「うわぁ!ひさしぶりの城下町だぁ!!」
例のごとくに、目にコンタクトをいれ、…ちなみにあちらから持ってきている使い捨て用。
やっぱりそのほうが目にもいいし。
何よりも自分的にはこっちで作られたものよりもごろごろしない。
日本から持ってきたコンタクトを元に最近は以前よりも付け心地のいいものが開発されているらしいけど。
だけどオレとしてはそんなことで国民の皆様の税金をムダにしてほしくない。
それより保養所とか医療施設とかをつくってほしい。
というのが本音である。
…一応意見はだしているけど、どうなることか……
あとは義務教育制度とか。
税金の使い道の公開…公開については即却下されたけど。
でもさ。
普通国民の皆様に開示するのが義務じゃん?
こりずに何度もいってみようと思ってはいるけどさ。
とにかく、そんなこんなでようやく城の外にとやってきたオレたち。
オレとしてはもう、感激で一杯だ。
ようやくあの勉強づくめの毎日から開放されたというか、何というか……
感激して叫ぶオレに。
「なんで僕までこんな格好をしなくちゃならないんだ!!」
文句をいっているヴォルフラム。
いつもの服ではなくて、一般の人たちと同じ服にと全員着替えている。
そりゃ、あの格好だと、自分は軍人です。
っていってるようなものだよな。うん。
特にヴォルフラムは顔がいいし。
「正体がばれるとまずいんでは?」
そんなヴォルフラムに言っているヨザック。
「そうそう。あ!コッヒーだ!お〜い!コッヒー!元気ぃ!?」
みれば、上空をコッヒー…つまり、骨飛族が飛んでいる。
「骨飛族も魔石の探索に乗り出しているんですよ」
そんなコッヒーに向かって手をふるオレにと説明してくるコンラッド。
「へぇ」
でもさ、上空からでもわかるものなのかなぁ?
などと素朴な疑問も持ったりするけど。
何はともあれ。
「でもさ。何かいいねぇ。やっぱこういうのって。やっぱ上様はこうしてお忍びで町にとでて。
  問題をどんどん解決していかないとね!」
オレの言葉に。
「は?うえ…?」
首をかしげるヨザックに。
「何だ!?それは!?男か!?」
なぜかくってかかってくるヴォルフラム。
「ヴォルフ。上様っていうのは。陛下が好きな時代劇の話だよ。
  陛下の住まわれている国のずいぶんと前の話だが。
  当時八百年の間にわたり一つの一族で日本国土を統一といていたその王のことだよ。
  陛下の国では将軍とか上さまと呼ばれていたらしいけどね」
「八百年とはずいぶんと短いですねぇ」
「日本の中じゃ一番長いよ」
ヨザックのつぶやきに答えるオレに笑いながら。
「で、その八百年の間に、十五人ほど王がいたらしいですけどね。
   その中の八代目の人物を元にした劇を陛下の育たれた時期やっていましてね。
   陛下は物心ついたころからその…時代劇っていうんだけど。それのファンなんだよ」
ヴォルフとヨザックにコンラッドが何やら説明しているけど。
「そ。お忍びで名前も変えて城下とかをうろついて。悪を裁き正義をつらぬく!
  その結果、国民の声が反映されて、国経営の保養所とか養生所とか。
  あとは目安箱…これは、庶民の声を聞くっていう箱を設置したの。
  それは絶対に誰にも空けられることなく、直接に上様の下まで運ばれて、そこで開かれるってモノでね。
  ……今度提案してみようかなぁ?目安箱……」
オレのそんなつぶやきに。
「陛下はその前にまだ文字が読めないじゃないですか。まず先に勉強ですね」
がくっ。
「あのなぁ。コンラッド。せっかく町に出てきたんだから。そういうことは……」
オレが言いかけると、何やら。
「放してください!」
「姉ちゃんよぉ。」
どうみても、ごろつきさんたちが女の子を取り囲んでいる光景が目にと入る。
まっぴる間。
しかも、大通り。
さらにはオレの前でいい度胸だ。
ともかく女の子を助けないと。
オレがそちらに行こうとすると、コンラッドがオレを手で制し、
うやうやしくお辞儀をしてから、そちらに一歩すすんでゆく。
「何をしている?」
コンラッドの声に振り向く男たち。
男三人に女の子一人。
はっきりいって卑怯極まりない。
文句を思わず言いかけるオレに。
「まあまあ。ここは隊長に任せて。ね?」
「そうだ。おまえが出ていっても何にもならないだろうが。このへなちょこ」
ぐさっ。
ヨザックにと止められ、さらにはヴォルフラムにはとどめの台詞を言われるし。
痛いところをついてくるよなぁ〜……
あいかわらず、こいつは……
視線の先では。
「しゃらくせぇ!」
「やっちまえ!」
何かお約束のパターナと成り果てて、コンラッドにと向かっていっているごろつきたち。
コンラッドが剣にと手をかけたと同時。
ヒュッ!
風の切れる音がしたかとおもうと、次の瞬間にはコンラッドは男たちの間をすり抜けて、
そのまま剣を再びしまっていたりする。
うわっ。
早業。
と。
パラッ。
男たちのズボンが全員ずりおちる。
どうやらズボンのベルトや紐を今の一瞬で断ち切ったらしい。
「さっすがぁ」
そんな感心した声をだすオレとは対照的に。
「ふん。甘いやつだ」
などといっているヴォルフラム。
「おじょうさん。大丈夫でしたか?」
コンラッドが壁際に追い詰められていた女の子にと話しかけると。
「あ。はい。ありがとうございました」
いって、ぺこり、と頭をさげてくる。
「とりあえず。またあいつらが来ないうちにここから離れたほうがいいんちがいますか?」
「そうだねぇ。えっと、送ってく。君の家どこ?」
コンラッドの後ろにと近づいて問いかけるヨザックやオレの言葉に。
しばし、オレたちを見渡して。
「あ…あの?」
「だって一人で帰したらあぶないじゃん」
「まったく。相変わらず人がよすぎるぞ!おまえは!」
「いててっ!?」
何かいってオレの耳を引っ張ってくるヴォルフラムだけど。
って耳を引っ張るなよ!
ヴォルフ!
「まあまあ。へ…でなかった。それが坊ちゃんのいいところなんだから」
そんなヴォルフを苦笑しつつなだめているのか、そんなことをいうコンラッドの言葉に。
「ふんっ!こいつの場合は考えがない。というんだ!」
コンラッドの言葉に、きっぱりと即答しているヴォルフだし。
「あのなぁ。だって普通見てみぬふりとかするのって人として許せないだろ?」
「だからって、自分から首をつっこんでいくな!いつもいつも!」
そんなオレとヴォルフの言い合いをみつつ。
「…あ、あのぉ?この二人、大丈夫なんですか?」
どうやら、オレたちは連れ。
と判断した、というかわかったらしい少女がコンラッドにと問いかけているけど。
「いつものコトなので気にしないでください」
「は…はぁ……」
戸惑う筒も、オレたちを助けてくれたお礼にと。
彼女は彼女の家にとオレたちを案内してくれることに。


