「まあ!陛下!リアちゃん!お帰りなさいませ!」
道を抜けると、そこは見慣れた光景。
水音が心地よい。
どうやら本当にここは託宣の間の中らしいけど。
オレたちの前にはウルリーケが手を合わせてオレ達にと話しかけてきている姿が。
そして、その後ろにはそのほかの巫女たちがひざまづいていたりする。
「ただいま。ウリちゃん」
いや…だからウリちゃんって…ま、まあいいけどね……
「えっと。ただいま、ウルリーケ」
アンリとオレの声ににっこりと微笑み。
「昨日お帰りになられて、今日またお越しとはお疲れさまです。あの?それで?あれ…何ですの?」
みればウルリーケの後ろには例のダンボール箱が二つほど。
「あ、これ?置き場もないしさ。よかったら皆でもらってくれないかな?アンリ、そっちを頼む」
「オッケー。ユーリ」
ダンボールにとかけていたビニール袋を取り除き、ビユール袋は小さくたたむ。
そしてアンリの持っている紙袋の中にとしまいこむ。
やっぱりビニールなどの有害物質を出し品物はこちらにおいておくわけには…ねぇ。
がさがさとビニールを取り除き、ダンボールを開くオレ達に興味津々で覗き込んでいるウルリーケ。
そして。
「まあ!?これは!?」
目をきらきらと輝かさせて聞いてくる。
「シーワールド特製。海のお友達グッズヌイグルミ。
  数は結構あるから、ここの人たちに一人一個づつでも配ったらちょうどくらいじゃないかなぁ?」
「約三百個くらいあるって聞いたよ?これ」
つまり箱一つに百五十くらい入っているらしい。
「ええ!?いただけるのですか!?」
そんなオレ達の言葉になぜかびっくりしているウルリーケ。
そして、箱の中をみて。
『まあ!?これは!?』
などと驚いている巫女さんたちの姿が。
ウルリーケは中からなぜかスピカと同じくペンギンのヌイグルミを手にとって。
「まあ!かわいい!それにふかふか!」
とかいってるし。
…そんなに丁寧なつくりじゃないんだけどなぁ?
これ??
「とりあえず、シートある?シートでも敷いてこれの中身広げるから。
  手があく人からよんできて交替しつつ、順番ってことで一人一個ね」
オレの言葉に続き。
「ここに大体いるのは、平均で二百五十六名くらいだから足りる、とはおもうんだけどねぇ」
そんなことをいっているアンリ。
それくらい人がいるんだ……
「では、もしあまったら子供にでも配りましょうか?」
みれば巫女さんたちはヌイグルミを手にとって、キャ〜キャ〜と騒いでいる。
ここってヌイグルミないの?
そんなことはないとおもうけど??
女の人たちにも手伝ってもらい、ダンボール二つを中庭にと運ぶ。
そこに大きめの布製のシートを広げ、その上にダンボールの中身を取り出しざらり、と並べる。
ウルリーケの指示で手が空く女の人たちが先にとやってきており。
なぜか黄色い声が周囲にと響き渡る。
どこの世界でも女の人って、どうやらほとんどヌイグルミとかは好きらしい。

きゃ〜きゃ〜と騒ぐ女の子たちの声が眞王廟内部にと響き渡る様子を窓越しにみつつ。
「あ。そだ。ウルリーケには別にお土産があったんだ」
「わたくしにですか?」
「うん。はい。これ」
オレとアンリがいたのでは、余計に騒ぎが大きくなるだろう。
というので女の衛兵さんにとヌイグルミの配布をたのみ。
ウルリーケとオレとアンリはひとまず、ウルリーケの私室にと移動していたりする。
「あ。ウリちゃん。僕からもあるよ?はい。前いってたアロマテラピーセットね」
「まあ!陛下もリアちゃんもありがとうございます!リアちゃん、覚えていてくださったんですね!」
目をきらきらとさせて、そういってくるウルリーケ。
「?アンリ?アロマって…?」
「ウリちゃん、お香とか好きなんだよ。僕らのところならいろいろあるじゃない?」
「なるほど」
「ハーブとかも植えてるしね。この眞王廟には。種もってきて♪」
……どうりでアンリはこの眞王廟に入り浸っていたはずだ。
ここでハーブまで育てていたとは……
「あけてみてもいいですか?」
いってウルリーケがオレのお土産の包装をあけると、そこには海色の小さな箱が。
「まあ、これは……」
いってウルリーケがそっとその箱をあけると中から音楽が流れ出す。
「小物入れのオルゴール。気に入ってもらえたらうれしいんだけど……」
「いいえ!!とてもうれしいですわ!!…あら?これは?」
中にはいっているそれに気づいてといかけてくる。
「安物だけどさ。ペンダントとブレスレット」
ローズなどを使用された、水晶も使われている小さな花柄のおそろいのブレスレットとネックレス。
ちなみに十八金製。
といってもかなり安いやつだけど。
「ありがとうございます!陛下!私の宝物にしますわ!」
「いや、宝物って大げさな…だから安物だし……」
あまりのウルリーケの感激ぶりにオレの方がしり込みしてしまう。
アンリというと、もってきたアロマテラピー用の小さな入れ物にと火を灯し、
なんでか薔薇のにおいを部屋の中にと漂わせていたりする。
「あ。ウリちゃん。使い方は僕がこれに書いているから。ってきいてる?ウリちゃ〜ん?」
オレが今あげたネックレスとブレスレットを身に着けて、
なぜかうっとりしているウルリーケにと問いかけているアンリの姿が。


