「え!?え!?何!?って…あれ?アンリ?オレ??」
何か思いっきり冷たいものを浴びたような気がするけど。
「気がついた?ユーリ?水をかけて気付けしたんだよ」
オレを抱きかかえている格好のアンリが何やらにっこりといってくる。
「いや、気付けって……」
一体、何がどうなったというの?
そうだ。
子供は!?
「陛下っ!大丈夫ですか!?猊下。陛下はお休みになられていたほうが……」
心配そうな声をだして、オレのほうにと駆け寄ってきているコンラッド。
そして、オレに視線をあわせてか、膝をついて、オレの額に手をあてていたりする。
「大丈夫だって。今回のは大人しかったし。少しづつでも体を力になれさせないと。
  そのほうが細胞も早く元にもどるしね」
??
そんなコンラッドの言葉にパタパタと手を振りながら何やら言っているアンリだけど。
…えっと?
何がいったいどうなった…というわけ?
「あれ?あの三人は?」
確か、オレは卑怯にも子供を人質にとっていた、アルをだましていた三人組につかまったはずだけど?
そんなオレの素朴な疑問に。
「彼らでしたら、あの中です」
いって指し示されたほうをみれば、何ら木でできた檻のようなものが。
なぜか。
でんっ!
と村の真ん中にと出来ている。
さっきまでこんなものはなかったぞ?
いや、それ以前に…檻にかかっている白い布に何で『正義』って二文字が漢字でかかれてるわけ?
「ま。今のユーリの力で壊れた家々も元通りに修復されたし。村人の避難を解除しても問題ないよ」
みれば、確かに壊れていたはずの建物までいつのまにか直ってるし。
??
「アンリが修復したの?」
アンリなら出来そうだ。
ちょっと頭がなぜか値けど、立ち上がりつつ問いかけるオレに。
「僕じゃなくて君だってば」
「オレが!?んなバカな!?そんなこと一瞬でできるはずないじゃん!?」
アンリの言葉に思わず突っ込み。
まったく、以前のときも思ったけどさ。
そんな神業……オレにできるはずがないっての。
……多分。
「あ…あれだけのことをしておいて…まさか、この魔王…自覚がないのか!?」
なぜか目を驚愕の表情で見開いて、何やら言っているアルフォードの姿も見えてるが。
そんな彼の言葉に。
「まあ。いつものことですけどねぇ」
「まったく。このへなちょこが。少しは自覚をもて。というんだっ!」
苦笑しているコンラッドに、腕をくみつつ、なぜか怒っていってきているヴォルフラム。
??
「自覚っていわれてもさぁ。…覚えてないものは覚えてないんだし。
  あ、それより!あの子無事!?人質にされてた子!?それにポチとお母さん竜は!?」
オレのそんな問いかけに。
「ひとまず。村人たちにはもう大丈夫。だと伝えましょう」
「兵士達には後始末をお願いしておきます」
コンラッドとギュンターがいい。
その辺りにいた兵士を呼び寄せ、何やら伝え、そのままその兵士は走り去ってゆく。
そして。
「あの三人にはしかるべき場所で罪をつぐなってもらいます」
オレにと説明してくるギュンターだけど。
「う〜ん。きちんと更生してくれればいいけどね」
みれば、あの三人組は檻の中に閉じ込められている状態だ。
何で自力で出られないのかなぁ?
とか思ってしまうが。
だって…どうみても、ただの木の檻だし…さ。
彼らがもっていた剣とかはどうしたんだろう?
まあ、逃げ出す心配がない。
というのを上げればいいことかもしれないけど。
罪は罪できちんと償わないとね。
そんなオレのつぶやきに。
「で?こいつはどうするんだ?」
ポチたち母子のところにいき、ひとまず無事を確認しつつ。
そんな会話をするオレたちにとアルを見ながら聞いてくるヴォルフラム。
「どうするって……。アルもさ。結局のところあの三人にだまされていた被害者なんだしさ。
  一応注意だけってことでいいんじゃない?」
そんなオレの言葉に。
「しかし。それでは……」
いいかけるギュンターの言葉をさえぎるかのごとくに。
「何なら僕が身元保証人になってもいいけど?
  この彼、アルベルト・マキナーの直系の子孫だしねぇ。ユリアナ・マキナーの身内でもあるし」
横でそんなことをいってくるアンリ。
「??誰?それ?」
思わず首をかしげて問いかけるオレの言葉に。
「ユーリの何代か前…というか。産まれる前の名前の一つ。
  四百八十年ばかり以前。ユーリ、ここの世界でユリアナっていう女の子だったんだよね。
  でもって、そのお兄さんがアルベルト。この聖剣の初代持ち主」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・
『ええぇぇぇ〜〜〜〜!???』
アンリの言葉にしばし無言になった後に、思わず全員が叫んでしまう。
「だからいったじゃん?ユーリを守るためにその剣作ったって」
しれっと言うアンリに対し。
「あれって…そういう意味だったの!?」
驚いて叫ぶオレに。
「え!?とすると。この人間は陛下の御魂の関係者!?そんな!?」
ギュンターが珍しく戸惑っている。
そんなオレたちの会話に。
「…昨日から気になっていんだが…アルベルトやユリアナって……
  銀のマキナー兄妹のことか?俺の家では伝説になっている……」
何やら戸惑い気味になにやら言っているアル。
そんなアルに対して。
「うん。何か二人とも、そう呼ばれてたね。二人とも綺麗な銀色の髪で。
  瞳は君と同じ青でさ。当時のユーリを見つけたとき、僕驚いたの何のって。
  いるのはしってたんだけどさぁ。エドと一緒に探していたりしてたしさ。
  でもって、ウリちゃんにも協力してもらってさぁ。
  何でも、やっかいごとに首をつっこむ妹を守るための力がほしい。
  ってアルベルトに言われてね。僕としてもユーリを守る。というのは当たり前のことだったし。
  だったら。というので、遺跡の中にあった昔の剣を鍛えなおして渡したんだけどさ。
  もうあれから約五百年たってるなんて…ほんと、早いよねぇ。
  その間、僕もかなり転生を繰り返したしたしさぁ」
しみじみとそんなことを言っているアンリ。
そんなアンリの言葉に。
「確か。猊下の前の生の…前世での名前はクリスティンさんでしたっけ?」
「そ」
コンラッドが何やらいってるけど。
それに対していともあっさりと肯定しているアンリ。
そんなアンリの台詞に。
「…どうしてそこまで詳しく…彼は一体……」
何やら戸惑っているらしいアルの姿が。
普通は戸惑うよなぁ。
…普通は……
「何か双黒の大賢者って呼ばれてるよ?アンリは。
  アンリは自分が生まれる前のこととか、そのときの人生のすべてを覚えてるらしいけどね。
  あと魂だけになった状態でのときのこととかさ。肉体がない状態のときの記憶もあるらしいし。
  何かそういう存在なんだって。オレはまったく覚えてないけどね」
オレの言葉に。
「普通は死んだら魂はまっさらになり、新たに誰でもないものとして生まれかわりますからねぇ。
  猊下のような特殊な場合を除いて」
コンラッドが追加説明をしてくれる。
ん?
「ちょっとまって?じゃあ…このアルって…昔のオレの子孫ななわけ?」
オレのそんな疑問に。
「ユリアナは結婚もしてなければ子供も生んでないよ。正確にいえばお兄さんのほうの子孫」
アンリが説明してくれるけど。
「へぇ。何か新鮮な驚き……」
思わず感心した声をあげてしまう。
すんなりと信じられる。
というオレもオレだとおもうけど。
どうやら嘘ではないらしいし…さ。
「なるほど。昔のユーリ…つまり、御魂にかかわりがあった関係者…か」
アンリの説明に何やら一人、ぶつぶつといっているヴォルフラム。
「……そういうことならば……陛下の御魂のかつての兄上の……
  わかりました。このたびのことは厳重注意にとどめておく。ということで手をうちましょう。
  この人間に関しては」
「本当!?ギュンター!ありがとう!ってことで。アル。よかったね。
  これで無罪放免。ってことでさ!さ!アルも一緒にポチたち親子の門出をいわいにレッツゴー!」
「はぁっ!?」
オレの言葉に目を丸くするヴォルフラムに。
「言うと思いましたよ」
いって笑っているコンラッド。
「しかし…俺はおまえを狙ったのに……」
戸惑い気味なアルの言葉に。
「でも。今はそんなつもりもないんだろ?だったら問題ないじゃん?」
「お〜ま〜え〜はぁぁ!誰とでもすんなりと信じようとするなっ!!
  そこがおまえのいいところなのは認めるが!!危険もつきまとうんだぞ!?」
「まあまあ。いいじない。フォンビーレフェルト卿。
  それに、彼もユリアナの生まれかわりって聞いたユーリをどうこうしようとはしないってば。
  マキナー家にとっては、それほど彼女は女神的存在だからねぇ」
にこやかに、怒るヴォルフラムをなだめているアンリ。
何か又一つ、オレの前世の名前が判明したわけだけど。
でもさ?
…ジュリアさんといい…ユリアナって人といい…何でいっつも女の人ばかりの名前なんだろ?
……ま、いっか。
あまり深く考えてもどうにもなんないし。
とりあえず。
アルもつれて、ポチたち親子を新しい巣となえりるである場所にと移動することに。
そのまま、アルと一緒に。
オレたちは山の奥にと分け入ってゆく。