何か書かれた看板が表にかかり、表にはナイフとフォークの看板が。
たぶん食堂。
でも店の中にと入っても誰もお客さんの姿はみえず。
中にいたのは少しとしをとった四十代中心くらいの男性と。
七・八歳くらいの男の子。
…魔族なんだろうから見た目、×五で年齢は計算しないといけないんだろうけど……
一応見た目の年齢で判断しておこう。
でないとどうも感覚がつかめないしなぁ……
オレ、いまだに……

「せっかく助けていただいたのに。こんなお礼しかできませんで」
コトリ。
目の前に差し出されてくる飲み物。
色的にはミルクコーヒーかミルク紅茶だけど。
だけど味的には何か違うような気がする。
「いや、おかまいなく」
いって。
「あ、申し送れました。私は原宿風利。旅行中の商家の次男坊でして。これらは共のものです」
「はらじゅくふぅりぃ!?」
オレの言葉に不服そうな声を上げてくるヴォルフラム。
だって、渋谷有利っていって、万が一ばれたらやばいでしょ?
まあ、そっちの名前は一般には知られてない…とは思うけど。
何しろ書類上で使っている名前だしなぁ。
渋谷有利原宿不利。は。
「あ。私ロゼといいます。こちらが弟のリゾットです」
いって自己紹介をしてくれる。
弟のほうは近くでみると見た目七歳かそこらだろう。
「しかし、おじょうさん?表に何か『休み』の看板がかかっていましたけど?やってないんですか?店?」
コンラッドが出された飲み物に手をつけつつもいってくる。
ちなみに、オレとヴォルフラムがカウンターに。
ヨザックは窓際の席。
コンラッドは入り口の真横というか扉の横に壁に寄りかかっている状態だ。
どうやら見張りもかねているらしい。
そんなに警戒しなくたって大丈夫だと思うけどなぁ?
だって、ここ王都なんだしさ。
「私が体を壊してしまいましてね。もう半年もお店を閉めたままにしているんです」
「半年も!?」
思わずびっくり。
それってオレが即位する直前か直後から…ってこと?
何かこっちではもう数ヶ月は経過しているみたいだし……
日本ではまだあれから三ヶ月しか経過してないのに。
それでももう異世界旅行を始めて三ヶ月…は、早い……
こっちでは確か六ヶ月は軽く過ぎているはず…だよな?
「ええ。そのため、娘には苦労をかけて…働きに出てくれているんですが。
  なにぶんまだ子供で…おまえには苦労をかけるねぇ。いつもすまない…ううっ」
「何をいってるの。お父さん。それはいわない約束でしょう?」
・・・・・・・・
「…な、何かますます時代劇っぽくなってきてる……」
時代劇の定番パターンだし……
あれ?
でも……
「あれ?でも確か魔族って十六で成人。とみなされるんじゃないの?」
オレの問いかけに。
「普通はな。だが、働くにしてもそれなりの年齢に達していないとな。
  十六になったから、といって何でも出来る、というわけじゃない」
オレの素朴な疑問にヴォルフラムが答えてくる。
そして。
「今までそんなことも知らなかったのか?このへなちょこが」
ぐさっ!
「へなちょこっていうな!…そうだよなぁ。十六っていっても純魔族だったら見た目五歳児…だもんなぁ……
  成長速度って人それぞれ違うらしいけど」
いまだによく実感できてないし。
オレ。
「大体見た目年齢も十六に達したらどんな職業にも就けますよ」
オレの素朴な疑問に答えてくるコンラッド。



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