「…う…ん…」
ゆっくりと眼をあけると、何か日差しが眼に入る。
「…何?」
何で金色があるの?
などと思っていると、やがて視界がはっきりしてくる。
「どうしてお前はいつもこうなんだ!?」
うわっ!?
何でオレ、ヴォルフラムに膝枕されてるの!?
思わずとびのき。
「ヴ…ヴォルフラム!?」
思わず叫ぶと同時に、なぜかむせこむ。
……何か埃とか、砂を吸った後にたいに口の中がざらざらとしている。
咳き込んでいると。
「これをのめ!」
いって差し出される水筒。
何でかヴォルフラムは大地にあぐらをかいてすわっている状態だし。
ヴォルフラムに差し出された水を口にと含み、とにかく口を潤す。
できたらうがいもしたいけど。
その辺りに吐き捨てるわけにもいかないし。
「ぷは〜。生き返る」
どうやらかなり喉がかわいていたらしい。
「まったく!お前というやつは!僕がどれだけ心配したかわかるか!?」
いつのまにか、日は正午を過ぎたらしく傾いている。
確かさっきまで、正午前じゃなかったっけ?
「ヴォルフラム。何でここにいんの?コンラッドは?…って!そうだ!グウェンだよ!」
オレの叫びに。
「兄上ならあそこだ」
いって指し示す咲きには、グウェンダルとコンラッドの姿。
そして魔族の兵士たちの皆様の姿も。
あとは数名の女性のたちの姿もあるけども。
…何かオレのことをおびえたようにと見ているし?
…あれ?
「……あれ?ひょっとしてオレ……」
もしかして、また何かやっちゃったの!?オレ!?
あ、髪が元にともどってる。
視界もクリアだし……
こりゃ、何かやったな。
オレ…今度はいったい何をしたんだろう?
「グウェンダルは心配ありません。命に別状はないようです。何しろ頑丈ですから」
「コンラッド」
いって、オレにと近づいてくるコンラッドの姿。
コンラッドの姿をみるとほっとする。
「陛下のほうこそ大丈夫ですか?」
いって心配してくるけど。
「……やっぱし。また何かやっちゃったの?オレ?」
そんなオレの問いかけに。
「ええ。ちょっと派手に。おかげで兵士たちや、ここで働いていたご婦人方も逃げてしまいましたけどね」
いって笑っているけど。
一体オレは何をやったというのだろう?
裸踊りでもしたのだろうか?
「え?それじゃ、あの女の人たちは?」
残っている女の人も結構いるけど?
オレのそんな疑問に。
「どうやら魔族と関係とあるご婦人方のようですね。どうやらみんな、夫の祖国に行きたがってるようですねぇ」
何やらそういってくる。
「そうなの?だったら、じゃあ。オレたちと一緒にもどればいいじゃん!
  眞魔国には自由恋愛奨励のツェリ様もいるし。何より王様が許可してるんだし」
そんなオレの言葉に。
「陛下ぁ。ギュンターに代わって申し上げますけど。時には熟慮する、ということも大切ですよ?」
そういうと思った。
という表情で笑いながら言ってくるコンラッド。
「こいつにそんなことを言ってもムダだ。ユーリはいつもその場のいきおいだけで突っ走るんだ」
腕を組んで言い放ってくるヴォルフラム。
「何だよ?直感が大正解ってこともあるだろ?」
「いつもいつも、うまくいくとは限らない。といってるんだ!」
顔を近づけられたら、男の子と判っていても不覚にもときめいてしまう。
こいつは男で八十二歳なんだ。
と自分自身に言い聞かす。
そんな会話をしていると
「そんなくだらない会話をしている場合か。すぐに追っ手がくるぞ!」
みれば、ニコラとジルタに支えられ、後ろには知らないおじいさんの姿。
「グウェンダル。それにニコラにジルタもいる」
ってことは、あのお爺さんはジルタの家族だろう。
たぶん。
でもなんでニコラまでもがここにいるんだろう?
「我々の別働隊もこちらに向かっています。ここは陛下のいうとおり、彼女たちと一緒に脱出しましょう」
さわやかに、高らかに言っているコンラッド。
そういや、オレがここにいるってよくわかったなぁ。
さすが保護者。
でもさ。
そういや皆さんの前で高々と『陛下』なんていっちゃっていいの?
コンラッド……
……まあ、もう双黒はバレバレだけどさ。

