『あっは~ん。うっふ~ん♡』
「……と、とりあえずだまっててくれる?」
剣の腰ベルト、というか剣を引っ掛けるためのベルトにモルギフをさすと。
モルギフはさっきから何やら声をだしてばかり。
……気がちってしょうがない……
出発の用意ができて、馬のにってもまだうれしいのかずっと騒いでいるままだし……
「それでは。陛下。猊下。いきますよ?」
『あっはん!』
「おまえがいうなぁぁ!!」
返事をしているモルギフに思わず突っ込み。
「いいじゃん。ユーリ。モルギフと漫才できてさ」
「……あのね……」
ギュンターの掛け声にモルギフが返事をするのでつっこむと、アンリがそんなことをいってくるし。
どこの世界に剣と漫才する人間がいるというのやら。
いやまてよ?
テイルズのデスティニーのソーディアンならば、マスターとなってたかも……
う~ん……
でも、あれはゲームだしなぁ…ナムコの……
一人、心でいろいろと突っ込みをしつつ。
オレとアンリはともかく。
ギュンター・コンラッド・ヴォルフラム。
そして数名の兵士たちをつれて、オレたちはドラゴン…
すなわち、ドラゴンが生息している、という山にとむけて出発してゆく。
血盟城から大体、馬で数時間もかからないらしい。
さあ!まってろよっ!
ドラゴン!
どんなドラゴンなのか今からわくわくしてしまう。
それに何かハイキングみたいで気分転換にもなるし。
いや、ピクニック…といったほうがいいかな?
オレとしては、個人で出かけたほうが気が楽なのだけど。
ギュンターが兵の護衛が必要だ!
と押し切り、しかたなく兵士たちと共にと竜が生息している、という地域にと向かう。
別に護衛なんて必要ないとおもうけどなぁ?
だって、ただドラゴンにあいにいくだけなんだし…さ。


馬を進めること数時間。
「陛下。ここが竜の生息している地区の最後の村です。
  これよりは山道を進むことになります。兵たちの護衛もここまでです」
ギュンターが説明してくるけど。
山のふもとにある小さな村。
どうやらここからは歩きらしい。
ちなみに、なぜか村の人々はオレをみて拝んでいたりする人の姿もみえてるけど……
も…もしもし?
「竜は神経質な動物だからなぇ。ま、僕やユーリには危害を加えるはずもないけど」
「?アンリ?」
「今は子育ての時期で気が高ぶっていますからね。猊下もお気をつけください」
首をかしげて問いかけるオレに。
そんなアンリに何やらいっているギュンター。
「ドラゴンは気づくとおもうしねぇ」
「…?だから何を?」
「僕とユーリが、『誰』なのか…をね」
いってかるくウィンク一つしてくるアンリ。
『誰』って…どういう意味だろう?
とりあえず、目指す竜はこの村の奥にと見えている山の、またまたさらに奥にといるらしい。
……アンリがしぶったわけが、わかった気がしなくもない……
ひとまず。
兵士たちには村で待機してもらい、村人達に何やら騒がしてしまったようなので謝るとなぜか大感激され、
ヴォルフラムやギュンターには怒られつつ。
オレを含め。
オレとアンリとコンラッド。
そしてギュンターとヴォルフラム。
この六人で山の中にと入ってゆくことに。


