「……は?」
「だからぁ。ツェリさんから再婚式の招待状がきてたよ?」
ギュンターを説得し、いつものように国境沿いの村の子供たちと一緒に草野球。
大分彼らも野球の技術は上達し、上手になってきているけども。
昼前に一度王城にもどったアンリが、何やらピンクの手紙を持って帰りいってくる。
「何!?どういうことだ!?」
オレにと手渡されたそのピンクの紙を奪い取り、目を通しているヴォルフラム。
「猊下?母上の再婚式とは……まさか……」
コンラッドがいいかけるよりも早く。
「なにぃぃ〜!?相手はレイヴンだとぉぉ!?」
ヴォルフラムの叫びがあたりにとこだまする。
……あれ?
「もしかして…レイヴンって…あの?ショトッフェルの腹心の?」
以前話し合いにといったら、とっ捕まった経験有りのオレとしては思わず驚いてしまう。
しかもオレを捕まえて、何かまた戦いをしようとしていた。
とにかく原因の一つと思われた、彼を取り巻いていた怪しい気は。
何か覚えてないけれどオレが取り除いたらしいけど。
最近では、昔の戦死した人の為の慰霊碑などを建てたり…とかしている、あのシュトッフェルの?
「猊下?それをどこで……」
問いかけるコンラッドの言葉に。
「フォンクライスト卿が何か叫んでいたから。フォンヴォルテール卿は確認作業に追われてるよ?」
こちらに来てからはや十日以上。
魔族の国とはいえ、のんびりとした生活が続いていたのに。
「……と、とにかくもどって確認…したほうがいいよね?」
オレの言葉に。
「そうですね。――ブランドン。陛下は用事ができたから。他の子たちにもよろしくいっといてくれ。
  それと村の人たちにもな」
いって、一番大きな金髪の少年、ブランドンにと離しかけているコンラッド。
以前の怪我の後遺症も何もなく、無事に健やかに成長していっている彼だけど。
そのことに、オレとしてはほっとする。
「うん。わかった!コンラッドさん。ユーリお兄ちゃん。気をつけてね。またね」
「ありがとう」
度々この村にはやってきているからか。
始めのころは戸惑っていた村の大人たちも今ではすっかりと打ち解けていたりするオレ。
皆普通に扱ってくれるし。
オレが頼んだ…というのはあるにしろ。
だって、オレ自分でも王様らしくない。
ってわかっているから、普通に対応してもらったほうが気が楽だし。
とりあえず。
事実関係を確認するためにと。
オレたちは一度、王城にともどることに。


「改築記念の招待状?」
バタバタバタ。
確認作業に追われているさなか。
今度はシュピッツベーグから手紙が届き、見ればその内容は。
シュピッツベーグ城の改築記念式典の招待状……
「何で?」
おもわずそれをうけて目が点と成り果てる。
「両方。場所はシュピッツヴェーグ城となってるね。
  …シーラ。ごめんだけどちょっとあっちの様子を確認してみせてくれる?」
アンリが何もない空中にと話しかけたかとおもうと。
「はい」
アンリの言葉にオレたち以外にはいないはずなのに、なぜか返事がもどってきて。
その直後。
何やらどこかの庭が壁にと映し出される。
どうでもいいけど…だから、何で大精霊なんて大物がすんなりと協力してくれるわけ?
ねえ??
アンリに聞いても笑うばかりで詳しくは教えてくれないし……
慣れてきているオレも何か怖いけど…さ……

「城を開放し、民の広場として広く活用する。
  これならばあの小僧…いや、魔王陛下のお心にも訴えることができるだろう」
バルコニーでなにやら言っているシュトッフェルの姿が映し出されているけども。
「明後日の式典の準備は全て滞りなくできております。式典の招待状も送っておきました」
そんな会話をしているのは。
どうやら、シュトッフェルとその腹心であるレイヴンらしい。
見れば城の中庭は人々に自由に開放して民の広場とするらしい。

「……何あれ?」
思わず広場の中央にある何かに目がいくが。
何か像のようなものが建ってる。
遠目でよくわからないけど。
「何かよからぬたくらみを感じますね」
届いた二通の招待状とその映像をみてギュンターがつぶやき。
「まったく。これ以上新しい兄弟などいるものかっ!!」
などと叫んでいるヴォルフラム。
「ま、とにかく。いってみたらわかるんじゃない?」
オレの言葉に。
「そうだね。以前行ったことがあるから空間移動可能だし。
  普通にいったらシュピッツヴェーグ城まではかなりかかるからね。
  そのまま城からでて、一気に移動したほうが早いね」
アンリはどうも大人数の瞬間移動みたいなものもできるらしいし。
何でもその場所を明確にイメージできるものがそばにさえいれば。
こちらの世界でもまだいったことない場所でも移動できる。
というのは、前に聞いたし。
あのときも、捕まえた襲撃者の導きというか案内でシュピッツヴェーグ城にといったわけで。
……ま、あっさり捕まっちゃったけど。
まあ、もう過ぎたことだし。
それに、そのおかげでオレは度々子供たちに野球を教えにいけている。
という利点もあるし。
あまり深くは考えないようにしているんだけど。
「そだね」
そんなオレとアンリの会話に。
「ともかく。真意を確かめる必要はあるかもな。もしかしてまた母上を利用しようとしているのかもしれん」
腕をくみ、何やらつぶやくようにといっているグウェンダル。
そして又。
「母上はあの内戦騒ぎを知っているのでしょうか?」
そんなことを言っているコンラッド。
この長男と次男。
何やら心配しているようだけど、今ここで悩んでいても仕方ないだろうに。
「ここはやっぱり。直接にいってみるしかないでしょう」
オレの言葉に、全員がしばし無言でうなづき。
ひとまず。
真意を確かめることに出かけることに。

