「それで?おじょうさん?さっきのやつらは一体?」
椅子にと体をもたれかけ、ロゼにと聞いているヨサ゜ック。
ロゼの見た目は十四か五。
オレより年下って感じだし。
ちなみにヴォルフは見た目十五・六歳だ。
…実際は八十二歳らしいけど…さ……
「そういえば、ただのごろつき、という感じじゃなかったな」
「何か事情があるならはなしてみてくれない?力になれるかもしれないし」
オレのそんな問いかけに。
「主は困っている人をみるとほっとけないタイプなので。
  頼まれなくてもイヤでも首を自分から突っ込むでしょうけど」
つぶやくヴォルフラムとは対象的に、にこやかに言っているコンラッド。
「…それってフォーローになってないと思うんだけど……」
思わずじと目でいうオレに。
「まの、坊ちゃんなら、絶対に、頼まれなくてもおせっかい心を出してどうにかしよう。
  とするのが目に見えてますからねぇ」
「まったくだ。こいつは自分の立場、というものを少しは考えろっていうんだ!」
「だぁぁ!みんなして!何だよ!?
  困っている人を助けたり、助けたいって思うのは当たり前だろ!?人として!!」
オレの叫びになぜかヴォルフラムはため息をつき、ヨザックとコンラッドは笑っている。
「と。とにかく。何か困っているんだったらいってみて?
  何かオレたちでも少しは力になれるかもしれないし…ね?」
オレの言葉に少し戸惑いつつも。
父親と弟の顔をみて、やがて意を決したように。
ぽつりと。
「……拾いものをしたんです」
『ひろいもの?』
思わず問いかけるオレとヴォルフラム。
「建物と建物の間に落ちていて……。で、拾ってもって帰って父に聞いたら。
  それは非常に高価なものだ…と。それを使えば父と弟を楽させてあげられるかもしれない。
  そう思って新しい商売を考えたんです」
いって一度言葉をきり。
「そうしたら、あの人たちが…どこで知ったのかわかりませんけど。
  それを渡せっていってきて……もちろん。私泥棒じゃありません。
  あの人たちのものだってわかったらきちんとお返ししますっていったんです。
  でも、そうしたら今度は力づくで……」
力づくでそれを奪おうとしたわけか。
「ははぁん。なるほど。そいつら。それがほしくなってさっきみたいなことを……」
どうやら話が見えてきたぞ。
オレのつぶやきに。
「ちょっとまて!さっきから、それだの何だの!いったいその拾いものとは何なんだ!?」
「あ。そういえばまだ聞いてなかった。それって何なの?」
ヴォルフラムの突っ込みに、肝心なことを聞いていないことを思い出し問いかけるオレに。
「とっても便利なものなんです。壊れた魔道装置を直したり。
  魔力を回復させたり出来る不思議な石…これを使えば父と弟を助けつつ商売が出来るかなぁ…と」
いって、ごそごそとスカートの下のほうから小さな袋を取り出し。
そしてその中からあるものを取り出すロゼ。
『へ?』
そんな彼女の言葉に、思わず目を丸くするオレたちの前で。
何か赤いホームベースのような形の赤い石を袋の中から取り出しているロゼ。
『あぁぁぁ〜〜〜!!!!』
思わず身を乗り出してしまう。
ヨザックも身を乗り出しているし。
コンラッドまで珍しく驚いている。
「魔石!?」
オレの言葉に。
「知ってるんですか?ええ。とっても貴重な石らしいんです」
うなづいているロゼ。
うわっ!?
まさかこんなところで見つかるなんて!?
「お父さん、私がきっとこの石で助けてあげるからね」
「お姉ちゃん!」
何やらこの親子は親子で盛り上がってるし……

「あ。ちょっと、ごめん」
オレが席を立つのと、ヴォルフラムが席を立つのは同時。
とりあえずヨザックが座っていた席にと移動する。
「…あれがそうなの?」
オレの問いかけにうなづくヨザック。
「思わぬところでみつかったな」
オレもそう思うよ。
ヴォルフラム。
「でも…何で?」
オレの至極当然な疑問に。
「賊のほうで何か手違いがあったんでしょう」
腕を組んでいってくるコンラッド。
「ええ!?ってことはさっきの男たちが!?」
つまり彼らは下っ端ってことか。
とすれば、この家族がこれからも狙われる可能性は大。
「おそらく」
そんなコンラッドの言葉に。
「でもどうする?」
オレの問いかけに。
「そりゃ、当然。もって帰るでしょう」
当たり前のように言ってくるヨザック。
だけども。
「でもそれじゃあ……あの子たちが……」
見れば石を使って父親と弟を楽にさせてあげようとしているロゼのけなげな姿。
ううっ……
「いえない…いえないよ…魔石を返せだなんてぇ……」
思わず涙してしまう。
だって城にもって帰ったとしても、あの魔石、宝物庫の中身の一つと成り果てるわけだし。
それよりは困っている人のために使われたほうが石としても絶対に本望なはず。
「しかし。このままではまた彼女たちが狙われますよ?」
そんな涙するオレにといってくるコンラッド。
それは判っているけどさ。
「……ううっ…。あ。そだ!ヨザック!コンラッド!耳をかして!」
確かに、このままだと、この親子が危険だ。
だけども、このまま石だけをもってもどる。
というわけにもいかない。
だったら。
なならば。
ごしょごしょ……
彼らに耳打ちして、意見というか考えを伝えると。
オレの言葉をきき終え。
「…あなたという人は……」
いって苦笑いするコンラッドに。
「なるほど。面白そうですね。よっしゃ!血盟城の娘たちにも協力してもらいましょうや!」
何かかなり乗り気のヨザック。

