「しっかし…ずいぶんと痛んでるなぁ……」
「そもそも。この城は生きているからね。しばらく誰もはいらなかったりしたらこうなるよ」
「ここに怪物が住み着いた。というのはもう数年前だからな」
そんな会話をするオレとアンリとヴォルフラムの目の前には、なぜか埃まみれの建物の内部。

オレの部屋になぜか住み着いてしまっているヴォルフラム。
そんな彼が強烈な匂いを放つ絵の具でオレの肖像画を描く。
と言い出したのがコトの始まり。
ものすっごく匂うし……
油絵よりもかなりきついぞ?
……あれは……
それで、何でヴォルフラムがオレの部屋に住んでいるんだ!?
と文句をいったら、ヴォルフラムが気に入るような部屋がない。
とのこと。
でもって、あいているのは、今オレたちがいるここ迎賓館棟のみ、というわけらしいのだが。
ヴォルフラムがいうには、その迎賓館には数年前から怪物が住み着いているとかでずっと閉鎖されている。
とのこと。
噂では、人や魔を食べる怪物。
と聞いているらしいけど。
アンリ曰く、そういう生物は絶対にこの城の中には入れない。
とのこと。
ならば、真相をさぐって、出来たらその怪物を追い出せば、
ヴォルフラムもオレの部屋からでていき、そして迎賓棟に住むだろう。
という考えのもと。
そして、又アンリは、その怪物の正体が気になるから。
という理由で、怪物退治にと乗り出しているオレとアンリとヴォルフラムの三人。
ヴォルフラムはオレたち二人だけだと何をしでかすかわからない。
とかいってついてきたのだけど。
見張りの兵士は何なくアンリがだまくらかして、というか何か術をかけたらしく。
オレたちは気づかれることなく、そのまま館の鍵をあけて、建物の中へと……

さすがに迎賓館。
よそ様から迎える客人をもてなす建物だけあって、かなり広い。
…今の今までこういう建物が血盟城の敷地内部にある。
というのはオレは気づいてなかったけど。
何しろ、この血盟城……広すぎるもんなぁ……
多分、城の中を探検していたら、道に迷って餓死するんじゃないか?
というくらいにさ……
「い…生きてるって……何かそれよくきくけど…さ」
アンリが何かよくそんなことを始めのころからいってるし。
「それより。どうやら部屋には何もないみたいだよ?生物がいるのは地下だって」
アンリが壁に手をあてて、そんなことをいってくる。
「…地下って……」
「気をつけろ。ここは古いからな」
オレのつぶやきに、ヴォルフラムが忠告してくる。
「う。うん」
いって、一歩、さらにロビーホールに足を踏み出したその刹那。
ばぎっ!!
「うわっ!?」
「「ユーリ!?」」
オレの叫びとアンリとヴォルフラムの声が重なる。
オレの足元の床が、思いっきり崩れ、オレの体はまっさかさまにとおちてゆく。
「ユーリッ!」
「あ。フォンビーレフェルト卿。走ったら……」
バキバキキッ!!
「うわぁ〜!?」
「…あらま。いわないこっちゃない……」
オレの頭上でそんな会話が聞こえてくるけど。
どうやらヴォルフラムまでもがハシって床を踏み抜いてしまったらしい……


「って…うわっ!?」
ポヨン…ポヨン…
そのまま、地下にと激突する…とおもいきや。
何やら下にクッションのようなものが。
??
何だろう?
「お〜い?ユーリ?フォンビーレフェルト卿。大丈夫〜?」
見上げれば、アンリがのんびりと、身を乗り出してそんなことをいってきているし。
「あ。うん。何か下にクッションのような……って!?巨大なカブトムシの幼虫!?」
ふとみれば。
クッション。
と思ったものは、なぜか、かなりでっかいどうみても、カブト虫やクワガタ虫。
そしてカナブンなど・・・ といった、どうみても、それらの幼虫もどき。
色的にもカブトやクワガタ、といったものにとよく似ている。
「…こ、こいつが化け物の正体?」
いって、ヴォルフラムが何か体制を整えて剣にと手をかけているけど。
「わぁ〜!まてって!ヴォルフラム!……って、うわっ!?」
何かこいつたち……オレたちに危害を加えようとしているどころか。
逆にオレたちにと気づいて喜びのオーラを出してるし。
そのまま。
うぞぞっ!
と数十匹はいるであろう、巨大幼虫たちは、オレとヴォルフラムにともぞもぞと近づいてくる。