コンラッドに聞いたところ。
昔、コンラッドはアルのお父さんに剣の勝負を挑まれたことがあるらしく。
あっさりと勝ったら『勝つまではかえさない!』とかいって、しばらく追いかけられたことがあるとか。
そして、その結果。
共に、旅をすることとなったとか何とか……
ヴォルフラム曰く。
コンラッドはそのころから、すでに眞魔国一の剣の使い手。
といわれていたらしい。
さすが、というか何というか……
アルの父親のギルバード。
という人は、コンラッドが魔族と人間のハーフ。
と知っても驚きはしたものの、態度を変えなかったとか。
「人間の中でしっかりした信念をもった人でしたよ」
とコンラッドは言っていたが。
自らの信念をもち、心を強くもち、回りの雑音にも惑わされない。
その姿勢がすごく新鮮に映ったとか。
コンラッドが国にもどる…というときに分かれて以後、会ってないらしい。
今度是非遊びにいく。
とオレがいったところ、なぜかギュンターたちに即座に却下されたけど。
特に反対してきたのがギュンターとヴォルフラムだ。
何でも遠すぎるのが理由の一つらしい。
あとは、危険だからとか何とか……
アルも一度家にもどって父親に報告し。
また旅に出る。
ということらしいけど。
あと、何か。
オレと勝負をしてみたい…とか何とかいってたりもするけども。
だから、オレとしては剣の腕なんかないってば…
勝負にも何もならないとおもうなぁ……

そんなこんなで……
そして……


「う〜……」
「さ!陛下!お留守の間の勉強とお仕事がたまっておりますよ!」
……バタっ。
無事にポチたち親子を新しい巣にと案内し。
移動させた後にアルと別れ。
血盟城にともどってきたオレを待っていたものは……
もう…オレ、死んでます……
オレをまっていたのは大量の仕事と。
そして勉強……

……魔王って疲れるよぉ……
しくしくしく……

                  ― Misson End Go To Next……



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