「まったく。肝を冷やしましたよ。眞王廟から差出人不明の。俺宛の手紙が届けられ。
  聞けば絶対にウルリーケから俺にと手渡すように言われたとか。
  ヴォルフやギュンターからは恋文ではないか?とからかわれて。
  開いてみれば、何やらこちらの世界では見慣れぬ封筒が入ってて。
  さらには陛下の文字で日本語でコンラッドへ。ですからね。
  中身を確認してみれば・・・二人して歩いて眞王廟からこちらに向かう。と書かれていますし。
  ギュンターなどは俺が声を出して呼んだら倒れちゃいましたよ。
  グウェンダルは頭を抱えて盛大にため息をついて、ヴォルフなんかは叫んでいましたからねぇ」
コンラッドにうながされ歩きつつ。
そんなオレの横でそんなことをいってくるコンラッドの姿。
「今回は僕。あらかじめウリちゃんに。明日…つまり今日くるけど連絡はいれないでねって言っておいたし。
  どうせユーリのことだから皆の分のお土産も買うだろうって思ってたしね。
  だったら驚かしたほうが効果的だしねぇ。
  最も、眞王廟の皆の分まで用意できたのはある意味ラッキーだったけど」
そんなコンラッドににこやかに説明しているアンリ。
「ま、まあヴォルフラムやギュンターが迎えに着てたら、あのヌイグルミの配布も困難だったろうなぁ〜……」
それだけは、オレでも何となくわかる。
アンリとオレの言葉に。
「そういえば。ウルリーケをはじめ。全員喜んでいましたよ。あの大量のヌイグルミ、どうなさったんですか?」
ウルリーケに聞きにいった、というだけあってコンラッドの情報把握は完璧だ。
そう聞いてくるコンラッドに。
「シーワールドで三百円毎に福引やってたの」
「でもって。今回…というか、前回エドがイベント中のプールにてユーリをひっぱりこんじゃったでしょ?
  ああいう場所ってとにかくイメージに左右されるからね。その後のサービスでいろいろと。
  二万円分のシーワールド内部限定金券とか。シーワールド特製の上下の服とかもらったんだよ」
オレに続きアンリが詳しく説明してくれる。
「…そういえば、前回…イベント中のというか……
  ……ショーの最中に引っ張り込まれた…っていってましたっけ……」
何か少し汗を流しながらコンラッドがいってくるけど。
「ま。エドにはしっかりとお仕置きしてお説教しておいたし。
  今度は大衆の前で、というのはやらないとおもうよ?」
「やられてたまりますかっての」
アンリのいうお仕置き…というのは気になるが。
多分聞かないほうがいい。
と直感が告げてるし。
そんな会話をしつつも、やがてオレたちは、血盟城にと続く道の一つ目の門を潜り抜ける。
そこには数頭の馬が待機しており、なぜかオレとアンリの馬までもが。
そして、そこには四名ほどの衛兵が待機しているが。
その中の二人の顔は……
「あれ?さっきの巡回兵さん!?」
思わずびっくりして叫ぶと、彼らもこちらに気づいて目を丸くしているし。
そして。
オレたちとコンラッドを交互にみて、とまどいつつ。
「あ…あの?閣下?このお二人は?」
戸惑いつつも問いかける兵士の言葉に。
「…さきほど彼らはアニシナ様に用事があってきている…と食堂でききましたが……」
もう一人の兵士がそんなことをいってくる。
そんな彼らの言葉に。
「アニシナに?……猊下ぁぁ。それで追求をかわしましたね?」
じと目でアンリをみていうコンラッドに。
「嘘じゃないよ。アニシナさんのお土産もあるし」
「というかさ。アンリがアニシナさんの名前を出しただけで、何かその人たち恐怖しちゃったみたいでさ。
  お店の人もだけど。詳しくは聞いてこなかったし。
  …アニシナさんの関係者っていえばそうなるものなの?コンラッド?」
問いかけるオレの言葉に。
「……うかつでした。猊下と一緒。ということは知恵もまわられる。というとですよね……
  確かに。アニシナは兵士のみならず国民からも実験…もとい、被写体をよく募集しますから……
  当然の反応なのでしょうが……」
あ、コンラッドがどこか遠い目をしてる。
「…被害にあっているのグウェンダルだけじゃないんだ……」
前、魔剣探索の後にやってきたときも思ったけど……
「グウェンダルがアニシナの一番の犠牲…もとい、被写体ですね。
  オレも昔二〜三回ほど実験体にされましたし」
「コンラッドまで!?」
思わずびっくりするオレに。
「僕も実験体にされそうになったけどさ♪式神つかって実験台はおしつけたし♪」
にこやかに言ってくるアンリ。
「…アンリ、式神ってもしかして……アレか?」
「だっていたいのやだもん」
『・・・・・・・・・・・・・』
何かよくわからないけど。
よく陰陽師とかでみるような。
平安時代の式神もどき。
つまりは、神を人型などに切り、それを具現化させる方法。
そういうのをアンリはやろうとおもえばできるし。
アンリの鳥羽に思わずその場にいる全員が無言に成り果てる。
ま、まあ確かに。
痛いのはいやだけど…さ。
「あ、あの?閣下?そのお二人は?いったい…それに猊下って…その?」
戸惑い気味の兵士たちの声。
「そういえば。そろそろそのカツラ。とられてはどうですか?」
