プロローグ:

「すっごぉぃ!僕もお父さんみたいになれるかな!!」
いつも、父の昔の武勇伝をきくと、心が躍る。
自分もいつか、父のように。
いつか、きっと勇者になるためにと旅にでる。
そう、物心ついたころから決めていた。
「それはアルフォード次第だな」
「僕絶対に勇者になるっ!」
「アルォード。勇者とは、心が強きものの象徴だ。力に頼ってばかりではなく心もつよくなければ」

「心?」
「そう。真実を間違いなく見極める心の強さ。それも必要だ。周囲がいうことだけが真実ではない。
  真実は自分の目で、耳で。見聞きしてきちんと判断する。それが新の勇者というものだよ」
ときどき、父はわからないことをいってくる。
回りがいっていることが真実とは限らない。
それっていったいどういうこと?
父は、昔たった一人で町を襲ったドラゴンを倒した自慢の父であり、そして勇者。
自分の家には代々勇者に伝わっている、という聖剣があり。
そしてまた、先祖には、伝説となっている兄妹も存在する。
だからこそ。
家名に、そして父に、先祖にも恥ないような立派な勇者に将来なる。
それが、彼の物心ついて、大きくなってからの目標。
「真実?真実は一つでしょ?」
父がドラゴンを倒して、勇者、と呼ばれているのもまた真実。
「そうでもないよ。アルフォード。世間はひろいんだ。それに。
  人によって何か真実なのかは…人それぞれことなるんだよ。
  実際、私とてドラゴンを倒した勇者、といわれているが…あれとて。
  原因をつくったのは人間だ。というのを忘れてはいけないよ?」
「僕にはよくわんない」
だって、町を襲ったのはドラゴンじゃないの?
それを父はたった一人で若いころに倒した。
それがとても誇らしい。
「まあ、まだアルフォードには難しかったかな?ま、おまえも大きくなればきっとわかる。
  いや、マキナー家に生まれたものは、きっとそれを見極める……」
「僕も早く大きくなってお父さんみたいに修行のたびにでるんだ!!」
そして。
回りの大人たちがいっている、諸悪の根源とかいう魔族や魔王を倒してこの世界を平和にするっ!

アルフォード=マキナー。
五歳のとき。
父との会話で心にきめた…事柄。
だが…それ自体が。
回りの言葉に踊らされている…ということを、まだ幼い彼は知る由も…ない。
彼の父のいいたいことは、まさにそのこと。
彼は…魔族が人間達が噂しているような存在ではない。
と知っているがゆえに…
だが…それは。
息子に話すべきではなく。
息子が自分の目で、耳で…そして体で感じなければならないこと。
聖剣を受け継ぐにふさわしくなるために……



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