではないか……
ということになっているらしい。
…だからオレは男ですってば……



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