……? ここは? ふわり。 と、衝撃もなく、なぜか着地する。 何でか風がオレを持ち上げていた感じがしたけども。 「もしかして…シーラが助けてくれたのかな?」 オレの言葉に。 『お怪我はございませんでしたか?』 吹き抜ける風とともに、声が聞こえてくる。 「うん。ありがとう。シーラ」 『お気をつけて……』 オレの言葉に対して返事があり、シーラの気配は遠ざかってゆく。 そして、改めて回りを見渡すと。 「…あれ?」 見ればどうやら、ここは地下道か何からしい。 そして、何やら横のほうから。 「…まったく…あの魔王にかかわるとロクな目にあわない……」 何かそんな声がしてくるし。 「?」 「あ」 首をかしげるオレとは対象的に、アンリが一声。 ぽうっと光の球をオレたちの頭上にと掲げると、照らし出されたその先に、 何やら砂と土に胸の辺りまで埋もれているシュトッフェルの姿が…… 「…悪い。オレも実はそうおもってたんだよねぇ〜……」 そんなシュトッフェルのつぶやきに思わず謝ってしまうけど。 「ユーリのせいじゃないってば。半分くらいは理由があっても」 オレのそんな言葉に、にこやかに横でアンリがいってくる。 「…アンリ。それフォーローになってないぞ?」 そんなオレたちの言葉に、こちらに気づいたのか。 「へへへへへへいか!?それに猊下も!?」 何かこちらをみて驚いているシュトッフェル。 「ここって?」 「この城が建つ以前の地下道だよ。四千年前の避難通路なんだけど。まだのこってたんだね」 「へぇ〜…って、四千年!?」 驚くオレに。 「陛下!猊下!ご安心ください!もし砂熊がきましても、命の限りにお守りいたしますっ!」 …何でか土から這い出て、オレとアンリの前に膝まづいてきていっているシュトッフェルの姿。 「あんたのおいもそういってくれたよ」 おんなじようなことをいうのは血筋ゆえかなぁ? 「は?」 シュトッフェルが顔を上げると同時。 「陛下っ!ご無事ですか!?それに猊下もっ!!」 ずざざっ! 土を滑り落ちる音とともに、コンラッドが上のほうから落ちてくる。 「うん。オレは平気だよ」 「というか。ウェラー卿?僕はおまけ?」 「猊下は何があっても大丈夫でいらっしゃるでしょう?とにかく、お二人ともご無事で何よりです。 お怪我などをされては…と心配しておりました」 オレたちをみて、にっこりといってくるコンラッド。 「うん、まあ。シーラがとめてくれたし」 「?シーラ?」 オレの答えに首をかしげているシュトッフェル。 そういや、彼は彼ら大精霊のことをしらなかったっけ? …ま、いっか。 「というかさぁ。ユーリはどじなんだよね」 「不可抗力だっての!!」 そんなオレたちの会話に、何か横ではため息をついているシュトッフェルの姿が。 「ま、とりあえず。フォンシュピッツヴェーグ卿にとりついていた恨みや怨嗟の気はなくなってるようだし? 今後引っ張られないように祈るよ」 「「??」」 アンリの言葉に首をかしげるシュトッフェルとオレだけど。 「ま、とにかく。地上にもどろうよ」 にこやかに言ってくるアンリに対し。 「いや、もどるって…猊下?道を知ってるんですか?」 アンリの言葉に問いかけているコンラッド。 そんなコンラッドに対し。 「四千年前とそうかわってないでしょ?ここ。 ここって創主を封じた後。よくエドが政務をさぼって隠れてたからねぇ〜……」 「……え、エドさんって……」 思わずつぶやくオレの言葉に。 「エドは戦いのときなどはそりゃもう非の打ち所がないようだったけどさ。素が素だからねぇ。 何もないところでよくこけてたし。政務はほとんど僕と、あとは大精霊たちでやってたしさぁ。 エドは政務より、それよりも安定をもたらすほうが楽とかいって、勝手に前戦に赴いていってたし…」 しみじみと、何やら遠くをみつつつぶやくようにいうアンリに。 「…猊下。それ、他の一般の人などにはいわないほうがいいとおもいます……」 アンリの言葉にため息まじりに言っているコンラッド。 ま…まあ、エドさん…この世界の魔族の中では神様的存在だしね…… そりゃイメージ崩れるだろうなぁ…… そういえば? ふと思い。 「そういえば、穴に落ちたのってオレたちだけ?」 オレの問いかけに。 「俺は陛下が穴に落ちてすぐに飛び込みましたから、詳しくは……」 コンラッドが申し訳なさそうにといってくる。 そんなオレの言葉に。 「今、この地下道にいるのは…っと。僕達のほかには、ツェリさんとレイヴンが一緒にいるみたいだね。 あとはフォンヴォルテール卿と何でか砂熊が」 手を天井にと掲げて、何やら風を操り、そういってくるアンリの姿。 「……母上とレイヴンが?」 「というか、グウェンダルとケイジが一緒って……」 コンラッドにつづいて、オレもまた思わずつぶやく。 「ツェリが?」 それをきいて、戸惑い気味のシュトッフェル。 「で?どうする?出口に近いのはツェリさんたちのほうだけど? フォンヴォルテール卿たちのほうにいく?逆だけど?」 いいつつ、オレたちにと聞いてくるアンリだし。 「グウェンダルは大丈夫でしょう。それより母上たちのほうが気がかりです」 アンリの言葉に即答しているコンラッド。 「ツェリ様は大丈夫だとおもうけどなぁ?どっちかというとレイヴンが言い含められているような気が……」 オレの至極当然な言葉に。 「ありえるね」 即答してきているアンリだし。 「とにかく。出口を目指して。ツェリを見つけないと。あいつは先に既成事実をつくりかねん」 「…確かに」 シュトッフェルの言葉にうなづいているコンラッド。 「…あ、兄や息子にこう断言されるツェリ様って……」 思わず脱力。 とりあえず。 ツェリ様たちがいる、という方向が出口に近いらしいので、そちらをめざして歩いてゆくことに。
