パチパチパチ。
焚き木が爆ぜる音が鳴り響く。
「…ね、ねえ?アンリ?これってやりすぎなんじゃぁ……」
思わず、横たわる彼をみて横にいるアンリにと問いかける。
「あのね。ユーリ。彼は君が魔王だ。というだけで命を狙ったんだよ?
  しかもそれも偏見からの行動でね。念には念をいれないと」
「…でもさぁ?縄の上からさらにシーラの力で束縛…ってやりすぎなんじゃあ……」
焚き木をかきみ、今日のところはここでキャンプ陣営をはることにしたオレたち一行。
敷物の上に転がされているのは先ほどの男の子。
「まったく。おまえは。だからへなちょこだというんだ!」
焚き木の燃える音が静かに響く中、ヴォルフラムがいってくる。
と。
「……う……」
「あ。気づいた」
小さくうめき、目を覚ますその青年。
自分が縛られているのに気づいてじたばたしてるけど。
「ごめんね。何か皆がこうしないといけないっ!とかいって聞かなくて……
  オレは縛るのは反対したんだけどさぁ」
そんな彼の前に膝をついて話しかける。
「当たり前だ!そいつはおまえが魔王としって剣をむけたんだぞ!?」
オレの言葉に何やら即座に突っ込みをいれてくるヴォルフラム。
「まったくだよ。本当。この剣でそんなことしてほしくないよね。
  君も噂とか思い込み。さらには間違った知識でつっぱしって、この剣を汚さないでよね」
いいつつ、上空にと聖剣をもって掲げっかり!!オレだって聖剣もちたいしっ!」
そんなアンリに対して声を上げている青年と。
抗議の声をあげるオレに対し。
「はいはい。ついでに聖剣の力を導く練習でもしよっか。ユーリ?
  少しづつだけどソフィァさん側の力にもなれとかないとね」
「??」
「俺の剣!?」
みればアンリは聖剣を手にもち星空にかかげてるし。
「あ!!アンリ!ずるいぞ!おまえは!」
そんなオレの言葉に苦笑しつつもアンリが聖剣をオレのほうにと手渡してくる。
「でも。やっぱり聖剣っていいよねぇ。RPGっていったらやっぱり聖剣だし。
  う〜ん。やっぱりオレ…こっちのほいがいいよぉ〜……」
夜空に聖剣の刃をむけて、思わず本音。
『うぅ〜〜!!』
「ユーリ。ユーリ。モルギフがいじけてるよ?」
オレの腰では何やらモルギフが抗議の声を上げてうなっている。
それをみて、笑いながら言ってくるアンリだけど。
「なぜ!?なぜ魔王が聖剣に触れられる!?それに何で双黒が二人も!?」
じたばたしつつ、アルフォードとかいう名前の人は叫んでくるけど。
「あ。そ〜だ。それよりさ。君。何でオレやこの子のお母さん狙ったの?」
まだその理由を聞いてないし。
そんなオレの質問に。
「きさまらに話す筋合いはないっ!」
何かそんなことをいってくる。
「どうせ金儲けが目当てに決まってます。陛下。危ないですから近づきになりませんように」
そんな問いかけているオレにと何やらいってくるギュンター。
そんなギュンターの言葉に。
「違うっ!金儲けなどではないっ!」
何か即答しているし。
「?じゃあ何で密猟なんか?」
「俺は密猟者などではないっ!」
何かそんなことをいってるけど。
「他国に無断で入り。保護動物である竜を狙うなど、立派な密猟です。
  密猟者はしかるべき厳重な厳罰が下されます」
険しい表情でそんな彼にといっているギュンターの言葉に、声を詰まらせているアルフォード。
「でもさ。未遂だったわけだし。それに悪い人じゃないってば。
  この人のオーラ、ものすっごく純粋に澄んでるし」
悪いことを考えている人のオーラはもっとこう、どす黒くなっているものだ。
「陛下。陛下のお優しさには頭が下がりますが。その人間は陛下の命をも狙ったのですよ!?」
ギュンターの言葉に。
「だから。理由があるんじゃないの?それにほら。
  この世界って魔族に対する偏見とか間違った知識が何か人間達の間の常識になってるらしいし。
  そういうオレだって、普通魔王、っていったら悪事の王!とか思うしさ。あと諸悪の根源とかさ」
そんなオレの至極最もな意見に。
「魔王本人がそういってどうする」
ため息まじりにいってくるヴォルフラム。
「だって普通はそうおもうじゃん?魔王だよ?オレとしては、そんな偏見や差別とかをとっぱらって。
  皆が種族関係なく仲良くできる世界にしたいし。そのために、つい王になってやるっ!