「そういえば。あの今の村。元々兵士たちが多かったようだけど?」
山道にとつづく道なき道をすすみつつ、問いかけるオレに。
「あの村が唯一。この谷に近いですからね。竜の保護をするための拠点ともなっているわけです。
 常に見回りとかもしないと、密猟者も後をたちませんからね」
そう説明してくるギュンターに。
「だったらさ。邪な考えをもつものが入れないように幻術か何かをかければいいのに。入り口付近一帯にさ」
さらっと何やら言っているアンリに対し。
「そんな大掛かりなこと、我々にはできませんってば。猊下。出来ても一角くらいなものですよ」
苦笑しつつ答えているコンラッド。
「それにこの山は地元民にとってはなくてはならない生活の場でもありますしね」
笑いつつ、付け加えるようにといっているけど。
「山の自然に協力してもらえば早いとおもうけどねぇ。
  いちいち罠とか仕掛けなくてもさ。それか二重の構えでいくか」
??
「罠?自然に協力してもらう?何それ?」
何かアンリたちは意味不明な会話で盛り上がってるし……
「あ。陛下。とまってください」
そんな会話をしていると、やがて草の道なき道がおわり目の前には山の木々が。
どうやら、山にと入る入り口らしい。
ここまできたんだし。
と一歩すすもうとすれオレを後ろから肩をつかんで止めてくるコンラッド。
「何?どうしたの?コンラッド?」
問いかけるオレに。
「ここには侵入者用の罠が仕掛けてあります」
にっこりとそういってくるし。
「へ?」
オレの目には、ただの木々や草が生えている場所にしかみえないけど?
「とりあえず。こ~いうの。
いって、なぜかアンリが手を前に突き出すと。
どこか近くに転がっていたであろう木の枝が、ふっとアンリの手元に出現し。
それを軽く放り投げているアンリ。
と。
ガササッ!!
どごっ!
びゅっん!!

『―――・・・・・・・・・』
思わず一瞬、オレたちの目は点と成り果てる。
「は…はでじゃないか?ギュンター?これはちょっとやりすぎじゃあ……」
思わず唖然とするヴォルフラムに、ギュンターをみて言っているコンラッド。
みれば、アンリの投げた木の枝は、草の中から出てきた網にとからめとられ。
さりには、その周囲をぜか丸太が蔓らしきものにつるされて飛び交い。
ついでにいえば、何か矢らしきもの、と思われるものもとびかっているし。
え…えっと……
目をパチクリさせつつも。
「たしかに派手だな」
それをみて何やらつぶやいているヴォルフラム。
「いいえ。竜は貴重な保護動物。密猟しようとしているものにはこれくらいの罠は当然です。
  特に竜の生息地の入り口付近の罠は警告の意味をもこめて派手にしております」
きっぱり、はっきりと言い切っているギュンター。
「え?罠があったらオレたちもはいれないんじゃぁ……」
戸惑うオレの言葉に。
「罠の位置はすべて把握してあります。避けて通れば何の問題もありませんよ」
にっこりと笑っていってくるコンラッド。
「ユーリはついでに。自然の色の不自然さを見分ける方法にもなれていこう♪
  せっかくだしね。作り物の自然と本来の自然。
  それらが発しているオーラの色が違うの、君なら見分けられるはずだしね」
「うぇっ!?こんな所でも力の特訓!?」
アンリの言葉に思わず叫ぶけど。
「何ごとも特訓あるのみってね。それに何か目標をかかげて進んだほうが。
  竜に会えたときの気持ちというか、達成感も違うだろうし」
しれっと言ってくるアンリだけど。
「気持ちがさらに盛り上がる。ということすか。猊下」
「そ」
コンラッドとアンリの言葉に。
「というか…もう盛り下がってきてます……」
オーラの…しかも、自然の細かな違いを見つけるのって……
かなり神経使うんだよなぁ~……
やろうと思えばできるけど……さ。
「これよりもさらに思考を練った罠がたくさんあります。
  ぜひ陛下には見ていただきたかったのですが…残念です」
「あはは…オレも残念だよ…ギュンター……」
乾いた笑いをあげるしかない。
…どうやら、ここの罠って…ギュンターが監修してるのね……
とりあえず。
オレたちは罠をさけてすすんでゆくことに。
サバイバルオリエンテーリング。
と自分に言い聞かせ、回りの様子や違いに注意をしつつ。
さらにさらに、奥にと進んでいくことに。
だって、ここまできたら。
竜を見ないでもどるなんて。
そんなの正義じゃないっ!
と自分自身に言い聞かせつつ……



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