「ともかく。ヴォルフラム。陛下もお疲れだろう。城にもどるぞ。
  おまえたちは先にいってお二人が帰城する旨を伝えてくれ」
『はっ!!』
兵士にいって、先に連絡にいかせているコンラッドの姿。
「頼むから、笑ってないでたすけてよぉ!」
何でか、笑いをコンラッドはこらえつつもオレとヴォルフラムをみているし。
「大きさでいえば、フォンビーレフェルト卿のが一番大きいよ。さ。僕達もいこ」
ぴたっ。
あ。とまった。
アンリの言葉に、なぜヴォルフラムの動きが止まる。
「本当か!?」
いわれてみれば……
「う〜ん。そういえば。大きさからしたらそうなるかなぁ?だってジクソーパズルだし。
  あとはオルゴールとか宝石入れとか、そんなものとかだし。小物入れとかさ」
オレのつぶやきに。
「ならいい」
「…は?」
「ならいいっていってるんだ!いくぞ!このへなちょこが!!」
いって、オレの襟くびから手を離し、何でか機嫌を少し直しているヴォルフラムだし。
……変なの?
??
首をかしげつつも、とりあえず、馬にとまたがるオレに。
「ヴォルフにジクソーパズルですか。何かグウェンダル向きのような気がしますけど……」
いって笑っているコンラッド。
「自由になる時間確保のため」
「――なるほど」
何しろヴォルフラムときたら、何でかオレの部屋にと住みついちゃってるし。
なら何か熱中するものでもあれば、少しはオレものんびりとできる、というものだしね。
オレの言いたいことがわかったのか、笑いながらオレを馬にとあげるコンラッド。
そして、そのまま馬にとまたがり城にとオレたちはもどってゆく。



「陛下っ!!」
城の門をくぐると、なぜか抱きついてくるギュンター。
そんな彼にと思わずとまどう。
「ただいま。ってだって昨日の今日だよ?」
確か、こっちでも同じ日付しかたっていない。
とアンリがいってたし。
「そんなことより。お怪我はございませんか!?
  猊下と二人でお供もつれずに眞王廟から歩いてくるなど!何て無謀なっ!!」
何か叫んでるし。
「だってアンリは一人でよく動いてるじゃん?」
「猊下は猊下ですっ!」
「そりゃそうだけどさ……」
「おまえはもう少し王としての自覚をだな。だからへなちょこだ、というんだ。
  猊下は何があっても自力でどうにかできるだろうが。おまえは何もできないだろうが。
  剣の腕もなければ自分の意思で魔力も使えない。そんなので何かあったらどうする気だ!?」
横でヴォルフラムが腕を組みつついってくる。
「うっ!!」
痛いところをついてくる。
「一応僕はそこそこ剣もつかえるよ?…今回の生では使ったことなんて当然ながらないけどさぁ。
  というか、大概日本というか現代社会でそんなもの使うことなんてないし」
「……あぅ〜……」
思わずがっくりと肩を落としてしまう。
「ま。ユーリもそのうちいやでも自在に扱えるって。
  というか、ソフィアさん側の血が表面に出てきちらったら別の意味で大変だけどね」
「?母さんの?何で?どういうこと?」
アンリの言葉はどういう意味だろ?
「つまり。天空人の血が表にでてきたら、物質的やそのほかのダメージは受け付けなくなる。
  というのがあるんだけど。反面。髪とかも染められなくなるし。当然コンタクトなんてもってのほか。
  あと翼のコントロールを覚えないと日常的に翼が出っ放しになって、生活も大変だし。
  今の父親サイドの力が濃く出ているほうが、今のユーリにはいいよ。
  ソフィアさんの術の封印の影響で肉体的に今のユーリの体は人間のそれと変わりないんだし。
  ま、とはいっても年月とともに産まれ持っていた肉体の特性にもどるけどね。
  それまでにはユーリは力のコントロールを覚えようね」
何だかよく意味のわからないようなアンリの説明に。
「陛下の母君。ソフィア様はそれは綺麗な白い翼をもっていらしましたからね」
「光の翼のときもあれば、物質的な翼のときもある。翼を広げたソフィア様はそれは天空人いわく。
  神々しい、というらしいがな。こちらでは毒々しい、というが。
  とにかくすばらしいものだったぞ。楽しみだな。ユーリも翼を出せるようになったときが」
そういってくるヴォルフラム。
いや、毒々しいって……
神々しい、と同意語なわけ!?
ま…魔族語っていったい……
「オレが!?」
「陛下は生まれながらに綺麗な銀色の翼をもっていましたからね。今は封じられていますけど」
コンラッドがオレをみていってくる。
……それ、幾度かおふくろからもきいてます……
話半分には聞いてましたけど……
「う〜ん…今は翼がでちゃったら困るんだけどさぁ…創主がねぇ……」

アンリが何やら小さくつぶやいているが。
「ま。そんなことより早く中にはいろ。
  時間をずらして送った缶詰がそろそろユーリの部屋にと届くころだし」
何か話題をさらり、とかえてないか?
アンリのやつ??
何はともあれ。
「あ!そうだった!アンリ、確か時間をずらして送ったとか何とかいってたっけ?」
アンリとオレの言葉に。
『――缶づめ??』
なぜか顔を見合わせている、ヴォルフラムとギュンター。
そして周囲の兵士たち。

