「「「竜ぅぅ〜〜!?」」」
部屋になぜか、ヴォルフラム・アンリ・ギュンターの声が響き渡る。
こちらの世界にオレの誕生日に改めてやってきてそろそろ二ヶ月目に突入中。
前回、こちらの世界にお呼ばれがあってからのこちらの時間率でいくと。
そろそろ四・五ヶ月も経過している。
は…はやい……
う〜ん。
毎日いろいろと何だかんだと追われていたら、月日が立つのが早い、早い。
兵士たちの剣の稽古をみつつ、ヴォルフラムに例のごとくに絵のモデルにさせられていて。
あまりの強烈な匂いに思わずダウン。
先日のクマハチのことを思い出し。
さすが天然記念物にもなっている絶滅危惧種。
などと思いつつ、ふとした会話の最中。
異世界といったらこれ!
という肝心なものを見ていないことを思い出し。
一度でいいから、この目で実際に見てみたい。
というのもあり、執務室にとおしかけたオレと、オレについてきているヴォルフラム。
コンラッドは兵士たちの剣の稽古がおわってから、再びオレの警護にまたついているけど。
「…ユーリ?それ本気でいってる?」
ギュンターやグウェンダルと何やら話しをしていたらしいアンリが聞いてくるけど。
アンリの膨大な知識は、この国をよくしていくのに只今活用中。
それゆえに、よくアンリは彼らとこうして話し合っていたりするんだけど。
とりあえず、椅子にすわったまま、なぜかあきれた視線と口調でいってくるアンリに対し。
「当然っ!だって異世界で剣と魔法の世界。っていったら竜じゃん!?
  オレ一度でいいから、ドラゴンってみてみたかったんだよなぁ」
せっかく、異世界にいるのだから、見ておいて損はない。
「またこいつは……何を言い出すのかと思ったら……」
横ではヴォルフラムが腕組しつつ、あきれたため息とともに何やらいってくる。
「ねぇ。確か眞魔国では竜を保護してるんでしょ!?だったら見ることもできるよね!?」
オレの言葉に。
「ドラゴンはこの国の山奥にしか今は生息してないよ?
  昔人間達の乱獲があって、絶滅しかけちゃったからね。四千年前はたくさんいたけどね」
アンリがお茶をのみつつ、オレの言葉に答えてくる。
こほんっ。
そんな会話をしていると、オレの後ろから咳払いが。
「あ。グウェンダル。お邪魔してます」
ここって、血盟城の中にある、グウェンダルの執務室、その二だし。
そんなオレの言葉に顔をあげ。
「これは本来。おまえの仕事なのだがな?」
むっつりしたままいってくる。
「あ…あはは……。オレまだ字がきちんと読めないし。それにグウェンダルがやったほうが確実だし」
オレの言葉に。
「このへなちょこ」
ため息まじりにいってくるヴォルフラム。
「ま。ユーリはまだ勉強中だしねえ」
アンリがいい。
「そうそう。まあいいじゃないか。グウェンダル。陛下はまだこちらのことをよくご存知ではない。
  何しろまだまだ勉強中の身だしね。
  ゆっくりと時間はあるんだから少しづつできるようになっていけばいい」
即位して、もうすぐあと何か月かでこちらでは一年たつらしい。
……は、早い……
オレは不在時期のほうが長いので、一概にこちらですごしている時間は定かではないけど。
周囲がしっかりしているのでどうにかなっているのも、また事実。
そんなコンラッドの言葉に。
「新しい魔王が本気でこの国のことを知りたい。と思っているのならばな」
いってため息をついているグウェンダル。
「一応。向上心はあるつもりだよ?でもさ。竜ってこの国が保護してるんでしょ!?
  だったら、保護動物のことを知るのも立派な王としての勤めだとおもうんだよ!?ねぇ!?だめ!?」
オレの言葉に。
「陛下や猊下のお育ちになったところにはドラゴンはいなかったんですか?」
などと聞いてくるギュンター。
「自然界にはいるけど。人間の目に見える形では物質化なんて。
  滅多なことはしないからね。地球の竜は水が意思をもった生命体だし。
  いっても、それなりの力がある人にしかわからないからねぇ。
  一般的には空想上の存在、とされているよ。ドラゴンは地球では」
アンリがそんなギュンターの言葉に答えているけど。
「いるの!?でもオレみたことないよ?」
アンリの説明に思わずびっくり。
「透明な何か。は。たまに空とかに見てたでしょ?」
「?あれって雲でしょ?」
「…やっぱり気づいてなかったか……」
??
何かオレの言葉に、ため息をついているアンリだけど。
変なの。
そんなアンリとオレの会話に。
「そうでしたか。…判りました。
  陛下がそこまでおっしゃるのなら。さっそく竜の谷に向かう準備をいたしましょう」
「やったぁぁ〜〜!!!」
ギュンターの言葉に思わず飛び上がる。
「あそこにいくの!?…気が進まないけどなぁ…。でも今のユーリから目を離したら危険だしなぁ〜……
  封印弱くなっているからすぐに魔王の力なら発動しちゃうしさ……」

