「あれ?ここって??」
どうやらオレは、ドラゴンの巣につれてこられてきちゃったらしい。
「へぇ。こうなってるんだ」
どうやら、枯れ木や普通の生枝。
さらには葉っぱなどで中はやわらかめにしてある。
一般的な鳥の巣のちょっとした大型版。
といったところか。
オレがきょろきょろとしていると。
何か目の前の草がもぞもぞとうごき。
「うきゅっ!!」
ちっちゃな水色の赤ちゃんドラゴンが顔をだす。
「あ。かわいい!」
「うきゅ〜!!」
オレの言葉とどうじ、何かオレにととびついてきて顔をペロペロ舐めてくる。
「こらこら。くすぐったいって!」
何かものすっごく人懐っこいぞ?
この赤ちゃんドラゴン?
と。
母親であろうドラゴンも何でか顔をオレの視線に合わせておろしてくる。
というか、何だって、敵意を持っていないらしいのはいいものの。
オレを心から…そう、何といったらいいのか信頼している感じをうけるのやら。
しかも。
どうか子供をみてください。
という気持ちがオーラにもくっきりとこのドラゴンには現れ、感じ取れるし。
……もしかして、このお母さん竜…子供を自慢したかったのかな?
なぜか、母親も子供の喉をごろごろとならしている。
これってやっぱりオレに甘えてきている?
何かばかでっかい猫をあいてにしているかのような錯覚に陥ってしまう。
ドラゴンってオレが魔王だ。
ってわかるのかなぁ??
そんなことを思っていると。
「陛下っ!大丈夫ですか!?」
いって崖をよじのぼってきているコンラッドの姿と。
それに続いて登ってきているヴォルフラム達の巣がたが。
その姿をみて、何か母親ドラゴンが思いっきり威嚇の声を上げている。
「わぁ〜!?仲間だから食べちゃだめだって!!」
あわてて止めるとすぐに大人しくなるお母さん竜。
どうやら言葉は通じるらしい。

「…これは……」
オレのいうことをきくドラゴンをみか、コンラッドが一瞬目を見開き。
そして。
「あなたという人は…不思議なかただ」
などと、ふっと笑みを漏らしていってるし。
「何か大丈夫みたいだよ?傷つけないでやってね」
小竜をかかえて、コンラッドたちにと手をふってくる。
「さすが陛下です!竜まで手なづけてしまうとは!」
「竜にまでいい顔をするのかっ!このうわきものぉ!!」
ギュンターがなぜか感激した声をあげ、ヴォルフラムは意味わからないことをいって叫んでくる。
「きしゃぁぁ!!」
「わ〜!!あれも仲間だって!悪気はないんだよ!」
そんなヴォルフラムの声に威嚇の声を上げるお母さん竜をどうにかなだめると。
すぐに落ち着きを取り戻す。
やっぱり言葉は完全に通じるらしい。
さっすがドラゴン。
これで話せたりでもしたら、それこそ御伽噺や小説や漫画。
完全なRPGの世界なのに。


「大丈夫ですか?お怪我は?」
「ないよ?何かこの母子。人になれてるし」
コンラッドが先にとのぼってきて、オレの安否をたしかめてくる。
「…普通ドラゴンは人にはなつかないんですけどねぇ……」
「そなの?おもいっきりこの子たちなついてるよ?」
苦笑まじりのコンラッドの言葉に思わずきょん、とした声をあげてしまう。
だって、ものすっごくこいつらなついてるしなぁ??
赤ちゃん竜などは、オレが抱いていると、ずっと尻尾をぱたぱたと振ってるし。
「よっし!おまえの名前はポチなっ!」
「ぴぎゃっ!」
「あ…何か喜んでますね……」
オレの言葉にあからさまに喜んでいる小竜のポチ。
どうやら気にいったようだ。
名前決定!
それをみて、目を丸くしつつも、暖かく見守ってきているコンラッド。
と。
「??」
母竜が何やら警戒の色を強くする。
「ユーリ!上!人間がいるよっ!?」
「え?」
アンリの声に振り仰げば。
何やら人が崖の上のほうからとびおりてくる。
「陛下っ!さがって!!」
ばさっ!!
お母さん竜がその場を飛びのき、コンラッドがオレの前に立ちふさがるのと同時。
「でや〜!!」
掛け声とともに、一人の青年が飛び降りてくる。
「うわっ!?何するんだよ!?抜き身の剣なんてもって!危ないじゃないかっ!」
普通剣は使わないときにはしまっておくものだろうに。
オレの叫びにその彼は、こちらを振り向き。
何でか目を丸くして驚き。
そして、次の瞬間。
表情を険しくする。
そしてる
「黒い髪に黒い瞳…双黒…魔王っ!!」
「……は?」
何か殺気立ってない?
えっと??
「ユーリはこっちね。」
「うわっ!?アンリ!?いつの間に!?」
いつのまにかアンリがオレの真後ろにきていってくるんですけど…
いったいいつの間に……
「何!?双黒が二人!?」
何か青年はオレたちのほうをみて驚きの声をあげてるけど。
見た目十六かそのあたり。
オレとあまり変わりなさそうだ。
「陛下っ!さがっていてください!猊下。申し訳ありませんが陛下をよろしくおねがいします」
「了解」
コンラッドもまた、すでに剣を抜き放ち構えているし。
と。
何やら上のほうから赤い光の球がふってくる。
「…へ?何!?」
驚きの声をだすオレに。
「法術だよ。あれ」
「へぇ」
初めてみた。
アンリの説明に思わず感心した声をあげてしまう。

