オレたちがそんな会話をしていると。 「…?ユーリ?それにウェラー卿にフォンビーレフェルト卿も?こんな夜にこんなところで何やってるの?」 お店のご主人でもあり、ロゼたちの父親の後ろから、何やら近づいてくる人影が一つ。 「…え?…く…黒?」 その姿を振り向いてみたロゼのお父さんが何やらつぶやいてるし。 「アンリ!?」 『猊下!?』 それと同時にオレたちも同時に声をだす。 どうやらちょうどアンリがもどってきたらしい。 「?この人は?」 アンリが彼をみて聞いてくるけど。 そだ。 「そうだ!アンリ!あとはよろしく!この人の息子さんが盗賊に誘拐されちゃって! オレ助けにいってくるから!!」 「あ!おい!ユーリ!」 後はアンリに任せて早くしないと。 早くいかないとロゼやリゾットの身が危険だ。 「ちょっとぉぉ!詳しく説明してよぉぉ!」 「その人に聞いといて!!」 駆け出すオレに続いて、アンリにぺこり、と頭をさげ。 「こら!ユーリ!まてってば!」 「陛下!!」 オレの後ろから叫びつつも走ってついてくるヴォルフラムとコンラッドだし。
「…まったく……とりあえず詳しく話してくれる?」 走ってゆくユーリを見送りつつ、アンリは深いため息とともに。 今、唯一、状況を説明できるであろう彼にと話しかける。 アンリが彼にと話しかけたその直後。 「陛下ぁぁ!どこですか!?陛下ぁぁ!」 ギュンターの息せききった大声が何やら響き渡ってくる。 そして。 「あれ?フォンクライスト卿?」 「あ、これは猊下。いらしていたのですか。ところで陛下をみませんでしたか?」 アンリの姿に気づいてお辞儀をして、問いかけているギュンターの姿。 どうやらユーリを追って外にでてきたらしいが。 「ユーリなら、何かこの人の子供が誘拐されたとかいって、助けにいくってさっき走ってったよ」 「何ですってぇぇ!?…って、あの?その人は?」 「さあ?僕も今から聞こうと思ってたんだ。」 そんな二人の会話に。 「……あ、あの?あなた様は?…一体??それにフーリさんって……」 戸惑うしかない父親の姿。 普通、一般人が王佐、ましてや国王や大賢者などといった人々に会うことなどは…まずはない。
どうにか間に合ったらしい。 近道を抜けて手紙に書かれていた場所にといくと、まだロゼの姿はなく。 やがてちょうど同じころにおそらく盗賊の頭であろう人物が、 現れたロゼにと石を持ってくるようにと指示している。 リゾットが賊の一人に羽交い絞めにされているのも見て取れる。 とにかくリゾットを助けないと。 「そこまでだ!!」 大声を張り上げ、彼らの注意をこちらにと向けた隙にコッヒーにすばやくリゾットを奪い返してもらう。 「お姉ちゃ〜ん!」 「リゾット!!」 コッヒーに助け出され、空からリゾットがロゼにと向かって手を振っている。 それをみて。 「ちっ!ガキはもういい!魔石を奪え!やろうども!やっちまえ!」 いってかしららしき男が指示すると同時。 男たちがオレたちやロゼに向かってこようとするが。 がさり。 何やら横の茂みから音がして。 そして。 「捕らえろ!!」 『わ〜〜!!!』 見れば、なぜかそこにはギュンターの姿と。 そして。 …って? 「ヨザック!?」 声を上げて盗賊たちに向かっていく兵士たちと、ギュンターの後ろから出てくるみなれた人影が。 「兄上が兵を出したんだ」 兵士たちをみて言っているヴォルフラムに。 「ご苦労。ヨザック」 ヨザックに話しかけているコンラッド。 「……え?」 思わずコンラッドを見上げるオレに。 「骨飛族とは別に家を見張っていてもらったんですよ」 オレの疑問に答えるかのようにと説明してくるコンラッド。 「へぇ。そうなんだ。あ、じゃあこれって……」 なるほど、この投げ文はヨザックだったのか。 「今度から投げ文のヨザック。って呼ばせてもらおうかな?」 「それはちょっと……」 オレの言葉に何やら少し戸惑い気味のコンラッド。 「猊下にここまで直接に移動させてもらったんです」 いってオレにと説明してくるギュンターに。 「猊下はあの父親を家に送り届けてから来るそうです。って…まじっ!?」 そんな会話をしていると、ヨザックがあせった声をだしている。 みれば。 「ああ!?ロゼ!?」 思わず叫んでしまう。 「魔石はもらった!!」 見れば、いってロゼの手から石を奪っている盗賊の頭の姿が。 部下たちに兵士たちの相手をさせ、自分は少人数で動いて隙をついたらしい。 「やろうども!ずらかるぞ!!」 「させるかっ!!」 そのまま、町に向かってゆく盗賊たちの後をオレたちもまた追ってゆく。 何かこれって捕り物みたい。 そんなのんきなことが頭に浮かぶけど。 とにかく、今は意志を取り戻して全員を捕らえるのが何よりも先決だ。
