「というか!オレはまだフォーストキスすらしてませんっ! 女の子の裸をみたっていったら、小さいころにおふくろと入った女湯かっ! もしくは、家で妹のスピカを小さいころに風呂にいれてたくらいしかっ!」 ……あとこっそり隠れてみてたエロ本とか。 それも一、二度くらいだし。 「う〜ん。で?その子どうしたの?」 オレの叫びは何のその。 まったく冷静にと問いかけているアンリに対し。 「はっ!実はその…もう扉の向こうまできております。 歴代魔王とその身内にのみ受け継がれる徽章をおもちでいらしたので。 なにぶん、お通ししないわけにも……」 「??徽章?何それ?そういや、何かアンリも以前そんなことをいってたようなきもするけど?」 オレの素朴な疑問に。 「それはおかしいっ!」 がばっ! いって、腹筋運動よろしく、がばっと起き上がっているギュンター。 すごい瞬発力。 「陛下はまだ。あくまでもあちらで十六になられていないらしいので。 陛下の徽章はまだおつくりしておりません! せっかくだから、父君と母君。お二方を示す模様をいれて新たに作ろう。 という声は我々の間では出来ておりますが。 徽章をもっていた。というのならば陛下お子様ではありませんっ! 陛下がもたれている二つの徽章は常に陛下が身に着けておられますから」 そんなことを言っているギュンターだし。 ?? 「?二つ?というか、だから徽章って?」 オレのそんな当然な疑問に。 「一つはユーリのロケットペンダント。それについている模様のことね。 でもってもう一つは魔石。ジュリアさんが石の中にウィンコット家の徽章を組み入れているから」 「・・・・・これ?」 言われてみれば、医師の中に何やら花のようなものが、琥珀のごとくに入っているけど。 「ただの模様じゃなかったの?っていうか。そもそも徽章って何?」 そんなオレの言葉に。 「家紋。みたいなものだよ。でもって家を継いだもの。 もしくは継ぐものがそれを模した品物を受け継ぐことになってるの。 常に見につけられる品物の形でね」 そう説明してくるアンリ。 「へぇ。昔の印籠みたいなものかな?…あれ?でもオレそんなこと今まで知らなかったよ? じゃあそのオレの隠し子とかいってるの…誰の子なの? その徽章とかいうのもってたんだしょ? ヴォルフ?おまえはその徽章というやつをもってるのか?」 オレの問いかけに。 はじかれたようにオレから手を離し。 「いや。僕はもっていない。家ビーレフェルトの家を継いだわけじゃないからな。 確か兄上はもっていたはずだ。ヴォルテールを受け継いだからな」 いってアゴに手をあてて。 「では、その隠し子とかいうやつは一体どこの……は!?まさか新しい兄弟の登場じゃないだろうな!?」 などとはじかれたように叫んでいるヴォルフラム。 あ〜…… もしかしたらツェリ様ならありえるかもしれない…… 目に見えてうろたえ始めるヴォルフラムに。 「母上ですから…ありえない…とは言い切れないな……」 コンラッドまでもがそんなことをいっている。 じ…実の息子にこうまで言われるツェリ様って一体…… 「ま、ともかく。本人に事情を直接聞いてみようよ」 オレの言葉に。 「まあ。それが一番手っ取り早いけど…さ」 アンリがうなづき。 「あ。あの!?」 「陛下!?おまちくださいっ!」 戸惑う兵士、ダコスカスと、ギュンターをその場に残し。 もう片方の扉をあけて外にとでる。 そこには、兵士二人に付き添われている赤茶色のウェーブのかかった髪に。 青い瞳の十歳程度の人物が一人。 ちなみに、オーラの色から判断するのに、人間であり女の子。 「え?女の子?しかもにゆんげんってことは、見た目どおり十歳くらい? 十歳っていったらオレの妹とおんなじじゃん!? オレの子だとしたら・・・オレが六つか七つのときの子?んなわけないって。 やっぱりあの子、オレの子じゃないよ?」 そんなオレの言葉に。 「確かに。あの子は純粋な人間だね。ハーフとかでもなさそうだし」 アンリまでもがそんなことを言っている。 そんなオレとアンリの会話に。 「猊下!?なら人間ってことは母上の隠し子ってことはないんですね!?」 あ、ヴォルフラムがアンリの言葉に反応してる。 「…しかし…十年前…といえば。母上は一時期姿をくらました…という事実がありますからねぇ…」 何やらそんなことを言っているコンラッドだけど。 「そなの?」 オレの問いかけに。 「そういえば……。エドがウェラー卿を地球に送ったとき。 ツェリさんもいきたいっ!と駄々をこねたとか…で、断ったら。 何かそのまま一人旅にでたらしいよ?十年前……」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 アンリの説明に思わず無言。 いやあの…だからツェリ様って…… 「あのときは大変でしたよ。まったく……」 事実だ、と肯定するかのごとくに、後ろからギュンターが何やらため息まじりにいってくる。 どうやら、ギュンターも部屋からでてきたようだ。 え、えっと…… と、とりあえず…… 「えっと…君?オレの隠し子っていってきたというのは? 勘違いとか聞き間違えとかじゃないの?それとか誰かに嘘を吹き込まれたとか?」 一歩前にでつつ、少女にと問いかけるオレの言葉に。 今までうつむいていた顔を上にむけ。 そして、何やらすうっと息を大きく吸い込んで。 「ははう…いや、ちちうえ〜!!おあいしたかった!!」 などといって、何やらダッシュをかけてくる。 ちょっとまて。 今、この子…母上っていいそうになって、あわてて訂正しなかったか? とりあえず、条件反射でかがんで両手を広げてしまうオレ。 よくスピカも小さいころこうやって突進してきてたなぁ。 最近はしてこなくなったのが、ちょっぴり兄としては寂しいところ。 そのまま、女の子は片手を懐にいれ、そのまま何かを取り出す動作をしつつダッシュをかけてくる。 「…へ?」 きらり。 何かが窓から差し込んだ太陽の光を反射して煌く。