アンリが何やらため息まじりに意味不明なことをつぶやいているけど。
…危険って…何が?
「当然。僕もいくからな。おまえは目を離したら何をしでかすかわからないへなちょこだからなっ!」
立ち上がって席をたち、部屋の外に出てゆくギュンターの後ろをついていくオレに、
ヴォルフラムがかけよりながら言ってくる。
「何とでもいえ!ドラゴンだぞ!?ドラゴンにあえるんだぞ!?」
生きたドラゴンを見れるなんて。
現代高校生にとっては、夢のまた夢だ。
その夢がもはや実現しようとは。

「…やれやれ。やっと静かになった。…これでゆっくりと仕事ができる」
「ご苦労様」
部屋を出るときに、そんな長男と次男の会話が聞こえてくるけど。

そして。
「う〜……。僕飛んでいこうかなぁ?山登り…苦手なんだよなぁ〜……」
ぶつぶついいながらも、オレの後ろからついてきているアンリの姿。
「いいじゃん。ハイキングだとおもえば」
オレの言葉に。
「…のんびりしたこといえるの。今のうちだけだよ?ユーリ?君は竜の渓谷のことを知らないから…さ」
ふっ。
何かどこか遠い目をしていっているアンリ。

とりあえず、竜がすんでいる。
という山に行くのは何かそれなりの装備。
つまりは武装しないといけないとか……
今ではあまりいないものの、ドラゴンの密漁目的に入ってくる人間達も結構いるらしい。
そのためにドラゴンが生息している山には罠がしっかりしかけられているとか何とか……

ひとまず。
宝物庫にて、竜の渓谷にいく準備をすることに。

「ユーリはこれね」
「え〜?モルギフで?」
ぱしっ。
とモルギフを手渡され、思わず叫ぶ。
と。
『う〜……』
何やらモルギフからは抗議の声が。
「モルギフだってずっと宝物庫にいたんじゃ、気がめいるって。
  それに、それを抜くことができるの、ユーリだけだし」
にこやかにいってくるアンリに。
「けどさ?今はこいつは何の力もないんだぜ?」
今は力の源でもある魔石がないから、このモルギフはただの剣とかわりがない。
ただちょっと意思があって顔がある…というくらいしか。
それでも大変なことだけど。
「別にそれでもいいよ。というか。もし使うようなことになったら。
  モルギフがユーリをひっぱってどうにかしてくれるし。
  それに、ユーリが万が一、魔王の力を発動でもさせちゃったら。
  それこそ他の剣とかなんてその力に耐えられなくてもたずに消滅しちゃうからねぇ〜……」
「いや、魔王の力って……」
アンリの言葉に思わずつっこみ。
「君の力に耐えられるのは、限りがある品だけってことだよ。
  昔の君のロッドとか、あとはそうだなぁ。約五百年ばかり前に僕がちょっと作っちゃった剣とかかな?」
「「…ちょっと作った…って……」」
思わずアンリの言葉に突っ込みをいれるオレとヴォルフラム。
「ウリちゃんの身代わりに式神おいて、ウリちゃんと昔。眞王廟を抜け出してたときにさ。
  まあ、あのときにはまだ先代の賜詞巫女がいたから。まだウリちゃんが小さかったから。
  まあ、それはそれとして。とりあえず、そのとき、何か成り行きで剣を作るハメになっちゃってねぇ」
「……な、何か聞かないほうがいいような気がするからいいや」
すでに、ウルリーケと抜け出した。
というアンリの言葉を聞いたその時点で、ギュンターなどは固まってるし……
う〜ん……
アンリのやつ、昔何をやっていたんだか……
何かしでかしたときのアンリの目はいたずらっぽく笑っているので、気づかずに話しを聞いたら。
後々後悔することが多いい。
というのは、オレは長い付き合いであるがゆえに知っている。
「で。でもさ。力に耐えられないって……」
とりあえず無難な話題に話を変える。
「普通の金属などで作られているモノなら普段はいいけど。ユーリの場合はちょっとね……」
そんなオレの問いかけに、よくわからない返事をしてくるアンリだし。
「…よくわかんないけど。しかたない。…モルギフもってくよ……」
何しろ、オレがおいていこうとしたら、モルギフ…泣くし……
普通剣がなくか!?
おいっ!?
「では。モルギフにふさわしい剣のベルトを用意いたしましょう」
硬直が解けたギュンターが。
アンリの先ほどの『何か』は聞かなかったことにしたらしく。
何やらごそごそと宝物庫の奥のほうの荷物をさぐっているけど。
「?ベルトはあるよ?」
「いえ。やはりモルギフには由緒あるベルトを」
『あはん』
そんなギュンターの言葉に、目に見えてモルギフが喜んで何やら声をだしてるし……
こ…この剣って一体……



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