エピローグ:
「お兄様ったら……。あれでわたくしをごまかせたとでもおもっているのかしら?」 でもよかった。 あの調子だと、お兄様…昔のお兄様に近づいてるみたいで。 いつのころからか。 そう、たしか…… わたくしがコンラートの父親と結婚したころから。 お兄様は彼の身元を確認する。 とかいって旅にでていったあのときから…… あのころから、どんどんとお兄様の様子がおかしくなったのは。 わたくし、気づいてはいたけど…どうにもならなくて…… いきなりの前王の出奔。 そして、めぐってきた信じられない王位の座… わたくしには王位なんてものは務まらない。 そう、わたくしには自信がなかった。 だからこそ。 お兄様にまかせたの。 それが今ではいいことだった…とは思えないけど。 結果として。 わたくしは大勢の人たちを死においやってしまった。 わたくしは、王位などよりも、わたくしを愛してくれる人がほしかった。 温かな家庭がほしかった…… ただ…それだけ。 お父様もお母様も、早くに死んだわたくしにとってはお兄様だけがたった一人の家族で。 幼いころから家に仕えてくれていたレイヴンが、唯一の心の慰めでもあったの。 それはきっとお兄様もおなじこと。 だからこそ。 わたくしが王位に選ばれたあの日。 レイヴンにお兄様のことを頼んだの。 レイヴンは…あの日の約束どおり。 お兄様がどんな境遇になっても、きっとお兄様のそばにいてくれる。 それを確かめたくて…… でも、本当は。 彼にそばにいてほしかったのは…もしかしたらわたくしだったのかもしれなくてよ? ……わたくしは、愛の狩人。 そう。 自分でそういって、真実の愛をずっと探してる。 でも、私が好きになった人たちはみな…私をおいて先にいってしまう。 グウェンの父親にしろ、コンラートの父親にしろ…… そして…ヴォルフラムの父親でさえも…… わたくしは、ただ。 温かな家族が一緒に暮らせる。 そんな家族を家庭を夢見ているだけなのに……
あきらめなくてよ。 真実の愛を再びこの手にするまでは。 だから…ね? レイヴン? お兄様をよろしくね? お兄様もいつかは、きっと…真実の相手を見つけられる、その時まで…… お兄さまったら、ずっと独身なんですもの。 わたくしのほうが心配してしまうくらいに。 願わくば…… お兄さまに、幸せが訪れませんことを…眞王陛下……
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