とりあえず、眞魔国に行きたい人は集まってくださ〜い!!
と叫んで戸惑う女性たちにも話しかける。
すると戸惑いながらも女の人たちは一箇所にと集まってくる。
計十六人程度。
プラス。
ニコラとジルタとジルタのお爺さん。
と。
「あれ?」
メンバーの中にいたはずのノリカさんの姿がみえない。
ふとみれば、何やらざくざくとお墓を掘っているノリカさんの姿が目に入る。
「ノリカさん!…どうかしたんですか?」
ノリカさんのほうにと走っていって問いかける。
早くしないと追っ手がくるらしいし。
ノリカさんは、そんなオレをみてふっと微笑み。
「ここを出るときは息子と一緒。って決めてたからね。…でもいないんだよ。
  ほってもほっても。あの子のいた痕跡がどこにも……」
あの子…って、ノリカさんの子供?
もしかしたら、彼女の子供の生きながらに埋められてしまったのだろう。
どうして同じ人間同士。
そんなにひどいことが簡単にできるんだ?
この国は絶対にどうかしてる。
そりゃ、日本人だって、過去にはかなりひどいことしたらしいけど。
今ではそのことを悔いてるし。
二度と同じ過ちはしない。
と憲法でも誓ってるし。
「もう十年もたつからね。…ジルタ…ジルタぁぁ!!」
いいつつも叫んでいるノリカさん。
え?
ジルタ…って…
「ええぇ〜!?」
思わずびっくり。
ジルタってもしかしてあのジルタ!?
そりゃオーラはよく似てるけど!?
言われてみれば、確かに親子のオーラにもよく似てるし……
「ノリカ」
驚くオレの背後から、ジルタのお爺さんという人が声をかけてくる。
何でもオレたちを助けてくれたので、家族に害が及ばないように、コンラッドがジルタの家族。
といっても祖父と孫であるジルタの二人家族だったらしいけど。
とにかくその彼を一緒に保護してきたとか。
さすがコンラッド。
オレが頼むまでもなく、ジルタの家族をきちんと助けてくれてるし。
「……お父さ…ん?」
「…え!?」
「生きていたんだな。ノリカ」
えっと…ノリカさんのお父さん…ということは。
確かこの人の名前はシャス、というらしいけど。
ということはつまり……
「こうして息子に生きて会わせてやれるとはおもわなんだ」
いってジルタを前にと抱いてるけど。
ジルタはといえば呆然として目を見開いてノリカさんをみているし。
面影がこうして二人比べてみるとよくわかる。
ノリカさんの体が、カタカタ震え、
ぽたり、ぽたり。
と涙が大地に零れ落ちる。
「…おかあさん…なの?」
おそらく、産まれて初めて母親に会ったであろうジルタは戸惑い気味にと問いかける。
「ジルタ…ジルタ…なの…ね?」
ノリカさんの気持ちはどんなものだろう。
死んだ。
と思っていた息子がいま。
成長し目の前にいる。
日本ならばお涙頂戴ものの番組かもしれないが。
これはそれよりも感動的な再開だ。
ノリカさんが名前を呼び。
パッ!
と目を輝かせ。
「おか〜さぁん!!」
いって母親にと飛びついているジルタ。
ノリカさんは、ただただそんなジルタを抱きしめて、繰り返し、ジルタの名前を呼んでいる。
何かこっちまでもらい泣きをしてしまう。
「よかった。…けど、何で?」
横にいるシャスさんに問いかけると。
「ジルタを運んできた魔族の男がいっていました。
  まだ生きていた赤ん坊を助け出して私のところに連れてきてくれたんです。
  墓に孫の名前と孫をくるんでいた布に私の名前が入っていたらしく」
そう説明してくるシャスさん。
彼もまた涙ぐんでいる。
この十年間きっと娘さんのことをかなり心配していたのだろう。
「そうなんだ。…あれ?」
ふと。
ノリカさんが掘っていたお墓の穴の中に何やら布のようなものを発見。
「何だろ?」
疑問に思い取り出してみる。
何かを包んでいるようだ。
「陛下。早く急ぎませんと。追っ手がきますよ?」
その声に振り向けば、コンラッドとニコラがこちらにとやってきている。
「なあ?これ何だとおもう?」
穴の中から取り出して、オレの見せたそれに。
「さあ?とりあえず。さ、こちらに。ノリカさんたちも」
いってノリカさん母子を促すコンラッド。

ひとまず、皆が集まっている場所にともどり、布を開いてみる。
そこには何かとっても見覚えるあの小さなとある物体が一つ。
「…何だ?これは?」
ヴォルフラムが首をかしげるが。
「ひょっとして……」
ごそごそと、腰の後ろにと隠していたリコーダーの本体を取り出し、昔よくやっていたようにと組み立てる。
六年間もやっていれば自然と身につくものだ。
かちっ。
もののみごとに、しっかりと組み合わさるし。
「やっぱり!?」
思わずびっくり。
「もしかして…それは…」
「魔笛!?」
驚きを隠せないコンラッドとヴォルフラム。
「というより。どこからどうみてもソプラノリコーダー」
つうか…やっぱり縦笛だし……
グウェンが指摘した眞王が選んだ世界だから同じようなものがあっても不思議じゃない。
というのも案外伊達ではないのかもしんない……
「?もう一つの部品は一体どこで手にいれたんですか?」
言われてみればそ〜ですね。
などと小さくいい、オレにと問いかけてくるコンラッドに対し。
オレが答えるよりも先に。
「あの。…あたしがヒューブから預かってて……」
ニコラが戸惑い気味にといってくる。
そんな会話に。
「ゲーゲンヒューバーめ!!こんな所に隠していたとは!!」
おそらくかなり拷問でもされのか、グウェンダルはかなりの怪我をしているらしい。
胸には包帯が巻かれている。
そんな状態だというのに、おなかを抑えて立ち上がりつつ、そんなことを言ってくるグウェンダルだけど。
「怒るなよ。グウェンダル。赤ん坊を助けてついでに笛の一部を隠したんだろ。
  いいやつじゃん。ゲーゲンヒューバーって」
オレの言葉に。
「ふん。どっちがついでかわからん」
などといってるけど。
その言葉にニコラは悲しい顔をしているし。
「だが…子供が生きて母親に会えたのはあいつの行動の結果。とはいえるな」
「だろ?」
その言葉にニコラもぱっと笑みを浮かべる。
過去にそのゲーゲンヒューバー。
という人がしたことはどうあれ。
彼はきっと完全にもう更生している。
というのは疑いようがない。



戻る  →BACK・・・  →NEXT・・・