「グウェン?今まで砂熊といっしょに?」
問いかけるコンラッドの声に。
「うむ。彼は善良な砂熊だ。それに近くでみると中々愛らしいものでな」
そんなことをいってくるグウェンダルだし。
「…ま、そりゃ、確かに。パンダはかわいいけど…さ」
「外見はあれ、地球のパンダと同じでも。肉食と草食っていう差があるけどね。砂熊とパンダは」
グウェンダルの言葉に思わず突っ込むオレに、アンリがさらに突っ込みをいれてくる。
みれば、ケイジのあけた穴は何やら明るい部屋にとつながっている。
みれば、そこには勢いを止めてうずくまっているケイジと。
何か光っている岩の塊を見上げている人物が一人。
その人物はオレたちをみて。
「陛下」
虚をつかれたようにといってくる。

「へぇ。めずらしいね。ここまで夜光虫がいるのも。どうやら繁殖はいまだにしていたみたいだねぇ」
壁というか、岩にと手をやり、そんなことを言っているアンリ。
とりあえず、ケイジがあけた穴からその部屋の中にとオレたちは入っているのだけども。
「昔。この虫を灯りがわりに、この地下道に配置したのってエドだしねぇ」
「へぇ。何かホタルみたい。もしくは飛行石」
「ユーリ。それはラピュタだって」
オレたちの周りでは、とても幻想的な光景がひろがっている。
青白くほのかに光る灯し火が、部屋全体をライトアップさせている。
実際は火でなくて、ただよう虫の灯りによってライトアップされているようだが。
しかも、岩の中にもその虫はいるらしく、岩の中からもその灯りは見えている。
ホタルの幼虫が川や土の中でも光っている、のと同じような原理なのかもしれない。
「レイヴン…ん?ツェリはどうした?」
「あ。そ〜いえば」
みれば、一緒にいる、とアンリがいっていたはずのツェリ様がいない。
シュトッフェルの問いかけに、ふっと笑い。
「安心してください。地上への道は知っています。ツェリ様は今ごろは旅の空ではないでしょうか?」
『……は!?』
思わず、オレたちの声が重なるのは仕方ないとおもう。
「旅…って……」
「何でも自由恋愛旅行を再開するとか」
がくっ。
シュトッフェルの問いかけに、答えるレイヴンの言葉に、思わずまたまた脱力。
「…おまえとの再婚はどうしたんだ?」
「またいつもの気まぐれを起こされたようです」
その返事にその場にと崩れ落ちているシュトッフェル。
そしてまた、レイヴンの言葉に、アンドのため息をついているコンラッドとグウェンダル。
ため息をつきつつも、グウェンダルは胸の前で手をくみ。
「ま、まあ母上らしい…というか……。しかし、なかなかにこの砂熊もかしこい。
  我が城でもぜひ砂熊の飼育を提案しよう」
などといってるし。
「…いや。それはちょっと……」
あ、コンラッドが珍しくグウェンダルの言葉に戸惑ってる。
「ツェリ様らしい…というか…何というか……ま、まあ。よかったよ。うん。でも、ケイジ、かしこいね?」
そんなオレのつぶやきに。
「まあ、砂熊の知能指数は高いから」
「そうなの?」
「うん」
「へぇ」
アンリの言葉に思わず納得。
「ツェリさんは再婚うんぬんよりも、確かめにきたんだとおもうけどね」
アンリのつぶやきに。

?マークが頭の中をかけめぐる。
つまりそれって……
「たしかめに…って、母上が?」
「……なるほど。ああみえて。耳ざといのは確かではあるな」
アンリの言葉に、何やら二人してしみじみと納得している兄と弟。
いや、だから。
オレにも判るように説明してくれってば……
もしかしたら、このレイヴンって人がシュトッフェルが地位を失っても一緒についていてくれるか。
それを確かめにきたのかな?
ツェリ様は?
ツェリ様にとっては、このシュトッフェルはたった一人のお兄さんだし。
過去にどんなに過ちを犯している人だとしても。
ま、オレも罪は生きて償うのに賛成派だから、その辺りは何もいえないけど。
そんな会話をしていると。
ドゴッン!!!
何やら再び振動が大地を揺るがす。
「うわっ!?もしかしてまた砂熊!?」
そんなオレの言葉に。
「いや。そうでなくて。ほら」
アンリの指差すほうをみてみれば、光っている岩の下の一角から、もくもくと煙があがり。
そして、煙の中から、岩にと穴があいているのがみてとれる。
そして、その穴の中に見えるは三人の人影。
「あれは……」
オレがつぶやくよりも早く。
「陛下っ!!」
「うわっ!?」
なぜか、その手につるはしをもっていたギュンターがそれを放り出してオレに向かって走ってくるし。
思わず硬直してしまうオレをそのまま抱きしめるギュンター。
「あ!こら!頬をすりよせるなぁぁ!はなれろっ!!」
そんなギュンターをオレから引き剥がそうとしているヴォルフラムの姿。
一方では。
ケイジがギュンターたちと共にやってきたらしい、ライアンにと抱かれて滝のように涙を流している。
「よ〜しよ〜し。おまえを丸焼きになんかさせないからな」
とかライアンはケイジにいってるし。
…?
丸焼き?
…何のことだろ??
「だぁぁ!オレは大丈夫だってば!くるしいってば!ギュンター!!」
オレの叫びはどこにやら。
そんなオレの方と、ライアンのほうをみて汗をながしつつ。
「やれやれ。感動のご対面だな」
とかいっているコンラッドの姿。
「だ・か・らっ!!くるしいってば!!」
ぶわっ!!
……あれ?
何かいきなり地下だというのに吹き抜けた、というか吹いた突風によって、
ようやくオレはギュンターから開放される。
ナイスタイミング!!



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