「しかし…なるほど。『忍者』ですか。たしかに的確な表現ですねぇ。俗にいう『シノビ』ですね」 「でしょ?しかも思いっきり定番の全身黒装束だったしさ。 屋根の上に寝そべってて目立たないつもりだったのかなぁ…アレでも…あいつら…… もしくは暗殺者?みたいな格好ともいえるかもしんないけど。忍者のほうがしっくりくるし」 そんなオレの言葉に。 「まあ、かぁなり目立ちまくってましたからねぇ。彼らは」 「でしょ?あれじゃ、忍者は失格だよね」 そんな会話をするオレとコンラッドに対し。 「こらっ!ユーリ!コンラートとだけ判る会話をするなっ!!」 そんなオレにと突っかかってくるヴォルフラム。 「陛下?わたくしにもわからないことばかりおっしゃられないでください」 ギュンターまでもがそんなことをいっくてる。 そんな二人の言葉に苦笑して。 「ギュンター。ヴォルフラム。 『忍者』というのは陛下がお育ちになった国に昔から伝わっているある種族だよ。 彼らは主に依頼人や主人、もしくは長の命令で、様々な行動をし。 『命令が絶対。』というおきてのもと、『破ったら死。』という硬い鉄則で生きていた一族。 たしか、足に靴をはいて水の上を歩いたり、何かとなえたら人数が増えたりとか。 カエルというか動物などは自在に大小に大きさなどを変化させて扱えたとか…… そして、走る速さも馬より早い…だったかな?あと様々な武術や毒にたけていたという……」 「コンラッド。コンラッド。それテレビだけの脚色や。しかも嘘もかなり混じってるってば」 そんな説明をするコンラッドに一応訂正をいれておく。
漫画でよくある、巻物をくわえて、ドロロロン…というのは、あれは漫画の中だけのことで。 実際の忍者はそんなものじゃない。 というのは、あるいみ常識だ。 一般に言われているのは、精神的にあらわすとすれば、 『心に刃をもちしもの』 というような感じだし。 現代社会であらわすとすれば、 今風に言うとスパイとか各種工作員とか言うような性格のものだし…… 一番日本で活躍したのは、主に戦国時代で。 有名な忍者といえば、伊賀・甲賀・風魔の流派があったりするけども。 只今アニメでも忍術を扱ったモノが放映されていたりするけど。 それはまあ…ギュンターたちに説明しても意味はわからないとおもうしなぁ…… 一般的に呼び名として普及しているのが、 伊賀忍軍が使っていたという、上忍、中忍、下忍という身分制という呼び名であろうが。 って、オレは昔『忍者村』にいったことがあるので多少は詳しい…ハズ…だとおもう。
そんなコンラッドの説明に。 「そんなにすごいやつがユーリの世界にはいるのか!?」 何やら本気で驚いているヴォルフラム。 「だからぁ。活躍したのは昔だよ。今だったら。『誰でも忍者を経験してみようっ!』 って村もできてるしね。結構面白いよ?隠し扉とか隠し仕掛けとか。 忍者屋敷っていうのが面白いことに隠れた仕掛けだらけでこれまた面白いし。 もちろん、今あるのは昔のような罠とかでも殺傷目的…とかでなく。 楽しんでもらうための仕掛けになってるから怪我したりとかはないけどね。 オレ的には回転扉がすきだなぁ」 そんなオレの説明に。 「あれは確かに意表をついてますよね」 「だよな。イタズラとか姿を隠したりするのにはもってこい。…って。 あ。グウェンダル。ひさしぶり〜」 忍者の説明をしつつ、廊下を歩いていると、横の廊下か何か見慣れた姿が。 その人物はそんなオレの言葉に、じろり、とこちらを見るけども。 う。 相変わらずのすごい迫力…… 思わず小心者のオレとしては、ギュンターの後ろにと隠れてしまう。 何かいつになく不機嫌そうなオーラ…というか、あせりまくっているオーラを出してるし…… 「ちょうどいいところへ。グウェンダル。陛下に陛下が留守であったときのご報告を……」 「グウェンダルは別に陛下をとって喰いはしませんよ」 「条件反射なのっ!」 グウェンダルに向かってにこやかに話しかけているギュンターに。 笑いつつオレにといってくるコンラッドに切り替えしておく。 誰だって不機嫌そうな顔でにらまれたら怖気づく。 ……とおもう。 しかも、それを威圧感の高い顔というか雰囲気をうける人物にされてみろ。 怖気づいても絶対に誰からも文句はこない……はず。 「私は今忙しい!王佐のおまえで十分に事は足りるだろうっ!私は急いでいる。 それと私をみたことは誰にもいわないようにっ!」 何か早口でまくしたて。 何やら珍しくダッシュでオレたちがいまやってきたほうにと駆け出してゆくグウェンダル。 何かから逃げてるような感覚をうけるけど? 一体?? 「……?どうしたのだ?兄上は?」 首をかしげるヴォルフラムに。 「何かすっごく不機嫌…というか、怖がってたみたいだけど……」 表情が表にでなくても、発するオーラは正直だ。 そんなオレの言葉に、コンラッドが。 「多分。あれのせいだ」 ……『あれ』?