  って宣言して即位しちゃったようなものだしさぁ」
「『つい』だとぉぉ!!」
「え〜?だってさ。魔族の皆さんの考え方とかも位置から変えていかないと。
  平和な皆が仲良くできる世界になんてほどとおいよ?
  オレの力ではどこまでできるはわかんないけど。
  でもさ。カヴァルケード王はわかってくれたし。やっぱり話せば誰でも分かり合えるって」
実際。
カヴァルケードの人たちも、魔族に対してもっていた偏見を和平条約以後なくしつつあり、
最近ではカヴァルケードからの観光客も目立ち始めているこの現状。
そんなオレとヴォルフラムの会話にあっけにとられたような表情でオレをみているアルフォード…という人。
「えっと?アンリがいってたけど、君の名前、アルフォード=マキナーでいいの?」
問いかけるオレに。
「…だからどうして俺の名を……」
「あ。やっぱりそうなんだ。いいよねぇ。アルフォードって勇者っぽい名前だよね。
  でも長くて呼びにくいから、アルね。あ、オレはユーリ。何かいろんな名前があるけどユーリでいいや」
そんなオレの言葉に。
「ユーリィ。いい加減に自分の本名くらいなれなってば。ユリティウスだってば」
「え〜?いいにくいし。それに、物心つく前からずっとユーリって呼ばれてたしさ。
  その本名のほうで呼ばれても、オレのこと呼ばれてるって実感ないし」
事実そうだし。
オレの言葉にアンリが突っ込んでくるので、それに対してさらに返事をしておいて。
「で?何で竜を狙ったの?話してみなよ?話によっては助けられるとおもうしさ?」
にっこりと微笑みかけて問いかけるオレの言葉に。
なぜか、かなり戸惑い、混乱し。
「…嘘だ。魔王とは背徳の化身。諸悪の根源!のはずだろ!?…嘘だ…魔王がこんなだなんて!?」
??
何かかなり戸惑ってるし。
オーラまでかなり乱れている。
何やら戸惑い叫んでいる彼の言葉に。
「こいつのどこが背徳の化身だ。へなちょこ以外の何者でもないぞ?
  術も自由につかえなければ、剣もてんでダメ。自分から厄介ごとに首を突っ込み騒動を巻き起こす。
  こいつには負うとしての自覚があるのかないのか……」
即座に突っ込みをいれてくるヴォルフラム。
「あのねっ!一応は多分…王様としての自覚…おそらくあるかなぁ?とは思ってはいるけど。
  というか、一応はおもってるってば!…自信ないけど」
「ヘナチョコめ」
いや。
そういわれても…オレ、まだこの世界のことよく知らないしさぁ。
何よりも、王様らしいことは何もできていない。
というのは明らかな事実だし…
そんなんで、王としての自覚があるのか、といわれても…胸をはって自信もってます。
とはいえるわけないじゃん?
「ま。話すきがないんだったら剣に聞けばいいって。ユーリ。剣をこっちにむけて」
「?アンリ?」
とりあえず、アンリに言われるままに、アンリのほうに、上向きにしたまま剣を向ける。
「コレ作ったの。元々はユーリの魂を守るために創作してるからね。
  僕やユーリのいうことなら、この剣は望みをかなえるから」
いって剣の柄を握っているオレの手の上に片手を乗せてくるアンリ。

「そういえば…猊下が作られた…とおっしゃってましたけど……
  ですが。たしかその剣は数百年まえ。竜の牙と爪でつくられ。血で鍛えられた一品だ。
  と彼の父のギルバート・マキナーから三十年ばかり前に聞いたことがありますが……」
コンラッドが何やらいってくるけど。
そんなコンラッドの言葉に。
「なっ!?なぜ父の名を!?」
驚いているアルの姿。
「?コンラッド?アルのお父さん、知ってるの?」
オレの問いかけに。
「ええ。昔三十年ばかりほどまえ。人間の国を旅していたときに。
  少なくともギルバート・マキナーは聖剣にふさわしい勇者、といってよかったとおもいますよ?」
にこやかに答えてくるコンラッド。
「ま。せめて剣を通じてでも、人の善悪くらいは見極めないとね。
  というか剣がなくてもそれくらい見極めないと。マキナー家なんだしさぁ。
  アルベルト・マキナーは妹を守るために、この剣を手にしたんだしさ。
  さって…何がどうなってるのかな?」
いいつつも。
「ユーリ。真実が知りたいって強くねがってみて」
「あ。うん」
アンリに言われるままに、とにかく真実が知りたい。
と心から願ってみる。
と。
ぱうっ!!
剣の先から、というか、刀身がひかり。
柄の上の部分にある宝石が輝きをまし、それはやがて、ホログラフのようにとある光景を映し出す。



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