「どうやら追ってきてはいないみたい」 ニコラが息を切らせて座り込んでいるのでオレとグウェンダルがとりあえず、 外の様子を地面にかろうじてでている窓らしき部分からのぞき地上の様子を確かめる。 そして座りなおし、 「大丈夫?ニコラ?」 なんだか息がつらそうだ。 あ。そだ。 「はい。水。」 いって水筒を手渡すと。 「大丈夫。それより水は貴重なんだから。あなたのものでしょう?それは?」 「オレなら大丈夫だって。ほら。とにかく。おなかの子どもにもわるいし。ね?」 オレがいうと、おずおずと水筒をうけとり。 そして。 「?」 一瞬、水筒の口にとついている白いものは何だろう? とでも思ったのか首をかしげ、なぜか申し訳なさそうに水を口にと運ぶニコラ。 「えっと。とりあえず。遅くなったけど助けてくれてありがとう」 そこにいる先ほどオレ達を案内してくれた子供にとお礼をいう。 薄めの茶色い髪にコバルトブルーの瞳の男の子。 そんなオレの言葉に、にっこりと微笑んでくる。 「まだ小さいのに。えっと。君いつく?名前は?オレユーリ。でこっちがグウェンダルに彼女がニコラ」 オレの質問と説明に。 「ジルタ。十歳!」 元気よく答えてくれる男の子。 名前をジルタ、というらしい。 「ええ!?十歳!?それにしちゃ小さくない!?」 オレの驚きに。 「魔族の子は成長が遅い。その子はおそらくこの街の女と魔族の間の子か。出稼ぎにきている女の子供だろう」 そういってくるグウェンダル。 「え?あ。そうだった。確か人それぞれ成長速度がちがうんだったっけ? そういえばコンラッドは十二まどは普通の人間ペースだったっていってたっけ? その後はゆっくりだった。っていってたし」 オレの言葉に。 「あいつは片親が…つまり父親が人間だからな」 何か思い出したのかふと遠い目をしてそんなことをいっているグウェンダルだけど。 ? コンラッドのお父さんと何かあったのかな? そんなオレたちの会話に。 「ユーリ。ありがとう。あたし結構喉がかわいていたみたい」 いって水筒を戻してきてくれるニコラの姿が。 「いいよ。別に。お礼なんて。そういえばニコラ。何で結婚式から逃げ出しちゃったわけ?」 まだ理由を聞いてない。 オレの言葉に、なぜか泣き出してしまうニコラだし。 「ああ!?泣かないで!?え、えっと。何か深い事情があるんだろ?」 どうも女の子の涙は苦手だ。
小学五年生の帰りの学級で。 渋谷君はひどいとおもいます。 と断糾され、なぜか攻撃側の女の子が集団で泣き出した。 でもさ、ひどいって・・・だまってたら女の子にしか見えないのをひどい。 といわれてもさ。 同じクラスだったアンリが、オレのこの顔はオレのなくなった本当の母親ゆずりなんだから仕方ない。 そういうことをいう子のほうがひどいとおもうけど? といい……結果、女の子たちは泣き出したようだ。 どうも彼女たち…オレが養子だってしらなかったらしいんだよな。 その後、なぜか担任のホームルームで、外見で人を判断したり。 自分の中の常識だけで人を非難したりしないように。 というお達しがあったが。 気づかずに人を傷つける場合もあるのだから。 と。 気づかないうちに人を傷つけるような無神経な人間ではなく、人の痛みをも判る人間になってほしい。 と言った先生の言葉は最もだ。 その後、女の子たちが集団で謝ってきたけど。 何でも自分たちよりオレの方がかわいくて。 他校のある男子がオレを女と間違えていて、クラスの女の子を振った…というのがそもそもの原因だったようだ。 自分は好きな子がいるから。 と。 こらこら! ちょっとまてぃ! オレは男だってば!! ちなみに、原因となったその男子はオレが実は男だと知って寝込んだらしい。 ……気づけよ。 ズボンはいてたんだしさ……
「とにかく。ゲーゲンヒューバーのことをはなせ」 「どうしてこんなことになっちゃったの?君そのゲーゲンヒューバーって人と駆け落ちしてたんでしょ?」 グウェンダルとオレの交互の台詞に少し戸惑い。 「…ヒューブとであったのは一年前だったわ。あたしたちはすぐに意気投合した」 いって話し出すニコラ。 ふと。 話を聞き始めてすぐ、水が飲みたくなり水筒を手にとるけど。 残りはわずか。 「あ。えっと。その前に、水補給していいかな?この辺りの井戸はどこ?」 そんなオレの言葉に。 「スヴェレラに水はない」 静かに言ってくるグウェンダル。 「ええ!?でも街中に井戸はあったよ?」 「あれは枯れ井戸だ。わからなかったのか?」 覗いたわけじゃないし…井戸の中…… 「もう二年近くまとまった雨は降らないのよ。