ふと、その言葉に気づいたようにと、オレたちにといってくるコンラッド。
そういえば、まだカツラしたままだった。
「ま。もうばれちゃってるし。それに別にいっか」
もう町もないし。
あとは城にと続く道だけだし。
コンラッドの言葉にため息まじりにつぶやき、カツラをとり、ついでに眼鏡もはずす。
「あ。ユーリ。紙袋だして。カツラとか入れるから」
「了解。
オレの持っている袋の中から元々それらをいれていた袋を取り出し、
がさがさと中腰でオレとアンリの二人してお片づけモード。
「ついでにコートもしまっとこうか?」
「着ててもいいんじゃない?少し肌寒いし」
そんな会話をしつつ、カツラをふたつ、袋の中にとしまいこみ、そして立ち上がる。
そんな立ち上がったオレたちをみて。
なぜか兵士たちは全員固まっていたりする。
「へへへへ!?げげげげ!?」
何か『へ』と『げ』を連発してるし。
「えっと…どうも」
とりあえず、兵士の皆さんにかるく頭をさげておく。
「とにかく。お二人と無事に保護いたしましたし。
  ヴォルフラムや他のものには骨飛族を使って連絡します」
いってそこにいたコッヒーにと何やら言っているコンラッド。
多分、城下などでオレたちの探索をしている人たちにと連絡をとるためだろう。
こ…行動が早い……
「マ、魔王陛下と大賢者様とはつゆ知らず。先ほどは失礼いたしました!!」
二人の兵士が何やら言って頭をさげてくる。
「失礼…って、別に君たち何も失礼なことなんてしてないよ?」
オレの言葉に。
「いやしかしっ!あのような口の利き方を我々は!!」
何かカチカチに固まっていってくるし。
「だからぁ。失礼でも何でもないって。それより君達はお役目を果たしていただけじゃん?
  お仕事してただけなんだし。別に気にすることはないって」
パタパタと手をふりつつ言うオレに。
「な…何と慈悲深い……」
「…どうしてそういう些細なことでそういわれちゃうのかなぁ?」
以前、眞王廟のときもそんなことをいわれたし。
何やら感激しまくっている兵士二人の姿をみて、こちらのほうがとまどってしまう。
と。
「ユーリ!!おまえというやつはぁぁ!」
何やら前方からものすごい大声が。
みれば、走ってこちらに向かってやってくるヴォルフラムの姿が。
そして、そのままヴォルフラムはオレの胸元をつかみ。
「連絡もいれずに!猊下と二人で徒歩でくるとは何ごとだ!!何かあったらどうするぅぅ!!」
がくがくとオレをゆさぶってくるし。
「れ…連絡って…したじゃん。コンラッドに手紙で」
「あのなぁ〜!!!」
何かかなり怒っているようだ。
「というかさ。ほら。オレさ。シーワールドにいっててこっちにきたって前回いったろ?
  だからヴォルフたちにお土産かってきたんだよ。
  で、どうせならいきなりいって…というか、来て驚かそうかなぁ?とか」
「子供っぽいことをするなっ!!…ってお土産?」
「うんそう。ツェリ様やアニシナさんの分もあるよ?ヴォルフラムのは……」
ごそごそ。
「はい。これ」
とりあえず袋からいろいろと入れたら何とか長方形の箱にと収まったちょっと大きめの箱を手渡す。
それとそれよりもさらに二回り以上も大きい箱も。
「…これを僕に?」
「ジクソーパズル。大きい箱のほうはね。こっちが小物。
  あ、パズルは邪魔かな?あとで部屋にもどってから渡すよ」
オレの言葉に続いて。
「ユーリの部屋に直接。兵士たち用のアメも送ったけど。時間的にまだまだだね。時間ずらして送ったから」
のんびりとそんなことをいっているアンリ。
「猊下?兵士たちにも…とは?」
「小さなアメ。約二百五十入り。それを四個。千個くらいにしかならないけど。
  全員にはいきわたらないかもしれないけど、それ以上は金額的にもねぇ。
  まあ、全員分とはいかないまでも、一人ひとり小さい品物になっちゃったけど、しかも食べ物だし」
シーワールド特製。
大缶にと入っているアメ四つ。
結構重い。
ちなみに、一つ、五キロあったりするという代物だ。
両手抱えほどあるそれは、面白がって買って帰る人も多いとか。
ちなみにオレたちもその一員。
「まさか…お二人とも、兵士たちの分まで買われたんですか!?」
コンラッドの驚愕の声に。
『うん』
即答するオレとアンリ。
そんなオレたちに、なぜかその場のオレたち以外は絶句状態に陥っていたりする。

「お〜ま〜え〜はぁ!!誰にでもいい顔をしてぇぇ!」
「うわっ!?ヴォルフ!?」
「このへなちょこぉぉ!」
何でかいそいそと、オレが先にと手渡した小箱は懐にとしまって、オレを追いかけてくるヴォルフの姿が。
「何怒ってるんだよ!?」
「うるさい!誰にもかれにもいい顔をするなぁぁ!」
「だって皆にもないと不公平じゃん!?
  だからって一人ひとりに品物をとまではお金の都合でいかないからさ!」
「うるさい!」
だから、何で怒っているわけ!?
ヴォルフラムにがくがくと襟首をつかまれてゆすられつつも、どうにか受け応えをする。



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