「…で?」 腕組みをしつつ、肩にヴォルフラムが持ってきたタオルをまいて、 もう一枚で髪を隠して聞いてくるアンリに。 「で?といわれても……。今回は魔笛探索だったみたいなんだけどさ。 もどったらエドさん、何か旅行中らしくて。旅行にでちゃってるらしくてさ。 オレも帰るに帰れなかったんだよねぇ」 「ええ!?何考えてるの!?エドは!?」 オレの返事になぜか叫んでくるアンリだけど。 「それはオレが聞きたいって。何かよく判らないけど、箱を悪用する気配がどうだのこうだの…… エドさんの伝言をニルファが預かっていたらしくて聞いたんだけどさ」 オレの言葉に。 「ニルファ?もしかしてニルファーレナにあったの?ユーリ?」 眉をひそめて聞き返してくるアンリの言葉に。 「うん。ウルリーケや他の巫女さんたちもニルファにあったよ?」 オレの言葉に。 なぜか、あた〜といった表情をし、手で顔を覆っているアンリだし。 「?アンリ?」 何やら小さく。 変なこと…というか余計なこととかいわなかっただろうな…ニルファは…… とかアンリが独り言でつぶやいている声が聞こえてくる。 「とにかく、オレは道をつなげる方法ってどうやるのか知らないし。 ウルリーケも一人じゃできないらしい。仕方ないからエドさんがもどってくるまで待つしかない。 …って、オレだってあんなイベントのまっ最中に引っ張られたから気にはしてたんだよ?」 オレの説明に。 「まったくだよ。こうなったらエドにはみっちりと説教どころかお仕置きしとかないとっ!」 『いや、お仕置きって……』 アンリの言葉に、オレとコンラッドとヴォルフラムの声が思わず重なる。 多分気持ちは同じだろう。 「ともかく。そういうことか。――わかった。エドには僕から話をつけるから。 幽体離脱したらどこにいてもエドには追いつけるしね。ユーリはすぐにもどれる準備をしておいて」 えっ!? 「ちょっとまって!アンリ!そりゃ、急がないといけないのはわかるけど! とりあえず今の一件が落ち着くまでまって!!」 今ここで帰るわけにはいかないし。 「……今度は自分から何に首をつっこんでるの?」 「うっ!?」 さすが幼馴染であり親友だ。 ぐさっと核心をついてくる。 「ユーリは盗まれた魔石探索に無理いって町にとでて。 そこでどうも盗まれた魔石を賊が落としたらしいそれを拾った家族がいて。 その家族のために何とかしようと、ただいま首を突っ込み中だ」 そんなアンリにと横のほうから何なら言っているヴォルフラム。 「石?」 「ええ。魔力を回復したり、直したりする力をもっている。魔石です」 「ああ。あの血魔石ね」 ローズビット? そういう名前なんだ。 「でもあれ、そんなに地上では取れないでしょ?そもそもは天空人が使っているものだし。 生成法も人や魔族には無理だし。あれって一種の天空人の血の結晶みたいなものだからね」 「そうなの?」 アンリの説明に思わず目を点にして問いかけるオレに。 「オレたちはそこまでは詳しくないですけど……」 「滅多と取れない貴重な石、ということだけはわかっているがな」 コンラッドとヴォルフラムが交互にといってくる。 どうやら彼らも詳しくはそこまで知らなかったらしい。 「ま、僕やユーリなら作れるんだけどねぇ」 『作れるの(か)(ですか)!!?』 思わずびっくり。 オレだけでなくコンラッドやヴォルフも驚いたらしい。 頭にタオルを乗せたまま、アンリは何やら考え込みつつ。 「とりあえず、僕、眞王廟からエドを追ってちょっと出てくるから。 ユーリは今首を突っ込んでいるこの一件を早く解決しといて。で、手をだして?」 「あ。うん。」 ってッ!? アンリに言われ、手を差し出すと、何かチクリ、とした痛みが。 「いたっ!」 ふとみれば、指先からちょぴっと血がでているし。 『猊下!?』 驚きの声を上げる二人とは対照的に。 「もう一つないと不便そうだしね。どうせユーリのことだから。 石を拾った家族のために何かしてるんでしょ?二つあればそのまま使ってもらえるし」 ……一を聞いて十を知る。 というのはアンリのことを言うんだろうなぁ…… アンリが何やら意味不明な言葉をつぶやき始めたその直後。 オレの手とアンリの手の間が光りだす。 そして次の瞬間。 まばゆい光が放たれたと思うと同時。 「はい」 「……え?」 みればアンリの手の中にはあの石とまったく同じものが。 いや、こっちの方が色も澄んでいて透明感もかなり高い。 「これは!?」 「こんなのすぐに作れるものなのか!?」 それをみて、驚きを隠せないコンラッドたち。 「とりあえず、これは僕がもっとくよ?じゃ、後で」 そんな驚きを意に介することもなくさらり、とそんなことを言っているアンリ。 いやあの…今、アンリ…何やったわけ? ねえ? それってあの魔石じゃあ…… 「あ。猊下。そのままの格好では人目に……」 コンラッドがアンリにと、言いかけようとするが。 「そのまま移動するから。ユーリは元の服に着替えてまっておくように。いいね?」 「…ハイハイ。わかったってば……」 こういうときのアンリに逆らうと後が恐い。 何か怒ってるし…… オレの言葉を聞くと同時に、アンリの姿がその場から瞬時にと掻き消える。 きっとおそらく瞬間移動で眞王廟にといったんだろう。 