って…何? そんなことをおもいつつ、コンラッドが指を指し示した方向をみてみると。 「グウェンダルぅ〜〜!!」 なにやら髪を振り乱して走ってきている赤い髪の女の人の姿が…… あ…アニシナさんだし…… そして、そのまま、彼女はダッシュでそのまま廊下の角を曲がり、オレたちの目前にて立ち止まる。 おもわず、さらにギュンターの後ろにと隠れてしまう。 …この前、アニシナさんについて怖いこと聞いたしなぁ〜…… そして、オレたちの前にて立ち止まり。 「何ですか?あなたたち。そんなところに突っ立っていては邪魔です」 などといってくる。 というか、廊下を走ること事態が問題あるとおもうんだけど…… 学校ならば、まず間違いなく注意を受ける行為だ。 そんなことをいいつつも、ふと、ギュンターの後ろに隠れていたオレにと気づいたのか。 「あ〜ら。陛下。ごきげんうるわしゅう」 などと、オレをみて言ってくるアニシナさん。 「あはは……アニシナさんもお元気そうで……」 その言葉に空笑いするしかない。 「ところで?グウェンダルをみませんでしたか? せっかくわたくしの新しい魔道装置の実験に貢献できるというのにっ!」 ……やっぱしか。 グウェンダルが怖がっていたわけが判った…… 「は…はぁ……」 「…せっかく……」 何やらギュンターやヴォルフラムもちょっぴり引きつっているけど。 「どちらにいきました?隠し立てするようならあなた方に実験台になってもらいますわよ?」 げっ!? 思わず素直に条件反射的に方向を指差してしまう。 どうやら皆、それは気持ちは同じらしく、まったく同時に同じ方向を指し示してるし。 「素直で結構。グウェンダル〜!!」 いって、そのままオレたちの示した方向にと駆け出してゆくアニシナさんの姿が…… 「…申し訳ありません。兄上」 「成仏しろよ〜……」 思わず念仏を唱えてしまう。 でも、ヴォルフラムもやっぱり実験台は嫌なんだ…… 「大丈夫。グウェンダルはああみえて、あれでうたれづよいですから」 「ですね」 立ち止まっているコンラッドとギュンターからは何か冷や汗が一筋出ていたりする。 ……どうやら、やっぱり、アニシナさんのことは深く追求しないほうがよさそうだ…… 「でもさぁ。前回こっちにきたときに。店のおじさんがいってたのって本当なのかなぁ?」 思わずつぶやくオレの言葉に。 「何がです?」 首をかしげて問いかけてくるギュンター。 「アニシナさんが薬の実験をして。 実験台になった人が骨だけになったり。肉が溶けたりした人がいるって。 まるで七不思議みたいな話だったし」 「…お、お聞きになられたんですか……」 何かギュンターから戸惑いのオーラが…… 「それは事実だな。しかも兄上なんかは二年近く手が腐って動かなくなったことがあったぞ?」 …いや、手が腐って…って…そ…それは…… 「…彼女に関しては。まあ、君子危うきに近寄らず。ですね。 でも陛下?七不思議ならこの城の中にもありますよ?」 「げっ!?あるのっ!?」 思わず硬直。 「何だ?ユーリ。怖いのか?」 にやけてオレにといってくるヴォルフラムだし。 「何かオレって性質の悪い霊に追いかけられていたりしてるんだよっ! …この城の中には性質の悪い霊とか…まさかいないだろうなぁ〜……」 体がぱっくりさけている幽霊に追いかけられたあのときにはさすがにオレは泣いたぞ。 思いっきり泣き叫んだら消えたけど。 アンリの指導で、どうにか『視える』モノが『視えなくてすむ』ようにはなってはいるけど。 結構この『ガード』とかいうのはなれるまでが難しかったが。 何はともあれ。 ここにはそんなモノがいませんように…… 「この城の中は平気ですよ。多分。」 「多分って何!?多分って!?」 何か不安になってきたぞ? この世界にもちゃんとお祓いの人とかいるんだろうか? 「怖がりだなぁ。ユーリは」 そんなオレの言葉に笑うヴォルフラムに。 「おまえだってなぁ!体半分がぱっくりと裂けて、 しかも、その肉体の中身の臓器が見えている人の幽霊に追いかけられたらわかるって」 「何と!?陛下に対しておいかけるなどっ!万死にあたいしますっ!」 「いや、幽霊だからもう死んでるし、それに幽霊にいってもしょうがないし…… 三歳くらいだったなぁ。あれは。ま、とにかくとことん怖かった……」 あの一件のせいで、絶対にオレは幽霊という存在に対してトラウマになっている…とおもう。 「うぷっ!!」 オレのいった様子を想像したのか、ヴォルフラムが何やら吐そうにとなっている。 …ヤバイ。 オレも思い出したら気分悪くなってきたぞ…… そんな会話をしつつも、とりあえず、オレはコンラッド達とともに部屋にと向かってゆく。 先ほど、爆発の音と、グウェンダルの叫びが城の中に響き渡ってたけど…… えっと……ふ…深く考えないことにしよう……
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