パックツアーでの旅行というのは、何もかも会社まかせで楽チンだ。 交通機関のチケットから、宿泊先の予約まで。 すべて旅行会社が手配してくれる。 お土産までついてくることもある。 ただ、欠点が一つあるとすれば。 厄介な客と乗り合わせてしまうと、日程終了までは離れることが出来ない。 という点だ。 ここではまだ、そんな旅行会社…みたいなものはないらしいけど。 しっかし…… 「何で五人になつているのかなぁ?」 当初の申す込み人数は。 三人と子供一人だったのに。
確実に反対されるのは目に見えているので、 過保護すぎる教育係でもあるギュンターには置手紙をしておいた。 リハビリとかそのまんま、習った言葉の文字通りに。 かけているとはおもうが、ギュンターがリハビリの意味を知っているかはなぞ。 簡潔に『リハビリのために城を出ます。』と書いたつもりではあるが。 見張りの兵士には、『親子水入らずで話したい。』といって。 部屋にと閉じ込められていた少女は部屋から連れ出した。 目的地は暫定的中立地帯なので、魔族とばれても問題はない。 とのこと。 とはいえ、黒瞳黒髪は目立ちすぎる。 というので、アンリともども形ばかりのいつもの変装。 帽子に丸サングラスに杖、という格好のオレに。 頭にフードをすっぽりとかぶっているアンリ。 そんな格好で二人で巨大トランクを転がして、待ち合わせ場所にとやってきたのだが。 そこには、旅なれたいつもの格好のコンラッドと。 「遅いぞ!ユーリ!!」 「な…何で!?」 アンリとそのまま、直接城から空間移動してきたというのに。 母親ゆずりの美貌のおかげで威圧感倍増。 こいつの場合は母親似でも、ちゃんと美男子にと見えるから不思議だ。 オレは女の子にしょっちゅう間違われている。 というのに。 同じ母親似とはいえ、ものすごい違いである。 だまっていれば絶世の美少年。 外見はまったく違う三兄弟の末っ子。 そのヴォルフラムがそこにいるし…… 「僕はおまえの婚約者だからなっ! 旅先でよからぬ恋情に巻き込まれないように監督する義務があるっ! そうでなくてもおまえときたら、尻がるで浮気者だからなっ!」 そんなことをいってくるし。 「…ヴォルフゥ〜……。そういうのは本命がいてなりたつ行為じゃあ…… そもそも、だから、おまえから断ってくれれば万事解決なんだってば!」 どうしてそろそろこちらの世界では一年が経過しようか。 というのに、こいつは例の間違えてオレが求婚行為をしちゃった行動。 あれを断ってくれないのやら…… 「うるさい!」 「…すいません。この調子で押し切られてしまいまして……」 どうやら、どこからか、オレたちが船の手配をしたのをかぎつけたらしい。 コンラッドが潮風をうけながら、苦笑しつつオレにと謝ってくる。 「ところで?その荷物は?」 オレのもっている荷物をみて、ふと気になったのか聞いてくるコンラッドだけど。 「ん?これ?ジャジャーン!もう出てきてもいいよ?」 いって、トランクをあけると、そこには先日。 オレの隠し子だ! といってきた女の子が。 「って!?暗殺者じゃないですか!?」 コンラッドが叫び、ヴォルフラムは口をあんぐりとあけている。 「信じられない。見張りに何ていったんだか」 そんなコンラッドの問いかけに。 「親子水入らずで話したい。っていって人払いしてもらって。 アンリに協力してもらってトランクにいれて。そこまで直接瞬間移動」 いって、建物の影の辺りを視線で指し示す。 そんなオレの言葉に。 「それじゃ、認めたも同然だ」 いって笑っているコンラッド。 「お…おまえなぁぁ!どこの世界に命を狙ってきたやつと仲良く旅行するやつがいる!」 ガクガクとオレの襟首をつかんでゆすぶってくるヴォルフラムに。 「もう。でてきてもいいよ?大丈夫?」 アンリがトランクの中の少女にと話しかけ。 それをうけ、戸惑いながらもトランクの中から出てくる女の子。 「ここに。だってさ。何で自分が狙われたのか知らないままでいられるか? オレは駄目。ちゃんと聞きたいし。誤解してるんだったらきちんと訂正したいしね。 まだ名前も聞き出せてないらしいしさ」 アンリはどうやら少女の名前がわかったらしいけど。 本人が名乗るもでは教えない。 とかいってくるし。 ……ま、確かに、一理あるんだけどね。 「とりあえず。先に船にのろうよ?遅れたらおいていかれちゃうよ?さ。君もね」 いって、にっこりと少女に微笑みかけるアンリに、少女はかなり戸惑い顔。 オーラもかなり戸惑っている気配がよく出ているし。 アンリの言葉に、とりあえすず、オレたち五人は船にと乗船することに。
