「ええいっ!さわるなっ!それより、何か用があってユーリを呼んだんじゃないのか!?」 ヴォルフラムが何やら叫びながらそんなウルリーケにといっている。 「……え?もしかして…オレをここに呼んでるのって…ウルリーケなの!?」 思わずびっくり。 「ええ。わたくしが眞王陛下の御意思をうけて、陛下をこちらにと導いております」 にこやかに肯定してくるウルリーケだし。 「だったらさぁ。もうすこし場所と時を考えてもらえれば……」 そんなオレの至極もっともな意見に。 「ウリちゃんにいってもねぇ。彼女はこちらにユーリを導くのが役目だし。 時間とかまでは彼女の担当ではないからね。というか……こらエド!!話があるっ!!」 何やら奥の壁のほうにむかってアンリが叫ぶと同時。 上のほうにとある何かの紋様らしきものがぽうっと光る。 「ついでだし。挨拶したら?」 何やら腕組をして、そんなことを言い放っているアンリの姿。 ? 「あの?猊下?」 戸惑い、語りかけるギュンターの言葉と同時。 『まったく……毎度のこととはいえ……何を怒っている?』 「「「うどわっ!?」」」 思わずびっくり。 オレとヴォルフラムとギュンターの声が重なってるし。 見れば確かに目の前の壁に流れ落ちるような形になっているそこに、 後ろが透けている青年が一人……何か…空中に浮かんでるし…… ちなみに、雰囲気はよくヴォルフラムにと似ているが。 「まあ!眞王陛下自らがお姿を現されるなんてっ!」 などといって、横ではウルリーケが感激モード。 ・・・・・・・・・ 「って…ええっ!?じゃこの人が噂のエドワードって人!?ってことは幽霊!?」 思わず驚きの声をあげるオレに。 「何だと!?眞王陛下ご本人!?いや、そうでなくて……」 何やらうろたえつつ、ひとまず、なぜか膝まづいているヴォルフラム。 「何と!生きているうちに眞王陛下の御魂にお目にかかれようとは。」 こちらはこちらで、何やら感激モード突入中のギュンター。 コンラッドにいたっては。 「お久しぶりでございます。眞王陛下」 などといって、うやうやしくお辞儀をしているし。 どうやらコンラッドは昔、出会ったことがあるらしい。 『皆のもの。かしこまる必要はない。……お久しぶりでございます』 いって、何やらその幽霊さんが頭をさげてくる。 アンリに挨拶でもしているのかな? ……とおもいきや。 「久しぶりって…そういっても、ユーリには判らないよ。エド。 覚えてない、というか思い出してすらもいないんだから」 見た目は二十代前半から後半。 顔立ちはヴォルフラムを大人にしてそのまま成長させたかのようだ。 そういえば、身に纏っている服も何か軍服っぽいぞ? 『……そうでしたな。まずは改めてご挨拶をいたします。ユリティウス様。 わたくしは初代魔王、眞王エドワードと申します。 なにぶん、ご無礼のだんなどもあると思われますが。これも全てはあなた様の…… いや、この世界のため。まずは改めましてあなた様自らが王となり、 この世界の行く末えたる道を指し示してくださることに、深く感謝いたします。 およばずながらわたくしを含め、全てのものが従う覚悟でございますので……』 「…エドォ。そういう物言いはやめない?どこから、『それ』洩れるかわかんないよ?」 『しかし…この御方は……』 「融通をきかせよう」 『……わかりました』 ??? 「あ、あのぉ?もしかしててオレ、あなたとどこかであってるんですか?」 確かにどこか懐かしいような感じはうけるが。 「ほらみろ。今のユーリにとってはあの力は危険だから、気をつけないと。 創主たちも狙っているみたいだし?」 ??? 意味不明な会話をしているアンリとエドさん。 ……眞王…と呼んだほうがいいのかもしれないが。 とりあえず。 「えっと。何かご丁寧にありがとうございます。死んでまでお仕事ご苦労様です。 オレ、渋谷有利っていいます。ってエドワードさんは知ってましたよね」 挨拶…というか、よく意味不明な挨拶であったが、オレも礼儀として挨拶を。 ふと後ろをみれば、何か膝まづいたままの姿勢で硬直しているヴォルフラムと。 「?今の眞王陛下と猊下の会話の意味は一体?」 などと少し首をかしげているギュンターの姿が目にはいる。 「ところで?エド?君、どんどん召還場所の周囲点検。甘くなってない? 初めは僕達が川に落ちたとき。二回目はお風呂の中。 三度目なんて…つまり今回なんてくるぶし程度の水しかない場所でひっぱりこんだんだよ? あっちで騒ぎになったらどうする気?」 腕をくんで、あきれたようにそんなエドさんに対してアンリがいってるけど。 『回りに人は見えなかったですが……』 「確認の仕方があまいっていってるのっ!! このままだったら、君。公衆の面々の前でユーリをひっぱりこんだりしかねないからね。 釘をさしとかないと」 『それは……』 あ、目をそらした。 アンリの言葉にあからさまに目をそらしているエドさんだし。 