「ロゼ。とりあえずその石の本来のも治癒すが分かるまで。
  しばらく君たちが食べていけるくらいお金がたまるように協力するよ!」
そんなオレの言葉をうけ。
「それじゃ、俺はちょっくらもどって用意してきますわ。チラシとかもつくりましょうや!」
「…ヨザック。張り切ってるな……」
そんなヨザックに問いかけるコンラッドに対し。
「坊ちゃんといたら退屈はしませんって。それじゃっ!」
どういう意味だよ…ヨザック……
いって一度店から出て、血盟城にともどっていくヨザックの姿が。
「よ〜し!オレたちはチラシや看板の作成だ!」
そんな勢い込んだオレの言葉に。
「おまえは文字がかけるようになったのか?」
「うっ!?」
オレの言葉に鋭く突っ込みをいれてくるヴォルフラムだし。
「ま…まだです……」
しゅん、となるオレにわらいつ。
「俺がかきますよ。日本の大安売りの感覚でいきますか?」
「ほんと!?サンキュー。コンラッド。そだね。とりあえず半額セールからやってみよう!」
盛り上がるオレ達をみて。
「あ…あのぉ?そこまでしていただくわけには……」
戸惑いつつもいってくるロゼ。
そんなロゼに対し。
「いってもムダだ。こいつはやる。といったら後先考えずに行動するからな。
  あんたもあきらめて付き合う覚悟を決めてやってくれ」
そんなことを言っているヴォルフラムだけど。
そんなヴォルフラムの言葉をうけ。
なぜか。
「…苦労なされてるんですね……。わかりました。それではお言葉に甘えさせていただきます」
いって、ペコリ、と頭を下げてくるロゼと、その家族でもある弟と父親の姿が。
そんなに苦労…かけてるかな?


「あれ?君たちが手伝ってくれるの?」
「はい!陛下!」
「何か楽しそうですし」
「バニーグッズももってきました〜!!」
…こ、この世界にもあるんだ…そ〜いうのって……
何かかなり乗り気な血盟城にと使えている三人娘。
確か彼女たちはオレの部屋にと来たことあるし。
服もって。
そのうちの一人ははじめのとき、ヴォルフラムの炎の獅子につっこまれちゃった少女だし。
名前をドリア・ラザニア・サングリア。
とそれぞれいうらしい。
「ハッピもありまっせぇ!」
…なぜに大阪弁もどき?
ヨザックの言葉に思わず心で突っ込み。
「ま、と…ともかく。まずは店の宣伝から!」
『お〜!!!』
盛り上がるオレたちとは対象的に。
「ユーリは魔王としての自覚があるのか!?」
「まあまあ。それが陛下のいいところだし」
横でそんな会話をしているこの兄と弟。
ロゼたちは今家の中にいるからいいけど、聞かれたらどうする気何だろ・・・…
やっぱり開店記念。
といったらセールだし。
ビラをまき、大声で呼びかけるものの、なぜかお客はよりつかず。
…う〜ん……
やっかいごとに巻き込まれるかも…と遠慮してるな…これは……
ま、だけどもメゲてはだめだ。
継続は力なり、というし。
それに万が一、盗賊がやってきたとしたら、彼らを捕らえさえすればこの家族は安泰だ。
その辺りを飛んでいたコッヒーたちにと頼んでこの家の周囲を警戒してもらってるし。
ついでにヨザックが城からつれてきたコッヒーに家の人たちを見守るようにとお願いしたし。
オレたちはオレたちで根気よく呼び込みを続けるしかないでしょう。
呼び込みを続けることしばらく。
少し時間が経過して、ふと気づくと何か小さな子供が恐る恐る家と家の間からのぞいている。
みれば、何か治してもらいたいものがあるけど…でも……
といった不安をもっているオーラを発しているし。
「あ。ロゼ!お客さんだよ〜!!ちょっと出てきてくれる?コンラッド。
  あの子ここに連れてきてもらえる?」
「判りました」
オレの言葉にコンラッドがその女の子にとちかづいてゆく。
そして、そのまま促すようにとその子をこちらにとつれてくる。
見た目、六歳かそれより下の小さな女の子。
小さい女の子からはお金は取れない。
というので初のお客さんは無料。
ということに。
女の子が大事そうに抱えているのはボロボロの人形。
きっと女の子にとってとても大切なものなのだろう。
女の子が人形を両手でもち、祈るような表情で、
目の前のいえから出てきて、その手に石をもっているロゼにと視線をむけている。
そんな女の子をみて、ロゼは少し緊張した面持ちで。
そして女の子にと近づいていき。
そのまま、石を女の子が掲げている人形にとむけてゆく。
ロゼが人形に石をかざすと同時。
石から赤い光が発せられ。
そして。
「うわっ!?」
思わずびっくり。
ぼろぼろであったはずの人形の髪がいきなりずわっと伸びる。
次には表情…つまり人形の顔までが一気にと変わる。
なぜか人形の目からは涙が!?
……これ、心霊番組より驚くぞ。
いや、まじで。
驚き固まるオレとは対象的に。
「ありがとう!お姉ちゃん!」
新品といっても過言でなくなった人形をうれしそうにもってお礼を言ってくる女の子。
「…すごい効果……」
オレのつぶやきは何のその。
「さぁさあ!今のみてましたね!今なら格安セールですよぉ!」
ヨザックがこちらの様子を伺い見ているらしい町の人たちにと話しかけてるし。
…何でおどろかないんだろ?
……こういう経験って慣れてるのかな?



戻る  →BACK・・・  →NEXT・・・