「ありゃま。…あれって……。とりあえず、足場、というか地下以外元通りにしてから僕も降りるね〜」
上のほうからアンリが何やらいってきているけど。
オレたちとしては、それどころではない。
「くすぐったいってば!」
「うわっ!すいついたっ!」
何か幼虫たちは、オレたちにと擦り寄ってきたり、挙句は吸い付いてきていたりしているし。
ちなみに、オーラは甘えた感じのモノを出している。
「何で甘えてるの!?こいつ達!?」
オレの叫びに。
「これが甘えている、っていうのか!?」
「だって、こいつらのオーラの色がそうだもんっ!」
下手したら窒息しかねないぞ…これ……
と。
とりあえず、擦り寄ってくる幼虫を何とかしようと、とりあえずなでてやる。
と。
「きゅ〜!!」
何か鳴いてさらに擦り寄ってくる幼虫たち。
「……お〜い。ヴォルフラム。こいつら何か甘えてきてるのと、かまってほしいみたいだぞ?
  …とりあえず、窒息しないためにもなでてやったら、何かおちついてるぞ?この幼虫たち」
オレが顔をさすれば、かなり大人しくなっている幼虫たちの姿があるし。
そんなオレの言葉に。
「…本当か?」
恐る恐るヴォルフラムもまた、幼虫にとふれてなでると。
「ほら。やっぱり大人しくなってる」
何でか幼虫たちは、なでてやると甘えた声をだしつつも、大人しくなってゆく。
そんな動作をしていると。
何か上のほうで、ぽわっと光が一瞬光ったかと思うと。
直後後に。
ふわり。
とアンリがオレたちが踏み抜いてしまった穴から降りてくる。
そして、空中でとまったままで。
「あ!すごい!これってクマハチの子供じゃない!?そっかぁ。こいつらがいたのかぁ。
  …って、あれ?オヤは?」
何か周囲を見渡してアンリがそんなことをいってくる。
そんなアンリの言葉に。
「なっ!?猊下!?それは本当ですか!?これがあのクマハチの子供!?」
何か驚いたようにアンリを見上げていっているヴォルフラム。
「……?クマハチ…って…何?」
オレの言葉に。
「確か今では絶滅した。ともいわれてる。絶滅危惧種の何か愛らしいハチのことだよ。
  あ。わかった。その子供たち、ユーリたちのことを両親と勘違いしてるんだ」
何やら、オレたちに甘えてきている幼虫をみつつ、ぽん、と手を叩いていっているアンリ。
『は!?』
思わずオレとヴォルフラムが同時に間の抜けた声をだすけど。
「幼虫のとき。この種族は目が悪いからね。においとかで判断するのが特徴なんだよ。
  あとは独自の超音波で相手の形に認識してね。
  ほら。フォンビーレフェルト卿が使っているあのものすっごい匂いのあるあの絵の具。
  あれって大人のクマハチの糞から取れる鉱物に似た物質から出来ている最高級品だし。
  二人から、その大人のクマハチの糞の匂いがしてるんだとおもうよ?
  さっきまで、フォンビーレフェルト卿。ユーリの部屋で絵をかいてたでしょ?」
とにかく、窒息するのを防ぐため、片っ端から幼虫たちをなでているオレとヴォルフラム。
何か甘えてこようとしているらしい、擦り寄ってくる幼虫たちをなだめつつ、
オレたちは、アンリの説明を聞いてるけど。
「あの強烈な匂いの元…が?これの大人の糞から?」
戸惑うオレの言葉に。
「クマハチは子供の面倒をよくみるからねぇ。両親がもどってきてから促されて繭になって成長するし。
  でもここにはその大人の姿がみえないね。ということは死んだんじゃないのかな?
  その子たちの親。というか両親」
アンリの言葉に。
「なるほど。もし猊下の言うとおりならば。
  ここにクマハチが産卵したのを知って立ち入り禁止にしたのかもしれないな。
  クマハチはかなり友好的で、しかもその外見のかわいさから、
  コレンターなどといったよからぬものも多々といる。
  怪物、ということにしておけば、誰も立ち入ることはしないだろうしな」
一人、何やら納得しているヴォルフラムだし………
「…いやあの?だからクマハチって……」
戸惑いの声を上げるオレとは対象的に。
さすったり、なでたりしてやっていた幼虫が、一匹。
また一匹と離れて域、何かいきなりその口から白い糸を吐き出している。
「うわっ!?」
それをみて、驚きの声を上げるヴォルフラムに。
「「……モスラ?」」
なぜか異口同音でオレとアンリの声が重なる。
そういえばこれ…色違いではあるけど…大きさからいったらモスラの幼虫に似てるかも……
あれより数回り以上は小さいだろうけど。
オレもアンリも、実は成長モスラよりもイモムシモスラのほうがすきだったりする。
だって、何か一生懸命でかわいいし。
「ユーリッ!」
ふわっ。
アンリがオレを呼ぶのと同時。
何かアンリが纏っているシャボンダマのような丸い風の球。
というか空気の球の中にオレは包まれ、そして浮かび上がり移動する。
どうやらアンリが何かしたらしい……
「猊下!?僕は…って…うわぁぁ〜〜!!??」
……あ゛。
ヴォルフラムは幼虫たちの吐き出す糸に巻き込まれて……一緒くたに糸を吐きかけられてる……
上からみたら、何か本当にモスラの幼虫の糸吐きみたいだ。



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