六月の半ばともなればなかなかに天気も変わりやすく、かといって洗濯物も乾きにくい。
家…乾燥機ないし……
おふくろ曰く。
『太陽の光に当てたほうがいいから』
らしいが…
そんなことを思いつつ、どうしよう?
と思っていると。
バシャっ!
…ばしゃ?
ならか川辺のある地面のほうから水音が……
と。
「ユーリ!」
川辺にと生えている身の丈くらいはかるく高くそびえて茂っている草の中から、
なぜかアンリが草を掻き分けて出てくるけど。
「って?アンリ?」
何でそっちから?
というか、アンリも続いて戻ってきたわけ?
見ればアンリは何か着替えてきたらしく。
あっちに流されたときと同じ服…つまりは元着ていたときと同じ服にと戻っている。
向こうとこっちの時間率はどうにもリンクしているようでしていないらしい。
…ま、あっちにいってしばらく滞在していても、いっつもこっちでは数分も経過してないしね。
毎回……
「まさか。あそこでエドが道を繋ぐとはね〜。はい。ユーリの忘れ物〜」
いいつつアンリが驚くオレに手にしているちょっとした袋鞄を手渡してくる。
確かあっちにおいといた百円ショップで購入したビニール製の鞄だ。
「あ!ユニフォーム!助かったよ。アンリ。…ところで?あっちはどうなったわけ?」
鞄の中を確認してみれば、あちらに忘れてきたはずのユニフォームが入っている。
さすが、マネージャー。
と内心喜びつつも、気になっていることを問いかける。
オレ、ウルリーケたちとの話し合いの最中こっちに戻ってきたわけだし……
そんなオレの言葉ににっこりと笑い。
「とりあえず。ツェリさんと連絡を取って。いつごろ戻しに来るか。
  …とかいうのとかを話し合うみたいだよ?
  フォンヴォルテール卿が連絡を取る。っていってたし。
  僕は簡単に意見などをいっておいてから、挨拶を済ませて戻ってきたんだけどね。
  ちなみに来週はユーリのチームの初の試合だからこちらには。
  つまりは眞魔国にはこれない。ということもいっといたよ」
川の中からざぶざぶと岸にと移動する俺にとアンリが説明してくれる。
「そっか。サンキュー。アンリ」
そういえば。
この五月の初めにあちらに行き始めてから。
というのもの。
毎週日曜日か土曜日には必ず向こうに行ってたもんなぁ〜……
大体、こっちの時間でいうと、夕方の四時か五時くらいからか。
それかもしくは朝のうちに……
来週の日曜日は何しろ草野球チームの初の公式戦だ。
前日からしっかりとチームのためにも準備はしておかないと。
チームの皆のために。
オレの信念でもある、『フォア・ザ・チーム。』のために。
全員のために。
がオレの信条でもあるしね。
「どうでもいいけど…濡れたままだと風邪ひくよ?ユーリ?」
「家にもどってから着替えるよ」
確かもう、あちらに流される前にグランドの片付けは全てすんでいたはずだ。
「そのほうがいいね」
よっと。
アンリがいうのと同時に川の中からあがり、地面を踏みしめる。
しっかし…毎回思うけど、あっちとこっちの時間率…すっごく違うよな……
おふくろたちがよくやっている。
某ネオロマンスゲームの時間の流れと似たようなものがあるのか。
もしくは時間をコントロールする力がエドさんにあるのか。
はたまた実はあの星はこの銀河の中にあって特殊な空間にあって。
自覚の束縛うんぬんを他から受けない…とか。
まさか、そんなSFチックやファンタジーじゃあるまいし。
何かきっと理由があるんだろうけども。
…多分、アンリに問いただして正確なことを聞き出したとしても、オレには理解不能だろうし……
空にある太陽の位置からして、あちらに移動したときと比べてさほど時間はたっていなそ〜だ。
でもきちんとグランドを片付け終わった後でよかったよ。
地面の感触を踏みしめつつ。
「さて。それじゃ、いこうか」
「だね」
自転車はグランドの駐輪場にととめているまま。
ひとまずグランドのある川上に向かってアンリとともに歩き出す。
…あとでしっかりと、体をほぐすためにも、ストレッチ体操とかしておこう。
オレ達が歩き始めた直後。
ちょっとした通り雨らしきものが降り、
別にオレ達が濡れていても違和感がなくなっていたりするが。
ま、時期が時期だからねぇ〜……
一応はもう梅雨入りしているはず…なんだし。
ゆえに晴れた日は大変に貴重。
週間天気予報では次の日曜日は晴れとなっており、明日から数日は雨となっていたはずだ。
とりあえず。
たわいのない会話をしながら、アンリとともにてんてんと川辺の土手をあるいてゆく。

「…結局。あのシュトッフェルって人…何がしたかったんだろ?」
オレを洗脳云々…というか、そんなことをして何をどうしたい。
というのだったのやら。
そんなオレの素朴な疑問に。
「ユーリを懐柔して又権力欲がほしくなったんじゃない?ま。ひとまずは大丈夫だよ。
  影響を与えていた『力』はユーリ、消し去ってたし」
……は?
「…何のこと?というか消しさった…って…?」
「あ。気にしなくていいよ。こっちのことだから」
いや…かなり気になるぞ?
というか…オレ、何かまたやっぱりやっちゃったのかなぁ??
何も覚えていないから実感も自覚もないけど。
「それより。次の日曜日の公式試合のことだけどさ」
…あ、話題をさらっとかえやがったし…アンリのやつ……ま、いっか。
考えても覚えていないものは覚えていないんだし。
というかどうにもならないし。
「初の公式戦かぁ」
チームを作って約三ヶ月目。
四月にチームを立ちあげてからの、初の公式戦だ。
これまでの練習試合…とかいうのではなく。
ちなみに相手は隣の町のチームが初戦で、トータル勝ち抜き戦だ。
まずは八チームの中から一チームほど優勝チームが決められる。
何か某漫画の天下一武道会並み…と思ってしまったのはどうもオレだけではなかったようで。
チームメイトたちの中にもドラゴンボールみたい。
といっている人たちもいたほどだ。
そ〜いや何かおやじが記念だから、とかいってあれのDVD−BOX…買ってたっけ…
一つ十万もするのに……
お〜い……
何だかなぁ〜……
「とにかく。全力でがんばるっきゃないでしょ」
オレを信じてついてきてくれているチームメイトたちのためにも。
国と草野球チーム。
オレにとってはどちらも重要性からいけば同じくらい大切だ。
…国の場合は全ての民の運命、という重荷がある。
としても。
オレにとってはどちらも大切な『チーム』には変わりがない。
だから…どっちも全力でがんばっていくしかないし。
それに…オレには頼れる仲間がいることだし…ね。

そんな会話をしつつ。
自転車にと乗り、帰路にとついてゆく。

家にもどってゆくっりと風呂に入って休もう。
そんなことを思いつつ。

…結局。
今回のお呼ばれ…というか召喚は…ウルリーケがエドさんに頼んだのもあったにしろ。
エドさんからしたら、シュトッフェルをとめてくれ。
という意味があったんじゃないかなぁ?
などと、そんなことを思いつつ。
…今度エドさんにあっちにいったときに聞いてみよっと。


            ― Misson End Go To Next……


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