「ユーリッ!!」 いきなり、何か強い力で後ろにとひっぱられ。 次の瞬間には、オレの前にといつの間にかやってきていたコンラッドの背中が。 そしてコンラッドは少女の手から何やら手刀で叩き落している。 カラ…ン… カラララ…… 何かが床を落ちる音と、すべる音。 「……へ?」 思わずそちらをみれば、なぜかそこには小型のナイフが…… え…えっとぉ? オレが状況を飲み込めないでいると。 というか、飲み込めるほうがどうかしている。 何で女の子は兵士に取り押さえられてるの? というか、あのナイフ…どこから出てきたの? 強くひっぱられたせいか、しりもちをついた状態で思わず呆然としているオレに。 「陛下っ!ああ。何という恐ろしい……。陛下。お怪我はありませんでしたか!?」 何か顔を真っ青にしてギュンターが聞いてくる。 「?何?何がおこったの?というか…今オレをひっぱったの…声からして…アンリ?」 オレの問いかけに。 「まあね。一度あることは二度ある…か」 ?? ため息まじりにいっているアンリの言葉に思わず首をかしげる。 なぜか全員顔色がわるい。 ……えっと? 「も…申し訳ありませんっ!まさか子供が暗…このような大それたことを企てていようとは!!」 兵士の一人が顔面蒼白となりつつ、そんなことをいってくる。 「……は?」 目を点にして問いかけるオレに対して。 「つまり。あのアルフォード二号ってところだね。 ユーリは魔王ってだけで、偏見と差別からこの子に命を狙われちゃったわけ。 この場合悪いのはこの子の周囲にいた大人だねぇ。こんなことをさせるまでしちゃった」 アンリの言葉に。 えっと?? 「命を狙われた…って…オレが!?」 驚くオレに。 「つまり。今ユーリは暗殺されそうになったんだよ。」 「あんさつぅぅ!?そんな馬鹿な!?だってこんな小さい子が!? もしかして洗脳されているとか!?小学生がそんなこと思いつくわけないしっ! それとか誰かに操られているとか!? だってその子のオーラ…負の気配がまったくないよっ!?」 かといって、何かに操られている、という気配もないけど。 叫びつつ、とりあえず立ち上がろうとし。 くらっ。 「あたたっ!」 左足首に痛みが走り、すぐにへたりこんでしまう。 「ああ。ひねったかな?」 古い傷の残る眉をわずかによせて、コンラッドがオレの靴を脱がせると。 見る間にくるぶしは腫れ上がっていたりする。 「……あた〜……。軸足をひねったみたい」 どうなら、今のひっぱられてこけたときに。 丹念にひねってしまったようだ。 「ああ!何とおいたわしい!おかわいそうな陛下! できるならばこのギュンターが変わって差し上げたい。ひとまずその子を牢の中へっ!」 そんなことをいって、兵士に指示を出しているギュンター。 って!? 「って!まてまてまてってば!!こんな寒い中にそんな小さい子を牢屋の中に入れる!?ダメだってば!」 オレの言葉に。 「おまえは今、その子に命を狙われたんだぞ!?」 くってかかってくるヴォルフラム。 「何か理由がなきゃ。子供がこんなことをしないって! 牢屋なんかにいれたら、寒くてその子が病気にでもなったらどうすんの!? ここの牢屋、暖房完備できてるの!?」 出来ているわけがない。 何しろこの世界。 電気というもの自体がないんだから。 ランプの明かりくらいでは寒さはしのげない。 そんなオレの言葉に笑いつつ。 「相変わらずユーリはユーリ…というべきか。ひとまず。その子は僕の部屋に。 理由を聞いてみるよ。それと念のために見張りを窓の外にも。 それと国内にこの子を扇動したものがいないかの探索を。 フォンヴォルテール卿にいって、念のためにしてもらって」 テキパキと何やら兵士に指示をだしているアンリの姿。 そして、オレの方をみて。 「ひとまず。僕があの子の身柄は預かるから。ユーリは足…大丈夫? …こりゃ、丹念にひねってるねぇ。だれかギーゼラさんを呼んでくれる? ユーリはまだ自力回復はムリだし。僕はこの子をつれていってひとまずいろいろと聞いてみるから」 オレの足を触って、オレが痛みに顔をしかめると兵士にそう指示を出しているアンリだし。 一方で。 「この国最高の名医を大至急!城にと呼ぶのですっ!」 などと騒いでいるギュンター。 「ひとまず。猊下のいうとおり。ギーゼラをよこすようにいってくれ」 オレの足を調べつつ兵士にいっているコンラッド。 「はっ!!」 コンラッドとアンリの言葉に。 兵士経ちは一礼してかけだしていく。 どちらの命令が妥当かは……ま、だれでもわかるよな……
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