「……あれ?」
……オレ、さっきまで風呂の中にいなかった?
なぜか目の前には見覚えのある光景が。
「何者!?…って陛下!?」
女の人の声にそちらをみると、何か見覚えのある女の人の姿が。
「あれ?君は……。えぇ!?やっぱりここって眞王廟!?でも何で!?」
驚くオレとは対象的に。
「陛下がいらしている。とは連絡をうけてなかったのですが……」
とまどいつつも言ってくる女の人。
「オレもびっくり。さっきまで城の中にいたしさぁ。
  あ!それより!すぐにウルリーケに会える!?眞王に話があるんだ!!」
何か以前にもあったし。
気がついたらいきなり違う場所にいたことって。
オレはアンリはいつでも眞王廟の中に自由に出入りしていい。
と許可下りてるし。
そんなオレの言葉に。
「少々お待ちください。…ところで?本日はお一人ですか?」
「それがさぁ。あっちにもどろうとしてうろの中に入ったら。
  お湯に使っても道ができなくて。ウルリーケやエドさんに聞いたら判るかな?
  とにかく問いただしてみよう!とおもったら、気がついたらここにいた…というか」
そんなオレの的を得ていない説明の言葉に。
「無意識に場所を移動されるとは、さすがですわ。陛下。
  ですが、それでは皆様が心配しておいででしょう。血盟城に使いのものをおくらせましょう」
「あ。うん。お願いするよ」
よくわからないけども。
オレがここにいる。
ということは多分伝えておいたほうがいいだろう。
服が濡れているのでタオルが手渡され。
そのタオルで軽く体を拭く。
幾度か来ているので勝手しったる…とは今だにいかない。
ここも広いからなぁ〜……
簡単に体を拭いた後。
それから託宣の間にと案内される。


「まあ!?陛下!?一体どうなさったのですか!?」
オレがいきなり来た。
というので何か驚きつつも出迎えてくれるウルリーケ。
見た目十歳かそこらなのに、実際はもう千歳近いという。
見た目と年齢はこの世界の魔族には当てはまらないのだ。
といういい教訓にとなる人物。
「実はエドさんにすぐに聞いてほしいことがあるんだ?
  今回の用事がすんだはずなのに、オレ何かあっちにもどれないらしくてさ。
  それでなくても今回は大勢のギャラリーの前でひっぱられちゃったし。
  急いでもどらないと大変なのに……急いで聞いてみてくれる?」
オレの言葉に。
「判りました。それではこちらへ」
いってオレを中にといざなうウルリーケ。
ウルリーケが祈りをささげ、眞王エドワードに伺いを立てることしばし。
「…どう?」
「……それが…眞王陛下からは何のお言葉も……」
「そんな!?」
申し訳なさそうにいってくるウルリーケの言葉に思わず絶句。

