走りつつ、城から滅多と外に出れない…玉に城から抜け出すのは別として。
アンリがオレの代わりに城下や他の村の様子をはなしてくれる。
眞王廟。
だてに、国中から参拝者が来ている。
ということはあって、話好きの女の子なども多いらしい。
アンリは、こっち血盟城よりもよく眞王廟に滞在してる時間のほうが長いし。
そんなこんなで。
いつものように、いつもの通りのコースを回ってから城にともどり。
いつものことだからか、
すでになれた様子で、係りの人がオレの着替えをもって風呂場で待機してくれていたりする。
どうやら毎日の日課に早朝のジョギングを取り入れているので、メイドさんたちもなれたらしい。
アンリが一言、二言いって、自分の着替えも頼んでるけど。
どうせ広い魔王というか個人専用風呂。
一人で入ろうが、二人で入ろうが同じこと。
団体客でもまだ余裕がある広さだし……
コンラッドは汗一つ毎回ながら流していないけど。
オレとアンリはジョギングが終わると結構汗をかいており、そのまま二人して早朝風呂に。

風呂から上がり、服を着替えて部屋にともどる。
いまだにギュンターとヴォルフラムは言い合い中……
よくもまあ、毎日同じような言い合いができるものだ。
ヴォルフラム曰く。
「ユーリは僕の婚約者なんだからずっと一緒にいたいにきまってる!」
ときたもんだ。
きまってないってば……