「足元に気をつけてくださいね」 アンリの放ったふよふよと光る、光球を頭上に掲げつつ、出口がある。 という方向にと向かってゆくオレたち四人。 「…はぁ…せっかくいいとこだったのに……」 何やらぶつぶつとシュトッフェルがつぶやいているけど。 どうも権力復帰はあきらめてないらしい。 別に、オレによくしてくれたりしたからって、後先考えずに役職につける。 なんてしたくもないし、する気もないけど? 只今、ちょっとした提案はしているものの。 何しろ少し前のこともある。 点在する町や村に駐在所みたいなものがすべてない、というのにはオレ的にはびっくりだったし。 自警団とかはいるらしいが、そんな彼らと連携をとれば、うまく皆のために役立つようになるだろうに。 国を預かる。 ということは、人々の命をも預かり、幸せにと導くこと。 日本でのいいシステムは後々、資金調整とにらめっこしながら考えていきたいし。 義務教育制度とか。 育児休暇とか。 またはお金のない人のための医療施設とか…… ここって高齢者待遇…というのがよくわかんないけど。 オレからしてみれば、百五十歳以上だという、ツェリ様や、百歳を軽く超えている、というギュンター。 そしてグウェンダルなどは、立派に年齢からいえばお爺さんだ。 …それに、ここにはウルリーケみたいな例もあるし…… 歳のとり方は人それぞれらしいから、一概にはいえないというのが現状だし。 「ま、城を開放して国民のためにつかう。というのはいいとおもうよ? 人々の生の声もよくきけるし。オレも以前提案したらアンリや他のみんなに却下されたんだよねぇ」 そんなシュトッフェルにというオレに。 「当たりまえだよ。血盟城は他の城と違って、意思をもっているからね。 …下手にそんなことして民に何かあってもいけないし。今の城の見学コースだけでも十分だとおもうよ?」 アンリが即座にと突っ込みを入れてくる。 「オレ的には広すぎると思うんだけどなぁ?」 使ってない場所とかも結構あるんじゃないのかな? …あの血盟城って…… 「ゆ〜りぃ……。貧乏魂…ねづいちゃってるねぇ……」 「節約は大事だもん」 しがない高校生にとっては資金繰りはとても重要だ。 決まった少ないお小遣いでやりくりしないといけないし。 「ま、節約できることからしていきましょう。…ん?」 そんな会話をしていると、何やらガタガタと揺れる振動が。 「何?」 「陛下っ!!」 戸惑う俺の視線の先に、何やらこっちに猛ダッシュで走ってきている刑事の姿が目に入る。 コンラッドがオレをかばって前にとでているけど。 「え?どうしちゃったの!?ケイジ!?…あれ?」 何かを目指して進んでいる? ケイジのオーラからそんな感じをうけるし。 そんなオレの言葉に。 「砂熊は本来、人にはなつきません!主がいなくなればいつ野生にもどってもおかしくないっ!」 いって、剣に手をかけようとするコンラッド。 って!? 「だぁぁ!まてってば!ケイジは殺気なんかもってないってば!!」 そんなコンラッドをあわてて止める。 「というかさぁ。……アレは僕達が完全に目にはいってないよ?」 どんどんこちらに向かって走ってくるケイジは何やら無我夢中、という感じだし。 つまりは、がむしゃら。 人間でも集中してたら周りが見えなくなる人っているし。 ケイジもそんな感じらしい。 「ユーリ!よけてっ!」 「陛下っ!」 アンリの言葉に、コンラッドがオレを抱きかかえ、横にととび退る・ シュトッフェルもあわててよけたその直後。 どぐわしゃっ!!! 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』 …ケイジはそのまま、壁にと突っ込んでいくし…… 「…あら〜……」 こりゃ、力まかさせ、つっこる為にスピードでも出してたのかな? おもいっきり、壁を壊してるケイジだし…… 思わず、ケイジが突っ込んでいった壁のほうをみていると。 「安心しろ。あの砂熊はおまえたちを襲ったのではない」 ケイジがやってきた方向から、グウェンダルの姿が見えてくる。 「グウェンダル?大丈夫?」 「私はそんなにヤワな体ではない」 オレの言葉に、そっけなくいってくる。 …別に心配してもいいじゃん……
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