夜の町並みにて、ちょっとした捕り物帳。 ヨザックが男にとび蹴りをかまし、男の手にしていた石が空中にと投げ出される。 「よっと!ナイス!ヨザック!」 回り込んでいたオレはそれをつかみ、そのままダッシュ。 だがしかし、地形に詳しい彼らと、オレとでは不利なのは目に見えている。 案の定、囲まれてしまう。 …やばい。 「ユーリ!!」 ふと声のするほうをみれば、屋根の上にヴォルフラムの姿が。 「たのむっ!」 そのままヴォルフラムに向かって石を投げると同時、男たちがオレにととびかかってくる。 と。 ドッン!!! 何やらオレを押し倒す以前に、男たちはなぜか地面や壁にと叩きつけられていたりする。 えっと? 「ユーリ?大丈夫?まったく。君は、いっつもやっかいごとに首をつっこんで……」 ふと後ろをみれば、そこには杖をもって立っているアンリの姿が。 夜なので黒髪のままでもあんまり目立たない。 「文句は後できくよ」 オレの言葉に。 「とりあえず、彼らを束縛してくれる?シーラ?」 シーラ? アンリの言葉に。 ビュルリッ! と風が吹いたと思うと、風が人の形となり、 「了解いたしました。…それと、お久しぶりでございますわ」 何やらまたまたオレにと頭を下げてくる透き通った人型をしている風から出来ている人型の人。 「?えっと…アンリ?」 「風の大精霊・シラルーク。シーラって呼ばれてる。ニルファの同僚だよ」 オレの問いかけに答えるアンリる 「いや…風の大精霊って……」 何でこうも、そんな大物…だよな? 大物が簡単に人前に姿をあらわすんだろうか? アンリの言葉をうけてか、何やら男の手を後ろに回して… …といっても、見た目はかってに男の手が後ろにとまわり、その両手を透明な紐のような何かが束縛する。 「とりあえず、他のモノもたのむよ」 「了解しました」 いってそのまま、オレにとぺこり、と頭を下げて再び風に溶け消えて姿をかき消す。 シラルークことシーラ。 何かここにきて思いっきりRPGみたいになってきたぞ? 精霊とかまで頻繁に出てきたしさ。 でも自分があまり驚いていないらしいことにも、そちらのほうが逆にびっくりしてしまい。 そちらのほうに逆に驚いてしまう自分がいたりする。 「そだ!魔石!それにリゾットやロゼだよ!!」 何かロゼもリゾットを追いかけてこっちに来ているみたいだし。 コッヒーにはリゾットを一番安全な城にと運ぶように指示しているしる あんまり高く飛べていないのが気にはなるけど。 「とにかく。ここからより上からのほうが、追いかけるにしても状況把握するにしても早いよ」 アンリがいうと同時。 ふわり、とオレたちの体は屋根の上…その辺りでは一番高い建物というか塔の上にと移動する。 何でも眞王をあがめる教会みたいなモノだとか何だとか。 一種の小さな眞王廟の支店のようなものなのかもしれない。 もう少し自分の国なんだから建物の状況とかそのほかにもいろいろ…… …オレ、知ってたほうがいいかもしんない……
高い位置からだとよく見える。 兵士たちやそれにヴォルフラムたちの姿も。 なぜかギュンターまでもが加わって、石をそれぞれの相手にパスしつつ走り回っているし。 男たちもまた負けまいとしておいかけている。 「…何であんなにしてまで石を奪おうとするのかなぁ?」 オレの至極当然の疑問。 だって、もう役人にもバレてるんだから、普通観念するでしょうに。 そんなオレのつぶやきに。 「あれは地上では、まず滅多と取れないからね。 数百万から数千万で裏で取引が昔からされてるらしいしね」 「そんなに!?」 驚くオレに。 「ちなみに、僕達…つまり、双黒のものにかけられている懸賞金は数億以上だよ? まったく、いい迷惑だよねぇ〜……」 「す…数億って……」 思わず唖然。 たかが、髪と瞳が黒いだけで、その価格って何よ!? というか懸賞金自体がかけられている、というのも心外だ。 「あっ!?」 ふとみれば、コッヒーに網が投げられて、その体が絡みとられていたりする。 「まずいっ!」 「ユーリ!下!」 みればコンラッドがちょうど真下に。 「コンラッド!こっちへ!!」 上から叫ぶオレに、 「しかし!?」 戸惑いの声を上げてくるコンラッド。 「忘れたのか!?バッテリーは信頼だって!オレはおまえを信じてる! おまえの球ならどんなモノでも受け止めてみせるって!!」 石をもったままで、落ちそうになっているリゾットの救出は難しそうだ。 「リゾット!?」 「あ。あの子のお姉さん…まずいっ!」 どうやら弟を心配して近くまでやってきていたようだ。 屋根の上にあがって弟を助けようとしているし。 「助けてええ!お姉ちゃんっ!」 男たちはコッヒーをそのまま、網で絡めとりたぐりよせようとしているし。 こいつら…何だって、罪もない子供にまで何てことを。 コンラッドから投げられた石をキャッチするのと同時。 落ちたリゾットの姿が目に入る。 それをコンラッドがきちんと受け止めてくれてほっと胸をなでおろす。 と。 「そこまでだ!!」 何やら下の屋根から男の声が。 みれび、ロゼが男たちにと捕まってナイフを突きつけられている。 「大人しく石を渡せ!でないとこの娘の命はないっ!」 そんなことをいってくるし。 「ユーリ。おちついて。いいね?」 アンリがオレにと釘をさし、 「シーラ!!」 声をかけると同時、男たちの周囲にと突風が吹きつける。 その隙をついてロゼが自分を羽交い絞めにしていた男の手をかんで、 そのてを振りほどいて逃げようとするものの。 「こ…の、あま〜!!」 そのままナイフをもって風が吹き付けている中、追いかける男の姿が。
…ぷっちん。 も、いい加減に我慢の限界だ。 「やめろぉぉ!!!」
ドッン!!!
夜空に銀色に輝く光の帯が出現し…そのままユーリの姿を上空にと照らし出す。
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