山ほどある書類にサインを頼まれ。
とにかくがむしゃらにと名前をかいてゆく。
何か漫画のパタリロみたいに人間コンピューターが発生して、すぐに終わればいいものを。
そんなことをしていると。
ふと執務室の横の壁にとかかっている地図にと気づき、とりあえずこの国のことを聞いてみる。
多分、これが眞魔国の地図…なのだろう。
オレの質問にギュンターが国のことを知ろうとするのはいいことです。
といっていろいろと説明してくれたけど。
ツェリ様の生まれ故郷のシュピッツヴェーグ地方は今はツェリ様のお兄さんが治めているらしい。
何かその名前をだしたときにはギュンターやコンラッドがあまりいい顔をしてなかったけど。
どうやら彼らはいいイメージをもっていないらしい。
ま、戦争に協力した人らしいし、この反応も当然なのかもしれないが。
それに、今までの話を聞く限りそれだけではなさそうだったし……
とりあえず。
質問をある程度で切り上げ、そのまま再び書類に目を通しサインを開始。
いまだにきちんと文字が読めないので横で説明してもらいつつのサインだが。
それゆえに、かなり時間がかかってしまう。
そんなことをしていると、必死にサインをしている間に、いつのまにか日がくれてくる……
じ…時間がたつのって…早いなぁ……


ご飯を食べて、お風呂に入る。
と。
「お疲れ様。ユーリ。お湯かりてるよ〜」
みれば、先客としてアンリが先にと入っている。
「あれ?アンリ?いつもどったの?」
「ついさっきだよ。…そういえば、城下町で何か騒ぎがあったみたいだね」
「…は?オレ何も聞いてないよ?」
かけ湯をし、そのまま風呂にと入るオレにアンリが言ってくるけど。
そんなのオレは報告うけてないけど?
「何か。後ろからいきなりたたかれて、被害者はでも何もとられてないんだって」
・・・・・・・・
「……何それ?」
通り魔?
「詳しくは僕もわからないけど。僕と入れ違いにウェラー卿がきてたから。
  しばらくは城下町の探索と聞き込みにあたってるんじゃない?」
どうりで、コンラッドの姿が先刻から見えなかったわけだ……
う〜ん……
「もしかして…昼間の忍者もどきの仕業かなぁ?
  でも何もとってないって…何かの陽動作戦、もしくは通り魔?愉快犯とか?」
そんなオレのつぶやきに。
「さあねぇ?…って何で忍者って言葉が?」
「さすが魔族の国。何かはあるよねぇ。でも、けが人は大丈夫なの?」
「命に別状はないそうだよ」
「ならよかった」
「で?それより忍者って……」
再度問いかけてくるアンリの言葉に。
「何か、昼間。城にもどる最中のパレードの最中に、屋根の上に黒尽くめの人がいたんだよ」
とりあえず簡単にと説明をすると。
「う〜ん……。なるほど。もしかして僕かユーリを狙ってたのかなぁ?」
何やらうなっているアンリだし。
「ええ!?何でそうなるわけ!?」
思わずアンリの言葉にお湯の中から立ち上がる。
「だって。この世界では双黒のものは珍しく。しかも不老長寿の妙薬になるとか。
  世界征服ができるとか、そんな変な噂があるらしいんだよねぇ。
  で、何か双黒の魔王を金に任せて手にいれようとしている国もあるらしいよ?」
「……んな理不尽な…というか馬鹿な……」
ある意味物騒だよな…それは……
「ま。噂だけどね。眞王廟っていろんな人がくるから、噂話を聞きだすのにはいいんだよね」
なるほど。
一種の情報収集、ということか。
アンリはよく眞王廟に出向いてるしなぁ〜……
オレは今回初めていったけど。
「ま。ユーリに危害を加えようとしたら、この城がだまってないって。
  たとえ侵入されたとしても。その賊がユーリに害をなそうとしている場合だと。
  壁の中に城そのものが侵入者を取り込むだろうし」
「生き埋めかいっ!!ってそんなことをするのか!?城が!?」
……ホーンテッド・キャッスル決定か……?
そんな場所には住みたくないぞ…オレとしては……
はっきりいっていやすぎる……
いつものアンリの冗談でありますように……
「とりあえず。念には念をいれておこうか♪」
「?」
何やら楽しげなアンリの言葉に思わず首をかしげてしまう。
こういうときのアンリは絶対に何かたくらんでいる。
何をたくらんでいるのかまではわからないけど。
とにかく用心が必要だ。
「とりあえず。後でユーリの部屋にいくよ」
「了解」
「先に出るね〜」
そんな会話をしたのちに、先に風呂から上がってゆくアンリの姿があったりするけど。
アンリが上がると広い風呂の中に一人取り残され。
しばらく、湯舟の中でいろいろと考えをめぐらせてゆく……


「う〜ん。今日はよく働いたけど。……ん?」
しばらくお湯の中で考え事をしつつ悩んだ挙句、何はともあれ、風呂からあがり。
ひとまず部屋にともどったオレの目にと入ってきたのは、
オレの寝室のベットの毛布がなぜか膨らんでいる様子。
……
何かさっきの今…なので気がかりではあるが。
とりあえず、意を決してそのまま勢いよく毛布を剥ぎ取る。
と。
そこにはなぜか丸まっているピンクのバジャマ…
…というか、ネグリジェもどきを着込んでまどろんでいる……何でかヴォルフラムがいるし……
「ヴ…ヴォルフラム!?」
思わず叫ぶと同時。
「遅いぞ。ユーリ。僕はもう眠い。さっさとベットにはいれ」
などと、まどろみつついってくるし。
「というか!何でお前がオレのベットにいるんだよっ?!」
そんなオレの叫びに。
「怖がりなお前のために一緒にねてやろう。っていうんだ」
「いい!そんなこと!一人で寝れるから!」
こいつの寝癖はものすごいし。
ゆっくり寝れるものも寝れなくなってしまう……
というか、何でいつもいつも人のベットでこいつは寝るんだ……?
「遠慮するな。婚約者だろう」
いいつつも、ベットにまどろむ目をこすりながらも腰掛けているヴォルフラム。
「だからっ!そういう問題じゃなくてっ!
  というかお前から断ればいいじゃんかっ!って何度いわせるんだよぉぉ!」
そんなオレの叫びは何のその。
「僕がお前の婚約者。だというのは国中がしってるぞ?」
何だって?!
おもわずへなへなとその場に座り込んでしまう。
「……オレたち男同士なのに……どうなってんだよぉ〜……」
それ以前に、どうしてこいつは断ってこないんだろうか?
オレから断ることがプライドが傷つくからダメ!
とヴォルフラムが言っている以上、ヴォルフラムから断ってくれるしかない…というのに。
オレから断ったとしても、プライドが傷つくから聞かなかったことにする。
とかいって、そのまま…今の今まで継続されていたりする…という……
頼むからヴォルフラムから断ってくれってば……
そうしたら、何もかも、万事解決だというのに……
そんなことをつぶやきつつも、腰がぬけて座り込んでしまう。
誰も訂正とかつっこみとかをいれてくれないんだろうか?
この状況……
「お前はへなちょこだからな。この僕がついていてやるから安心しろ」
「安心できるかぁぁ〜〜!!!」
とにかく、こいつを部屋から追い出さないと。
オレだってたまにはゆっくりと眠りたい。
こいつの寝相…何しろ半端じゃないからなぁ…大概うなされてしまうし…
こんなに広いベットなのに押し出されそうになったりするしな……
ふぅ……



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