そのために井戸は枯れ…家畜も…… 水がなければ作物も家畜も育たない」 「そんな!?他の国から水を分けてもらうとかできないの?ダムとかさ。 それとか雨乞いするとか。水を操る人の力で水を作るとか」 そんなオレの言葉に。 「法術には水を降らせるようなものはない」 「ないの!?え?でも魔族には水を操る術者いるんだし。お隣さん同士なんだからさ。手助けとか……」 「人間が我らの手助けを借りようとするものか。そもそもあの川を越えてさえこない。といっただろうが」 「何で!?んじゃ、ボランティアと。」 「?何だそれは?」 「ええぇ!?ここにはボランティアないの!?えっと。無償で困っている人たちを助ける団体だよ。 皆の善意のお金で運営していくの。難民支援とか、障害者の支援とかさ。あとは災害難民支援とか。 あとは砂漠を緑化しようとする運動とかさ」 オレの説明に。 「この世界にそんな酔狂をするやつはいない」 「いないの!?…設置考えないといけないよなぁ。あ、それ以前に隣国との親密な関係を築くとか……」 オレのそんなつぶやきに。 「お前はそれ以前にやることがあるだろうが。せめて仕事を一人でできるようになれ。 一体誰が片付けているとおもっている?」 「あはは…オレがやるより、グウェンダルやギュンターのほうが確実だし。 オレ未だにこの世界のことを知らないしさ。…あれ?でもまてよ?雨が降らないっておかしくない? 少なくとも、オレたちがこの街にくるまで雨はよく降ってたよ?」 「そんなはずは……」 オレの言葉に首を傾げつつも、戸惑いの声を発しているニコラだけど。 そんなオレの言葉になぜか深くため息をつき。 「…あれは自然現象ではなく。お前がやっていたんだ」 「ええ!?んなバカな!?オレにそんなことできるはずないじゃん!?」 グウェンダルの言葉に思わずびっくり。 つうか、出来るはずないってば。 「大方無意識にやってるんだろう。まったく……。少しは力のコントロールを覚えろ」 「コントロール…って。力をもっているかも怪しいのに。というか使ったことすらオレ覚えてないんですけど……」 というか実際にわかんないし。 「あの?力って?ユーリ人間でしょ? そんな力…というか魔術なんて使えるはずないじゃない?何かの間違いでは?」 きょん。 としてオレとグウェンダルの会話を聞いて、言ってくるニコラ。 「一応オレも魔族らしいんだよねぇ。…自覚ないけど」 無自覚だけど。 でも一応即位しちゃって魔王やってるんだけどね…… しかし本当に魔族といってもいいのか自分でも謎だ。 「え?ユーリが?でもそれじゃ何で駆け落ちだなんて?」 「だから!誤解だってば!グウェンダルのほかにもつれが数名いたんだけどさ。 途中でパンダ…じゃなかった。砂熊とかいうのに出くわしちゃってさ。 オレたち以外は全員砂の穴の中に落ちちゃって。 とりあえずオレとグウェンダルの二人で進んでいたら、 立ち寄った小さな街で手配か買ってたらしい男女と間違われちゃってさぁ。 オレ男だっ!ていってんのに聞く耳もってくれないの。で、何でかこうなっちゃったんだよねぇ〜…」 オレの説明に。 「ええぇ!?ユーリって男の子だったの!?女の子とおもってたわ!」 がくっ。 「……少しは筋肉ついてるはずなのに……」 ニコラの驚愕した声に思わずがっくりと肩をおとしてしまう。 はっきりいって、これはいじけるしかない。 「こいつの女顔は産まれ付きだ。こいつは母親似だからな。 とにかくそんなことよりも、ゲーゲンヒューバーとお前のことを話せ」 オレが女に間違われることなんて、そんなこと…程度ですか。 ……まあ、いつものこと。 とは思うけどさぁ……何かむなしいぞ…… いじけるオレをまったく無視して、ニコラにと問いかけるグウェンダル。 その横で少しいじけているオレに。 「おね…ううん。おに〜ちゃん?元気だして?」 慰めてくれるジルタの姿。 ……子供になぐさめられるオレって…… と。 ぐ〜〜〜…… オレのおなかの虫がなる。 あ。しまった。 それをきき、またまた深くため息をつき。 「おい。これで何か果物とか食べ物をかってこい。あまったらお前のほしいものを買ってもかまわん。 追っ手に見つからないように。できるか?」 いいつつ、何やら皮袋を取り出してジルタにと手渡しているグウェンダル。 「うん!いってくる!」 グウェンダルからお金…であろう。 それを受け取り、この場からでてゆくジルタの姿があったりするけど。 しかし。 オレのおなか…もう少し状況をよんでくれよなぁ〜……
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