みれば、崖下ではポチのお母さんに女の人が炎を吐かれておわれている。
「魔族め!仲間に手出しはさせないっ!」
などといって、崖を飛び降りて何やらいっているアルの姿。
「何かさぁ。いきなりつっかかってきて、あれはないんじゃ?
  台詞だけならこっちが悪者みたいにきこえるし……」
オレのつぶやきに。
「間違った知識や偏見。それに踊らされている典型的な例だね」
腕をくみつつも、オレの横で言ってくるアンリ。
「う〜ん……。あ、ポチ。大丈夫だからな?」
腕の中では驚いたのか、ポチががたがたと震えている。
そんなポチをなだめつつも、成り行きを見守るオレ。
「陛下。ここにいてください。いいですね?」
オレに一言いい、コンラッドもそのまま、崖をすべりおりてゆく。
そんなコンラッドを見送りつつ。
崖下をみつつ、ポチの頭をなでながら。
「う〜ん。あのアルフォードって人。動きはまだまだだね。ま、聖剣としての力をさっき封じたにしろさ」
そういえば……
「あれって本当にアンリがつくったの?」
まあ、正確にいうならば、前世のアンリが…だろうけど。
「正確にいえば、四千年前につくってたんだけどね。
  四百八十年前にウリちゃんと、ある兄弟とで遺跡にはいって。
  あれをみつけてさ。当時人間世界も戦いが耐えなかったから。
  それを鍛えなおしてお兄さんにと手渡したんだよね。
  確か名前をアルベルト・マキナー。で、それからずっとマキナー家に伝わっているとおもうけど?」
そんなオレの問いかけに、さらり、と肯定の返事をしてくるアンリ。
「…いったいおまえは昔、何やってたんだよ……」
オレのそんな問いかけに。
「暇つぶし。とでもいうのかな?ウリちゃんつれてね。ま、いろいろと」
「――………あ゛。」
そんな会話をしていると、コンラッドがアルフォードの横から、剣の柄を思いっきり体当たりさせ、
何やらみねうち状態にしたのか、アルフォードを気絶させている様子が目にはいる。
えっと……
「とりあえず、僕らもおりるよ?」
「あ。うん」
ふわっ。
アンリが起こした風にのり、とりあえず、コンラッドたちがいる場所にとオレ達もまた下りてゆく。


「陛下。大丈夫ですか?」
アンリと共に、ポチを抱きかかえたまま降りるとコンラッドが心配そうにと聞いてくる。
「オレは大丈夫だけど。あ、それよりこの子のお母さん竜は?」
みれば、どすんっ。
とオレの横にと降りてくるお母さん竜の姿が。
「あ。よかった。怪我とかはない?」
「くわぁぁ〜〜!!」
お母さんを見て安心したのか、母親の顔に飛びついて甘えているポチの姿と。
そしてまた。
そんな子供をみて安心したのか声を出しているお母さん竜。
「密猟者…ですね」
「えぇ?でも違うんじゃない?だって聖剣もってるんだし?」
ギュンターの言葉にオレがいうと。
アンリがアルフォード、という名前らしい青年の手の中から剣をとり。
「やっぱりあの剣だ。ちょっとまってね。剣から記憶を読み取るから」
などと何やらいっている。
??
それと同時に目を閉じているアンリの姿。
いや…記憶を読み取るって……
アンリが目を閉じると同時、何やら剣が光るけど。
そして。
「どうやらこの人。他にいた残りの三人にいいように利用されちゃったみたいでね。
  まだこの力をも使いこなせてないし。
  使いこなせる技量なら、人の善悪くらい判断できるんだろうけどね」
いって、彼の背中にかけてある鞘をはずして、その中にと剣をしまっているアンリだけど。
「それよりさ。ここにいたらあぶないんじゃ?この人の仲間…逃げちゃってるしさ」
そして、にっこり笑ってそんなことをいってくる。
「確かに。いつまでもここにいたら、その子供も母親も危険ですね。どこかに移動させないと」
アンリの言葉にコンラッドがうなづき。
「巣を人間に知られてしまいましたからね。別の場所をみつけてこの竜の母子をかくまわないと。
  まったく、絶滅危惧種のドラゴンを狙うなど。これだから私利私欲に走った人間というのは……」
ギュンターが何やらいってくる。
「いや、それって人間だから…というわけじゃないとおもうけど……」
人間の中にも魔族の中にも、悪い人もいればいい人もいるわけで……
ギュンターの言葉におもわずつっこみをいれ。
「だったら、新しい巣を探しにいかないと。えっと。新しい巣についてこれる?」
オレの問いかけに、こくり、とうなづく小竜と母親竜。
やっぱり言葉は通じてる。
そんな竜の母子の様子をみて。
「…ユーリの言葉はわかるようだな」
感心した声をあげるヴォルフラムに対し。
「ま。ユーリだし」

いとも当然、とでもいうように何やらいっているアンリ。
「それはそうと…この人、どうするの?」
「密猟は大罪です。しかるべき場所にと突き出します。」
オレの素朴な疑問にギュンターが即座に返事を返してくる。
「って!?ええ!?でもさ。悪い人じゃないとおもうよ!?
  それに話を聞いてからでも決めるのは遅くないじゃん!?
  だって昔アンリが聖剣を預けたっていう一族の人らしいしっ!?
  この人のオーラ、すっごく澄んでいて綺麗だしっ!」
「おまえはっ!!命を狙われたばかりだろうがっ!!」
オレの言葉に、なぜかくってかかってくるヴォルフラム。
「でもっ!」
「ま。話は聞いたほうがいいだろうね。この人、勘違い、というか誤解してるみたいだし。
  それを訂正がてらに」
オレたちの会話の横からアンリがそんな口を挟んでくる。
「猊下?それは一体?」
ギュンターが問いかけるものの。
「とにかく。ここから離れようよ」
「あ、うん」
「シーラ!彼を運ぶのを手伝って!!」
ふわっ。
アンリの言葉と共にアルフォード、という人の体は浮き上がる。
……だから、何で大精霊、ってとんでもない存在がそう簡単に手をかしてくれるわけ?
ねぇ?
オレの最もな疑問は何のその。
それをまったく気にすることはなく。
「さ。いこ。ここから離れないと」
そう促してくるアンリに。
「まあ。ここは確かに猊下の言うとおりではありますね。一度ここを離れましょう」
「ですね」
「だな」
コンラッド・ギュンター・ヴォルフラムがまったく同じに賛同しているし。
「ま、まあ。皆がそういうんだったら……。けど。何でこの人オレやこの子のお母さんを狙ったんだろ?」
もう一つのオレの素朴な疑問に。
「陣営ポイントまでいったら、剣で映してみればいいよ」
「??」
意味のわからないことをいうアンリの台詞に、思わず全員が首をかしげる。

ひとまず、オレたちはポチをつれて、新たな彼ら母子竜達の隠れ巣を探して移動することに……



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