「相変わらずだねぇ」
「これにはオレもなれないよ……」
風呂から出て、着替え終わって部屋にもどり、いまだに言い合いをしている二人をみて。
思わずアンリとオレの声が重なる。
ヴォルフラムも一応言い合いしつつも、どうやら着替え終わってはいるらしい。
と。
コンコン。
扉をノックする音とともに。
「陛下っ!猊下っ!」
小麦色にと焼けた肌がよく似合う、少年のようなショートカット。
赤茶の大きな瞳を笑みで細めてひまわりのような少女が部屋にと入ってかけよってくる。
おなかに目をやれば、どうやらおなかの子はその大きさからも順調らしい。
「ニコラ。きてたんだ」
「あ。久しぶり。ニコラさん」
オレとアンリの声が重なるのとほぼ同時。
「お久しぶり!陛下!それに猊下も。お元気でいらした?」
ニコラもアンリに会ったことあるし。
というか、彼女たちをつれてこの国に連れてもどってからしばらくして。
アンリもこちらにやってきたときに、彼女たちには引き合わせている。
ゆえに、ノリカさんたちともアンリは一応顔をあわせているけど。
こちらの時間率でいうと、数ヶ月前。
オレは彼女に、彼女はオレに間違われ。
お互いにひどい目にあった。
だけど結果として彼女は夫というか恋人の故郷で子供を産むことを決意し。
それ以外の魔族と関係のあった女の人たちやその家族の人たちをどうにか救い出すことに成功した。
どうみても、ソプラノリコーダー。
としか見えない魔笛も手にはいったし。
結果的にはかの国で『法石』が取れなくなり、高額収入がママならなくなった。
というのを除けば、ぼちぼちの成果だろう。
「直轄地を通過する用事があるとかで。閣下が送ってくださったの。
  でも不思議。ヒューブのことわあんなに怒っていらしたのに。あたしにはとてもおやさしいのよ?」
にこやかに、ニコラがいってくる。
「まあ、グウェンダルは見た目では怖そうだけど、本当はやさしいからね」
「グウェンダルのあの顔は昔からですからねぇ」
オレに続いてコンラッドまで苦笑しながら言っている。
そんな会話をしているオレたちの横では。
「ですからっ!陛下のお部屋に住むのはおやめください!」
「ユーリは僕の婚約者だぞ!一緒にいたいにきまってるっ!」
などと言い合いをしているギュンターとヴォルフラムの姿が……
「…だからぁ。オレから断ったりしたら、おまえのプライドが傷つくからダメだ。
  っていうんだったら。おまえから断ってくれば万事解決じゃん?
  そもそも、オレたち男同士なんだしさぁ〜……」
いったい、この台詞をもう何度いったことか。
かれこれ千回以上は絶対に言ってるぞ……
そんな会話を聞きつつも、脱力して力なくいうオレに。
「ユーリなら、女の子でも通用するわ!!あたしが保障するっ!」
「してくれなくていいっ!ニコラ!」
何か楽しんでそういってくるニコラに思わず即座に突っ込み。
…まったく。
「ま。面白いからいいじゃん」
「アンリィ〜!!人事だとおもってぇぇ〜〜!!」
アンリは何かこの状況を面白がっているようだし……
まったく……
本当。
ヴォルフラムが女の子だったらなぁ。
けどだったら余計にわがままだったかも……
そんな会話をニコラを含めてしていると。
コンコンコン。
扉から、鈍い音が数回響いてくる。
それをうけて、アンリが重たい扉を片方だけあける。
みれば、正門警備の若い兵。
確か名前をダカスコスとかいったっけ??
以前アニシナさんの実験台にされそうになったことがある人らしい。
その人物がカチコチに緊張して扉の前で突っ立っている。
「申し上げますっ!」
「?どうしたの?」
カチカチに固まるそんな彼にと問いかけるアンリ。
「そのっ!魔王陛下におかれましては!ご公務以外のお時間とは存じますがっ!」
「…あ〜……。そんなにかしこまらなくていいからさ。さくさくっていっちゃって」
「はっ!おそれいります!」
オレの言葉にますます固まっちゃってるし……
何かつついたら、倒れそうだ。
以前、カヴァルケードの王様と謁見したときのオレみたい。
う〜ん……
「実は。陛下にお目通りを。と願うやからが。先ほど城門にまいりまして」
そんな彼の言葉に。
「おまちなさい!そういうことはまず王佐であるこのわたくしに!ダカスコスッ!」
そんな彼にといっているギュンター。
「いやしかし…そのぉ…何ぶん。私的なことですので…出来ればお人払いを……」
かちこちに固まりつつもそういってくるけど。
何かオーラの色がかなり戸惑っている。
そんな彼を見かねてか。
「大丈夫。みんな口はかたいよ」
笑顔でいっているコンラッド。
「は…はぁ……」
まだ戸惑う彼に。
「いいから、とっとといっちゃって。何?」
オレの問いかけにピシッ。と姿勢をただし。
「え〜!!それでは申し上げます!実は魔王陛下の御落胤とおっしゃる人がお見えですっ!」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?』
その場にいた全員が思わず聞き返す。
「ですから!魔王陛下の御落胤とおっしゃる方がぁぁ……」
「ユーリッ!貴様、いつうんだ!?いつ!?相手はだれだ!?」
いきなり、ヴォルフラムに襟首をつかまれ、がくがくとゆすぶられる。
バタッ!!
「え!?え!?何!?うわっ!?ギュンターが!?って産んだって何!?うんだって!?」
見れば、ギュンターがその場にと卒倒しているし。
「僕というものがありながら!相手はどこの男だ!誰の子だ!!」
「苦しいってば!ヴォルフ!子って何!?それより、御落胤って……」
頭の中にと浮かんだのは。
上様御落胤。
お家騒動にはつき物だ。
って!?
「まさか!?御落胤って隠し子ぉぉ!?誰の!?ってまさかオレの!?
  んなバカな!?もてない人生十六年のオレにそんなことがあるわけがないっ!
  そもそも!第一オレは男だから子供なんてうめるかっ!」
「ならどの女との間につくった!!」
「デートすらもしたことないオレにそういわれても!!」
告白。
デートは母親。
もしく、妹のスピカとしかしたことありません。
そんなヴォルフラムにがくがくとつかまれてゆすぶられているオレを横目でみながら。
「可能性として…ウェラー卿?もしかしてジュリアさんとの間に子供つくった?」
「なっ!?オレとジュリアはそんな関係ではありませんっ!!」
あ。
アンリの問いかけにコンラッドが珍しく動揺してる。
「可能性として……
  ジュリアさんの子供が生まれかわりのユーリにあいにきた。とも考えられたんだけどねぇ」
そんなユーリの言葉に。
「彼女の身は死んでも潔癖です!
  婚約者であったアーダルベルトともそういう関係は何もありませんっ!!」
すごい口調でコンラッドが訂正をいれてるし。
「う〜ん。ジュリアさんの子供じゃない…かぁ。ならその子誰の子供だろ?
  ユーリは妊娠なんて今までしてないし」
しみじみいうアンリに。
「だから!オレは男だって〜のっ!!」
突っ込みをいれるが。
「ユーリ。素直に認めたら?一体誰の子供を産んだのか。
  もしくは誰と仲良くなったのか。ユーリって大胆。きゃっv」
いって何やら顔を覆って笑っているニコラ。
…明らかに楽しんでるぞ……
オーラが面白がっているのが見て取れるし…
お〜い…ニコラぁぁ……



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