と。

パシャ……


この場にいるオレとウルリーケ。
そして他の巫女さんたちが思わず顔を見合わせる。
「…今、水音…しなかった?」
「しました」
??
今ここにはオレたちのほかには数名の巫女さんたちだけだし。
でも皆水には触ってなどいない。
と。
「ウルリーケ様!陛下!!?」
巫女の一人が何やら横の壁を見て指差して叫んでくる。
見れば…何やら水が立ち昇ってるし。
え…えっと??
呆然とするオレに驚愕する巫女たち。
やがて、その水は一つの人型となりて、何やらやさしそうな女の人のイメージのでその姿は固定される。
『これは……』
それをみて、何やら絶句しているウルリーケや巫女さんたちとは対象的に。
その水で出来ている女の人は、託宣の間の、壁際にと満ちている水の上にと立ち、
なぜかオレにむかってうやうやしくお辞儀をし。
「お久しぶりでございます。ご機嫌うるわしくぞんじます」
などと何か澄み切った、まるで水を転がしたかのような声でといってくる。
??
「?君は?」
何か、恐い。
というよりも懐かしい感じをうけるけど。
戸惑いながらも問いかける。
「あなた様は……」
そんなオレとは別に戸惑いつつも問いかけているウルリーケ。
普通、戸惑うよなぁ。
これは。
ふと。
「ニルファナ?」
頭…というか、脳裏に言葉が浮かび、思わず口にとだす。
「陛下?」
「何か今…頭に……」
何かふっと、本当にふっと名前が頭に浮かんだし。
その水で出来た女の人は、オレとウルリーケを交互にみつつ。
「今のあなた様はわたくしのことを覚えていらっしゃらなくても当然かもしれませんわ。
  わたくしはニルファーレナ。この星の水を司っております大精霊です。
  エドワード殿から、もしあなた様かアーリー様がお見えになられましたら、伝言を。と承っております」
ざわっ!!
何かウルリーケや巫女たちがその言葉に絶句して反応してるけど。
「まさか!?」
「そんな!?」
などとうろたえている巫女たちとは対象的に。
「ではあなた様が、かの伝説の……
  始めまして。わたくしはこの眞王廟を預かりますウルリーケと申します」
何やら水で出来た女の人に向かって頭を下げているウルリーケ。
「??大…精霊?何かテイルズシリーズ並みの響き…って、もしして、君、水を司ってるの?」
「はい。この世界の水の管理を創世神様より承っております」
「なるほど。つまりウンディーネ…みたいなものかな?」
ということは、もしかしたら統括精霊…なんてものもいたりして。
さすが剣と魔法の世界。
オレの言葉になぜかやさしく微笑みつつ。
「お元気そうで何よりでございますわ」
何だか懐かしい人をみるかのごとくにいってくるし。
えっと??
「あの?オレ、あなたにあったことあるんですか?ニルファナさん…でなかった。ニルファーレナさん?」
オレの言葉に。
「ニルファナ。でかまいせまわ。ニルファ。と及びくださいませ。敬称もいりませんわ」
いってニコリと笑い。
「あなた様の前にこうして姿を見せるのは……
  あなた様がこのたびユリティウス様として生を受けられましてすぐ以来ですわ」
にこやかにいってくるけど。
「?このたび…って…何か気になる言い回しなんですけど……」
「いずれお分かりになられるでしょう」
にこやかに微笑まれると、それ以上の突っ込みができなくなってしまう。
「あ、あの?それで?その…伝言…というのは?」
ウルリーケが会話の最中、そのニルファという水の精霊さんにと問いかけている。
まあ、呼び捨てでいい。
というのだから呼び捨てでいくとしよう。
「そうでしたわね。伝言をお伝えいたしますわ。
  『箱を悪用しようとする動きがあるのでしばらく見定めるため出かけてくる。
   それゆえに、後はよろしくいっといてくれ』
  とのことです。いつおもどりになられるかはわからない。ということらしいです」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
その言葉に全員が思わず無言と成り果てる。
巫女たちは。
『箱』とはもしや?
などと言い出し、騒ぎ出していたりもするが。
オレには何のことだかさっぱりだ。
「えぇ〜!?じゃあオレ、当分あっちにもどれないの!?」
オレにとっての問題はその部分だ。
オレの叫びに。
「可能性としてアーリーさまが道をつなげられれば……あなた様ではまだ道をつなぐのは無理ですので。
  その封印がかかっておりますし……」
などとそんなことをいってくるけど。
「?さっきからいってるアーリー…って、アンリのこと?」
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「だぁぁ!アンリが今回こっちに来られるわけないじゃん!?
  アンリまで消えちゃったらあっちパニックだよ!?」
オレの叫びに申し訳なさそうに。
「理由はわかりかねますが……わたくしどもではあちらの地球と道をつなぐことはできません。
  ですが、我らすべて精霊一同、いつでもあなたさまのお心のままに動く次第でございますので。
  何か用事があるときにはいつでもお申し付けくださいませ」
そういってくるし。
「……?何で?それこそ何で?だって大精霊っていったらすごい存在なんでしょ?
  別に契約とかそんなのしてるわけでもないのに??」
契約を結んで力を貸してもらう。
とかなら意味がわかるけど。
ゲームでは大概そうだし。
「――わたくしたちの存在はあなた様あってこそ。それは未来永劫代わりありません。
  あなた様の魂の本質に我らは常に従います」
「……魂の本質…って……」
首をかしげるオレに、何やらはっとした様子で水の大精霊ニルファをみているウルリーケ。
「ともあれ、お伝えいたしました。……御用のときには何なりとお呼び出しくださいませ……」
そういってくるニルファさんの姿があったりするけど。
「あ。だったらさ。隣の国とか水不足で困ってたみたいだから。
  そういう国とかに雨を降らせたりすることって…頼める?」
オレの言葉に。
「相変わらずおやさしいですね。シル様は……
  本来ならば、戒めとして雨を少なくしていた地域もあるのですが……お心のままに」
いってお辞儀をしてきて。
「それでは失礼いたします」
ばしゃっ!!!
いうだけいって、言葉とともに、水の体が崩れ、瞬時に元の水にと成り果てる。
「…?シル?……って誰?」
首をかしげるオレとは対象的に。
「ああ!大精霊様にお会いできるなんて!」
「さすが陛下ですわ!!大精霊様御自らがお姿を現しになるなんて!!」
「…えと……」
何だか盛り上がっている巫女さんたちの姿が……
というか、つまりは、オレ。
エドさんが旅行中の間はあっちに当分もどれない…ってことだよな?
今の会話というか説明を要約すると……
……がくっ……
ああ、あっちで大騒ぎになっていませんように。
…少なくとも三分後くらいの時間には戻してもらえる…かなぁ?
でないと全国的なニュースネタとなってしまう。
そんなことを思っていると。
『陛下ぁぁ〜!!!』
「ユーリッ!!」
何やら叫びつつ、息せききって託宣の間にと入ってくる三人の姿が。
みれば、ギュンター・コンラッド、そしてヴォルフラムだし。
…連絡がいったにしてははやすぎない?
オレがここにいるってさ?

