「ツェリ!魔王陛下から離れろ!そもそも、お前は何を考えて……」 そういうシュトッフェルの言葉に。 「それで?ツェリさん?再婚とはまた急な……」 笑いをこらえつつ、問いかけるアンリの言葉に。 「だって。急におもいたったんだもの。 自由恋愛旅行をしていても。これっ!という殿方にめぐり合えなくて。そんなとき、ふと思い出したの。 いつも都合よく扱え…いえ、わたくしのそばで守っていてくれたレイヴンのことを。だから結婚しようって」 オレにすりよってきつつも、そんなことをいっているツェリ様。 「…あ、あのぉ?それって…やっぱり相手の意見は?」 どぎまぎしながらも、とにかく肝心なことを聞き返すオレに。 「あら。レイヴンだってわたくしを想っていてくれるわ。わたくしは言えば断れるとは思えないもの。 グエェン。コンラート。ヴォルフ♪あなたたちの新しいお父様よ♪」 にこやかに、息子たちにと話しかけているツェリ様だけど…… 「…それは上王陛下……。相手の意思が反映されていないのでは……」 ギュンターがつぶやき。 『―――はぁぁ~……』 ギュンターの言葉と同時。 三兄弟が一斉にとため息をついてるし。 なんだか彼らの苦労がわかるような気がするよ…うん。
「あら。決まった恋愛なんておもしろくないじゃない? 先に婚約という形とか結婚ってことにしとけば後々楽よ?それから恋愛を始めて楽しめばいいのよ♪」 にこやかに言っているツェリ様。 ……やっぱり相手の意見は無視ですか…そ~ですか…… 何か何となくだけど、何となぁくそんな気がしたんだよな…オレ…… 「ま、ツェリさんにとってはたった一人の兄だしね。一応あれでも」 何か笑いをこらえつつも言っているアンリ。 「僕はこれ以上の兄弟なんていませんよ!母上!!」 そんなヴォルフラムの叫びに。 「あら?兄弟は多いほうがいいわよ?ヴォルフ。それにわたくし、女の子が今度こそほしいのよね。 ヴォルフと陛下の子供にも期待してるけど」 って!? 「ツェリ様!だから!オレたちは男同士ですってば!!期待って何ですか!?期待って!!」 何かいつも、ツェリ様のペースにのまれちゃうなぁ…… 「母上。おたわむれも……」 「あら?わたくしは本気よ?」 『――・・・・・・』 あ。 母親の言葉に、三兄弟が黙り込んだ。 そんなツェリ様に対して盛大にため息をつきつつも。 「……わが妹ながら何を考えているのか……。 とにかく、陛下。猊下。こちらへ。控えの間にご案内いたします」 何やらシュトッフェルがいってくる。 とりあえず。 ここにいつまでも突っ立っていても、嫌でもサムサムブロンズ像もどきが目に入るので、 ひとまず案内されるがままにと、城の中にと入ってゆくオレたち。 以前、この城に来たときは、あまりの根強い恨みの気で気分が悪くなるほどだったが。 今はそれはない。 何かのきっかけで浄化されたらしい。 そのまま、オレたちは案内されるままにと部屋にと入ってゆくことに。
長いテーブルがある部屋にと案内され。 とにかく席にとつく。 しばらくして料理がはこばれてくるけども。 ……あ、とまどっている。 もくもくと食事をするオレたちとは対象的に上座に座っているツェリ様が、 これまた無理やりといっても過言ではなく、横にと座らせたレイヴンに。 「はい。レイヴン。あ~ん♡」 とかいってるし…… …どう対応していいものか、レイヴンも戸惑っているようだ。 「ツェリさんもやるねぇ」 それをみてにこやかにいっているアンリに。 「ツェリ様はともかく…レイヴンは戸惑ってるぞぉ?」 あからさまな戸惑いのオーラ。 何かよくあ、いちゃいちゃカップルの片方だけがつれない。 というパターンに似ていなくもないが。 そんな会話をひっそりとするオレとアンリ。 そして、ふと。 「そういえば。陛下も猊下も初めていらしたわよね。こちらレイヴン。 わたくしの家に幼いころから仕えていてくれるんですのよ」 オレとアンリのほうを向いて改めていってくるツェリ様だけど。 「あ~……。いいです。いいです。それなりに知ってますから」 まさか、以前、この城の一室に閉じ込められた、などとはいえないし。 ちなみに場かでっかい一抱えほどもあった法石はいったいどうしたんだろう? あのときは何でこんな石がおいてあるのかな? としか思わなかったけど…さ。 今なら以前グウェンダルとかに聞いて一応は簡単ではあるけど理解しているし。 おそらく、アレはオレとアンリの力を抑えるためにと用意されておいてあったんだろうが。 …オレたちには何の効果もなかったけど…… つまりは、オレたちにはまったく無害。 ヴォフラムは倒れそうになっていたけど。 コンラッドはオレたちが遠くから弓で数十名に狙われていたから、素直にあのとき捕まったらしいし…… 何しろ、動いたらオレたちを打つ。だもんなぁ。 このレイヴンって人、知的戦略などに長けているようだ。 もっとも、オレとアンリはあのとき、とっとと抜け出してここに侵入していたヨザックと合流し。 コンラッド達とともにこの城を出たのは、オレにとってはついこの前。 そんなオレの言葉に、きょん、と目を丸くして。 「まあ?わたくしのいない間に仲良くなっていたの?」 とかいってくるツェリ様。 でも言葉とは対照的に。 じゃあ、やぱりあの噂は…… などと思っているのが、ツェリ様のオーラから感じ取られる。 そんなツェリ様の言葉に。 「い、いやぁ。なぁに。友達の友達はみな友達だ。という古くからの格言があってな」 乾いた声でそんなことをいっているシュトッフェル。 お昼休は♪ のいいともじゃあるまいし。 世界に広げよう、友達の輪。ってか? まあ『友達の輪』を広げることはいいことだけど。 無論、私利私欲などはなしで。 そんなツェリ様の言葉をきいて、横のほうでは、 「やっぱり、内戦騒ぎは知らないようだな」 「ああ」 などと小声で話しているグウェンダルとコンラッド。 でも、内戦って…戦いはしてないじゃん? オレは覚えていないけど、 喧嘩両成敗で、両方の兵士たちを吹き飛ばしたらしい。 何でも頭を冷やせ!といいながら。 オレは例のごとくに、全然覚えていないけどね。 シュトッフェルの乾いた笑いをききながら。 「ちょっと失礼。」 いって、カタリ、と席を立ち上がり、部屋をでてゆくツェリ様。 そんなツェリ様に。 「ツェリ様。」 いって、その後を追いかけているレイヴンの姿が。
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