兵を二〜三人だけ連れて城を出て。
そのままアンリが道の空間をつなぎ歩きながらも一瞬のうちにシュピッツヴェーグ領内へ。
何かアニシナさんもこの空間移動の道を、
自分の部屋とグウェンダルの城の執務室の机の引き出しとを無断でつないでいるらしい。
何でも空間移動筒路というらしいが。
今のところ、血盟城にはつながれていないので一安心…というところか。
…でも、何でも聞いたところによると、城下町の一つの家に、その道を作っているらしく。
だからこそ、たびたび血盟城にとこれるらしい。
…あまり深くは考えまい……


「だぁぁ〜!?何これ!?」
思わず城の中庭にと入り、思わず叫んでしまう。
城の側面にと飾られている飾りや、
何やら武器・防具・道具屋らしき看板がかかっている即席テントペナント小屋。
お祭り騒ぎのような感覚なのであろう。
…それはまあ、わかるけど。
わかるけど!!
けどっ!!
「あ。結構よくできてるじゃん」
それをみて何やらにこやかに言っているアンリに。
「う〜ん。ユーリの像か。うん。よくできてるな」
しみじみとそれをみていっているヴォルフラム。
「そんな問題かぁ!!なんじゃこりゃ!?うわっ!?未来を指差してる!?しかもカボチャパンツだし!?」
何かボテボテの王様イメージそのままに。
なぜか、
でん。
と庭の中央に作られているオレのブロンズ像もどき……
オレの魂からの叫びは何のその。
「ついでにこれに翼をつけたらよくない?」
「それはいいかもな」
………
「だぁぁ!アンリ!ヴォルフ!!そんなことで意気投合するなぁぁ!!」
何か二人がそんなことを言って意気投合しているし。
「母上はやっぱり。内戦騒ぎ…知らないのだろうか?」
「だろうな」
「シュトッフェルのよからぬたくらみを感じます」
騒ぐオレたちとは対象的に、そんな会話をしているグウェンダルとコンラッドとギュンターの姿。
そんな会話をしていると。
何やらオレたちがきた。
と連絡がいったのか、走ってくるシュトッフェルと、なぜかツェリ様もいたりする。
ま…まあ、場所がこことなっていたからいてもおかしくないけど?
でも今回、血盟城にもどってこずに、こちらに直接もどったってこと?
いつもは必ず血盟城にとよるというのに。

「これは陛下。猊下。よくおいでくださいました」
低姿勢のシュトッフェル。
以前、彼にとまとわりついていた『怨嗟』の気は大分薄くなっている。
しかし……ツェリ様…相変わらずきわどい服でいらっしゃる……
「陛下ぁ〜!!猊下ぁ〜!!よくきてくれましたわ!わたくしのためにっ!」
「ちっがぁぁう!!」
走りよろうとするツェリ様を止めつつ何やら叫んでいるシュトッフェル。
…何かこの妹にしてこの兄あり?なのかもしんない……
そのまま、何やらにらみ合っている二人だし。
……えっとぉ?
後ろからついてきたレイヴンは何やらとまどい気味のオーラをかなり出してるし。
…これはひょっとして…ツェリ様があいての了解もとらずに。
いきなり再婚…とかいている可能性もあるかもしんない……
だって、レイヴンから発せられているオーラ…かぁぁなり戸惑い混乱してし……
傍目にもわかるほどに。
表の表情には微塵も出していないけど。
だけども、オーラは正直だ。
そんなツェリ様とシュトッフェルの様子をみつつ。
「…どうやら、シュトッフェルは関係なさそうだな」
「……ですね」
そんなことをつぶやいている長男と次男。
何かこういった光景を見慣れているのかもしれない……
オレは見たことないけどさ。
「とにかく。遠路はるばる王都からおこしくださりましてありがとうございました。
  ささやかですが食事の用意をさせていただきますので……」
いってくるシュトッフェルに。
「んふふvレイヴンに食べさせてあげましょう」
……何かツェリ様がいってるんですけどぉ……
それを聞いて、かなりうろたえているレイヴン。
とりあえず。
「あのぉ?ツェリ様?いつお戻りになったんですか?それに何か再婚って……」
オレの問いかけに。
「ついさっきよ。わたくしがもどってきたのは。陛下も猊下もお祝いしてくれますわよね。わたくしの再婚」
いってオレにとすりよってくるツェリ様。
いやあの…だから、胸が!胸があたりますぅぅ!!



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