「まさかこんなところで魔王に出会うとは。ちょうどいい!この場で諸悪の根源!魔王を討つ!
  こんなところで合間見えたのもこの聖剣のおみちびきっ!」
いって何やら剣を構えているその青年。
「は??しょあくの根源??」
思わず目を点にするオレに。
「…間違ったイメージ。というか教育の産物だよねぇ。まったく。
  というか。ユーリを傷つけるようなことをしたら、力を奪っちゃうからね」
??
何かアンリの言葉に、青年のもっている剣がぴくり、と震えたように見えたのは…気のせい?
「間違ったイメージ…って。まあ普通魔王っていったら、オレも諸悪の根源。
  とかってイメージするけどさ。それはそうと、アンリ?あれって?」
青年がもっている剣は研ぎ澄まされていて、それでいて何か不思議な感じがする。
飾りも何もないが、とてもシンプルにもかかわらず、不思議な感覚。
「今から大体四百八十年ばかり前に誕生した。俗に一般にいう聖剣だよ」
「聖剣!?あれが!?かっこいぃ〜!!…やっぱりあっちのほうがいいなぁ……」
『うぅぅ〜〜!!』
オレの言葉になぜか腰のモルギフから抗議の声。
「それは魔剣!相手にとって不足はないっ!こいっ!!」
何かそんなことをいってくるし。
「わぁ!?オレに剣なんて使えるわけないじゃん!?ぜんぜんムリ!相手にもならないって!
  というか、剣は危ないからしまおうよぉ?君?」
オレのそんな言葉が聞こえているのか、いないのか。
「この俺では相手にならないだとぉ!?」
何か興奮してるし……
「だからっ!意味がちがうぅぅ!!」
オレの叫びに。
「興奮している人に何をいっても無駄だってば。……とりあえず、能力を閉じてね」

「ぐっ!?」
アンリの言葉と同時。
何やらいきなり剣をもったままよろけるその青年。
どうしたんだろ?
そして。
「へぇ。君。アルフォード・マキナーっていうんだ。その剣の存在意義を汚したりするようなことをしたら……
  それ、この場で問答無用で消し去るよ?それ作ったものとして当然のことだし。」
「――は?」
アンリの言葉に思わず間の抜けた声をだし。
アンリのほうを振り向くけど。
「なぜオレの名前を!?おまえは!?」
あ。
どうやらビンゴらしい。
アンリの言葉に驚愕してる聖剣らしきものをもった青年の姿。
「だから。それ昔僕がつくったんだってば。
  今から大体四百八十年前くらいにさ。あのとき、磨ぎなおして鍛えなおしたんだよねぇ。
  ウリちゃんと一緒に。力の源たる意思が力を失いかけてたから。
  竜神王から一本牙をもらって作り直したんだよ。それ。
  でもって、正しいこと…つまり、聖なる力を宿らしたんだけどさ。
  本来、それはシルを守るために作ったものであって、傷つけるものじゃないし」
にこやかに、何やら説明しているアンリの姿があるけども。
「いや…だから、そのシルって……。ん?…って!?あの聖剣!?アンリがつくったの!?」
思わず剣とアンリを見比べる。
「何を……」
あ、アルフォード…長いからアル、と呼ぶことにして。
アンリの言葉にアルが戸惑っている。
そして、ふと下をみて。
「おまえたちは逃げろ!ここはオレが!!」
……あ、とんだ。
戸惑いつつも、どうやら形勢不利となっている崖下の仲間らしき人たちに向かって呼びかけているし。
……でも、あの三人。
ものすごいどす黒いオーラを発しているんだけど?
このアルは純粋なオーラなのに。
可能性として、あの人たちのこのアルがだまされているか利用されている。
という確立はかなり大。
純粋なオーラもつ人って何かだまされやすいからねぇ……
…オレはオーラをみることができても、信じちゃう口だけどさ……
心から悪い人はいない。
と信じているがゆえに……



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