『しかし…こちらとあちら…つまり、地球の特定の場所と時間をつなぐのは。 何かしらのタイミングも必要ですし……』 「だからぁ。いってるじゃない。あっちからこっちに僕達から来る分にはそれは関係ないんだしさ。 僕とユーリの場合にはね。あらかじめ判っている場合は伝えてくれれば。 それなりにこっちも調整してこれるけど?」 じと目で何やら話しかけているアンリの言葉に。 『用。というか事が起こるとき、この御方がいらっしゃらなければ困ることもありますし……』 「それをうまく調整するのも君の役目。だろ?」 『そうですけど……。最近は意識を広げすぎて注意することが多くてそこまでは……』 「あのねぇ!……で?所で今回はユーリに何のよう?」 何かこの二人、結構仲がいいようだ。 まあ昔。 この眞王って人とアンリは一緒に戦ってこの惑星を救ったらしいから当たり前かもしれないけど。 そんな二人の会話を聞きながら。 「あの……。今回はわたくしが眞王陛下におねがいしたんです」 オレの横でいってくるウルリーケ。 「??お願いって?」 そんなウルリーケのほうを向きなおすと。 「だって!皆様は陛下に幾度もおあいしていらっしゃるのにっ! わたくしだけ今回お会いになることが出来ないのは不公平だ。って眞王陛下に訴えたんです。 そうしら眞王陛下が願いをかねえてくださるって……」 ……あらぁ〜…… つまり、オレはそのために、あの水位のない川の中にひっぱりこまれたってわけ? 「だってだって!わたくしも陛下にお会いしたんですものっ!」 「…ウリちゃぁん……。僕にいってくれたらユーリくらい、いくらでもつれてきたのに…… でも…ま。それだけじゃない…かな?」 何やらエドさんをアンリがみると、エドさんはこくり、とうなづいてるし。 ? 「…それでオレは川に引っ張り込まれたわけ?」 オレの確認というかそんなつぶやきに。 「だってだってっ!!」 わっ!? 今にも泣きそうになってるし!? 小さい子に泣かれるのは困るんだけど…… って年齢はオレよりかなり上らしいけど。 でもウルリーケの見た目は十歳前後だし。 「ああ!おこってないよ。うん」 「あなたがいなければ陛下をこちらからおよびすることも出来ない。 我々はあなたにとても感謝していますよ」 「そうそう」 どうやらコンラッドもウルリーケに泣かれるのは苦手らしい。 オレと一緒にフォーローを入れてきてくれる。 「そういっていただけるとうれしいです!」 今にも泣きそうだった顔がぱっとあかるくなり。 「陛下ってほんとうにお優しい」 いってオレの手を握ってくるウルリーケの姿。 「あ〜!!だから軽々しく僕の婚約者にふれるなっ!!…って、失礼をっ!」 それをみて立ち上がり、オレをウルリーケから引き剥がすヴォルフラムだが。 すぐにエドさんをみて姿勢を正していたりする。 あのヴォルフラムがかなり緊張している姿なんて、はっきりいって始めてだ。 何か面白いし、新鮮だ。 「ってことは、オレ。今回は特にすることなし?」 そんなオレのつぶやきに。 「ならちょうどいい機会です。この機会にぜひとも魔王としてのお勉強をいたしましょう」 オレのつぶやきに、何やらうれしそうなギュンターの声。 「うわっ!?いつのまにギュンター立ってたの?!」 気づいたらいつのまにかオレの真後ろにと立ってるし。 あなどりがたし…ギュンター…… 「べ…勉強……」 う〜…… せっかくあっちでは今日の宿題はもうすませてたのにぃ…… がっくりと力なくうなだれつぶやくオレに。 「これも魔王のお勤めです」 いって。 「それでは。眞王陛下様。ウルリーケ。 とりあえず我々はこの辺りで失礼いたします。猊下はどうなさいますか?」 「僕はもうちょっとここにいるよ。花壇の様子とかも気になるしね」 「なら、馬を届けさせておきます」 「ありがとう。フォンクライスト卿」 そんな会話をしているギュンターとアンリだけど。 「え、ええと。それじゃ、ウルリーケ。またくるよ。それにえっと?エドワード…さん?」 そんなオレの言葉に。 『エドでよろしいですよ。……お気をつけられますように……』 「ありがとう。それじゃあ」 何かふかぶかとお辞儀をしてくるエドさんにかるく手をふり挨拶すると。 「まったく!おまえというやつは!誰にでもあいそよくしてっ!」 いきなりそんなことを言われ、耳をひっぱられる。 「いたいっ!いたいってば!ヴォルフ!?何だよ!?」 「ヴォルフラム。そんなことをしては陛下の体に傷でもついたらどうするつもりですっ!?」 「ユーリは僕の婚約者なんだから何をしてもいいんだっ!! ウルリーケだけでなく眞王陛下にまであいそよくしてっ!!」 何かいいつつ、オレの耳をひっぱって、部屋の外にと連れ出してくれるし。 ……こいつは…… というか、かなり耳が痛いんですけど……
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