「陛下。猊下。素敵なものをありがとうございました。皆も大変に喜んでおりますわ」
しばらく滞在し、とりあえず城にもどるためにとオレたち二人で先に眞王廟からでる。
そんなオレたちを見送りにウルリーケたちもまた、外にまで見送りに出てくれる。
「ですが…本当に閣下たちをまたなくてもよろしいので?
  先ほど言われたとおりに使いのものに手紙をもたせましたけど……」
戸惑い気味のウルリーケにと太子。
「今日はのんびりと歩いていってみるよ。そのためにカツラももってきたんだし」
「そういうこと」
いいつつも、袋の中にあったカツラを装着。
それをみて驚いている女の人たちたちの姿。
「カツラにそんな使い道があったなんて……」
などと何か驚愕の声を上げている巫女さんの姿もみうけられていたりするけども。
ま、カツラはこの世界にもあるのは知ってたし。
…何しろあのピッカリ君…じゃなかった、ヒスクライフさんのが印象深すぎたからなぁ……
「これなら僕達ってばれないし。ウェラー卿たちにはのんびり城に向かっている。とでもいっといて」
「…ですが……」
戸惑い気味のそんなウルリーケたちの言葉に対し。
「国民の様子を知るのもユーリの勤めだって。それじゃ、あとはよろしく!」
「またね!ウルリーケ。それに他のみんなも!ここにいない人たちにもよろしく!」
いってカツラをかぶり、コートを羽織って、オレタチはのんびりと徒歩で城下町にとむかってゆく。



ざわざわざわ。
「へぇ〜……。本来はこんな感じなんだ」
思わず感激。
ぐるり、と町を取り囲んでいる壁の門をくぐると、そこには人々が賑わい歩いている。
森林浴がてらに歩いて数十分以上。
軽く時計は三十分を簡単に回っていたりしたりする。
結構歩いたら距離があるもんだ。
眞王廟から歩くことしばし。
約一時間後にようやく城下町にとたどりつく。
途中で乗合馬車があったのでそれに乗ったので歩けばもっとかかるのだろう。
いつもは馬上から見ていたがゆえに、見えなかった町の顔。
何やら兵士たちがバタバタと走り回っている様子も気にはなるけど。
見回り…にしては、せわしないなぁ〜……
「うん。おいしい」
「少しお昼遅くなっちゃったね」
食堂にと入り、少し遅めの昼食をば。
家を出たのが十一時少し前。
こちらについたのも大体同時刻…とはいかずに、何でも十時ごろだったらしい。
歩いている最中に昼を告げる鳥の中義絵と、鐘の音が鳴り響き、
腕のGショックをこちらの時刻にあわせてみたり。
そして城下町。
すなわち、王都にとたどり着いたのが一時半ごろ。
カツラと色つき眼鏡のために、怪しまれることもなくのんびりと町の中を歩いていたオレとアンリ。
「でもさぁ。アンリはいつも一人で出かけているのに。オレだけ一人はだめってどうよ?」
野菜サラダをぱくつきつつも、そういうオレに。
「僕は何があっても自分で力を使えるからねぇ。でもユーリはまだ自分の意思でできないでしょ?」
「うっ!?そ…そりゃそうだけどさ……」
何か頭に血が昇ったり、気が高ぶったりしたら使ってるみたいだけど。
ぜんぜん自覚もなければ覚えてもいないからなぁ……
「ま。もう誕生日を迎えたんだし。数ヶ月は今回こっちにいることになるだろうから。
  ゆっくりなれていけばいいよ。体を慣らすのとこっちの生活に慣れる目的でさ」
パクパクと手を休めることなく食べつついってくるアンリの言葉に。
「ええ!?そんなに長期滞在になるの!?」
思わずびっくり。
「たぶんね」
そんな会話をしていると。
「お客様。ご注文は以上でよろしいですか?デザートなどはいかがですか?」
そろそろ食べ終わるころを見計らい、店の人が聞いてくる。
大通りに面した道より少し入った場所にとあるちょっとした食堂。
ここもやっぱり家族経営のようだ。
娘さんと思われる人が聞いてくる。
「そうだね?どうする?」
「それじゃせっかくだし。…あ、お金たりるかなぁ?」
そういや、オレはあまりもってないし…こっちのお金……
「…えっと…あ。たしかこれカヴァルケードのお金だし…こっちは…あれ?…どれだっけ?」
サイフを内ポケットから取り出して中身をみて首をかしげるオレに。
「ユーリィ。自国の通貨くらい覚えろって。ちょっとみせて。ほら。これが札のほうで。
  あ、でも金貨もあるんじゃないの?」
「えっと・・・ あ、これ?」
「それそれ」
サイフの中はとりあえず、人間の国の通貨や自分…つまり日本の通貨など。
そしてこちらの通貨。
様々入っているのでどれがどれやらわからなくなってくる。
ま、日本のは慣れているからわかるけど。
そんなオレたちの会話に。
「お客さん。何かいろいろな種類の通貨をもってますね。ひょっとして旅人さんですか?」
それを垣間見た店の人が聞いてくる。
「う〜ん。そんなものかな?とりあえず、じゃあ。僕はアップルパイを」
「あ。じゃあオレも」
だってメニューの文字よめないし。
追加注文をして、ひとまず先に追加分の料金をも含んでいるであろう金額をわたしておく。
途中で払っても後で払ってもいいシステムになっているようだ。
そんな会話をしつつ、デザートがやってきて食べていると。
カララン……
と、何やら二〜三名が入り口からベルの音とともに入ってくる気配が。



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