しばし残されたオレたちは呆然とするものの。 「……と、とにかく陛下。家に入りましょう。その以前に、髪を染め直さないといけませんね」 コンラッドがオレにといってくる。 みれば先ほどのお湯を浴びて髪の色が少し落ちてるし。 あらま。 「…あのぉ?どうかなさったんですかぁ?」 家の中からロゼの声。 うわっ!? あわててタオルで髪を隠す。 「あ。うん、何でもない。お風呂ご馳走様!」 遠くなので目の色はバレないだろう。 「お礼の夕食をご馳走しますね」 「いいって。帰って食べるから」 「でも何かお礼を……」 いって外に出てくるし。 ま…まずいって…… 「へくしゅっ!」 「まあ、大変!湯冷めしたらいけませんわ!やっぱり秋口に外のお風呂は体に悪いですよ。 もう一度家の中の風呂へどうぞ。ね?」 オレがくしゃみをするのと同時、コンラッドがバスタオルで頭と体ごとおおって、 ロゼの目からはオレの顔や髪が見えないようにとしてくれる。 さすが、という以外にはない。 ロゼに促され、今一度家の中のお風呂にといれてもらうことに。 そこで髪を染め直し、コンラッドにコンタクトを装備してもらって風呂から出る。 しばし雑談をしていると、いつのまにか外は真っ暗に。 さすが秋口。 日が落ちるのが早い。 ロゼたちに明日も来るから、と別れをいい。 見張りをコッヒーにとまかせて。 オレたちは一度城にともどることに。
城にともどると、どうやらアンリはまだ眞王廟からもどってないようだけど。 「ひっく…ぐしゅ……」 あ゛〜…… 城にもどるとギュンターが涙を流していじけているし。 何か綺麗な顔の人が自分のせいでいじけていたら心が痛む。 いや、綺麗な人じゃなくても痛むけど。 「わるかったよ〜。ギュンター。ギュンターの綺麗な顔でそう泣かれてたら心が痛む……」 窓辺に寄り添い、いじけるギュンターにと話しかけると。 「陛下!?」 ぱっと顔を輝かせるギュンターだし。 オレだいぶギュンターの転がし方…もとい、扱い方がかってきたなぁ…… 慣れってすごい。 うん。 と。 「陛下っ!!」 何やらあわてた様子で部屋にと入ってくるコンラッド。 「え?何?」 「いいから!早く!きてください」 オレの腕をつかんでそんなことをいってくるけど。 どうやらオーラがただ事ではない、と物語っている。 「え?オレまだコンタクトもはずしてないよ?」 「リゾットがさらわれたらしいんです!」 「ええ!?」 コンラッドの言葉に思わず驚愕。 あわてて、コンラッドと一緒に外にと出る。 「それで!?」 「今父親が……。先にヴォルフラムが対応にいってます。 門番にヴォルフラムの名前をいったらしく。骨飛族もいましたからね」 外にでつつも問いかけるオレの質問に答えてくるコンラッド。 コッヒーが? 何で? …もしかして、見失ったとか? とにかく急がないと。
城の内門近く。 「遅いぞ!!」 建物にとよりかかり、待っているヴォルフラムの姿。 こちらはすでに着替え終わっているようだ。 その先には回りをきょろきょろとしつつも、何やら戸惑ったようなロゼたちのお父さんの姿。 どうやらヴォルフラムがここまでつれて入ったらしい。 「リゾットがさらわれたって!?」 オレの言葉に。 「ええ。ゴミ捨てに外にでた一瞬に……」 とまどいつつも、話してくれるお父さん。 「その後に『子供を返してほしければ魔石をもってこい。』と書かれた紙がおいてありまして…… 娘はそれをみて魔石をもっていってしまいました。 フーリさんがつけてくださった骨飛族がすぐに追いかけてくれたのですが……」 そこまでいう彼の言葉に、オレは屋根の上のコッヒーにと視線を移し。 「…見失っちゃったの!?」 カタタタ…カタリ。 反省はしているらしく、頭を下げすぎて顔を落としているコッヒーだし…… 「コッヒー…まったく……」 オレのつぶやきに。 「それで。とりあえずとるものもとりあえずあの骨飛族に誘われてここまできたんですが。 ……ここは血盟城。ですし……」 ぎくっ!! 思わず固まってしまう。 コンラッドとヴォルフラムもどうしたものか、と思っているらしく立ち尽くしているし。 「あなた様は一体?それに門番がそちらの人を閣下と…ヴォルフラム閣下といいましたら……」 ぎくくくっ!! 「え…ええと。そう。客人。ただの客人…オレはね」 客人に代わりはないし。 …王様になっちゃった。 というのを除けば。 こっちの産まれっていわれても、いまいちピン、ときてないしなぁ〜。 「しかし、行き先がわからないんじゃ困りましたね」 そういいかけるコンラッドの言葉をさえぎり、何やら口笛のような音がして。 オレの足元にと何やら石にくるまれた投げ文らしきものが投げられてくる。 「?」 それを拾い上げてみる…が。 「?何て書いてあるの?」 オレの問いかけに。 「ユーリ!おまえははやくこちらの言葉を読み書きできるくらいにはなれ!…何々?これは……」 「どうやらロゼは石をもって町外れの丘の上の墓地に呼び出されたようですね」 ヴォルフラムとコンラッドの言葉に。 「そうなの!?だったら急いで助けにいかないと!!」 「あ…あのぉ?娘と息子は……」 とまどいつつも問いかけてくるお父さんの姿。
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