二人が部屋から出て行ったその直後。
「陛下!!」
「うわっ!?」
何か身を乗り出してオレにと話しかけてくるシュトッフェル。
そして。
「陛下はどうおもわれますか!?」
何かあせったオーラをだしながら、オレにと聞いてくるし。
「どうって……」
「あの二人の再婚です!!」
強い口調でいってくるけど。
「ま、まあ結婚っていうのは当人同士の問題だし?…当人たちがいいんならいいんじゃない?」
そんなオレの言葉に。
「僕は反対だ!!」
もくもくと食事をしていたヴォルフラムが言ってくる。
「そう。仮にもツェリは前魔王。節度ある行動をしないと国民の信用を失いかねません。
  それに…レイヴン……」
何かこぶしを握り締めてシュトッフェルは言ってるし。
「節度って…もう手遅れなんじゃ……」
オレのつぶやきは何のその。
「なるほど。臣下がご自分より上に立場になれば困る…と」
「ぎくっ!」
ギュンターの言葉に、冷や汗を流してあからさまにぎくっ、と声を小さく発しているシュトッフェル。
そしてその場にと固まっていたりする。
う〜ん。
わかりやすい人だ……
「いいだろう」
「そうですね。協力しますよ」
え?
見ればグウェンダルとコンラッドまでもが何か反対モードだ。
「というかさ。心配することないとおもうけどなぁ?」
一人、のんきにいいつつも、肉を切って口にと運んでいるアンリの姿が……
何かアンリのやつ、楽しんでない??
というか、何か面白がっているようだし……
何だかなぁ……

とりあえず、食事をすまし。
オレたちは別の部屋にと移動して。
丸テーブルを囲んでツェリ様とレイヴンの結婚について話し合いをすることに。

オレとしては部屋に入るなり、思わず壁をみて、ただいま固まり中。
「楽観的なシュトッフェルより強力になりかねませんね」
「ああ」
「しかし、どうする?」
何やら会話に花が咲いている、コンラッド達さん兄弟とギュンターの姿。
そして又。
「へぇ。これも一役かったみたいだねぇ。気の浄化に」
固まるオレのよこで、にこやかにそんなことを言っているアンリ。
「とりあえず!!」
オレの叫びに四人がこちらを振り向くけど。
「とりあえず!この額縁をどうにかしろっ!何でオレがアイドみたいに!しかもポスターみたいになってんの!?」
表の銅像もどきといい……
オレの目の前には。
でんっ!
と壁の上下いっぱいの大きさに描かれた、なぜかオレの絵が。
ちなみに額縁つき。
「何で歯が光ってるの!?レモン持った小指がたってるしぃぃ!」
オレの叫びに。
「まあまあ。よくかけてるじゃない」
「あのなっ!!」
にこにこと面白が手いるらしいアンリに思わず叫ぶ。
「う〜ん。シュトッフェルという男。趣味だけはいいようですね」
そんなオレの言葉に立ち上がり、しみじみと絵を見て言っているギュンター。
「どこがだっ!!」
まったく…オレ、何か鳥肌がたってきたよ……
国民の間にこんなものが配られていたらどうしよう?
……プロマイドみたいにさ……
「あの男にも一つはいいところはあるようだな」
「ヴォルフまで!!」
ヴォルフラムまでもが、ギュンターに同意してるし。
「ともかく。母上のお考えを聞いてみないことには…な」
「だな。いつものように気まぐれで再婚、とかいっている可能性もあるしな」
「…いや、気まぐれって……」
コンラッドとグウェンダルの言葉に思わずオレはつぶやいてしまうけど。
いつものように…って何?
…もしかして、今までもそういうようなことがあったわけ?
「ま。とにかく。そろそろ式典の予行練習の時間になるし。外にいこうよ♪」
一人、対照的に、にこやかな明るい声で何やらいってくるアンリ。
「…あのね……」
ともかく。
ツェリ様やレイヴンに話を聞いてみないことには始まらない。
というのは事実だし。
とりあえず、オレ達は一応外にと出てゆくことに―――