部屋にいき荷物をおいて、ひとまずデッキに移動する。 大自然の中ならば、ちょっとはこの子も部屋の中よりはくつろげるだろうし。 デッキに出てしばらく、ぼ〜と意味もなく海を眺める。 潮風がとてもここちいい。 視線を落とせば斜め下に赤茶の巻き毛の女の子。 身長的にも、年齢的にも、妹のスピカと同じ。 細かすぎるウェーブはよくお袋が妹にやっている、細かなみつあみを解いたときにできる。 あのウェーブにとよく似ている。 「なあ?名前は何ていうの?苗字がNGならしただけでも。 オレはユーリ。何かユリティウスとかいうらしいけど。ユーリって呼んでくれたらうれしいな」 波上を渡る冬風に頬を真っ赤に染めながら、小さな両手で手すりをしっかりとつかんでいる。 かれこれ、同じことを聞き続けて三十分以上は経過しているようなきがする。 冬風に頬を真っ赤にそめて、りりしい眉と長いまつげを震わせて、じっと少女は海面をにらんでいる。 オーラがすべてを…この世界のすべてを拒否しているような感じを出しており。 何かとてもおびえているような…戸惑っているような。 誰かに助けてほしいような…そんな感じをうけるオーラ。 小さな子供はこういったオーラをよく出していることがある。 自分がどうしたいのか。 何をしたいのか。 また、誰かに振り向いてほしくて、親に振り向いてほしくて、悪さをして後味が悪くなったりとか。 そんなときに発せられる子供のオーラに、この子のものは酷似している。 「君はだれ?オレの何?っていうかもしかして父さん、母さんの関係者?」 可能性としてない、とはいえないし。 問いかけても、問いかけてもずっと黙っているので思わずため息。 と。 「…ん?…って。ちょっとまって?」 何の気なしに、振り向けば、少女は下をむいたままうつむいており。 そして、何よりもオーラの色が乱れている。 「ちょっとごめんな」 かがんで額に手をやると。 「って!?熱あるじゃん!?いつのまに!?」 少女の額に触れた手がとても熱い。 「コンラッド!この子をつれてすぐに部屋に!あ!それから薬もらってきて! ヒエピタとかってこの世界にはないの!?」 混乱し、戸惑う俺に。 「ユーリ。落ち着いてってば。小さい子供の急な発熱はよくあることだよ。 きっと城からでて、緊張が少し解けたからだよ」 うろたえるオレをなだめてくるアンリの姿。 「だってかなり熱いよ!?体温計はないの!?」 見たところ、どうみても…八度はあるぞ!? この熱さは!? オレの叫びに。 「はぁ〜……。わかったってば。ユーリの家から借りてくるから。ウェラー卿。この子を部屋へ」 戸惑うオレとは大将てきに、テキパキと指示を出し。 コンラッドに女の子をお姫様だっこさせて部屋に連れて行くように指示しているアンリ。 「アンリ!ついでにアイスとかもあったらそれもお願い! たぶんおふくろが買い置きしてるしっ!あとポカリっ!」 「はいはい」 オレが向こうにもどるのは、いつ何どき、何の目的で滞在し続けるのかわからない以上。 アンリだけはあちらの世界に自由にもどれるらしい。 オレは万が一、もどったときに必要なときにいない。 という事態を避けるためにあえてもどれないけども。 「うわぁ!?熱があったらせっかくの温泉に入れないよ!?」 何か驚くポイントが違うぞ? オレ?? 「陛下。陛下。落ち着いてくださいってば。とにかく中へ」 バタバタとしつつも。 とりあえず、女の子をつれて、オレとアンリとコンラッドは女の子をつれて部屋にともどってゆく。 ヴォルフラムは何かデッキ上で、船酔いの為グロッキー状態になってたから。 ま、そのうちにくるだろう。
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