とりあえず、ギュンターたちとともに、城の中へ。

ひとまず部屋にといくと、鏡の前に四つの缶がでんっ!とあるし。
「時間的にビンゴ!!」
いってその一つを抱きかかえるアンリに。
「?猊下?陛下?それは?」
それをみて首をかしげているギュンター。
「何だそれは?…何かかわいい絵がついているが……」
そういえば。
この缶の表の絵か魚やイルカ、といった海の生物たちだ。
「ま、みててって」
いいつつ。
ピー。
と缶の蓋を閉じていたテープをはぐ。
「あ。手伝います」
コンラッドもこんな感じの缶を知っているのか、手伝ってくれながら。
「これはまた。しかしずいぶんと大きな缶ですねぇ。オレが以前みたのは手のひらサイズでしたけど」
などといってくる。
「あ、ゴミはもってかえるから、こちにね」
ゴミ袋は持参しているし。
「ま、みててって。…よっと」
カパッ。
缶をそのまま上にとあける。
ちなみに、これは食べられる袋に一つ一つ入っているのが一番のポイントだ。
「…これは?」
「宝石か?」
聞いてくるギュンターやヴォルフラムに対して。
「食べ物だって。アメだよ。ほら」
いって一つつまんでヴォルフラムにと手渡す。
「あ、これ袋ごと食べられるやつですね。そう缶の表書きにかいてあるますし……」
横の注意書きをみて言っているコンラッド。
「そ。足りないとはおもうけど。城の皆でわけてもらおうとおもって。ま、食べてみなって」
とりあえず、オレが一つつまみ口にいれると、戸惑いつつも、動物。
又は魚の形をした色とりどりのアメを口にと含むギュンターたち。
そして。
「「これは――!?」」
「何と!?包んであるものが口の中で溶けて!?」
驚愕して目を丸くしている二人をそのままに。
「とりあえず、一つは厨房にもっていってもらって自由に配ってもらうことにして。
  コンラッド。これ城の皆が自由に食べてもいいようにどこかにおいといてくれる?」
「わかりました。しかし…思い切りましたねぇ。陛下たち」
いって苦笑しているコンラッドだし。
「コンラッドたちには別にお土産あるよ。シーワールドの」
いいつつも、ごそごそと袋から取り出し。
「はい。ギュンター。これギュンターにね。お土産」
「わ…わたくしにですか!?」
オレから箱をうけとり、何やら感激しているギュンター。
「で、これがコンラッド。でもってツェリ様は留守…だよね?これがアニシナさんに。
  で、これがヴォルフの。グウェンダルのがこれっと……」
ずらり。
と並べていうオレに。
「ユーリ?あけてもいいか?」
「いいけど。その大きいのはジクソーパズルだから。
  その箱の絵と同じものが完成したらデキルから。一緒に入っている額に入れたら保存になるよ」
聞いてくるヴォルフラムに簡単に説明をいれておきながら。
「で、コンラッドのはカフスボタンと懐中時計」
いいつつ手渡していると。
「陛下がお戻りになったんですって!?
  陛下!眞王廟の巫女たちがもってた…って、あら?何してらっしゃるのですか?」
バタバタと足音がしたかとおもうと、扉をあけてアニシナさんが部屋の中にと入ってくる。
「あ、アニシナさん。ちょうどいいところに。はい。これお土産」
オレの言葉に。
「え!?わたくしにですか!?」
ギュンターをみればまだ箱を空けずに、というか包装すらも解かずに箱にと頬ずりしているが。
「陛下?これたかかったんじゃぁ……」
懐中時計をみて、そういってくるコンラッド。
ちなみに太陽電池式。
こっちにはだって電池の取替えなんてものはないし。
「大丈夫だって。気にしないで。だっていつもコンラッドにはお世話になってるし」
「ユーリ?これは何だ?」
「置時計と。だから後はジクソーパズル。その細かいピースを上手に組み合わせていったら、
  この箱の上に書かれている絵になるの。
  で、それをやるときにはこの板の上にこの紙をひらいて。
  で、出来たらこの額縁にといれて保存してもいいし。もしくはまたばらして楽しんでもいいし」
最近は額入りのがよくあるから、ヴォルフラムのはそれにしてみていたりする。
「これがこの絵になるのか?…面白そうだな」
オレの説明に、何やら興味をもったようだ。
よっし!
オレの自由になる時間、これでかなりゲットだ!
「クジラとシャチの絵ですか。涼しそうですね」
「…イルカはやだ」
箱の絵をみて言ってくるコンラッドに素直に気持ちをぽつり、ともらす。
やっぱり幼少期の体験はなかなかぬぐえるものではない。
…努力はするつもりだけど。
一方で。
「まあ!これは!何とかわった!!」
何かさっそく、包装紙を丁寧にと開いて箱を開けて。
中からゆらゆらとクリスタルの中で泳ぐ、お魚さんもどきの置物をみて目を輝かせているアニシナさん。
アニシナさんの好奇心に火がついたようだ。
「ゆらしたり、動かしたりしたら、また動きが早くなるよ?」
オレも原理は詳しくいえないけど。
「陛下。これはどんな魔力が使われているのですの!?
  入れ物の中で作り物の魚が動いているなんて!?…どこにも出入り口はなさそうですけど」
「魔力は使われてないよ?それ」
「まあ。本当ですの!?」
「というか、魔力なんて普通の地球人はもってないってば」
地球の魔族ですら普通の人間と変わらないのに。
地球では、ちなみに神族もかわらないらしい。



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