「ユーリ!お前というやつは!いきなり僕の前から姿を消すな!」
何かかなり怒ってずかずか歩いてくるヴォルフラム。
「とにかく、ご無事でよかった。陛下がいきなり消えた。と聞いて。
  その前にもどれない。とかいっていた。というのでもしや。とは思いましたが……
  ?何かあったんですか?」
巫女さんたちの様子がいつもの違うのに気づいてかウルリーケにと問いかけているコンラッド。
そんなコンラッドの言葉に、にっこりと。
「おしかったですわね。三人とも。
  先ほどまで、この場に水の大精霊ニルファーレナ様が御降臨されていたのですわよ」
『―――は??』
ウルリーケの言葉に、なぜかヴォルフラムを含め、コンラッドとギュンターの目が点に。
「眞王陛下からのご伝言を預かっておられたらしく。それで……」
「ちょっとまて!それはどういうことだ!?」
「どういうことですか!?」
驚きの声を同時に上げるヴォルフラムとギュンターに向かってにっこりと微笑み。
「これからそれは説明いたしますわ。でもここでは何ですわね。――ひとまず別の部屋へ」

いって、コンラッドたちとともに、託宣の間を後にして、何かテーブルのある部屋にと移動してゆく。


何だかよくわからない会話に深刻になっているコンラッドたち。
…だから、箱って…何?
そう問いかける雰囲気でも何だかないし……
結局のところ。
オレがこちらにしばらく滞在する…というのは確定事項らしい。
こちらにしばらくは長期滞在する、というのが確定した。
というのをうけて、ヴォルフラムとギュンターなどはオレの問いかけより先にさらり、と話題をかえてくる。
結果……魔王としての勉強をこの際徹底的に…というのがいつの間にやら決定してるし……
あぅ……

いつもどれるか判らないままに、オレはコンラッドたちとともに、血盟城にと再びもどってゆく。

…アンリ。
ごめん。
大変だろうけど、がんばってみんなをごまかしておいてくれ……と心の中で謝りつつ……

人生。
本当に何が起こるかわかったものじゃないものだ………

                     ―Next Misson End Go To Next……



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