「…何分続くの?」
何か長ったらしい校長やどこかの議員にもひけをとらず、用意されている席にてアンリと並んで座り、
式典の予行演習にとたちあっているオレたち。
コンラッド達にも座るようにといったけど、たっているほうが楽だ。
とのこと。
でもいくら日陰になっていても、ずっと立ちっぱなしはどうかと…きついとおもうけどなぁ?
……オレ。
「まあ、ああいう話は長いって決まってるし」
「炎天下でないだけまし……か。」
夏や春の朝礼で、あまりに校長の話がながく、生徒が次々と日射病や気分が悪くなり倒れていった。
という経験を昔しているオレとアンリにしてみれば、話は早く終わらせてほしいものだ。
あのときは、なぜかいきなりの大雨で、雷もなり始めて朝礼は急遽中止になったけど。
それ以後。
保護者側。
つまりはPTAからでも猛抗議でもあったのか、朝礼は運動場ではなく体育館で行われるようになったのは。
当時小学三年生だったオレたちにとっては印象深い出来事。
オレとアンリがそんな会話をしていると。
「隊長〜!!陛下ぁ〜!!おひさしぶりです!」
何かこっちに向かって叫びつつ、さけてくる人影が。
…あれ?
あの人って…確か??
「うん?お前はライアンじゃないか。元気だったか?」
コンラッドがその声の主をみて声をかけている。
「?誰?」
オレをつつき、聞いてくるアンリに。
「前に話したパンダを手なづけた人だよ」
「ああ、あの!どうも始めまして。村田健です」
いって、立ち上がり、手を差し出すアンリに。
「あの?隊長?陛下?こちらのおかたは?陛下と同じく黒髪・黒瞳の双黒…ということはもしや?」
アンリをみて、何か戸惑っているライアン。
「一応双黒の大賢者って呼ばれてます、村田です。よくあの砂熊をてなづけられましたねぇ。
 お話はユーリから聞いて知ってますよ。その説はユーリが迷惑をかけたみたいで……」
「おいおい。アンリ。オレの保護者みたいな言い方はやめろってば」
ライアンの手をとり、ぶんぶんと振っているアンリに思わずつっこみ。
「猊下でいらっしゃいましたか。こちらこそ始めまして。お目にかかれて光栄です」
そんなことを言っているライアンの姿。
以前、スヴェレラに出向いたときに、パンダ…でなかった、砂熊の巣にとおち。
そしてまた、その砂熊となかよくなり、隊を辞めたという経歴の持ち主であるこのライアン。
「ところで?どうしておまえがここに?」
問いかけるコンラッドの言葉に。
「式典の余興としてよばれまして」
にこやかにいってくるライアンに対し。
目を丸くして。
「お。おい、おまえは確か砂熊つかいに……」
にこやかにいいつつ。
「今、ここで修行の成果をお目にかけますね。お〜い!ケイジぃ!おいでぇ!!」
何か高々と空にむかって叫んでいるライアン。
…ん?
ちょっとまって?
次の瞬間、ゆれとともに、舞い上がる土ぼこりと。
それと同時、広場、というかこの庭の中心にとあった、オレの像らしきものがぐらり、とかたむき。
そのまま、陥没した地面の下にとのみこまれていってたり。
「うわっ!?」
何か小さく叫んでいるシュトッフェル。
あ、今だに長ったらしい口上を何か述べていたシュトッフェルが一緒に穴にとおちてった……
みれば。
「ぴぎゃ〜!!」
何かかわいらしい泣き声を上げて、
穴の下からバンザイをしているなつかしのジャイアントパンダの姿がそこにはあるし……

「って!?何でパンダ…じゃない。砂熊がここに!?砂漠じゃないじゃん!?」
穴の横に駆け寄り、叫ぶオレに。
「あ。砂熊だぁ。なつかしぃなぁ」
穴の横にきて、というかオレの横にきて、そんなことを言っているアンリ。
「いやぁ。ケイジは一生懸命練習して土も掘れるようになったんですよ?本当に頑張り屋さんでぇ」
いって頭に手をやっているライアン。
何か子供やペットを褒め称えている飼い主さんとおんなじ表情をしているし。
ある意味、親ばか?
ともいえなくもない。
それはそうとして……
何かどんどん穴…ひろがってない!?
「うわっ!?」
「って!?ユーリ?!」
どんどん穴はひろがっていき、オレの足元まで崩れるし!?
そのまま、すり鉢状の穴の中へと問答無用で落ちていってしまう。

「陛下っ!今すぐにやめさせろ!ライアン!」
上のほうでコンラッドの声が響き。
「ユーリ!」
何かヴォルフラムも叫んでいる声が聞こえてくる。
「うわっ!?…って、アンリ?」
「どじ」
「…オレのせいじゃないとおもうなぁ〜……」
気づけばいつの間にか、オレの下にアンリがきて、オレを支えているような格好で一緒に落ちていっている。
「とりあえず、下に一度下りてから、それから地上にもどるよ」
「?いや、下って??」
そんな会話をしつつも、オレたちは、そのまま。
すり鉢状となった穴の中にとおちてゆく……



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